ー MY REAL STAGE 〜 僕は彼女を死なせない 〜 ー

ルシア・モドロンリ

想いの継承

サザルキは田舎にあるごく普通の家庭で育てられ、将来は家の家業である鍛冶屋を継ぐことを決めていたそうだ。

本当は長男であるサザルキの兄ルドルキが家を継ぐことになっていたが、ルドルキは騎士になりたいと親の反対を押しきり志願、シルス様の訓練を耐え見事騎士となった。

サザルキ『兄貴!僕が兄貴の剣を作るから!世界一の剣を作るよ!』

ルドルキ『おーサザルキ!頼もしい弟だ!お前が大きくなったら俺の剣作ってくれな!』

サザルキ『おう!えっへへへ〜』

サザルキとルドルキは歳の差が13個も離れており、兄弟喧嘩はほとんどなく、兄弟というより親子に近い関係性だったかもしれない。サザルキも兄ルドルキに育てられたと言っている。

そんなある日、サザルキがいつものように家業を手伝っていると、そこへ黒いフードを被った男が剣を作って欲しいと尋ねてきた。

男『ここの剣は良いと聞いてね。一本作ってはくれませんか?』

父『えぇ大丈夫ですよ。どんなものをご希望ですか?』

サザルキの父がそういうと、男は何かの石を手渡した。

父『こ、これは…どこで…』

男『それはいいとして、これで作ってもらえますかな?』

父『…わ、わかりました!そうしましたら一度王宮に確認させてくださ』

サザルキの父親が簡単な魔法で王宮に確認しようとしたその時、男はサザルキの父親にナイフを突きつけた。

男『王宮には確認せずに…お願いできますか?』

サザルキ『お前!父さんから離れ!…!?』

男はサザルキに向かってナイフを投げつけた。投げたナイフはサザルキの顔スレスレのところを通り、後ろの壁に突き刺さる。

男『君はお父さんの指示に従って、剣を作ればいいんだよ。わかったかい?』

サザルキは唇を噛みしめて、怒りを抑えることしか出来なかった。

父『わ、わかった。剣を作ればいいんだな。サザルキ、言われた通りにするんだ…いいな。』

サザルキは首を縦に振った。

男『ありがとうございます。では早速お願いします。』

サザルキと父親は男から預かった石を使い剣を作り始めた。

サザルキ『父さん、この石って何なの?俺にはただの透明な石にしか見えないんだけど。』

父『サザルキ、この石はただの石ではない。これはマリヤ様の力を込めた鉱石だ。騎士になって初めてマリヤ様からいただける剣にこの石の力を込めるのだ。』

サザルキ『そうなんだぁ。でもそんな大事な鉱石、あの男が入手できるくらい簡単に手に入るものなの?』

父『入るわけなかろう。どうやってこの鉱石を手に入れたのか検討もつかない。とりあえず剣をこしらえるぞサザルキ。』

明らかにおかしい状況ではあったが、サザルキは父と共に剣を作り上げていく。

いつものように剣を作っていく時、いつもと違うことが起こるのに気がついた。

普通剣を作る時、火の釜から出した剣は赤々としていて、火山の噴火口から流れ出す溶岩のような色をしている。しかしこの鉱石を入れた剣は、赤々とはせずに眩しいくらいの光を放っていた。

サザルキ『な、なんだこの光は!?父さんこれは!?』

父『これが騎士様達が手にする剣なんだ。父さんが王宮で剣を作り、そのお手入れをしてた時に初めて目にした光景だ。いつかお前にも見せてやりたいと思っていたのだが、まさかこんなタイミングでなんて思ってもいなかったな。』

そうサザルキの父が話しながら作業を進めていると、剣は完成した。作成過程では光り輝いていた剣だが、完成したものは普通の剣と何ら変わりはない。

すると、2人の背後でフードの男が剣を眺めていた。

男『おー素晴らしい。流石王宮でお支えしてただけはありますねジルバさん。では剣をこちらへ。』

そう言って、男は手を伸ばしてきた。

父『お前はこの剣をどうするつもりだ。そもそも誰なんだ?なぜ私を知っているのだ?』

男『質問攻めはおやめください。私はただその剣が欲しいだけなのです。』

男はなかなか剣を渡さないサザルキの父を見て、ナイフを投げつけた。

サザルキ『あ…あぁぁぁぁぁ!!!』

ナイフはサザルキの足に刺さり、サザルキは倒れ込んだ。

父『お、おい!やめろ!息子に手を出すな!』

男『あなたが渋ったり、抵抗したりすると息子さんはどんどん死に近づきますよ。さぁ、それを渡して。』

父『…頼むからこの剣を悪用しないでくれ。』

男『んー、まぁそこはシークレットということで。』

サザルキの父親が男に剣を手渡そうとした瞬間だった。

キーッン!

男『これはこれは。ご長男様のルドルキ騎士ではありませんか。』

そこに現れたのはサザルキの兄、ルドルキだった。

父『ルドルキ!どうしてここに!?』

サザルキ『兄貴!』

ルドルキ『街の門番から怪しい奴が門外から侵入してるのを見たと聞きつけてな。情報を集めてたら実家にたどり着いたって訳。まぁ来てみれば大当たりだったな。』

男『少し困った状況ですね。なるべく争わずに剣を頂こうと思ったのですが…』

そういうと男は腰に付いている鞘からナイフを2本取り出し構える。

それを見てルドルキも剣を構えた。

ルドルキ『お前シドマだな…何が目的だ?』

男『上から拷問を受けても素性を吐くなと言われていまして、残念ながらその質問にお答えできないですねルドルキ騎士。』

男のその言葉によってルドルキが斬りかかる。

キーッン!ドゴォォォン!

家の壁を突き破り、外へと2人は飛び出していく。

ルドルキの剣に両手ナイフで応戦するフードの男。騎士の剣をナイフで同等に戦う奴とは一体何者なのか。

2人が斬り合っている間にサザルキと父親はその場から逃げ出し、魔法を使い王宮に連絡をした。

王宮秘書女官『こちらカシュパラゴ緊急対応室で…これはジルバ様!どうされたのですか?』

父『家の鍛冶屋で何者かに襲われている!今ルドルキが応戦してくれているが、なかなか手強い相手だ!至急応援の騎士を頼む!』

王宮秘書女官『かしこまりました!すぐに応援を向かわせます!』

連絡を切り、父親は怪我を負っているサザルキに肩を貸してカシュパラゴ中心部へ向かった。

サザルキ『父さん、ごめん…足手まといだ俺…』

父『足手まといであるものか。あんな男がうちを訪ねてくるなんて誰がわかる。気にするなサザルキ。』

サザルキ『父さん…ありがとう…兄貴大丈夫かな?』

父『ルドルキなら大丈夫だろう。あいつは騎士長補佐役だ。あの男など相手にもならんよ。』

そう言って2人は歩みを進めていく。後15分ほどすれば王宮のあるカシュパラゴ中心部へ到着する。後少しと2人が安心して歩いていたその時だった。

男『腰に携えてる剣…頂けますかジルバさん?』

父『!?』

背後にフードの男が立っていた。
男は先程作った剣を奪おうとサザルキの父親を突き飛ばす。それによってサザルキも地面に倒れ込んだ。

父『サザルキ!貴様ー!!』

サザルキの父は男に向かって走り出した。そして…

バサッ!…

サザルキ『と、父さん!!!』

サザルキの父親はフードの男に斬られてしまった。
その場に倒れ込む父親を目にしサザルキは、悲しみや怒り、苦しみなど様々な感情が入り混じり、涙を流しながら放心状態になってしまった。

男『騎士でもないあなたが私に敵うわけないのに。剣を作る良い腕をお持ちのあなたがなんて無駄死にをするんですか。はぁもったいない。仕方ないですね、サザルキ君、君をシドマに連れて帰り、私たちシドマの騎士の剣を作ってもらいましょう。』

フードの男がそう言ってサザルキに手を伸ばした時…

キーッン!

男『おや、まだ生きていましたか。ちゃんと息の根を止めておけばよかったですね。』

ルドルキ『俺はしぶといぞ…と、父さん!?…お前俺の家族によくも…』

ルドルキがフードの男に怒りを露わにしている横で、サザルキは固まったまま動かない。ルドルキが隣に来ていることにすら気付いていない様子だった。

ルドルキ『サザルキ!しっかりしろ!おい!!』

ルドルキが放心状態のサザルキに叫んだ。するとサザルキが目を覚ましたようにルドルキを見上げる。

サザルキ『あ、兄貴…俺…俺…何もできなかった…』

ルドルキ『当たり前だ!剣作りしか脳のないお前にできることなんてないんだよ!それよりも父さんの息があるか確かめろ!早く!』

サザルキ『え?…』

サザルキはフードの男に父親を斬られた瞬間に死んだものと思っていたようだ。ルドルキの言葉にすかさず父親の生死を確認すると微かにまだ息があった。

サザルキ『父さんがまだ生きてる!生きてるよ兄貴!よかった、本当に良かった…』

ルドルキ『よし!まだ助かる見込みはあるな!サザルキ、お前も怪我を負ってキツい状況だが、父さんを頼めるか?』

サザルキ『もちろん!片足失っても父さんを街まで運ぶよ!』

ルドルキ『頼もしい弟だな。こいつは俺が足止めする!父さんを頼んだぞ!』

サザルキ『足止めじゃなくてこんな奴ぶっ倒してくれよ兄貴!』

コクリと頷き彼はフードの男に向かって走り出した。ルドルキもかなりの傷を負っているが、持ち前の根性で立ち向かう。

ただこの状況を見て誰しもが疑問に思うことがある。
それはルドルキの傷に対して、男はほぼ無傷。

2人が互角に戦っているようには見えない。

つまり、ルドルキはわかっているのだ。

自分がこの男に敵わないことを…

男『まったく泣ける兄弟愛ですね。でもあなたもわかってるでしょう?私との力の差に…』

キーッン!

2人はまた剣を交える。

ルドルキ『いや!俺はわからずやなんでね!お前に勝つまで何度でも立ち上がってやる!』

フードの男はやれやれという素振りを見せてから再びルドルキに斬りかかる。

ルドルキも騎士の中では強者の1人と数えられ、その腕を見込んで騎士長補佐として地位を築いた。

かなり先の話にはなるが、いつかは上級騎士、そして四大騎士の1人として活躍するのではないかと話に上がっていた。

しかし…

ルドルキ『はぁ…はぁ…はぁ…』

男『ルドルキ騎士、もうわかったんじゃないですか?私には敵わないと。』

ルドルキは身体の至る所から出血をしていた。
普通なら立っていることすら困難な状態に見えるが、彼の強い気持ちによって身体は動いているようだ。

ルドルキ『はぁ…はぁ…はぁ…』

ルドルキはもうすでに自分の意思で何かをするという思考にはならない。意識はあるようですでにない。
周りの景色、音、匂い、味…全て感じることは出来なくなっていた。彼が今見てる景色は、真っ白な世界にフードの男が目の前に立っているというもの。そしてその男から家族を守るという強い思い。

それだけだった。

男『なるほど…もう私の声すらあたなには届いていないようですね。カシュパラゴの騎士というのは素晴らしい。たとえ敵わない相手だとしても、最後まであきらめない。この意思をシドマの騎士共にも教えてやりたいものですね。では、終わりにしましょう。』

フードの男はルドルキに斬りかかった。

その頃サザルキと父親は街のすぐそばまで来ていた。

サザルキ『父さんもうすぐだから!頑張って!』

父親は出血がひどいもののなんとか息を繋いでいた。
するとそこへ王宮からの応援部隊がやってきた。

騎士長『ジルバ様!御子息様!無事でしたか!』

応援部隊を目にしたサザルキは張り詰めた糸が切れたかのように涙が溢れ出ていた。

サザルキは声を詰まらせ、泣きながらルドルキのことを騎士たちに話す。

騎士長『なんですと!?かしこまりました!おいお前!2人を治癒班へ!あとはルドルキ騎士元へ急ぐぞ!』

サザルキと父親は応援の騎士によって王宮の治癒班へと引き渡された。

サザルキ『兄貴…』

治癒班によって治療を受けたサザルキは深い眠りについていった。

もう何日が経ったのだろうか。
心身ともにやられていたサザルキは何日間も眠り続けた。

『サ…キ…サザ…サザルキ…サザルキ!』

サザルキは声によって起きた。

すると横に立っていたのは…

サザルキ『父さん…良かった…』

瀕死だった父親がサザルキを見下ろしていた。

父『サザルキ、よく頑張ってくれたな…さすが俺の息子だ…』

2人は涙を流し、そして抱き合った。

父親と無事を喜び合いながら、サザルキは問う。

サザルキ『父さん、兄貴は?』

その言葉でサザルキの父親は顔が強張る。

それを言われてから2人の間で少し沈黙が続いた。

そして父親は口を開いた。

父『サザルキ、もう歩けるな。ついてこい。』

サザルキの父親はサザルキを連れて王宮の地下に向かった。父の後を何も言わずにサザルキはついて行く。

到着した部屋のベット上には、傷だらけになったルドルキが横たわっていた。

サザルキ『兄貴…』

その姿を見てサザルキはすぐに悟った。

兄ルドルキが自分や父親を守るために犠牲になったと…

父『サザルキ…ルドルキはよくやってくれた。立派な男、さすが俺の息子だ。だがな…親より先に死ぬとは何事だ!馬鹿者!!』

それをかわきれに父親は泣き崩れ、サザルキは兄を見たまま動けずに、ただただ溢れ出る涙に逆らうことなく流し続けた。

するとそこへ…

『君のお兄さん、ルドルキは誰かのために命を落とせる騎士としての鏡。そして俺の大切な部下。こんなことになってしまって…本当に悔しい…』

そこにはサザルキを部下と呼ぶ騎士が立っていた。

サザルキ『あ、あなたが兄貴の部隊の騎士長様ですね…』

『私は…』

サザルキはしゃべろうとした騎士の胸ぐらを掴んだ。

サザルキ『なんで!…なんで兄貴だけを戦わせたのですか…その指示のせいで兄貴はもう…もう…』

その騎士は胸ぐらを掴まれたまま、サザルキの話すことによく耳を傾けてくれた。

父『!?あ、あなたは!?サザルキ手を離しなさい!』

泣き崩れていた父親が顔を上げるとそこには、見覚えのある騎士がサザルキに胸ぐらを掴まれていた。

サザルキ『いやだ!…だってこの人が兄貴を…兄貴を…』

『すまなかったな…私の力不足だ。だが、君のお兄さんはとても強かった。それは私が保証しよう。その兄ルドルキ騎士が勝てない相手がこれから先、もっと増え、このカシュパラゴを襲ってくるかもしれない。それがどういう意味だかわかるかな?』

サザルキ『どういう…』

『とても今危険な状況になりつつあるということだ。今回はお兄さんのおかげで君やジルバ様は救われた。しかし、またいつルドルキ騎士を殺した奴らが来るか分からない。死と隣り合わせの状況なんだ。』

サザルキは騎士の胸ぐらから手を離し脱力する。

『お兄さんだけではない、今多くの騎士たちが皆を守る為に命を落としている。わかるな。』

サザルキは枯れない涙を流しながら騎士に訴る。

サザルキ『じゃ、じゃあ!この戦いを終わらせるにはどうすればいいのですか!?どうすれば兄が死ぬことのない世を作れるのですか!?』

『それは…俺が作り出す。シドマに支配されない、安心して人々が暮らせる世界を作る!だが、俺1人では難しい。だから提案なんだが…君も力を貸してくれないか?サザルキ君。』

サザルキは『え?』という顔をしていた。

『君の力がきっと必要になる時がくる。ルドルキ騎士を見ていればわかる。顔も声も話し方も、そしてその熱い思いも。全てあいつそのものだ。ルドルキ騎士もよく君の話をしていたよ。』

【俺の弟は町1番の力持ちで、誰よりも剣と人を大切にでき、俺が1番誇りに、そして尊敬できるやつです!まぁ、ちょっとバカ真面目なところがあるんですけどね!】

サザルキはそれを聞いて涙でくしゃくしゃの顔から笑みが溢れた。

サザルキ『なんだよそれ。』

『サザルキ君、お兄さんのやりたかった【みんなを守りたい】という思い。どうだ?継いでみないか?』

父『そ、それはサザルキも騎士になれとおっしゃるので!』

父親が話している途中でサザルキが割り込む。

サザルキ『俺は騎士になる!兄貴の…兄貴の分までこのカシュパラゴを守り抜ぬ騎士に!騎士様!あなたの部隊に入れてください!』

父『サザルキ!騎士になりたいなんて簡単に言うな!騎士はそんな甘い世界じゃない!』

『ジルバ様…彼の顔を見てください。』

騎士の言葉に父親はサザルキの顔を覗く。彼を見た父親は、それ以上口にするのを止めた。今のサザルキの顔は、ただの若者が言っている戯れ事ではない。何かを悟り、覚悟した1人の男の顔だった。

『騎士というのは、ジルバ様の言うように甘い世界ではない。つまり簡単になれるものではないのだ。いいな…ただ、今の君の覚悟ならきっとお兄さんと同じ…いや、それ以上の騎士になっていくに違いない。サザルキ君、君は自分の命をかけてもこのカシュパラゴを守りたいと思うか?』

サザルキはなんの迷いもなく即答した。

サザルキ『はい!守りたい!僕が育ったこの町…いや、この世界を兄貴の分まで守りたいです!!』

その言葉を聞き、騎士は笑みを浮かべた。

『よし。ならば君に騎士候補として訓練参加許可を特別に出そう!』

父『な、何ですって!?それはあなたとマリヤ様で決めなければ!』

『いいんですよジルバ様。なぜならこんな真っ直ぐな目をした騎士の卵をマリヤ様が許さない訳がない。特別に私の独断で決めさせてもらいます。』

サザルキ『ありがとうございます!騎士長様!』

父『馬鹿者サザルキ!この方は騎士長ではない!』

サザルキ『え?…だったら誰…』

サザルキの何もわかっていない顔を見て父親は呆れ顔で話し出した。

父『まったく…このお方は四大騎士の1人、マセル様だ。』

サザルキ『し、四大騎士!?あぁぁぁ…た、大変ご無礼をしてっしっしてしいまい!申し訳ありませんでした!マセル様!』

サザルキがずっと騎士長と思って話していた相手、それは四大騎士の1人、マセル様だったのだ。

マセル『はっはっはっ!サザルキ君!君もお兄さんに似て話してると面白いな!』

少し笑いを混ぜた後、マセル様は真剣な顔になりサザルキに語り始めた。

マセル『いいかサザルキ、君はここに横たわっているお兄さんの魂を引き継ぐんだ。君がこれから相手にするものは皆、お兄さんと一緒に戦う思いで剣を握れ。わかったな。』

サザルキはマセル様の言葉に固く拳を握り答える。

サザルキ『はい!俺は兄貴と一緒に戦います!思いは同じ…剣を握る時、それは俺と兄貴で剣を振りかざしているのと同じだ!』

マセル『その思い…忘れるなよサザルキ。では、これは君のものだ。』

そう言ってマセル様がサザルキに渡したのは、兄ルドルキが使っていた剣だった。

父『マセル様!それはいけません!剣は騎士になったものにのみ与えられるもの!まだ剣の振り方すら知らない息子に与えるものではありませぬぞ!』

マセル『大丈夫、きっと彼はこの剣に選ばれるだろう。いや、選ばれるように努力していく才能がある。私はサザルキを信じてみたい。ジルバ様、よろしいかな?』

父『四大騎士様のお決めになることに口を挟むことは絶対しません…承知致しました。サザルキ!お前中途半端なことしたらタダじゃおかないからな!いいな!』

サザルキ『わかってるよ父さん!マセル様!お気遣い頂き本当にありがとうございます!』

マセル様は大きく頷き部屋を出ていった。

サザルキはルドルキの亡骸に向けて語りかける。

サザルキ『兄貴、この剣にかけた思い、必ず俺が実現してみせる…任せてくれ…』

そうサザルキが兄に語りかけると、既に亡くなっているはずの顔が少し笑っているように見えた。

【お前ならできる!なぜなら俺の弟だからな!】

そんな風にルドルキが言っているかのようだった。

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