ウイニー王国のワガママ姫
知らぬは当人ばかりかな 4
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翌日の新聞記事の見出しは『ワガママ姫 遂に本命現る!?』だった。
ここ最近城に滞在している所為もあって、レイとの噂もまたまた再加熱しつつあったのだけど、昨日のリオとの食事中の会話が何処からか漏れたらしい。
リオに関してはレイが徹底的な情報規制を張っているらしく2人でいても噂になるような事はなかった。
とはいっても城の兵士や侍女って本当に怖いわ。彼らを敵に回したら外堀から確実に身の破滅へ追い込まれる気がしてならないもの。
新聞を部屋の机に投げ出して「はぁ…」と私は溜息をつく。
その新聞の上にタイミングを見計らったかのようにテディからの魔法使い便がパラリと降ってくる。
「きゃぁ!」
と思わず悲鳴を上げて真っ赤になっていると、またまたタイミングを見計らったの如く、「何事だ!」と、レイとお兄様が部屋の中に押し入ってきた。
真っ赤になって両手を上げて机から仰け反っている私に2人は怪訝そうな顔を向けてくる。
「なんでも、なんでもないから!それよりどうしたの?こんな朝早くに」
レイはチラリと机の上に目線を送ると、一瞬だけ呆れた顔をしてから要件を述べた。
「陛下がお前と叔父上に大事な話があると。…嫌なら断っても、むしろ逃げてもいいぞ?」
まだ話も聞いていないうちから断ってもいいとはどういう事なのかしら?
しかも逃げていいだなんてレイらしくもない。
「それはレイにとって都合の悪いお話だからなのかしら?」
私がそう言うと今度は打って変わって険しい顔でレイは言う。後ろに控えているお兄様も何処か青い顔をしている。
「否定はしない。が、お前にとってもいい話では無いだろうな…」
しんと静まり返る室内の空気に私はなんだかとても嫌な予感が過る。
まさか用もないのに城に滞在している事を今更咎めるわけではないわよね?
お父様も呼び出されてってどういう事かしら。
思いつく限りでは半獣族のお祭り計画を勝手にやってる事に問題があるとかなのかしら?
「レティ、その…」
と、お兄様は何か言いたげに口を開いたものの、直ぐにギュッと唇を噛み締めて俯いてしまう。
(ううん。これは本当に何か良くない事を言われるのね)
「レイがわざわざ陛下って呼んでるんですもの。話を聞く前に逃げるなんて流石に出来ないわ。すぐに伺います」
「そうか…外で待ってる。支度が出来たら案内する」
レイはそう言って踵を返し、王子然として堂々と部屋から出て行った。入れ替わるように城に仕える侍女達がバタバタと部屋の中へ慌ただしく入ってきた。
着ていたドレスを脱ぎ捨てて、重い気を引き締めるかのように再びコルセットをキツく締め直して貰う。
新しいドレスに着替えると、髪を整え化粧をし、最低限の宝飾品を身につけて私は部屋から出るとレイに手を引かれて伯父様の元へと向かった。
謁見室へ向かうのかと思ったらどうやらそうではなく、以前忍び込んだ事のある王の寝室へと通された。
中には既に厳しくも青い顔をしたお父様が伯父様と共にそこに居た。
更に伯父様の隣には伯母様までも悲しそうな顔で俯いていた。
私は訝しげに思いながらも粛々と伯父様にスカートの裾を摘まんで一礼をして見せた。
いつも私に目尻を下げて出迎えてくれる伯父様も、難しい顔で私を出迎え小さく頷いて私を出迎えた。
「朝早くにすまない。あまり公の場でこの話はしたくなくてなぁ…」
眉間にしわを寄せて唸る伯父様に「貴方…」と伯母様が心配そうに寄り添う。
伯父様は「うむ…」と頷くと、私の両手を握って諭すかのようにゆっくりと話し始めた。
「実は、お前に縁談が来ている」
「縁談?」
と、私は復唱して眉を顰める。
お父様が縁談を持って来るのは判るわ。父親ですもの。そこは当たり前だわ。
でも、どうして伯父様が私の縁談話をするのかしら?
どこかこの先は言いたく無いとでも言うように視線をウロウロと漂わせる伯父様に「ゴホン!」と呆れたようにレイが咳をして見せる。
伯父様は「うっ」と詰まると、ポツリポツリと言い訳混じりに言葉を続けた。
「この話はワシから言い出したものでもなければ、まだ正式なものではない。嫌ならば断っても構わないし…寧ろ逃げてもいいんじゃよ?」
レイと同じ事を言うのは親子だからなのかしら?
「お話を聞く前からそのような事を言われてもワタクシも困りますわ。レイにも伯父様にも都合が悪い相手なんですの?一体どなたなのです?」
要領を得ない私は苛立たしげに伯父様に問い詰めると、伯父様はまたまたバツが悪そうに答えた。
「都合か…都合と言えばワシにとっては都合の良い話と言えるだろうなぁ…」
「貴方!!」
「父上!!」
「「陛下!!」」
伯母さま、レイ、お父様、お兄様と室内にいる私以外の人間から一斉に咎められ、伯父様は居心地が悪そうに身を縮こませ、ため息混じりに予想もつかなかった相手の名前を私に告げた。
「お相手は同盟国リン・プ・リエン国国王エルネスト・バルフ・ラスキン殿だ」
翌日の新聞記事の見出しは『ワガママ姫 遂に本命現る!?』だった。
ここ最近城に滞在している所為もあって、レイとの噂もまたまた再加熱しつつあったのだけど、昨日のリオとの食事中の会話が何処からか漏れたらしい。
リオに関してはレイが徹底的な情報規制を張っているらしく2人でいても噂になるような事はなかった。
とはいっても城の兵士や侍女って本当に怖いわ。彼らを敵に回したら外堀から確実に身の破滅へ追い込まれる気がしてならないもの。
新聞を部屋の机に投げ出して「はぁ…」と私は溜息をつく。
その新聞の上にタイミングを見計らったかのようにテディからの魔法使い便がパラリと降ってくる。
「きゃぁ!」
と思わず悲鳴を上げて真っ赤になっていると、またまたタイミングを見計らったの如く、「何事だ!」と、レイとお兄様が部屋の中に押し入ってきた。
真っ赤になって両手を上げて机から仰け反っている私に2人は怪訝そうな顔を向けてくる。
「なんでも、なんでもないから!それよりどうしたの?こんな朝早くに」
レイはチラリと机の上に目線を送ると、一瞬だけ呆れた顔をしてから要件を述べた。
「陛下がお前と叔父上に大事な話があると。…嫌なら断っても、むしろ逃げてもいいぞ?」
まだ話も聞いていないうちから断ってもいいとはどういう事なのかしら?
しかも逃げていいだなんてレイらしくもない。
「それはレイにとって都合の悪いお話だからなのかしら?」
私がそう言うと今度は打って変わって険しい顔でレイは言う。後ろに控えているお兄様も何処か青い顔をしている。
「否定はしない。が、お前にとってもいい話では無いだろうな…」
しんと静まり返る室内の空気に私はなんだかとても嫌な予感が過る。
まさか用もないのに城に滞在している事を今更咎めるわけではないわよね?
お父様も呼び出されてってどういう事かしら。
思いつく限りでは半獣族のお祭り計画を勝手にやってる事に問題があるとかなのかしら?
「レティ、その…」
と、お兄様は何か言いたげに口を開いたものの、直ぐにギュッと唇を噛み締めて俯いてしまう。
(ううん。これは本当に何か良くない事を言われるのね)
「レイがわざわざ陛下って呼んでるんですもの。話を聞く前に逃げるなんて流石に出来ないわ。すぐに伺います」
「そうか…外で待ってる。支度が出来たら案内する」
レイはそう言って踵を返し、王子然として堂々と部屋から出て行った。入れ替わるように城に仕える侍女達がバタバタと部屋の中へ慌ただしく入ってきた。
着ていたドレスを脱ぎ捨てて、重い気を引き締めるかのように再びコルセットをキツく締め直して貰う。
新しいドレスに着替えると、髪を整え化粧をし、最低限の宝飾品を身につけて私は部屋から出るとレイに手を引かれて伯父様の元へと向かった。
謁見室へ向かうのかと思ったらどうやらそうではなく、以前忍び込んだ事のある王の寝室へと通された。
中には既に厳しくも青い顔をしたお父様が伯父様と共にそこに居た。
更に伯父様の隣には伯母様までも悲しそうな顔で俯いていた。
私は訝しげに思いながらも粛々と伯父様にスカートの裾を摘まんで一礼をして見せた。
いつも私に目尻を下げて出迎えてくれる伯父様も、難しい顔で私を出迎え小さく頷いて私を出迎えた。
「朝早くにすまない。あまり公の場でこの話はしたくなくてなぁ…」
眉間にしわを寄せて唸る伯父様に「貴方…」と伯母様が心配そうに寄り添う。
伯父様は「うむ…」と頷くと、私の両手を握って諭すかのようにゆっくりと話し始めた。
「実は、お前に縁談が来ている」
「縁談?」
と、私は復唱して眉を顰める。
お父様が縁談を持って来るのは判るわ。父親ですもの。そこは当たり前だわ。
でも、どうして伯父様が私の縁談話をするのかしら?
どこかこの先は言いたく無いとでも言うように視線をウロウロと漂わせる伯父様に「ゴホン!」と呆れたようにレイが咳をして見せる。
伯父様は「うっ」と詰まると、ポツリポツリと言い訳混じりに言葉を続けた。
「この話はワシから言い出したものでもなければ、まだ正式なものではない。嫌ならば断っても構わないし…寧ろ逃げてもいいんじゃよ?」
レイと同じ事を言うのは親子だからなのかしら?
「お話を聞く前からそのような事を言われてもワタクシも困りますわ。レイにも伯父様にも都合が悪い相手なんですの?一体どなたなのです?」
要領を得ない私は苛立たしげに伯父様に問い詰めると、伯父様はまたまたバツが悪そうに答えた。
「都合か…都合と言えばワシにとっては都合の良い話と言えるだろうなぁ…」
「貴方!!」
「父上!!」
「「陛下!!」」
伯母さま、レイ、お父様、お兄様と室内にいる私以外の人間から一斉に咎められ、伯父様は居心地が悪そうに身を縮こませ、ため息混じりに予想もつかなかった相手の名前を私に告げた。
「お相手は同盟国リン・プ・リエン国国王エルネスト・バルフ・ラスキン殿だ」
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