ー MY REAL STAGE 〜 僕は彼女を死なせない 〜 ー

ルシア・モドロンリ

彼女は死んでしまった

彼女は死んでしまった。

僕は世界一の不幸者…

小さな頃に虐待を受け、学校ではいじめられ、12歳の時に親は離婚、離婚と同時に親に捨てられて孤児院へ。
僕は容姿が良く、頭も良かった為、孤児院の偉い方が僕を若い男好きのお金持ちに高値で売りつけた。

『僕、今日から私が可愛がってあげるからね。』

売りつけられる時に隙を見て逃げ出した。

『おい!待ちなさい!』

必死で走り、山裏に逃げ込む。

追っては来たが、なんとか振り切った。

聡『なんで、なんで僕の人生こんななんだよ…』

走り続けて、もうここはどこなのかもわからなくなっていた。

ザァー。

雨が降ってきた。

僕は力尽き、倒れ込む。

聡『あぁ、やっと死ねる…よかったぁ…』

そうして目を閉じた…



深い眠りから覚め、ゆっくり目を開けると僕はベッドの上。

隣を見ると知らない女の子が僕を見ている。

聡『ここは…』

美乃梨『あたしのお家よ。あなたどこからきたの?』

聡『僕は…町外れの孤児院から来た…』

美乃梨『じゃあそこに電話して迎えに来てもらおっか?』

僕は必死で訴えた。

聡『いやだ!戻るんだったら死んだほうがマシだ!…っていうか死なせてくれ…殺してくれ…』

彼女は頭にクエッションマークをつけていたが、ただ事ではないことを察した。

普通なら怪しむのだが、彼女は驚くべきことを口にする。

美乃梨『それじゃあ…あなたうちに仕えなさい。』

仕える?僕はどういう意味だかわからなかったが、よく見ると部屋が異様に広い。

そして何より彼女の横にはボディガードのような黒服の男が何名かいた。

そう、彼女はどこかのお偉いさんの娘だったのだ。

偶然の出会いにしては出来過ぎな気もしたが、まだ小さかった僕はなんの迷いもなく彼女のもとに仕えることになった。

そして時は経ち、仕えること早10年。

僕はすっかり大人になっていた。

美乃梨『聡、話があるんだけど。』

聡『はい!美乃梨様!どうされましたか?』

美乃梨『聡、あたし聡のこと好きなの。』

聡『はい!僕も美乃梨様のことが1番でございます!』

美乃梨『使用人としてじゃなくて、1人の男としてだよ…』

聡『はい!…え?えぇ、えー!?』

美乃梨のその一言をきっかけに僕らは付き合い始めた。

衝撃的な形で始まった僕らの関係。

戸惑いながらも美乃梨とはたくさんの思い出を重ねることができ、3年の時が経とうとしていた。

僕も彼女も、偶然に同じ25歳。

初め美乃梨のお父様とお母様は猛反対。

美乃梨は良い企業の社長さんとの結婚を予想されていたが、僕の10年間の使用人としての誠実な姿勢と彼女の意思の固さに根負けし、僕らは来月、結婚することとなった。

僕にこんな幸せがあって良いのか。

ここに来てからは、大変で辛い日々だったが、人間として大きく成長できたし、そして何より彼女という生きる希望を見つけることができた。

何不自由ない、ただただ幸せな毎日で、これからもそれが続いていく、これからもっと幸せになっていくのだ…そう思っていた。

その時までは…

聡『それじゃ、そろそろ帰えろっか。』

美乃梨『うん!うちに帰ろ!うちまで競争だよ聡!』

そう言って彼女は駆け出す。

何気なく横断歩道を渡ろうとすると、すごいスピードで車が右折してきた。

『危ない!』

『え?』

ププーッ…ドカーン!!!

人は簡単に命をおとす。

それは50年後、60年後、いや、今この時かもしれない。

この世界では1秒に約1~2人が亡くなっている。

テレビをつければ必ず誰かが命をおとしている。

そして彼女もその1人に…

医者『19時12分…御臨終です…』

西崎 母『美乃梨ー!どうしてなの!どうしてこんなことになっちゃったのよ!…』

聡『み、美乃梨?嘘だよな?目を開けてくれよ…美乃梨…美乃梨!』

西崎 父『…』

【西崎 美乃梨(にしさき みのり)】は僕【二川 聡(ふたかわ さとし)】の彼女だ。



僕がこの世界で生きる意味を教えてくれた女性。




生きる価値を生み出してくれた大切な女性。



大好きな女性…




この時僕は、また生きる意味を見失った…




聡『お父様、お母様、少し外の風に当たってきてもよろしいでしょうか?…』

西崎 父『あぁ、行っといで。』

西崎 母『…』

僕は病室を出ると、屋上へ向かった。

【美乃梨…待っててね…】

屋上へ着くと僕は早速柵を乗り越えて、飛び降りようとする。

聡『たけーなぁ…ここなら死ねる…』

僕はなんの迷いもなかった。

なぜなら僕の人生はもうとっくの昔に本当は終わっていたのだから…

さぁ…いこう…

しかし、思いもよらないことが起こる。

【死ぬのか?】

僕は閉じていた目を開け、右を見た。

そこには黒いコートにフードを被った男?が立っていた。

僕は何の疑いも持たず、『はい』と答える。

左にいた白いコートにフードを被った女?が話し出す。

【そっかぁ。だけど彼女はどうするの?残したまま一人でいっちゃうの?】

僕は言っている意味がわからなかった。

聡『あの、どういう意味ですか?』

【それは…こういうことだ。】

【それはねぇ…こういうことかなぁ。】

そう言うとその男?と女?は見たこともない剣をどこからともなく出し、僕の方へ同時に振りかざしたのであった。

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