新しい仲間に神龍が。

　飛ぶ事10分。徒歩より圧倒的に早く町に着いた。既に町の復興が進んでおり家が数個出来上がっていた。

「これは酷いですね」

　神龍フーレスティエが言う。まだ、復旧作業がされていない木々がなぎ倒され灰となっている荒れ地の方を見たのだろう。

「「「始祖様、おかえりなさい」」」

　俺達が見つけた吸血鬼達が集まってくる。ドラゴンの巣に喧嘩しに行ったんだから皆心配したのだろう。呼ぶ前に次々に集まって来る。

「••••••。よし。全員いるな。とりあえず、こいつを紹介する」
「はじめまして。私はソルティア様の眷属の神龍フーレスティエと申します。この度は私の部下が多大なる迷惑を掛けた事を深くお詫びいたします。お詫びの品として反逆者の死体を納めさせて頂きました。」

　神龍フーレスティエの挨拶に皆、口を開け、ポカンとしている。それもそうだろう。いきなり女神ソルティアの眷属の龍が来たのだから。案外驚かないと思っていたアクアも驚いている。

　数秒、皆放心状態になったがいち早く理解したクラーマがひざまずく。

「神龍フーレスティエ様の謝罪、確かに受け取らせて頂きました」

　その言葉に我に返った吸血鬼達もひざまずく。クラーマの言葉を聞いた俺は少し驚いた。いつものだらけた表情から凛々しい顔立ちになり、一瞬こいつ誰だって思ってしまった程だ。

「えっと、彼は今日から俺達の事を手伝ってくれるらしいから仲良くするんだぞ」
「「「分かりました！」」」

　吸血鬼達がいい返事を返してくれる。偉大なる女神？の眷属と共に働けるから張り切っているのだろう。

「それじゃあ、フレースティエさんの家を作るか。クラーマはヴァンパイア達の家を作ってやれ。アクアは俺と一緒に来い」
「「分かりました」」


　数日が経過しフレースティエさんは結構吸血鬼に馴染んだ。最初は皆フレースティエ様とか言っていたけど今ではフレースティエを略してティエさんと呼ばれている。

「あの、トア様。これは罰になっていないような」
「なってないな。まぁ、ティエさんが居ればこの町も安全だし守護獣的な役割でいいんじゃない？」
「そ、そうですか」

　意外と馬車馬のようにこき使われないので天罰が恐いのだろう。そこまで恐れる天罰一回見てみたいな。でもなぁ。このままティエさんが不穏がられても仕事に支障が出るだけだし何か対策を考えないとな。

「そうだ。例えば、ティエさんに天罰が下ったら俺がこの役割をやめるってのはどうだ？女神ソルティアもヴァンパイアの事は気に入ってるみたいだしな」
「それは••••••」
「よし、そうしよう。ティエさんは女神ソルティアと連絡とれるか？」

　神龍フレースティエは少し嫌そうな顔をしながら顔を縦に振る。

「じゃあ、女神ソルティアに伝えておいてくれ」
「ソルティア様は神獣の見たものは全て伝わるようになっているのでもう既に伝わっていると思います」

　女神ソルティアは意外と地上の事にも目を向けてるようだな。まぁ、天罰は厳しいけど、自分の創ったゲームの世界だから大切にしているのだろう。

「なら、大丈夫だな。だけど、ちゃんと働いてもらうからな」
「はい。分かりました」

　嬉しそうに神龍フレースティエは頷く。