前世で世界最強だった俺は、また世界最強になろうと思う

つかっちゃ

クラス代表決定戦2

「は〜あ、負けちゃったわ」
「俺も今回は勝てたが次も勝つという確信が持てない試合だった」
「ふふ、今回は勝ちを譲りますが次からは一勝も渡しませんわ」


試合が終わった後、二人とも試合が始まる前の状態に戻っていた。

ガーネットが貸し出してくれた魔法道具は、ただ映像の転送や出力だけではなく最上級の回復魔法まで使用してくれる。

その回復魔法は凄まじく死んで凡そ30秒以内なら蘇生もできてしまう。なので安心して本気で殺り合う事ができる。



戦いを見ていた他のクラスの生徒たちは全員唖然としていた。Sクラスがまさかここまでの高みにいるとは。
しかしこれだけ規格外なのはSクラスでもこの3年生達だけなのだが。






******






「───対戦相手はお前だったか。ニル」
「………アサド……」
「俺は手加減なんて一切しないからな」
「…わた………し……勝つ」


そう言ってニルは漆黒の鎌を構える。覚悟を決めた目をしておりアサドもそれを見て満足したのか、首をゴキゴキと慣らし、軽く腕を振っている。

軽くと言ってもヒュゴッ、ヒョッと空気が変な音を立てるほどの豪速で腕を突き出したりステップを踏んだりしているが。





「準備は出来たな────最初を譲ってやる。来い」
「………………ひひっ」


ニルは既に戦闘準備に入っていた。目元は白い髪の毛でよく見えないが口元がニヤァっと裂けている。
少し俯き気味だった顔をスッと上げ、アサドを見据えると。



「壊れないでね……!?」


「はや────ッ!!!!」



予備動作無しに瞬間移動の如く移動し、アサドの目の前で既に鎌を振り下げていた。

武術を極めたと言っても過言ではない程の実力を持つアサドでさえギリギリ、本当にギリギリ目で追える速度で攻めて来られ咄嗟に腕を出す。


鎌と腕。


普通なら簡単に切り裂き、分断する事が出来るが、そこはアサドクオリティ。簡単にはダメージなど負わない。

アサドはその鍛え上げた拳、筋肉はミスリルの様に固い。己の拳こそ最高の武器だと信じ、限界まで鍛え、限界を超えここまで来た。


しかし。


相手はニルだ。この二年間、戦闘は少ししか見てはいないが確実にチート野郎ティオスに次ぐバケモノだ。
本人のその隠し持ったポテンシャルは未だ計り知れることは無い。
そんなニルの攻撃を拳で受け止めると、流石のアサドの拳も耐え切れなかった。

凡そ5mm程切り裂かれ血が滴る。



「ふひっ…!そう、その赤い血が見たいの!!!もっと!!見せて!!アハハハ!!!!」
「くっそ!!この隠れバトルジャンキーが!!」



その後もニルは暴風の如く巨大な鎌を操る。鎌は音速で止めどなく振られ、既に霞んで見える程だ。
しかしアサドもやられっ放しは性に合わない。

その恐ろしい程の切れ味を持つ鎌の攻撃を全身の筋肉で受け止める。触れる度に赤い線が滲み出し、辺りにビチャビチャと鮮血を撒き散らす。


「クヒヒヒヒヒヒヒ!!!!」


ニルはそんなアサドの姿を見て、恐怖を煽るような声音で笑いながら更にそのスピードを上げていく。


あまりの速度に他の生徒達にはもうその鎌は見えず、只々アサドが切り裂かれ、地面にも深々とした裂き後が残されていく光景を口を開けて見ているしか無かった。
ニルが始めて生徒たちに見せたその裏の顔に殆どの生徒達は恐怖に震えた。

ギラギラと光るワインレッドの双眼、血のように真っ赤な唇、尖った歯。裂けんばかりの妖しい笑顔が悪魔に見えて仕方なかった。







ニルの鎌を降る速度が光速になった頃。





「────見切った」





どこからかそんな声が聞こえた。


その瞬間、アサドとニルの攻防を繰り広げている場所で爆発の様なものが起こった。


全員、何が起こったんだとその場所に目をやると。


「……ありえない」
「じゃあな、ニル」



アサドがその鎌を片手でしっかりと握り止めていた。光速で振られていた鎌を止めた時の威力か、アサドの足元が放射状に凹んでいた。

そしてその鎌を止められた驚きで戦闘状態を解いてしまったニルに容赦無いボディブロー。

ニルは体をくの字に曲げると、その場に倒れた。



「なかなか楽しかったぜ、ニル」




試合が終わると二人は黄金に輝く光に包まれ全ての傷が治るのだった。










******








「そういえば二年一緒に居て貴方と戦った事は無かったわね」
「そうですね。ですが私個人としては同じ魔法使いとして戦いたかったのですよ、リエスさん」
「ふふ、実は私も貴方と戦いたかったのよ、ルーチェ」




現在、グラウンドの真ん中には二人の美少女が対峙している。
お互い春生まれで既に13歳になっており、既に幼さのあった顔は、少しずつ大人びてきており、観ていた生徒達の殆どは男女構わずその美貌に見惚れていた。


「それじゃあ早速ですが私から攻めさせて頂きます!!」
「ええ、どうぞ」


ルーチェは早速右手と左手にイグニストゥールの魔法を発動すると、腕を伸ばしたまま両手を握り合わせると、


「合成!燃え盛る竜巻プロク・イアサール!」


入学したての頃から圧倒的に早くなった魔法発動速度で合成魔法を打ち出す。
威力も数段上がっており、その炎の柱は天まで届く。

生徒達はその余りの威力に危険を感じ、今まで以上に距離を取った。


「ここ一年リエスさんには魔法を見せていませんでしたがここまで高める事が出来ました!!受け止められますか?」
「驚いた。まさかここまでとは。でも」



すべてを言い切る前にルーチェの魔法がリエス激突し─────


──────跳ね返った。



「なっ!?!?!」
「──貴方だけが強くなった訳じゃないのよ?」



よく目を凝らすと何やらリエスの周囲の景色がおかしい。
まるでシャボン玉の様な膜が貼っていて、そこで景色が歪んでいる。




彎曲ファルテンの応用技、歪みし時空ディメンシオン・ディストレイ。この歪んだ防壁には物理的、魔法的攻撃の尽くは跳ね返される」




歪みし時空ディメンシオン・ディストレイはその術者の周囲の空間のベクトルを捻じ曲げ、無理やりそのベクトル同士を繋げ直すという逸脱した魔法だ。勿論教えたのはティオスだ。

この膜の効果は跳ね返しているのではない。


空間をU字型に捻じ曲げてもとのベクトル上に戻す、つまりその物体は実質直線にしか進んでいないのだ。しかしベクトルがネジ曲がっているのでリエスによって弾かれたように見えるのだ。




「どう?これが私の力魔法マハト
「そんな常識外れの魔法が………あ、ティオスさんですね??」
「ええ、ティオスにはいい魔法を教えてもらったわ」
「なるほどです。通りで見たこと無い魔法だと思いました」
「これに勝つ方法は無い。降参する───」
「──リエスさんだけがティオスさんから魔法を教わったと思わない事です」




ルーチェはリエスに被せるように言い放つと、両手を祈る様に胸の前に持ってくると、呟く。


光魔法ゲレル火魔法イグニス
「光………!?」


流石のリエスでさえ驚いた。観客達は更に驚く。


リエスの力魔法は習得が困難で“伝説の魔法”と言われていたがこの光魔法はそんなレベルじゃない。


光魔法は神話の存在、神族しか使えない筈なのだ。
しかしそれにも例外がある。


ガーネット。元賢者。その人はそれまで唯一の光魔法の使い手だった。ガーネットは限られた人にしか明かしていないが実は前世を持っている。


それが女神なのだ。女神の生まれ変わり、その特異の存在故に使えていた。




ティオスは理滅によって使えるが、ルーチェは記憶は無いが女神の生まれ変わりなのだ。ティオスはそれを見抜き、光魔法を教えた。




「リエスさん、知っていますか?ルーチェって名前、実は神話時代の言葉で“光”という意味らしいですよ」
「ガーネット先生、ティオスしか使えないと思ってたのに……!?」
「ふふ、実は私も使えるんです♪では、行きます!!」





「合成、爆炎の燿リヒト・フラーゴル



魔法を唱えた瞬間、リエスが眩い光に包まれる。白い制服の周りには真紅の炎で出来たドレス、翼が出現し、振り上げられた両手には光と炎が混ざり合って出来た剣が握られていた。



「ティオスさん曰く、防御不可能と言われているそうですが、リエスさんの魔法と私の魔法、どちらが強いでしょうか?」
「ふふ、その魔法、私の全魔力を持って受け止めるわ」



そして、ルーチェは音も無くその剣を振り下ろす。するとリエスを中心にして大気を裂くように、雲一つない晴天から炎を纏った光の巨剣が落ちてくる。

それはリエスの目の前の地面に突き刺さるとその場で大爆発を起こし、砂煙が晴れると何とか直撃を免れたリエスが致命傷を負っていた。

右腕は吹き飛んでいて全身の至る所が炭になっている。



「……なんて………威力……なの………よ………」



リエスはそう言い残すとその場に倒れた。


「ふふ、私……の……勝ちです………ね」



そう言うとルーチェもその場に倒れ込むのだった。














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