前世で世界最強だった俺は、また世界最強になろうと思う

つかっちゃ

帰宅

「──────んぅ…」


気づいたら眠っていたようだ。実家に帰るとなるといつも気が緩むが今日は一段と緩みすぎていたらしい。



ん?



リエスの顔が逆さまになって俺を覗き込むように見ているのだが。後頭部に弾力のある感触とフローラルな香りが頭を包む。



「あら、もう起きたのね。おはよう」
「ああ、おはよう。今俺はどうなってるんだ?」
「私に膝枕をして貰って寝ているわね」
「すまない」


そう言って起き上がろうとするとリエスが押さえつけ起き上がれないようにしてきた。ティオスはモノ言いたげにリエスを見ると、ふっとリエスの表情が緩み、髪の毛を撫でてきた。


「着くまではこのままがいいわ」
「…そうか」


なんだかリエスの目に狂気を感じ取ったティオスは目を逸らし言われるがままにした。そしてまたいつの間にか眠ってしまうのだった。









******








「着きましたよ〜!」


しばらくして御者の声で目が覚める。そしてリエスの膝からゆっくり起き上がると窓の外を見た。
そこに広がるのは見慣れた町並み。夕方になっていて夕日に照らされる町は異様に懐かしく感じた。

馬車が止まっていたのは中心部の噴水のある広場で小さな子供達が走り回り、近くの市場は夕食の材料を買う人々で賑わっていた。
学園が帰省する人にはその料金を行き帰り分渡してあるのでそのまま礼を言って降りると、空気をいっぱい吸った。




「イリニの町には初めて来たけどお洒落な町なのね」
「だろう?なかなかこの雰囲気はお気に入りなんだ」


ティオスが生まれ育ったこの町イリニ。
広場の地面は小麦色と蒸栗色のレンガでチェック模様になっていて、辺りにはシックな街灯が徐々に明かりを灯し始めていた。

家に向かおうとティオスが歩きだそうとしたらリエスが腕を絡めてきた。


「エスコートをお願いね?」
「ああ」


そう言って家の庭のように知っている道を歩いて行く。学園周辺の王都の街のような活気は無いが少しがやがやしているだけの雰囲気が心を穏やかにいていくのが分かる。


歩いていくに連れて少しずつ街灯が少なくなっていき、町の端にポツンと建つ豪勢とは言えないが大きな2階建ての家が見えてきた。


「ここが俺の家だ」
「お洒落ね」


ティオスの家は全体的に木でできており、中庭には小さな池と小さな木が何本か有り、そこに接する面は全面ガラス張りになっていて今は全てを開け広げていた。

二人は玄関の方に向かい、ティオスがコンコンとノックをした。すると少し遅れて遠くから「はーい」と女性の声が聞こえてくる。


そしてぱたぱたと歩いてくる音が近づいてくるとドアが開き、白金の長髪を背中の方で纏めている美女がひょこっと顔を出した。


「どちらさま───ってティオス!」
「只今、母さん」
「毎年すぐに魔法で帰ってきたのに今日は遅いからてっきり帰ってこないかと思ったじゃない」
「すまない。実は1人一緒に連れてきていてな」
「あら、そうだったの」


そう言ってマリスは扉を大きく開けるとそこでリエスの存在に気が付いた。マリスもかなりの美人なのだがリエスはその上を行く美貌で今も尚その美貌に磨きが掛かり続けている。
マリスが目に入ったリエスはぺこっと頭を下げ、制服のスカートの端を軽くつまみあげると


「はじめまして。私はリエスと言うわ」
「は、はじめまして。私はティオスの母のマリスって言うのよ。宜しくね」


マリスはそう言うとティオスを見てにやにやと笑みを浮かべ始めた。


「あのティオスがまさかこんなに美人な女の子を連れてくるなんてね」
「俺から連れてきたわけじゃないけどな」
「このこの〜♪この色男さんめっ!」
「勘弁してくれ」

ティオスの肩をつんつんと突くマリス。そしてリエスとティオスを改めて見ると、はは〜んと何かを納得した様に言った。

「──将来を考えてなのね?」
「何馬鹿なこと言ってんだこの人は。そんな関係じゃ───」
「──そうよ。私とティオスは将来を考えて付き合ってるの」
「はっ!?」



ティオスがマリスの発言を否定しようとした所に重ねてリエスが爆弾を落とす。すると突然強い風が吹いたと思ったらティオスの横にマリスが目を見張るほどの美貌と大人の魅力を兼ね備えた神の造形としか思えない美貌をした妙齢の美女、シトリーが現れた。




「何を言ってるんですかねぇ…?ご主人様は私のものですよ」
「はぁ?寝惚けたことを言わない事ね。ティオスは私のものよ」
「いや俺は俺のものなんだが」
「「ティオス(ご主人様)は少し黙ってて(下さい)」」



するとその異様な空気を感じ取ったのか奥の方から玄関の方に父マティスが出てきた。


「何時までそこに居るんだ?早く上がってこい────ん?」


マティスは玄関での光景を目にするとティオスを見て、無言でサムズアップをした。





帰宅早々始まる修羅場の最中。ティオスが



「本当に勘弁してくれ…」




と呟くがリエスとシトリーの喧騒にかき消されて誰の耳にも届く事は無かった。

「前世で世界最強だった俺は、また世界最強になろうと思う」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く