インペリウム『皇国物語』
4話 王族への招待
馬車は一時間くらいで目的の城下町にたどり着いた。レンガと木造建築を織り交ぜたような作りの住宅、商業施設が目立ち、街灯のようなものも散見されるのどかな風景。私と同年代の子供が遊ぶ声、街中で噂話や市場で小売りを行なう声。あふれる声に街は活気に満ちて、街そのものが生きているような感覚を印象つけられた。
そして城下町を抜け、遂に王宮へと続く門をくぐり抜ける。黄金の装飾と街の石造りとは違う、重厚感がありながらも日の光に反射するような輝きを放つ大理石で作られた大きな柱が何本も連なり、その奥に一段と開けた広場に美しい噴水。豪邸なんて規模じゃない、本当にどこかの国の王族のお城としか形容できない広大さがあった。
「何この広さ!!柱もたくさん!!噴水も!!」
めったにお目にかかる事ができないような内装に興奮気味になって乗り出す。
「ご満悦のようで何よりです」
「さぁ、到着いたしました。ここがドラストニア王宮前広間。いわば玄関のようなものです」
本当に小学生みたいな感想をそのまま言っている私にセルバンデスさんはそう答えた。
「こんな大きなところに住んでるのですか!?」
「王宮で生活されているのは高官の中でも十数名、メンテナンスを兼ねた従士に執政が数十名。そして王族の方々…と入っても現在王族はロゼット様を含めもう一方と…」
「私がこんなすんごいお屋敷に住むんですか!?」
絶対に落ち着かない、最初の私の本音がこれであった。けどこんな豪華な王宮、きっとこの先、生きてても一生暮らすことなんてないだろうし。ちょっとくらいは、といつの間にか来た時の恐怖や得体のしれなさよりも好奇心の方が勝っていたことに気づかないでいた。
「その子が継承者第一位の子か。もっと妙齢な子を期待していたんだけど。まさかこんなおちびちゃんなんて想像もしてなかったよ」
私とセルバンデスさんに話しかける陽気な声。炎のように赤い髪に私とは対照的な浅黒い肌、立派な正装にも関わらずどこか掴みどころのなさそうな雰囲気を持った男性が近づいてきた。
「ラインズ様、ロゼット様は間接的な妹君でございます。発言にはご注意を」
「血は繋がってないんじゃなかったか?俺は母親の連れ子だし…」
「ご自重ください…!!ただでさえ今はそのような事…」
「わかってる、悪かったよ」
あまり波風を立てたくないのはわかったけど、私とこの男性はここでは兄妹ということらしい。
「あれ?てことはこの人も王位継承者っていうのでは…?」
ふと疑問を漏らす。しかも私と違って年も見たところ高校生か大学生くらい十八歳かそれくらいの年齢に見えるし、王様とかだと男性ばかりをイメージしてしまうし。どうして私が継承者第一位なのだろうか。
「そうだよ、って言っても俺は継承する気ないからな。てことで嬢ちゃんになってもらいたいんだよ」
「あ、俺はラインズアーク・オズ・ドラストニアだ。自己紹介が遅れてごめんね。」
「あ…よろしくお願いします。ドラストニア…って」
ドラストニア…確かこの王国の名前もそうだった。
王国の名がそのまま王名として使われるのはあまり見たことないけど、ここでは普通のことなのかな?
「俺たちの名前は一応ドラストニアの名を冠してるけど、みんながみんなそういうわけじゃないんだ」
「ドラストニアの名は最初にこの国を統治された一族から来ていますが、先代とは血族関係はございません。偶然の一致というところでしょうか」
歴史に疎い私にとっては頭が痛くなる話をされたので話題を逸らすために私自身の今後を聞いてみることにした。
「それで私はこれからどうなるんですか…?」
「まずは王宮案内を致します。それから王位継承にあたり…」
セルバンデスさんが説明を始めると間に入るようにしてラインズさんが遮る。
「そんなもの後でもいいだろ、王宮案内しながら食事の用意まで待ってよう」
「しかしラインズ様…!」
セルバンデスさんの静止を躱し強引に私の手をひき王宮へと連れられる。ラインズさんも皇子ということもあって王宮を王子様に案内されるというシチュエーションに内心はドキドキと胸の鼓動が高鳴っていた。
◇
「ほぇー…やっぱり中もすごい装飾品だらけで…広いし天井も高い」
内装もまさに御伽話に出てくるようなお城そのものといっていい。洋館にあるような渡り廊下でそれぞれのフロアへと通じる作りになっているみたいであった。
「うちはこれでも質素な方だよ。金持ちだとうちの城下町程の広さを持つ王宮だってある」
笑いながらラインズさんは答えていたけど、馬車で通った城下町もちょっとした繁華街並みの広さだったような…。
「王宮の中心区画は主に政庁、謁見の間、兵の寝床、食堂」
「東区画が鍛錬場、鍛冶場、資材倉庫など軍事関連が主で」
「西区画が書物庫、閣議室、会議室や細かい政治関係の区画」
「北区画は俺たち王族の特別区画。そこに俺たちの寝床もあるよ」
それぞれの区画について簡単に説明を受けていた。
王族の特別区画に案内され、一際大きな扉に案内される。
「ここが君の部屋」
部屋の広さは40畳ほどかそれ以上だろうか、寝具も家具屋さんで見たことないくらいの大きさで
更にいくつか扉もありそれぞれ書斎、庭園、衣装部屋、天文台等興味のそそるものが数多く存在していた。
「これ全部私が使うものなんですか!?」
「ああ、好きに使ってくれ。セバスに足りないものは用意させるから」
「セルバンデスさんですか…?あの人は…」
ふと疑問に思ったけど、ゴブリンを重用しているのはこの国くらいのものだと彼は言っていた。確かに人と何ら変わりなく話す姿は不思議に感じた。
「セバスはちょっと事情があってウチで働いてくれてる。まぁゴブリン相手って妙な感覚かもしれないがアイツは優秀だよ」
そう答えるラインズさんの表情は少しだけ固く見えた。
「そうだ俺はちょっと会議に出てくるから自室を好きに見ててくれ」
「あ、はいっ!」
そう言うとラインズさんは慌てて出て行き、私は一人この広大な部屋に取り残されてしまった。
そして城下町を抜け、遂に王宮へと続く門をくぐり抜ける。黄金の装飾と街の石造りとは違う、重厚感がありながらも日の光に反射するような輝きを放つ大理石で作られた大きな柱が何本も連なり、その奥に一段と開けた広場に美しい噴水。豪邸なんて規模じゃない、本当にどこかの国の王族のお城としか形容できない広大さがあった。
「何この広さ!!柱もたくさん!!噴水も!!」
めったにお目にかかる事ができないような内装に興奮気味になって乗り出す。
「ご満悦のようで何よりです」
「さぁ、到着いたしました。ここがドラストニア王宮前広間。いわば玄関のようなものです」
本当に小学生みたいな感想をそのまま言っている私にセルバンデスさんはそう答えた。
「こんな大きなところに住んでるのですか!?」
「王宮で生活されているのは高官の中でも十数名、メンテナンスを兼ねた従士に執政が数十名。そして王族の方々…と入っても現在王族はロゼット様を含めもう一方と…」
「私がこんなすんごいお屋敷に住むんですか!?」
絶対に落ち着かない、最初の私の本音がこれであった。けどこんな豪華な王宮、きっとこの先、生きてても一生暮らすことなんてないだろうし。ちょっとくらいは、といつの間にか来た時の恐怖や得体のしれなさよりも好奇心の方が勝っていたことに気づかないでいた。
「その子が継承者第一位の子か。もっと妙齢な子を期待していたんだけど。まさかこんなおちびちゃんなんて想像もしてなかったよ」
私とセルバンデスさんに話しかける陽気な声。炎のように赤い髪に私とは対照的な浅黒い肌、立派な正装にも関わらずどこか掴みどころのなさそうな雰囲気を持った男性が近づいてきた。
「ラインズ様、ロゼット様は間接的な妹君でございます。発言にはご注意を」
「血は繋がってないんじゃなかったか?俺は母親の連れ子だし…」
「ご自重ください…!!ただでさえ今はそのような事…」
「わかってる、悪かったよ」
あまり波風を立てたくないのはわかったけど、私とこの男性はここでは兄妹ということらしい。
「あれ?てことはこの人も王位継承者っていうのでは…?」
ふと疑問を漏らす。しかも私と違って年も見たところ高校生か大学生くらい十八歳かそれくらいの年齢に見えるし、王様とかだと男性ばかりをイメージしてしまうし。どうして私が継承者第一位なのだろうか。
「そうだよ、って言っても俺は継承する気ないからな。てことで嬢ちゃんになってもらいたいんだよ」
「あ、俺はラインズアーク・オズ・ドラストニアだ。自己紹介が遅れてごめんね。」
「あ…よろしくお願いします。ドラストニア…って」
ドラストニア…確かこの王国の名前もそうだった。
王国の名がそのまま王名として使われるのはあまり見たことないけど、ここでは普通のことなのかな?
「俺たちの名前は一応ドラストニアの名を冠してるけど、みんながみんなそういうわけじゃないんだ」
「ドラストニアの名は最初にこの国を統治された一族から来ていますが、先代とは血族関係はございません。偶然の一致というところでしょうか」
歴史に疎い私にとっては頭が痛くなる話をされたので話題を逸らすために私自身の今後を聞いてみることにした。
「それで私はこれからどうなるんですか…?」
「まずは王宮案内を致します。それから王位継承にあたり…」
セルバンデスさんが説明を始めると間に入るようにしてラインズさんが遮る。
「そんなもの後でもいいだろ、王宮案内しながら食事の用意まで待ってよう」
「しかしラインズ様…!」
セルバンデスさんの静止を躱し強引に私の手をひき王宮へと連れられる。ラインズさんも皇子ということもあって王宮を王子様に案内されるというシチュエーションに内心はドキドキと胸の鼓動が高鳴っていた。
◇
「ほぇー…やっぱり中もすごい装飾品だらけで…広いし天井も高い」
内装もまさに御伽話に出てくるようなお城そのものといっていい。洋館にあるような渡り廊下でそれぞれのフロアへと通じる作りになっているみたいであった。
「うちはこれでも質素な方だよ。金持ちだとうちの城下町程の広さを持つ王宮だってある」
笑いながらラインズさんは答えていたけど、馬車で通った城下町もちょっとした繁華街並みの広さだったような…。
「王宮の中心区画は主に政庁、謁見の間、兵の寝床、食堂」
「東区画が鍛錬場、鍛冶場、資材倉庫など軍事関連が主で」
「西区画が書物庫、閣議室、会議室や細かい政治関係の区画」
「北区画は俺たち王族の特別区画。そこに俺たちの寝床もあるよ」
それぞれの区画について簡単に説明を受けていた。
王族の特別区画に案内され、一際大きな扉に案内される。
「ここが君の部屋」
部屋の広さは40畳ほどかそれ以上だろうか、寝具も家具屋さんで見たことないくらいの大きさで
更にいくつか扉もありそれぞれ書斎、庭園、衣装部屋、天文台等興味のそそるものが数多く存在していた。
「これ全部私が使うものなんですか!?」
「ああ、好きに使ってくれ。セバスに足りないものは用意させるから」
「セルバンデスさんですか…?あの人は…」
ふと疑問に思ったけど、ゴブリンを重用しているのはこの国くらいのものだと彼は言っていた。確かに人と何ら変わりなく話す姿は不思議に感じた。
「セバスはちょっと事情があってウチで働いてくれてる。まぁゴブリン相手って妙な感覚かもしれないがアイツは優秀だよ」
そう答えるラインズさんの表情は少しだけ固く見えた。
「そうだ俺はちょっと会議に出てくるから自室を好きに見ててくれ」
「あ、はいっ!」
そう言うとラインズさんは慌てて出て行き、私は一人この広大な部屋に取り残されてしまった。
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