ウイニー王国のワガママ姫
一世一代のワガママ 3
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城の中は私達が知っているお城とはやはり想像をかけ離れた形をしていた。
庭園から中へ入ると床一面は曇りガラスのような透明な板になっていた。
おそるおそる下を覗き込めば城の至る所に大きな柱がそびえ立っていて、その柱に向かい合う様に民家や商店、はたまた農地があったりと本当に城の中に街がまるまる収まっていた。
日の光は窓や天窓から取り入れているらしく、暗いどころか明るく暑いくらいだった。
階段は柱の中にあったり、壁の内側にあったりと統一感がなく、別の階層に移動するだけでも迷子になりそうだった。
城の外は物凄く静かだったのに、城の中は人々の喧騒がどこに居ても響き渡っていた。
ウイニーの城下町でも、フェンスやブールでも此処までの人の賑わいは見たことがなかった。
きっとあの中に入ってしまえば手を繋いでいないと簡単にはぐれてしまう気がする。
「ここの階層は特別みたいですね。ほら、ここにあるの転送陣ですよ。かなり古い物ですがおそらく下に繋がってます」
部屋の西側へとテディはスタスタと歩いて行き、転送陣を見つけると何でも無い様に屈んで興味深げに転送陣を観察していた。
ゲイリーさんもスタスタと東側にある同じような転送陣を見つけて、興味深げに顎髭を撫でながら観察していた。
「こちらも同じもののようですね。中央にある二つの陣も同じものでしょう。微妙に飛ばされる場所は違うようですが下層へ移動する為の陣で間違いないようです。南の方に階段と人らしき物が見えますから、あれが王の居住区へ繋がっているのではないでしょうか?」
ゲイリーさんに言われて奥をみればかなり遠くにそれらしきものが見えた。
本当に遠くて人らしき人は豆粒大にしか見えない。
「結構遠いですね。仕方ないですが歩いて行きますか。何してるんですか皆さん。さっさと行きますよ?」
と、テディは事もな気に言って歩き出そうとする。
すると私やクロエ、ダニエルにウルフがブンブンと首を振って顔を青くした。
「主、なんでそんな平然としてるんスか?流石にこれは怖いッスよ」
ウルフが言えば私達はウンウンと頷く。
だって、足元が曇っているとはいえ透けているんだもの!すぐ下の階層だってかなり高さがあるわ!
「下を見なきゃいいでしょう?それでも僕の騎士ですか!…レティ、怖いですか?」
テディが心配そうに近づいて私を覗き込むように聞いてきた。
怖いかと言われたら怖いに決まっている。でも足手まといになるのは流石に嫌だ。
「う…だい、丈夫。うん、下、見ないわ。平気、行きましょう」
深呼吸をして顔を見上げて進もうと一歩二歩とへっぴり腰になりながら進んでいると、ふわりとテディに横抱きにされた。
驚いて見上げればにっこりとテディは私に笑いかける。
「無理しなくて良いですよ。ゲイリー、僕達先に行きますね。3人を待ってたら日が暮れてしまいます。どうせ王への謁見は僕達しか出来ませんし。転移すれば2,3歩です」
テディが言えばゲイリーさんはニッコリ目を細めて深々と頭を下げた。
私が真っ赤になって「ごめんなさい」と小さく言えば、テディは嬉しそうに笑って「掴まってて下さい」と転移魔法で移動した。
後ろからウルフが恨めしそうに「差別だ…」と呟いたのが微かに聞こえた気がした。
転移で移動してきた私達に階段の前にいた兵士達がギョッとしたものの、要件を告げれば割とあっさりと中へと通してくれた。
テディに下ろしてもらい、手を引かれながら階段を上ると大きな白いエントランスが目の前に広がる。
エントランスの中央には日の光を受ける噴水がキラキラと輝いていて、噴水を囲むように半円状の白い螺旋階段があった。
噴水の前で控えていた従者が私達の姿を確認すると、恭しくお辞儀をして私達を奥へと案内する。
螺旋階段を上り、中央にある大きな白い扉を開けば、そこにまた大きな魔法陣が青々と輝いていた。
魔法陣の上へ乗ると、従者が魔法陣を発動させる。
視界が歪み何度か瞬きすれば、目の前に真っ赤な長い絨毯と奥に国王らしき人物の姿が確認出来た。
隣からテディのゴクリと唾を飲み込む音が耳に入った。
ギュッと手を握れば、ハッとした後にこりと微笑んで「行きましょう」と小さな声で私に言った。
私達は王の前で跪いて頭を垂れる。
王は玉座の上から私達を見下ろし、青い瞳を三日月の様に細めて威厳ある声を発した。
「面を上げられよ。若き王とその妃よ。遠い所をよく来た。名を聞いても良いか?」
顔をあげればリオと同じくらいの年頃の若い国王が優しげな笑みを浮かべていた。
「お初にお目にかかります。リン・プ・リエンの第三王子でフィオディール・バルフ・ラスキンと申します。隣は妻のレティアーナ・アサル・バルフ・ラスキンです」
「初めまして国王陛下、レティアーナと申します」
"妻"と言われてドキリと心臓が跳ね上がる。
新しい名前を名乗る機会も無かった為、胸の中がなんだかこそばゆい感じがして妙に落ち着かなかった。
(だめだめ!謁見中なのに。落ち着くのよレティアーナ!)
と、逃げ出したい気持ちを必死で押さえる。
それでも少しだけ瞼を染めて目を伏せて俯いていると、竜の国の王様はくすりと笑って私達に言った。
「いいな新婚か。私の妻は最近ではめっきりつれなくてな。昔はあんなに可愛かったのに…っと、そうじゃないな。私も自己紹介をしよう。私は竜の国第217代国王ヨルマ・クロンヴァールだ」
城の中は私達が知っているお城とはやはり想像をかけ離れた形をしていた。
庭園から中へ入ると床一面は曇りガラスのような透明な板になっていた。
おそるおそる下を覗き込めば城の至る所に大きな柱がそびえ立っていて、その柱に向かい合う様に民家や商店、はたまた農地があったりと本当に城の中に街がまるまる収まっていた。
日の光は窓や天窓から取り入れているらしく、暗いどころか明るく暑いくらいだった。
階段は柱の中にあったり、壁の内側にあったりと統一感がなく、別の階層に移動するだけでも迷子になりそうだった。
城の外は物凄く静かだったのに、城の中は人々の喧騒がどこに居ても響き渡っていた。
ウイニーの城下町でも、フェンスやブールでも此処までの人の賑わいは見たことがなかった。
きっとあの中に入ってしまえば手を繋いでいないと簡単にはぐれてしまう気がする。
「ここの階層は特別みたいですね。ほら、ここにあるの転送陣ですよ。かなり古い物ですがおそらく下に繋がってます」
部屋の西側へとテディはスタスタと歩いて行き、転送陣を見つけると何でも無い様に屈んで興味深げに転送陣を観察していた。
ゲイリーさんもスタスタと東側にある同じような転送陣を見つけて、興味深げに顎髭を撫でながら観察していた。
「こちらも同じもののようですね。中央にある二つの陣も同じものでしょう。微妙に飛ばされる場所は違うようですが下層へ移動する為の陣で間違いないようです。南の方に階段と人らしき物が見えますから、あれが王の居住区へ繋がっているのではないでしょうか?」
ゲイリーさんに言われて奥をみればかなり遠くにそれらしきものが見えた。
本当に遠くて人らしき人は豆粒大にしか見えない。
「結構遠いですね。仕方ないですが歩いて行きますか。何してるんですか皆さん。さっさと行きますよ?」
と、テディは事もな気に言って歩き出そうとする。
すると私やクロエ、ダニエルにウルフがブンブンと首を振って顔を青くした。
「主、なんでそんな平然としてるんスか?流石にこれは怖いッスよ」
ウルフが言えば私達はウンウンと頷く。
だって、足元が曇っているとはいえ透けているんだもの!すぐ下の階層だってかなり高さがあるわ!
「下を見なきゃいいでしょう?それでも僕の騎士ですか!…レティ、怖いですか?」
テディが心配そうに近づいて私を覗き込むように聞いてきた。
怖いかと言われたら怖いに決まっている。でも足手まといになるのは流石に嫌だ。
「う…だい、丈夫。うん、下、見ないわ。平気、行きましょう」
深呼吸をして顔を見上げて進もうと一歩二歩とへっぴり腰になりながら進んでいると、ふわりとテディに横抱きにされた。
驚いて見上げればにっこりとテディは私に笑いかける。
「無理しなくて良いですよ。ゲイリー、僕達先に行きますね。3人を待ってたら日が暮れてしまいます。どうせ王への謁見は僕達しか出来ませんし。転移すれば2,3歩です」
テディが言えばゲイリーさんはニッコリ目を細めて深々と頭を下げた。
私が真っ赤になって「ごめんなさい」と小さく言えば、テディは嬉しそうに笑って「掴まってて下さい」と転移魔法で移動した。
後ろからウルフが恨めしそうに「差別だ…」と呟いたのが微かに聞こえた気がした。
転移で移動してきた私達に階段の前にいた兵士達がギョッとしたものの、要件を告げれば割とあっさりと中へと通してくれた。
テディに下ろしてもらい、手を引かれながら階段を上ると大きな白いエントランスが目の前に広がる。
エントランスの中央には日の光を受ける噴水がキラキラと輝いていて、噴水を囲むように半円状の白い螺旋階段があった。
噴水の前で控えていた従者が私達の姿を確認すると、恭しくお辞儀をして私達を奥へと案内する。
螺旋階段を上り、中央にある大きな白い扉を開けば、そこにまた大きな魔法陣が青々と輝いていた。
魔法陣の上へ乗ると、従者が魔法陣を発動させる。
視界が歪み何度か瞬きすれば、目の前に真っ赤な長い絨毯と奥に国王らしき人物の姿が確認出来た。
隣からテディのゴクリと唾を飲み込む音が耳に入った。
ギュッと手を握れば、ハッとした後にこりと微笑んで「行きましょう」と小さな声で私に言った。
私達は王の前で跪いて頭を垂れる。
王は玉座の上から私達を見下ろし、青い瞳を三日月の様に細めて威厳ある声を発した。
「面を上げられよ。若き王とその妃よ。遠い所をよく来た。名を聞いても良いか?」
顔をあげればリオと同じくらいの年頃の若い国王が優しげな笑みを浮かべていた。
「お初にお目にかかります。リン・プ・リエンの第三王子でフィオディール・バルフ・ラスキンと申します。隣は妻のレティアーナ・アサル・バルフ・ラスキンです」
「初めまして国王陛下、レティアーナと申します」
"妻"と言われてドキリと心臓が跳ね上がる。
新しい名前を名乗る機会も無かった為、胸の中がなんだかこそばゆい感じがして妙に落ち着かなかった。
(だめだめ!謁見中なのに。落ち着くのよレティアーナ!)
と、逃げ出したい気持ちを必死で押さえる。
それでも少しだけ瞼を染めて目を伏せて俯いていると、竜の国の王様はくすりと笑って私達に言った。
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