ー MY REAL STAGE 〜 僕は彼女を死なせない 〜 ー

ルシア・モドロンリ

運命の分かれ道

聡『なんで…なんでなんだよ美乃梨…』

屋敷を飛び出して走る僕の足は勝手に裏山にある湖の場所まで来ていた。

使用人としてお仕えしてたとき、落ち込むとよくここに来て考え事をしていた僕の思い出の場所だ。

湖の辺りに僕は座り込んだ。

聡『美乃梨が生きてることは確かに嬉しいよ…本当に嬉しい…でも僕のことを忘れてしまっていることが何よりも悲しいよ…』

【聡、美乃梨ちゃんはきっと聡のこと思い出すわよ。】

【あぁ、嬢ちゃんはきっと思い出すさ。】

聡『2人とも…お前らやっぱりいい奴なんだな。』

【最初っからそう言ってんだろ!】

2人と話しているとなんとなく元気が出たように感じた。

『あー、君が聡くんだね?こんにちは。』

聡『!?』

足音ひとつ立てずに、気づくと僕の後ろに男が立っていた。

こんな所で人と出会すなんてことはない。

ミルツ『驚かせてしまってすみません。私はミルツと言います。』

聡『ミルツさん?あの、僕に何か用ですか?』

【聡、こいつはやばい。気をつけろ。】

僕の中の男はそう言っていた。

しかしどこからどうみてもそんな風には見えない。

40代半ばの一般男性だった。

ミルツ『いやぁ、こないだの戦いぶり見事でした。あれが初めてですよね?素晴らしい!聡さんには是非とも cidma(シドマ)の騎士になって頂きたいと思いましてね!』

【cidma(シドマ)!?あなたcidmaの回し者ね!聡!剣を構えて!】

聡『え?どうゆうこと?cidmaって?』

【いいから構えろ聡!』

状況がよく掴めなかったが、とりあえず剣を握る。

ミルツ『いやいや、そんな物騒なものしまってくださいよ。別に戦いにきたわけではありません。私は聡さんの為を思って来たのですから。』

聡『僕の為?それはどうゆうことなの?』

ミルツ『美乃梨さん、記憶取り戻したくないですか?』

聡『取り戻せるんですか!?』

ミルツ『えぇ、もちろんですよ!ただ、あなたの答え次第ですがね。』

聡『美乃梨の記憶が取り戻せるなら何でもします!教えてください!』

ミルツの口元はニヤリと笑っていた。

怪しいと思いながらも美乃梨の記憶が取り戻せるなら。

僕の中にはそれしかなかった。

【おい聡!やめとけ!絶対罠だ!】

【そうよ聡!こんな奴の言うこと聞いちゃダメよ!】

ミルツ『それは簡単なことです!…cidmaの四大騎士、いや、それ以上の存在になりなさい。』

2人【!?】

ミルツ『それから!記憶が戻っても当分は美乃梨さんにはお会いできません。と言うのが条件です。』

聡『美乃梨に会えない…だと…』

僕は一瞬悩んだ。

美乃梨に会えないなんて生きてる意味がない。

そう思ったからだ。

だけど僕がここで断ったら、美乃梨の25年分の記憶は一生戻らないかもしれない…

だったら…

聡『美乃梨の大切な記憶が戻るなら、cidmaだろうが何だろうがやってやる…やりますよミルツさん!』

【聡ダメ!cidmaはダメよ!】

【やめるんだ聡!お前が苦しむことになるんだぞ!】

聡『2人は黙ってろ!』

ミルツ『んー?さっきから聡さん、あなた誰と話してるんですか?さてはあなたの中に何かいますねー…』

【クソッ!気づかれちまった!聡!俺たちはお前のことずっと見てるから!忘れるな!】

【聡!いいわね!私たちがついてる!】

聡『え?何?2人ともどうゆうこと?』

僕が瞬きした瞬間、ミルツは目の前に来ていた。

ミルツ『バレていますよ…』

持っていた杖で僕の頭を軽くトンッと叩いた。

その瞬間、僕の中の2人は消えてしまった。

ミルツ『さぁ、邪魔者はいなくなりました!私たちと共に参りましょう!』

僕の中の2人はどこへ行ってしまったのか。

2人とはそんなに長い付き合いではないが、美乃梨を守る術を教えてくれたこと、そして僕のことを思いやる温かい気持ちがあった。

なんだか僕は、心に大きな穴が空いたように思えた。

ミルツ『おっと!美乃梨さんの記憶だ!そうでしたね!』

そう言うとミルツは呪文のようなものを唱え始め、杖で僕を目掛けて光のようなものを浴びせた。

ミルツ『さぁ、これで美乃梨さんの記憶は元どおりですよ。』

聡『え?これだけ?本当にこれで美乃梨の記憶が戻った…証明してください!一回でいい…美乃梨に会わせてください!』

ミルツ『それはいけませんねぇ。まぁ電話ぐらいならよしとしましょうか。』

そう言うとミルツは何処からともなくスマートフォンを手に取り出した。

一体このミルツという男は何者なのか。

ミルツ『さ、お屋敷に掛けましたよ。確認してみてください。』

僕は恐る恐るスマホを受け取り、屋敷の者に確認し、すぐに美乃梨へと電話が繋がった。

美乃梨『聡!聡なの!?』

聡『美乃梨!』

僕は美乃梨の声を聞いて涙が溢れた。

聡『僕のことわかる?』

美乃梨『当たり前じゃない!…聡…早く会いたいよ…』

聡『美乃梨…本当に良かった…俺も早く会いたい…美乃梨の体温を感じたいよ…』

美乃梨『今から会いに来て!それが無理なら私が会いに行く!』

僕はミルツの方を見た。

ミルツの口元はNOだった。

聡『…それが…無理なんだ…』

美乃梨『そっかそっか…ね!明日なら会えるかな!いつ会えるの?私すっかり元気になってね!』

聡『…しばらく会えないんだ…』

美乃梨『え?どうゆうこと?しばらくって?…』

聡『それが…』

パチンッ! ボフゥーン

ミルツが指を鳴らした直後スマホは煙と共に消えてしまった。

聡『話の途中だったのに!どうして!』

ミルツ『情が入ると大変ですからねぇ。でもこれで証明できたでしょ?記憶が戻ったって?』

確かに美乃梨の記憶は間違いなく戻っていた。

だけどこれからは美乃梨のいない世界。

僕の生きる意味って…あるのか…

ミルツ『さぁ、聡さん行きましょうか、cidmaの世界へ。』

聡『…』

僕の第二の人生が幕を開けたのだった…

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