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ー MY REAL STAGE 〜 僕は彼女を死なせない 〜 ー

ルシア・モドロンリ

犯人探し

俺はユイカをおぶって宮殿の治癒室まで走っていく。

カスティス『ユイカ頼む…頑張ってくれよ…』

ユイカ『…』

ユイカの状態はかなり危険なものだ。

素人目でもわかる。

呼吸も浅く、意識も薄れかかっている。

そして走ること10分宮殿が近づいてきた。

街を駆け抜けていると、懸命に作業していたミリアと合流する。

ミリア『カスティス様!人々の避難は半分ほど済み、火災の鎮火作業と修復を騎士たちで行っています!…え!?』

カスティス『ミリア色々助かったよ。ありがとう。とりあえず引き継ぎ頼むな!』

ミリア『ユ、ユイカ様はどうしたのですか!?』

カスティス『シドマの奴にやられて…ちょっとやばい状況だな…とりあえず治癒室に俺は向かう!』

ミリア『私もいきます!』

カスティス『ダメだ!ミリアは街のことを!』

敵は制圧したとはいえ、まだまだ街の被害は完全に鎮静してはいない。

頭のキレるミリアが現場で作業にあたった方が間違いなくいい。

しかし…

ミリア『お姉ちゃんの近くにいたいんです!』

カスティス『え!?』

俺は唖然とした。

ユイカは3人姉妹とは聞いていたが、次女の存在は明かされていなかった。

カスティス『ミ、ミリアお前ユイカの妹なのか…?』

ミリアは泣きながら頷く。

そうと分かれば一緒に行きたいところだが、ユイカの命も街の人々の命もどちらも大切だ。

俺は考え込んでしまう。

しかしその時だった。

ユイカ『ミ、ミリア…私は大丈夫よ…それよりも街の人たちのことを守ってあげて…』

ユイカは喋ることなどできないほど弱っているのに、どこから声を絞り出しているのか。

精一杯の力を込めて言葉を放った。

カスティス『ユイカ!喋るな!お前は休んでろ!』

ミリア『お、お姉ちゃん!死なないで!』

ユイカはミリアを見てもう一度喋り出す。

ユイカ『いいミリア、私たちは騎士よ…騎士は人々を守るのが仕事…1人の命も無駄にはしてはいけないの…わかるわね、ミリア…』

ミリアは[うんうん]と頷いた。

ユイカ『そう…今できる、あなたの仕事を真っ当しなさい…』

ユイカはそう言って意識を失った。

ミリア『!?』

カスティス『いいかミリア!ユイカのためにも頼むぞ!』

ミリアは泣きながら頷き、俺は宮殿へと急いでいった。

そして宮殿に着き、治癒室へとユイカを運び込んだ。

カスティス『ハスクリス!ハスクリス!』

ハスクリス『カスティス様!街は一体どうなって…これはひどい…すぐに治癒にかかります!おい!準備しろ!』

ユイカはかなり出血しており瀕死の状態だ。

カスティス『ハスクリス、ユイカは治りそうか…』

ハスクリス『…五分五分といったところでしょうか…なんとも言えない状態です…何をすればこんなことになるのか…』

俺たちが大切にしていた、そして救い出そうとしている当人にこんな状態にされたのだ。

悲しさや怒り、いろんな感情が俺の胸に込み上げてくる。

女治癒師『ハスクリス様!ユイカ様を奥へ運びます!』

ハスクリス『わかった!すぐ向かう!ではカスティス様失礼致します!』

カスティス『頼んだぞハスクリス!』

ハスクリス『最善を尽くします!』

ユイカは治癒室の奥にある瀕死の患者を扱う部屋へと運ばれていった。

カスティス『ユイカ生きろ…諦めるな…』

俺はそう願うことしかできない。

するとそこへ。

『また酷くやられたみたいだな。』

カスティス『!?お、お前!なんでここにいるんだルキ!?』

ルキ『今四大騎士様たちが戻った。だから俺がこっちに回されたってわけだよ。』

四大騎士様達が帰ってきたということは間違いなく街の安全は確保された。

そこは一安心だが、俺の大切なパートナーのユイカは助かるかどうかの瀬戸際だ。

ルキ『ユイカは任しておけ。俺が必ず助ける。』

カスティス『ルキ…』

ルキがいてくれて本当に良かったと改めて感じた。

そしてルキは俺の背中を叩き、

ルキ『おいおい!しけたツラしてんじゃねぇよ!お前はお前がやるべきことをやれ!いいな!』

カスティス『そ、そうだな!ルキ頼んだぞ!』

ルキは俺に向け手を挙げ、ユイカのいる奥の部屋へと入っていった。

騎士『カ、カスティス様!上級騎士様達を四大騎士様がお呼びです!マリヤ様のいる上層階へお集まりください!』

俺は騎士の呼びかけにより、マリヤ様、四大騎士様達のいる上層階へ向かった。

ガチャッ

ナナミ『カスティスやっときた!みんな待ってたんだよ!』

カスティス『遅くなりまして大変申し訳ありません!』

そこには四大騎士様と上級騎士、側近たちが集まっていた。

マリヤ『カスティス、このような騒ぎでカシュパラゴノ為の行動に感謝致します。』

俺は片膝をつき、マリヤ様に向け頭を下げた。

カスティス『マリヤ様、勿体なきお言葉でございます。』

マリヤ様にご挨拶をし、上級騎士の列へ並ぶ。

シルス『カスティス、ユイカが酷くやられたようだな…容態はどのような感じだ?』

カスティス『正直かなり危険な状態です…最悪の場合は命が助かるかどうか…』

シルス『そうか…これは私たち四大騎士の失態だ…』

カスティス『それはどういう…?』

シルス様によると、シドマに偵察に向かう途中、シドマの四大騎士の1人ルジェン、そして上級騎士の4人と交戦になり、上級騎士は全て倒したものの、ルジェンを倒すことに苦戦し、マセル様が相討ちとなり、命は助かったものの、一生意識が戻らない可能性がある状態らしい。

カスティス『そ、そんな…あのマセル様が…』

シルス『実は私達が偵察に向かうという情報がどこからか漏れていた。私達の行動を全てシドマは把握した上で、思惑通りに動かされていたのだ…四大騎士が1人とはいえ、完全にこちらの負けだった…』

マセル様といえば、騎士になってからは一度たりとも負けたことがない最強の騎士だ。

剣の腕はもちろんのこと、騎士としての心意気もとても気持ちの良いものを持った、人として手本になるような方だった。

4年前俺が上級騎士になる訓練を受けている時…


〜 カスティスの回想 〜


シルス『カスティス!そんなものでは仲間を守り切れないぞ!さぁ!立て!』

カスティス『はぁはぁはぁ、はいっ!』

俺はシルス様にみっちりしごかれていた。

キンッキンッキンッキン!…ガツッ!

シルス様の蹴りが鳩尾に入る。

俺は跪き、立ち上がれなくなる。

シルス『おい!甘すぎるぞカスティス!これでは命がいくらあっても足りん!』

カスティス『カッハッ!…はぁはぁはぁ…はい!』

シルス『今のお前は基礎からやり直さないとダメなようだな…上級騎士を舐めるなよカスティス!今日はもういい…頭を冷やせ!いいな!』

カスティス『はっ!…期待にお答えできず大変申し訳ございません…』

騎士は訓練を1日最低4時間。

しかし上級騎士になることを推薦され、四大騎士様のお認めを頂くまでは1日最低8時間、本当に必要なのは10時間と言われ、この時間鍛錬を積まなければならない。

これに耐えられなければ、四大騎士の次に強い騎士となる資格はないと言われている。

今日はシルス様の機嫌を損ねてしまったため、6時間の鍛錬で終えてしまった。

俺が宮殿の中庭で座り、落ち込んだ姿をしていると、そこへ…

マセル『カスティス、訓練はどうだ?』

カスティス『マ、マセル様!お勤めお疲れ様でございます!しっかりと積ませて頂いております!』

マセル『そうか…でも今日はずいぶん早い時間に終わったな。』

カスティス『そ、それは…』

マセル様は俺の後ろ姿を見て全てを悟っていた。

マセル『シルスにこっぴどくやられたんだろ?そうなんだろ?』

カスティス『厳しくご指導頂きまして、不甲斐ない自分に少し落ち込んでおりました…こんなことをお話ししてしまい申し訳ございません!』

するとマセル様は笑って俺に話し出す。

マセル『気にするなカスティス!俺なんて以前の四大騎士様の訓練を何回も逃げ出していた!その度にこっぴどく怒られたよ!笑えるだろ!』

カスティス『え!?そうなのですか!?』

マセル『あーそうだ!辛すぎて何度も何度も逃げ出してた!この訓練キツいもんな!』

あの一度たりとも負けたことのないマセル様が訓練を逃げ出していたなんて想像もつかなかった。

カスティス『マセル様が訓練を逃げ出していた…プッ!…あ!し、失礼致しました!』

俺は思わず四大騎士様の前で笑ってしまった。

マセル『笑われて当然だよ!アッハッハッハ!』

マセル様は俺が笑ったことを怒ることもなく、むしろ俺の笑顔を見て嬉しそうだった。

そして真剣な顔になり話し出す。

マセル『だからわかるだろカスティス。全て重く捉えすぎるな。人間良い時もあれば悪い時もある。ダメな時はダメでいいんだ。逃げていい!弱音を吐いたっていい!お前の良いところはシルスも十分わかっているはずだ。』

カスティス『マセル様…』

マセル『だから明日の訓練はサボれ…ばっくれるんだ…』

カスティス『はい…え!?』

マセル『嘘だ…アーッハッハッハ!』

俺とマセル様は2人して笑い合っていた。

マセル様と話せたことで胸の支えがスッと取れた気がする。

カスティス『マセル様!お気遣い頂きありがとうございます!明日からの訓練しっかりと臨ませて頂きます!』

マセル『よし!その意気だな!頑張ってな!』

カスティス『ハイッ!』

そしてマセル様は自分の仕事へ戻っていった。

四大騎士様達は常に忙しい。

多くの案件を抱えており、さらにマリヤ様の護衛も行う。

俺のようなものに割いている時間などほとんどないといえる。

しかしマセル様は、騎士や上級騎士、上級騎士の後継者に対してとても心遣いをされている。

全てが尊敬に値するお方だ…



サザルキ『師匠様…どうしてこんなことに…』

カスティス『ちくしょう…つまり情報をシドマに流している裏切り者が、このカシュパラゴにいるってことですね…』

シルス『そういうことだ…だが私たち四大騎士と上級騎士、ここにいる者達はまずあり得ない。』

ナナミ『それはどうしてわかるのですか?』

シルス様のお話では、シルス様、マリヤ様のお二人で作戦を練り、四大騎士と上級騎士、側近達の動きをここ2週間観察していたようだ。

シドマへの視察は、ここにいる者達のみに知らせていた極秘情報。

少しでも怪しい動きが出れば、視察を取りやめ、その者を尋問し、情報を得る。

誰1人として問題なければシドマへ向かうという流れだったそうだ。

そこでは誰一人として怪しい動きを見せた者はおらず、問題なく作戦は実行に移された…しかし…

シャンク『それでは一体どこの何奴が情報を…』

シルス『信用できるのはここにいる者、それからユイカとルキのみだ。それ以外は疑ってかかる…今はこれ以上の情報漏洩を防ぐために裏切り者を探すことを任務とする。』

ナナミ『もし裏切り者を見つけたらどうなさいますか?』

リンゼル『即処刑だ!形も残らないくらいぐちゃぐちゃにしてやる!…許さない…』

シルス『…仲間の命を奪うことは絶対にやってはいけないことだが…その代償は払ってもらわないとな…』

ミチル『心苦しいですが…仕方ないですね…』

何とも言えない重い空気感が漂う。

シルス『とにかくまずは、裏切り者を見つけ出す。これを皆の任務とする!』

マリヤ『カシュパラゴの仲間達を疑うのは、けしてあってはならないことですが、どうかよろしくお願い致します。』

『ハッ!』

俺たちの次の任務は裏切り者を探し出すこと。

気持ち良くない、嫌な仕事が始まったのだった。

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