初心者スキル【言語理解】の横に“極致”と載ってるんだが
45話
「なんだ、あれ……?!」
誰かが、掠れた声でそんな言葉を漏らす。
──目の前の光景に、『地精族』は言葉を失っていた。
『黒森精族』の操る蒼龍が、炎の顎でモンスターを呑み込み、炎の尻尾でモンスターを焼き払う。
その近くで、ハーピー種の『獣人族』が銀色に輝く脚でモンスターを蹴り殺している。
だが──特に目を引くのは、不気味なお面を被った黒髪の『人類族』だろう。
手から蒼色の熱線を放ち、遠くのモンスターを焼き殺した──かと思うと、今度は雷の斬撃が飛び、近寄るモンスターを真っ二つにぶった斬る。
少年を囲み、攻撃のタイミングを計るモンスター──と、いきなり暴風が吹き荒れ、風の刃がモンスターを斬り裂き、バラバラにして吹き飛ばした。
上空にいるモンスターが、少年に向かって攻撃を仕掛けようとするが──いきなり地面に吸い寄せられたかのように激突し、身動きが取れなくなる。
と、気が付けば空に青色の魔法陣が浮かんでおり──魔法陣から放たれる水の弾丸が、必死にもがくモンスターの体を撃ち抜いた。
「何なんだ、あの『人類族』は……?!」
「『黒森精族』と『獣人族』も化物みたいに強いぞ……?!」
驚愕の声を漏らす『地精族』……と、暴れ回る三人のデタラメな存在を見て、一人の『地精族』がバカ笑いを上げていた。
「ひっひひひひひひひひひひひひっ! ひーひひひっひひひひひひひっ! ひー……あぁヤッベェなぁあのボウズぅ! あんな強かったのかよぉ?!」
「笑いすぎだエルグ……と言っても、ワシも笑いしか出てこないがな……」
笑うエルグボルグの隣で、エルレッドがどこか困ったような笑みを浮かべる。
「あぁ間違いねぇ! あのボウズぁ英雄だぁ! 英雄になる存在だぁ! なぁ、そう思うだろぉアニキぃ?!」
「……うむ……そうかも知れんな」
再び放たれる蒼色の熱線を見ながら、鍜冶職人の兄弟はそんな事を呟いた。
────────────────────
「『蒼熱線』」
聡太の手の前に蒼色の魔法陣が浮かび上がり──そこから蒼い熱線が放たれる。
直線上にいたモンスターが一瞬で焼き消え──手を横に動かし、横にいるモンスターも纏めて焼き飛ばした。
「コイツら程度なら、【特殊魔法】だけでどうにかなるな」
モンスターの大群に囲まれるが、余裕そうな表情を崩さない。
この程度なら、刀を使う所か──【憤怒に燃えし愚か者】を使うまでもない。
「──オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンッッ!!」
──突如聞こえた咆哮に、聡太が鋭い瞳をさらに細めた。
咆哮だけでもわかるほどの、強者の覇気。
間違いない──今の咆哮の主が、このモンスターの大群のリーダーだ。
「だが……」
強い。それこそ──聡太が全力で戦っても、勝率は五分五分だろう。
ミリアには『地精族』の守護を頼んでいる。ハルピュイアは、好きに暴れてリーダー格のモンスターを討伐している。連れて行く事はできないだろう。
それに──ミリアとハルピュイアを連れて行っても、足手まといになる可能性の方が高い。
「一人で行くか──『剛力』ッ」
全身の筋力を底上げし──【気配感知“広域”】を発動させる。
──気配の主は、かなり遠くにいる。
何というか……独特的な気配だ。
本能的に恐怖を感じると言えば良いのだろうか……よくわからないが、『十二魔獣』に近い気配を感じる。
だが……どこか『十二魔獣』とは違うような……?
「ま、行けばわかるか」
脚力を爆発させて、モンスターの大群の間を駆け抜ける。
その後を追い、あるいは進路に立ち塞がり、モンスターが聡太に攻撃を仕掛けるが──
「──『水弾』」
上空に青い魔法陣が浮かび──水で作られた弾丸が、超高速で放たれた。
聡太の動きを止めようとしたモンスターは──頭や胸を水の弾丸で撃ち抜かれ、次々に倒れ臥していく。
「チッ──邪魔だ死ね。『黒重』」
立ち止まり、空を飛ぶモンスターに手を向けて詠唱。
口から炎や光線を放とうとしていたモンスターは──不可視の重力に襲われて地面に沈んだ。
「潰れろ」
聡太の足元に浮かぶ黒色の魔法が、複雑な模様を描いた──その次の瞬間、モンスターの群れが重力に押し潰され、身体中から血を噴き出して絶命した。
フェキサーとの戦いで、『複数術士』が使える魔法の複重強化を感覚的に覚えた聡太は、複重強化の練習をしながらモンスターを討伐していた。
簡単に説明をするなら、複重強化というのは──魔力の入る器を大きくする、という事だと思えば良い。
普通の魔法でも、魔力を多く込める事はできる。
だが──その魔力を受け止める器には限界が存在する。
複重強化する事により、魔力の器をさらに大きくする──それにより、魔法の力を上げるのだ。
もちろん、魔力を多く持っている事が前提である。でないと、そもそも魔力を多く込める事ができないのだから。
「よしよし……感覚的には掴めてきたな」
息絶えたモンスターを見下ろし──バッと、何かを感じたかのように顔を上げた。
──先ほどの咆哮の主が、移動を始めた。
それも、真っ直ぐ聡太の方に向かってくる。
「……誰も、近くにいないな……?」
ミリアとハルピュイアが遠くにいる事を確認し──聡太が全身から鋭い覇気を放ち始める。
──聡太の【特殊魔法】は、近くにいる者にも影響を与えるほど強力な魔法だ。
ミリアやハルピュイアが近くにいると、巻き込まないように気を使わなければならないが……近くに誰もいなければ、好きにぶっ放す事ができる。
「さあ……戦るか」
左腰から『紅桜』を右手で抜き、後ろ腰から『黒曜石の短刀』を左手で逆手に構える。
「──あれ? きみ、『地精族』じゃないよね?」
そして──ソイツは姿を現した。
短くキレイに切り揃えられた灰色の髪に、黄色と緑色の色違いの瞳。
頭部の右側から湾曲した大きな角が生えており……幼い外見に似合わぬ角の存在は、かなり異様に見える。
「……誰だ、お前」
「うーん……それなら、きみこそ何者だって話だけど?」
ポリポリと角を掻き、ソイツは困ったような苦笑を見せる。
今の聡太の格好は──見慣れぬ者が見れば、間違いなく変な格好に見えるだろう。
緋色の刀と漆黒の短刀を握り、顔を赤い紋様が描かれた奇妙なお面で隠している。さらに、全身を白いローブで包んでおり、体格すらもわからない。
ソイツが聡太の姿に疑問を持つのも、無理はないのかも知れない。
「俺の事はどうでもいいんだよ……お前が、このモンスターの大群を操ってる黒幕だな?」
「うん。そうだよ」
コクンと頷くソイツの言葉に、聡太は警戒心をさらに深めた。
「……否定、しないんだな」
「なんで? だって、きみを殺せば問題ないでしょ?」
なるほど。聡太に負ける気がないらしい。
しかも、聡太を殺すと言った。
つまり──敵。
「失せろ──『黒重』ッ!」
「おっ──」
「『蒼熱線』ッ!」
不可視の重力を発動させた──瞬間、聡太は『黒曜石の短刀』の切っ先をソイツに向けた。
『黒曜石の短刀』の前に蒼色の魔法陣が浮かび上がり──そこから、螺旋状に渦巻く蒼い熱線が放たれる。
初見の相手なら、間違いなく対処できない凶悪コンボ。
──今までは、そうだったのだが。
「──やるね」
「はっ──?」
『黒重』の影響を受け、ソイツが少し体勢を崩し──その口元に歪んだ笑みが刻まれた。
そう認識した──次の瞬間、ソイツは軽々とその場から飛び退き、聡太の『蒼熱線』を簡単に回避する。
「危ない危ない……『下位魔獣』だったら、簡単に殺られてたかも知れないね」
「お前……マジで何者だ」
【憤怒に燃えし愚か者】をいつでも発動できるように構え、驚愕を押し殺して問い掛ける。
聡太の言葉を聞いたソイツは──ニイッと邪悪な笑みを浮かべた。
「自己紹介がまだだったね。ぼくは『十二魔獣』の一匹、『上位魔獣』の《魔物を従える魔獣》さ」
その自己紹介を聞いた──瞬間、辺りに大きく脈打つ音が響いた。
──ドッグンッ! ドッグンッ! ドッグンッ!
「ああ……『十二魔獣』だったのか……」
露出している肌に、赤黒い紋様が刻まれていく。
膨れ上がる殺気を前に──ポーフィは心底楽しそうに笑みを深めた。
「スゴいね……! きみ、何者なんだい?」
「お前らに名乗る名前なんてねぇよ……『十二魔獣殺し』とでも呼べ」
「『十二魔獣殺し』……? ……まさか、テリオンとパルハーラを殺したのは──」
「俺だ……その後に、フェキサーも殺してるからな? 次はてめぇだ」
「いいね……! 久々に楽しそうな相手だよ」
辺りをモンスターの大群が囲む中。
『十二魔獣殺し』と《魔物を従える魔獣》が。
──今、激突した。
誰かが、掠れた声でそんな言葉を漏らす。
──目の前の光景に、『地精族』は言葉を失っていた。
『黒森精族』の操る蒼龍が、炎の顎でモンスターを呑み込み、炎の尻尾でモンスターを焼き払う。
その近くで、ハーピー種の『獣人族』が銀色に輝く脚でモンスターを蹴り殺している。
だが──特に目を引くのは、不気味なお面を被った黒髪の『人類族』だろう。
手から蒼色の熱線を放ち、遠くのモンスターを焼き殺した──かと思うと、今度は雷の斬撃が飛び、近寄るモンスターを真っ二つにぶった斬る。
少年を囲み、攻撃のタイミングを計るモンスター──と、いきなり暴風が吹き荒れ、風の刃がモンスターを斬り裂き、バラバラにして吹き飛ばした。
上空にいるモンスターが、少年に向かって攻撃を仕掛けようとするが──いきなり地面に吸い寄せられたかのように激突し、身動きが取れなくなる。
と、気が付けば空に青色の魔法陣が浮かんでおり──魔法陣から放たれる水の弾丸が、必死にもがくモンスターの体を撃ち抜いた。
「何なんだ、あの『人類族』は……?!」
「『黒森精族』と『獣人族』も化物みたいに強いぞ……?!」
驚愕の声を漏らす『地精族』……と、暴れ回る三人のデタラメな存在を見て、一人の『地精族』がバカ笑いを上げていた。
「ひっひひひひひひひひひひひひっ! ひーひひひっひひひひひひひっ! ひー……あぁヤッベェなぁあのボウズぅ! あんな強かったのかよぉ?!」
「笑いすぎだエルグ……と言っても、ワシも笑いしか出てこないがな……」
笑うエルグボルグの隣で、エルレッドがどこか困ったような笑みを浮かべる。
「あぁ間違いねぇ! あのボウズぁ英雄だぁ! 英雄になる存在だぁ! なぁ、そう思うだろぉアニキぃ?!」
「……うむ……そうかも知れんな」
再び放たれる蒼色の熱線を見ながら、鍜冶職人の兄弟はそんな事を呟いた。
────────────────────
「『蒼熱線』」
聡太の手の前に蒼色の魔法陣が浮かび上がり──そこから蒼い熱線が放たれる。
直線上にいたモンスターが一瞬で焼き消え──手を横に動かし、横にいるモンスターも纏めて焼き飛ばした。
「コイツら程度なら、【特殊魔法】だけでどうにかなるな」
モンスターの大群に囲まれるが、余裕そうな表情を崩さない。
この程度なら、刀を使う所か──【憤怒に燃えし愚か者】を使うまでもない。
「──オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンッッ!!」
──突如聞こえた咆哮に、聡太が鋭い瞳をさらに細めた。
咆哮だけでもわかるほどの、強者の覇気。
間違いない──今の咆哮の主が、このモンスターの大群のリーダーだ。
「だが……」
強い。それこそ──聡太が全力で戦っても、勝率は五分五分だろう。
ミリアには『地精族』の守護を頼んでいる。ハルピュイアは、好きに暴れてリーダー格のモンスターを討伐している。連れて行く事はできないだろう。
それに──ミリアとハルピュイアを連れて行っても、足手まといになる可能性の方が高い。
「一人で行くか──『剛力』ッ」
全身の筋力を底上げし──【気配感知“広域”】を発動させる。
──気配の主は、かなり遠くにいる。
何というか……独特的な気配だ。
本能的に恐怖を感じると言えば良いのだろうか……よくわからないが、『十二魔獣』に近い気配を感じる。
だが……どこか『十二魔獣』とは違うような……?
「ま、行けばわかるか」
脚力を爆発させて、モンスターの大群の間を駆け抜ける。
その後を追い、あるいは進路に立ち塞がり、モンスターが聡太に攻撃を仕掛けるが──
「──『水弾』」
上空に青い魔法陣が浮かび──水で作られた弾丸が、超高速で放たれた。
聡太の動きを止めようとしたモンスターは──頭や胸を水の弾丸で撃ち抜かれ、次々に倒れ臥していく。
「チッ──邪魔だ死ね。『黒重』」
立ち止まり、空を飛ぶモンスターに手を向けて詠唱。
口から炎や光線を放とうとしていたモンスターは──不可視の重力に襲われて地面に沈んだ。
「潰れろ」
聡太の足元に浮かぶ黒色の魔法が、複雑な模様を描いた──その次の瞬間、モンスターの群れが重力に押し潰され、身体中から血を噴き出して絶命した。
フェキサーとの戦いで、『複数術士』が使える魔法の複重強化を感覚的に覚えた聡太は、複重強化の練習をしながらモンスターを討伐していた。
簡単に説明をするなら、複重強化というのは──魔力の入る器を大きくする、という事だと思えば良い。
普通の魔法でも、魔力を多く込める事はできる。
だが──その魔力を受け止める器には限界が存在する。
複重強化する事により、魔力の器をさらに大きくする──それにより、魔法の力を上げるのだ。
もちろん、魔力を多く持っている事が前提である。でないと、そもそも魔力を多く込める事ができないのだから。
「よしよし……感覚的には掴めてきたな」
息絶えたモンスターを見下ろし──バッと、何かを感じたかのように顔を上げた。
──先ほどの咆哮の主が、移動を始めた。
それも、真っ直ぐ聡太の方に向かってくる。
「……誰も、近くにいないな……?」
ミリアとハルピュイアが遠くにいる事を確認し──聡太が全身から鋭い覇気を放ち始める。
──聡太の【特殊魔法】は、近くにいる者にも影響を与えるほど強力な魔法だ。
ミリアやハルピュイアが近くにいると、巻き込まないように気を使わなければならないが……近くに誰もいなければ、好きにぶっ放す事ができる。
「さあ……戦るか」
左腰から『紅桜』を右手で抜き、後ろ腰から『黒曜石の短刀』を左手で逆手に構える。
「──あれ? きみ、『地精族』じゃないよね?」
そして──ソイツは姿を現した。
短くキレイに切り揃えられた灰色の髪に、黄色と緑色の色違いの瞳。
頭部の右側から湾曲した大きな角が生えており……幼い外見に似合わぬ角の存在は、かなり異様に見える。
「……誰だ、お前」
「うーん……それなら、きみこそ何者だって話だけど?」
ポリポリと角を掻き、ソイツは困ったような苦笑を見せる。
今の聡太の格好は──見慣れぬ者が見れば、間違いなく変な格好に見えるだろう。
緋色の刀と漆黒の短刀を握り、顔を赤い紋様が描かれた奇妙なお面で隠している。さらに、全身を白いローブで包んでおり、体格すらもわからない。
ソイツが聡太の姿に疑問を持つのも、無理はないのかも知れない。
「俺の事はどうでもいいんだよ……お前が、このモンスターの大群を操ってる黒幕だな?」
「うん。そうだよ」
コクンと頷くソイツの言葉に、聡太は警戒心をさらに深めた。
「……否定、しないんだな」
「なんで? だって、きみを殺せば問題ないでしょ?」
なるほど。聡太に負ける気がないらしい。
しかも、聡太を殺すと言った。
つまり──敵。
「失せろ──『黒重』ッ!」
「おっ──」
「『蒼熱線』ッ!」
不可視の重力を発動させた──瞬間、聡太は『黒曜石の短刀』の切っ先をソイツに向けた。
『黒曜石の短刀』の前に蒼色の魔法陣が浮かび上がり──そこから、螺旋状に渦巻く蒼い熱線が放たれる。
初見の相手なら、間違いなく対処できない凶悪コンボ。
──今までは、そうだったのだが。
「──やるね」
「はっ──?」
『黒重』の影響を受け、ソイツが少し体勢を崩し──その口元に歪んだ笑みが刻まれた。
そう認識した──次の瞬間、ソイツは軽々とその場から飛び退き、聡太の『蒼熱線』を簡単に回避する。
「危ない危ない……『下位魔獣』だったら、簡単に殺られてたかも知れないね」
「お前……マジで何者だ」
【憤怒に燃えし愚か者】をいつでも発動できるように構え、驚愕を押し殺して問い掛ける。
聡太の言葉を聞いたソイツは──ニイッと邪悪な笑みを浮かべた。
「自己紹介がまだだったね。ぼくは『十二魔獣』の一匹、『上位魔獣』の《魔物を従える魔獣》さ」
その自己紹介を聞いた──瞬間、辺りに大きく脈打つ音が響いた。
──ドッグンッ! ドッグンッ! ドッグンッ!
「ああ……『十二魔獣』だったのか……」
露出している肌に、赤黒い紋様が刻まれていく。
膨れ上がる殺気を前に──ポーフィは心底楽しそうに笑みを深めた。
「スゴいね……! きみ、何者なんだい?」
「お前らに名乗る名前なんてねぇよ……『十二魔獣殺し』とでも呼べ」
「『十二魔獣殺し』……? ……まさか、テリオンとパルハーラを殺したのは──」
「俺だ……その後に、フェキサーも殺してるからな? 次はてめぇだ」
「いいね……! 久々に楽しそうな相手だよ」
辺りをモンスターの大群が囲む中。
『十二魔獣殺し』と《魔物を従える魔獣》が。
──今、激突した。
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