追放された悪役令嬢は断罪を満喫する【連載版】
プロローグは誰かの独り言
「……どういうこと?なんか変!」
ここはエンブルク王国の国立学院に併設された女子寮の一室。
すでに外は暗くなっており、外から差し込む月明かりと机に乗せている小さなランプだけがこの室内を照らしている。
その仄かな明かりの中で、ある少女は机から取り出した紙の束を何度もめくって眺める。
やけに年季の入ったその紙束には、手書きの文字がびっしりと書き込まれている。
――やっぱりおかしい。
そんなこと、どこにも書いていない。
「おかしい……ランベルトさまがこの国に帰ってくるのはまだあと3ヶ月も先のはず。そして、あんな従者連れてる絵なんて見たこと無いんだけど!」
自分の記憶が間違いなのかと遠い記憶を探るが、やっぱり何度考えてもそんな展開は無かった気がする。
「これってキャラの動きに影響あるのかな?何か変わって来るのかも。ようやく3年生の4月になって、始まったところなのに、もう最初から訳が分からない〜」
少女はそう嘆きながら机に突っ伏す。
彼女が体の下敷きにしたその紙には、今後起こるであろうことが順を追って書かれていた。
◇
今日は少女が3年生に進級して初めての登校日だった。
15歳から18歳までの3年を過ごすこの学院では、今年が卒業に向けた最後の1年となる。
それに、今後の展開的にもとっても大切な1年だ。
決められたクラスに向かい、クラスメイトたちをぐるりと見渡して、予想通りのメンバーだったことに満足する。
(うんうん、みんな揃ってる。そして今からイベントがあって、あとは7月になれば――)
そう思っていた時だった。
教室のドアがガラリと開き、担任の教師が入ってくる。
そしてそれに続いて生徒が3人入ってきた。
見知らぬ生徒の登場にざわついた教室が静まり返る中、少女の心の中はとっても騒いでいた。
予想外の人物がそこに立っていたからだ。
「皆さんおはようございます。この特進クラスは基本的に昨年からの持ち上がりですが、今日からこの3人が加わります」
先生が何やら説明しているが頭に入ってこない。
私の視線は、黒髪の青年に釘付けになっていた。
(な、なんでランベルト様がいるのーーー?!)
そのあとも教師の紹介は滞りなく進み、黒髪の青年はやはりランベルト=アドルフその人で、ユエール王国からの帰国に伴って編入。紺色の髪の人はランベルトの従者だけど優秀だから共にこの学院に編入したとのこと。
そして、3人目に紹介された空色の髪の少女も、その優秀さから昨年までの普通クラスから今回この特進クラスに進級したという。
(まあ最後の女の子のことは知ってるからいいとして。誰、あの紺色の人!そしてランベルトさまの登場早すぎる!こんな展開知らない〜〜)
結局その後少女はずっと上の空で過ごし、オリエンテーションのため半日で終わった学院から寮に引き上げてもなお部屋に篭って何度も手書きの紙を眺めていて今に至る。
「大好きな乙女ゲームの世界に転生したから、スタートを楽しみにしてたのに……なんか違うっぽい。読みが外れた〜!」
 
そう言いながら、そっと目を閉じる。
そのまま寝てしまった少女は、翌朝慌てて学院に行くことになったのであった。
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