ー MY REAL STAGE 〜 僕は彼女を死なせない 〜 ー

ルシア・モドロンリ

美乃梨を守りたい!

バサッ…

『え?』

その2人は剣を振り下ろした。

そして僕は気づく。

そう、自分の両腕がないことに…

斬られるってこんなに痛いものなのか。

今までに味わったことのない痛みだ。

虐待の時に痛い思いは嫌ってほど味わってるからわかってるものだと思ってたけど、これはレベルが違う。

肩から先がなくなり、大量に出血をしている。

僕…死ぬんだ…

意識が朦朧とする中、その2人の口もとは笑っていた。

【お前が選ばれるかはお前次第だ】

【あなたが選ばれるかはあなた次第よ】

『こいつら何言ってんだろ…』

頭がおかしいやつってのはこういう奴らのことを言うのだろう。

でもいいや。

これで美乃梨のところへいくことができる。

聡『今いくからね美乃梨…』

目の前がどんどん暗くなっていく。

真っ暗になり何も見えない、聞こえない、何も感じなくなった。

僕は死んだんだ…

その時、僕は鳥のさえずりで目が覚めた。

聡『…あれ?なんで死んでないんだ?…僕の腕!?…あれ?ちゃんとある…夢…だったのか…』

でも確かにあの痛みは記憶にある。

今まで味わったことのない痛みだ。

あれは一体…

僕は少し考えた後美乃梨の事を思い出した。

聡『美乃梨!』

美乃梨のもとへ駆け出していく。

そして病室の扉を開けると、そこには死んだはずの美乃梨に注射を打とうとする医者が立っていた。

聡『先生!美乃梨、美乃梨はどうなってるんですか!?』

医者『美乃梨さんは、残念ながら亡くなってしまっています。』

僕は疑問に思った。

なぜ死んでいるはずの美乃梨に注射を注そうとしていたのか?

聡『でも先生、なんで美乃梨は死んでいるのに注射を打とうとしてるんですか?』

医者『それは…亡骸から出る体液のサンプルを頂こうと思ってだね!』

聡『注射には何かの液体が入ってますが、それで美乃梨の身体から体液を抜くつもりだったんですか?』

そう言うと医者は黙り込んだ。

聡『先生!本当は何が起こってるか教えてください!先生!!』

医者『あぁーー!黙れ黙れ!』

僕は先生の豹変ぶりに驚いた。

昨日まで、いや、さっきまで温厚で優しそうな医者が全く違う人になったかのようだった。

しかし医者は頭を掻きむしり、少し騒いだ後、落ち着きを取り戻し僕にこう言った。

医者『聡さん申し訳ありません。ちょっと最近はずっと働き詰めで、少し疲れてたみたいだ。美乃梨さんを検査させて欲しいから一度部屋を出れるかい?』

冷静になった先生をみて、『はい』と頷き、部屋を出ようとした。

しかしその時、昨日屋上で出会った男の声が耳元に聞こえた。

【右腕を頭の上に挙げろ】

はぁ?と思って僕は心の中で呟く。

聡『誰が挙げるかよ』

【いいから早く挙げろ!今すぐ!】

ふざけんなと思ったが、男の勢いと何か言葉にできない思いを感じ、パッと右腕を頭の方へ上げてみる。

キーン!…

え?と上を見てみると僕は昨日男が持っていた剣を手にしていた。

そして何かすごい衝撃を感じる。

聡『いってぇー。なんなんだよ。しかもこの剣昨日の…』

『その剣どこで手に入れた?』

声が聞こえて後ろに振り返ると、そこにはこちらを睨む先生がいた。

聡『先生、あ!これなんだろう?なんか急にもってたって言うかぁー。あっははぁ。』

医者『お前。cidma(シドマ)の…いや、goshparago(カシュパラゴ)の守護者か?』

何を言ってるのか全く僕には理解できなかった。

シドマ?カシュパラゴ?何のことだ?

医者『まぁいい。とにかくコイツの命さえ奪えば終わること。』

そう言うと医者は腕を工事現場でよく見るドリルに変えて、美乃梨に襲いかかった。

僕は何が起こってるのかわからなかったが、美乃梨を守りたいと言う思いから身体は勝手に動いた。

キーンッ。

剣でドリルを防ぐ。

医者『邪魔をするな!』

聡『邪魔だぁ!?お前こそ美乃梨から退くんだな!!』

僕は剣を使ったことなんてなかったが、ガムシャラに振り回す。

【テキトーに振り回しててもダメ!まずは美乃梨ちゃんを守りたいって強く心に念じるの!】

美乃梨が守れるならどうにでもなれと女の言葉を信じて心に強く念じた。

すると左手に女が持っていた剣が出てきた。

【おい聡!俺の指示通り動け!いいな!】

こいつのことはどうも気に食わないが、今は男の指示に従うことにした。

【聡!次は私たちと一つになることを心に強く思って!いい!?】

聡『わかった!』

医者『何をごちゃごちゃ言ってやがる!まずはお前から殺ってやるよ!』

【いくぞ!】

【いくよ!】

聡『やってやる!…美乃梨を守る!』

わけもわからず美乃梨を守る戦いが突如として始まったのだった。

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