前世で世界最強だった俺は、また世界最強になろうと思う

つかっちゃ

大事件


─────その日、ハーレイ王国は大混乱に陥った。




カミーラ王妃、ルーチェ第一王女が宰相の手によって人質になった。それを知ったマリク国王は怒り狂い、近衛兵を使って宰相を捉えようとするもその見た事もない力を駆使し近衛兵を壊滅させ国王も大怪我を負った。

なんとか生き延びた近衛兵は王城から国王を担ぎ出し救出。しかし王城は宰相を始めとする賊、“紅き髑髏”が占拠してしまった。


それが経った半日で行われ、街に広まるのも時間の問題だった。

民衆は逃げ惑ったが隣国に逃げ出せたのは一部の上流階級の人間のみ、他の人々は紅き髑髏に行く手を阻まれ諸共人質になった。


そして紅き髑髏は他の国々にも手を出そうとしていた──────。










******












「ご主人様、かなり不味いことになりそうです」
「現状かなり不味いんだが」
「いえ、そうなのですが…先程宰相の気を感じ取りました」
「宰相の?今回の首謀者がどうかしたのか」
「あの気配───邪神モラクスにそっくりでした」




シトリーは何時に無く険しい顔をしていた。ティオスはその様子を見て今回は本当にヤバイのだろうと実感した。




「そのモラクスとは一体なんなんだ?」

「はい。私は“魔神”と、一応女神などの“光”側の神では無いのですが…モラクスは私側、つまり“闇”側の中でもかなりの上位神です。格で言えば私と同等かそれ以上です」

「シトリー以上となると国だけでなく世界ごと滅ぶんじゃないか?」

「あり得る話です。現在あの宰相がなぜこれほどの人質を集めているのかと言えば確実に生贄にする為でしょう」

「生贄だと?」

「はい。邪神モラクスは何よりも生贄を好みます。そして取り込んだ生贄の数、質に比例しつつどんどん強くなっていきます」

「それは……ルーチェが生贄候補だとするとかなり厄介じゃないのか?」

「恐らくですがもう誰にも止められなくなるでしょう。ルーチェの前世は運命神ノーナ。現在の運命神はクロートーですがその運命を操る力を持っていた女神を前世に持つルーチェを取り込んでしまうと最悪、ご主人様の理滅ですら対抗できなくなるかもしれません…」

「ならば早期決戦だ、早めに動くぞ。────ルーチェは俺の友人だ。手出しはさせない」




今はティオスとシトリーが先に力魔法マハトの転移でハーレイ王国付近まで来ていて、離れた高台から国を見下ろしていた。

すると少し遅れてからリエスが銀の翼のメンバーを全員転移させてきた。なのでティオスとシトリーは真剣な顔で現状を伝えた。



「──銀の翼のメンバーでの依頼続行が可能なら良かったがそうも言えなくなっている。下手に突っ込んでも死ぬだけだ」
「だ、だが!ティオスとシトリーだけで行っても意味がないだろう?!」


ライヴは事の重大さに少し青い顔をしていた。しかしリエスは少し興奮しているライヴを宥めつつ言った。



「安心して。ティオスとシトリーにはちゃんと策があって言ってる。最後まで話を聞きましょう?」
「あ、ああ……すまない、取り乱した」

「取り乱すのも仕方無いだろう、こんな状況だしな。それよりもリエスの言う通りだ。俺とシトリーは別に自棄になって突入する訳じゃない」
「そうですよ。策もなしにご主人様が戦うなんて言うはずが無いじゃないですか」




そう言うとティオスはシトリーの腰に手をやってぐっと引き寄せると言い放った。





「それじゃあその策を今から見せてやる────“融合”」




融合と二人が呟いた瞬間、二人の全身が闇に覆われた。闇と言っても嫌な闇では無い。

全てを優しく包み込んでくれる夜の常闇。見ていて安心する闇が、少しずつ晴れてくる。





「───今回ばかりは出し惜しみは不必要だからこの姿のまま正面から突っ込んでいく」
「皆さん、これがご主人様の力で御座います」




闇が晴れたあとには淡い紅色の長髪を靡かせる一人の女性─────とは言いにくい姿をしているモノがそこには居た。

右腕は魔物のような豪腕で胴体は人間、下半身は獣のような逞しい脚に背中にはドラゴンを思わせる大きな翼、漆黒の羽の衣を纏った、顔立ちはこの世のものとは思えない程整っていた。





いきなり現れた魔物の様な何か。しかしその場にいた全員は動けなかった。

死神の釜が既に自分の首にかけられているような暴力的なまでの力。





─────見ただけでわかった。分かってしまった。






絶対に勝てない存在だと。





その場にいた全員が否応なくその実力を本能が感じ取っていた。まるで緊張感のないティオスとシトリーだがここでの殺生与奪権は既に彼らの手の内にあった。

そんな見ているだけでもすくみ上がり発狂してしまいそうな程の実力差の暴風の中、リエスは汗を垂らしながらも発言した事には褒めるべきだろう。





「──そ、それが、貴方達の切り札なの──ね?」
「ああ。これが俺とシトリーが得た力だ」
「──ご主人様、早くここから移動しないと他の方々が発狂してしまいますよ?」
「そうだな、すまない。早く終わらせてくるからこの辺で身の安全を確保しつつ休んでてくれ」
「…ええ、分かったわ」




そう言ってティオスは軽く光速を越える速度で走り去っていくのだった。










二人が居なくなった後、リエスはヘナっと地面に崩れ落ちた。

未だに鳴り止まない心臓の音を押さえ込むかのように左胸を抑えて、たった今まで見ていた光景を思い出していた。

シトリーから神族だと言う事は前から聞いていたが、いつもは対等な関係で接していたが今回ばかりはそんな事が出来なかった。




あれは間違いなく神だと思い知らされた、





しかし、そんなシトリーに置いていかれるか、と逆に燃え上がる心があったのはこれからのリエスを見ていれば分かるだろう─────。











そうして、ハーレイ王国奪還、もとい、ティオスとシトリーによるルーチェ救出作戦は始まったのだった。

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