前世で世界最強だった俺は、また世界最強になろうと思う

つかっちゃ

神族の能力


─────星屑を散らしたかの様に光に当たるとちらちらと淡く光る色素の薄い紅色の長髪を風に靡かせ、広い草原の真ん中に凛と立つその姿、何処か憂いを感じさせる、まるで神の造形としか思えない美貌は一本の百合の花を彷彿とさせる。


しかし、それは顔を見たら、の話である。全身が人形だが人間のそれとは思えない。



「──一応被害があるかもしれないから街から離れた草原まで来たが……どうやら杞憂だった、訳じゃないよな…」
「私も初めてだったので正直不安でしたが上手くいって良かったです」



その生徒を今、他の人が見ていたら姿とは別に驚いただろう。なんせ一人なのに男性の声と女性の声を使い分けて独り言を言っているように見えるから。


「俺は特に何も感じないがシトリー、お前はどうだ?」
「私も何も違和感はありません。寧ろ力が漲ってきて今なら神をも殴り倒せそうです」


しゅしゅしゅっと片手の拳を尋常じゃないスピードで前に突き出す。しかしそれは何かに止められたようにピタッと止まると


「やめてくれ。俺の身体でもあるんだ、他人に動かされる気分は良く無い」
「他人とは言いますが現在は言葉通り一心同体ですよ?」
「一心では無いだろう?二人分の意識があるからな。それよりもせっかくこの体になったんだ。試しに色々とさせろ」




そう、この神の造形としか思えない美貌の女性はなんとティオスとシトリーが融合した姿なのだ。
ティオスですらチートだと思わせたのはその神族の能力がこれなのだ。




融合。




神族は契約した相手との合意があればこの様に融合できる。融合したらその2人の特徴の出ている顔つき体つきになる。

ティオスはもともと細身だし、シトリーもかなりの細身、ついでに言えばシトリーは言わずもがな、ティオスもちゃっかりイケメンなのだ。そんな美形同士が融合したら美形にならない訳がない。
しかし、問題は別にある。




融合したその姿はシトリー、つまり神族側の影響を色濃く受ける。シトリーは魔神、つまり魔の神だ。




その融合した姿は右腕が肥大化し、禍々しく赤黒いオーラと鋭い爪を持つ。

耳は長耳族よりも長くなり、お世辞にも趣味がいいとは言えない骨で出来たようなイヤリングを右耳に5つつけている。

胴体はティオス側の影響で男性のようなガッシリとした体つきだが、シトリーの柔らかさも混ざり少し中性的な体つきになっている。しかしその体の周りには鴉を思わせる漆黒の羽の様な扇情的な衣を纏っており、そこからも黒いオーラが滲み出ている。

脚はドラゴンの様な特徴的な形、肉付きで、限りなく黒い紫色の爪は立っているだけで地面に食い込む。

その背中には右側のみに骨で出来た体よりも巨大な翼が生え、紫色の炎を吹いている。






そんな姿にティオスは動じるどころか寧ろ強くなれて僥倖とばかりに早速体を動かす。


「まずは左手だよな」


そう呟き、指の一本一本を鉤爪の様に曲げると軽く上から下に下ろす。なんだかこれだけでも十分な気がしたのだ。

しかしその気は正しかった。

軽く振り下ろしただけで、前方10mに切り裂かれた草原が広がった。本気でやったらどれほど切り裂いてしまうのか気になったがこれ以上やると後々面倒になりそうだと思い留めた。






「…素晴らしい力ですね。流石はご主人様です」
「オーバースペックな気がするけどな。そもこんな力を使う機会なんて永遠に来ないだろうがな」
「そうだと良いんですけどね…ですがご主人様、この姿にはたまになりませんか?」
「ん?何故?」
「その、この姿だと気分が昂ぶって凄く気持ちがいいのです」
「まあこの一ヶ月の間なら何時でも構わないがな。まだまだ俺も試したい所はあるしな」
「ありがとう御座います、ご主人様♪」


シトリーがそう言った瞬間、体が霧に包まれると元の姿に戻った。
変身時間は5分と言ったところか。
この停学中に昇華できるかやれるだけやってみるか、そう思うティオスだった。












その日、いつも通り寮に戻るとグアンにシトリーについて色々と問詰められたのはまた別の話に。









すみません…金曜日までいつも以上に中身のうっすいものになりそうです…

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