ウイニー王国のワガママ姫
ノートウォルドを彷徨って 3
バツが悪い顔でダニエルは私の名前を呼ぶ。
その瞬間ゾッと鳥肌が全身を駆け抜けて行った。
「様とかやめてよ!気持ち悪いわ!そもそも何でダニエルがここに居るのよ」
私がジロリと彼を睨みつけると「うっ…」とダニエルは声を上げて決まりが悪そうに頭を掻いた。
「だって、流石にマズイだろ。俺はハニーに言われた通り激しく後悔してんだよ。よくて侯爵だと思ってたのにまさか公爵で皇太子の従兄妹とは…」
侯爵だったら後悔しないのかと思わずツッコミたくなるのを堪えて、少し大袈裟に溜息を吐き出してみせる。
「貴方がまさか本当に後悔するとは思わなかったわ。恋人になって欲しいとか結婚して欲しいとかは流石に思えないけど、余所余所しくされるのは流石に寂しいわ」
「っぐ……今、さり気なく俺を傷つける台詞が含まれていたぞ…」
ダニエルは胸を押さえながらフラフラと後ろにたじろぐ。
えっ?後悔してると言っておきながら、もしかしてまだ諦めて無かったのかしら?
取り敢えず見なかった事にしておいて再度ダニエルに尋ねる。
「そんな事より、何でダニエルはココに居るの?まさかまた家出して来たわけじゃ無いわよね?」
ジトリとダニエルを睨み付けると、ダニエルは「そんな事って…」と頭を落とし、溜息交じりに答えた。
「ハニーのおかげで父上とは歩み寄る事が出来たんだ。感謝してるし、また同じような事には絶対なら無いと誓うぞ。あの後、皇太子殿下から手紙を頂いて、今は殿下の手足になって働いてんだ。諜報員って奴だな。あ、これ内緒だぞ?」
ニッと少し照れたように笑うダニエルを私はマジマジと凝視した。
ダニエルが諜報員?!レイは一体何を考えているのかしら?
「なんでそんな危険な事!あなた嫡子でしょう?何かあったらどうする気なのよ」
「あー。うん。その辺は父上と話し合って弟が家督を継ぐことになったから問題無いんだ。それに皇太子殿下に見込まれたなら嫌とは言えないだろ?俺の旅行記を読んでくれたらしくって向いてるだろうってさ。実際俺も一所でジッとしてるより動き回る方が性に合ってるからな」
何でもないように答えるダニエルに軽く目眩を覚える。
レイがレイならダニエルもダニエルだわ…家督を継がないって言っても諜報員以外にも道はいくらでもあると思うの。大体今この町は町ぐるみで人身売買を行ってる可能性があって、ただでさえ危険なーー
と、思った所ではたと気がつく。
「もしかして、ダニエル、ココには半獣族の問題で潜伏してたりするのかしら…?」
それを聞いてダニエルは「おっ?」と声を上げる。
「そうそう。かれこれ半月程になるか?いや〜来た事があるとはいえ、この町複雑に入り組んでるから流石に細部まで調べるのに手間がかかったぞ。そろそろ俺の仕事は終わりだから引き上げるように言われてたんだが、数日前に殿下からもう少し留まる様に言われてな。ハニーがそっちに向かってるから回収して来いってな」
しししと笑ってダニエルはとんでもない事をサラッという。
「回収ですって?!人をなんだと思ってるのかしら!私はまだ帰らないわよ。せめてはぐれた友達を見つけてからじゃないとここを動かないわ」
ダニエルから離れるように警戒すると、ヤレヤレとダニエルは首を振って肩を竦める。
「俺だってハニーに手荒な真似はしたくないし、危険な目にも合わせたくないんだ。そこんとこわかってくれねぇかなぁ?はぐれた友達ってのはメルの事か?だったらまだ潜伏してる仲間に話して探しておいてやるからハニーは俺と一緒に帰ろう。な?」
そう言って私の腕を掴もうとするダニエルの手をパッと払いのけた。
「違う。メルはここから逃げてきたっていう半獣族の女の子を連れて王都に助けを求めて向かったわ。私が探しているのは…」
「なんだって?!」
私の言葉を遮るようにダニエルは驚愕の叫び声を上げて私の肩に掴みかかる。
「メルは、メルがどうしたって?!誰と一緒だって言った?!」
力任せに掴むダニエルの指が肩に食い込んでギシリと骨が悲鳴を上げる。
あまりの強さに私は顔を顰めてダニエルの腕を掴んだ。
「ダニエル痛いっ!だから、メルはここから逃げてきた半獣族の女の子を連れてレイに助けを求めるように頼んだのよ。小さな女の子だし連れ回してここを調べるわけにはいかないでしょう?」
ダニエルは一言「悪い…」と呟いて某然とした表情で私の肩から手を下ろした。
その顔色は実に青い。
「ダニエル?どうかしたの…?顔色が悪いけど大丈夫?」
険しい顔で私を見つめるダニエルに私は一抹の不安を覚える。
さっきのダニエルのセリフはメルとピアが一緒にいる事がまるで悪い事の様な言い方だった。
やっぱり町ぐるみで監視してるから、メル1人だとピアを守るにはあまりに無謀だって事なのかしら…
不安げにダニエルを見つめていると、ダニエルはハッとして周囲を確認し、突然私の腕を掴むと強引に引っ張って裏路地の奥へと足早に歩き出す。
「ちょっ、ダニエル!?何処に行くつもりなの?私はまだ帰らないってっ!」
「ちょっと黙って。流石にここじゃ話せない。話は安全な場所に行ってからだ」
いつになく真剣なダニエルの横顔を見つめながら、私は息を飲んで無言で後をついて行く。
周囲を警戒しつつ向かった先は、町の西側にあるそこそこ大きな商家だった。
裏門から屋敷の中へ入り連れられるがまま居間の方へ進むと、そこには何処か初対面とは思えない赤味がかった栗茶色の髪を持つ凛々しい顔つきの男性と、城で顔を見たことがある幾人かの兵達がテーブルを囲んでいて、驚いた顔で私達に注目した。
「レティアーナ様…?」
と、兵の中の誰かがポツリと呟いた。
ええっと…状況がよく掴めないんだけど…ここはとりあえず挨拶をしておくべきかしら?
私はポカーンとしている兵達に余裕のある笑みを浮かべて粛々と挨拶をしてみせた。
「ごきげんよう皆さん、お久しぶりですわ。ええと、そちらの御仁は初めまして。ですわよね?」
栗茶色の髪の男性に向かってそう言うと、少し迷惑そうに眉を顰めてからすくっと立ち上がり、私の前に立ちはだかった。
が、あろうことか私を無視してダニエルに声を掛ける。
「おい、レイ王子の勅命があって帰ったんじゃ無かったのか?ここは女子供の避難場所じゃないんだぞ!後をつけられでもしたらどうする気だ」
苛立たしげに声を荒げる彼を少しムッとして睨み付けていると、ダニエルは困ったように頭を掻きながら言い訳をした。
「ただの女子供で何も問題が無ければココに連れてこようなんて思いませんよ。ちょっとややこしい事になってそうだったから連れて来たんです」
ダニエルの言葉にますます眉を釣り上げると、彼は私をじっと睨んできた。
「ただの女子供で無いならこいつは何だというのだ」
こ、こいつですって?!
初対面で無視しておいて、しかもこいつ呼ばわりってあんまりじゃないかしら?!
腸が煮えくり返る思いを必死で押さえながら、私はニッコリと微笑んで彼を見上げる。
「初めまして。ワタクシ、ビセット公の娘でレティアーナ・ビセットと申します。ついこの間までベルンに留学していたものですから最近のウイニーの時勢には疎くって…貴方様のお名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」
何と無くここで"アサル"を名乗るのは癪に障ると思って女王から頂いた真名を隠す。
せっかく頂いたのに初めて名乗るのがこの無礼な男だというのは名が穢れそうだと思ったのだ。
そして男はビセットの名前を聞いてもピンと来ないのか、首を捻る彼に後ろからこそっと兵の1人が、「皇太子様の従兄妹姫です」と説明をすると驚いた顔で私をマジマジと観察した。
(そこまで言われないと気が付かないって珍しいわね。ここ2年の間に来た移民の人なのかしら?)
私が怪訝に首を傾げると、彼は気を取り直すように微笑を浮かべて恭しく私に挨拶をした。
「これは失礼致しました。私はリオと申します。レイ王子に頼まれてここで陣頭指揮の手伝いをしているものです」
以後お見知り置きを。と言って私の手の甲に軽く唇を落とす。
形ばかりの挨拶にイライラしつつも微笑を浮かべた彼の顔が何処かで引っ掛かっていた。
「あの、本当に初めまして。ですわよね?」
思わずリオと名乗った男性に尋ねると、彼も怪訝な顔をして少々皮肉げに私に答えた。
「残念ながら貴女の様に美しい姫君にお会いする機会は今までの人生の中で1度たりともありませんでしたが?」
言葉では確かに褒めているのに、なんなんだろうこの棘のある言い方は。
少なからず男性からここまで敵意(?)を向けられた態度を取られた記憶は、私の人生においてもレイ以外には無いので会った事があるというのは勘違いなのだろうと結論づける。
しかし、私は彼に何か気の触るような事をした覚えがないのだけど?
釈然としない思いを抱えながら、
「あら、ごめんなさい。ワタクシ勘違いをしていたみたいですわ。きっと極あり触れた似たような顔を何処かで見かけて錯覚を起こしたのね。だってワタクシを無視する様な男性は今まで1度もいらっしゃらなかったもの」
と、少々…かなり、高飛車に嫌味を言って返した。
ツンと顔を横に背けて不機嫌を表すと、部屋の温度が一気に下がったのを感じる。
(う…またやってしまった……どうしてこう私は売られた喧嘩は買わずにいられないのかしら)
チラリと彼を横目で見ると、引きつった顔でこちらを睨み返していた。
これは凄く怒ってるわ…とかなり後悔をして肝を冷やしていると、ダニエルが助け舟を出すかのように「あ〜…」と小さく声を上げ、
「挨拶はそれ位にしてそろそろ説明をさせて貰いたいんだけど、宜しいでしょうか?」
と、何とも気まずそうに頭を掻いた。
その瞬間ゾッと鳥肌が全身を駆け抜けて行った。
「様とかやめてよ!気持ち悪いわ!そもそも何でダニエルがここに居るのよ」
私がジロリと彼を睨みつけると「うっ…」とダニエルは声を上げて決まりが悪そうに頭を掻いた。
「だって、流石にマズイだろ。俺はハニーに言われた通り激しく後悔してんだよ。よくて侯爵だと思ってたのにまさか公爵で皇太子の従兄妹とは…」
侯爵だったら後悔しないのかと思わずツッコミたくなるのを堪えて、少し大袈裟に溜息を吐き出してみせる。
「貴方がまさか本当に後悔するとは思わなかったわ。恋人になって欲しいとか結婚して欲しいとかは流石に思えないけど、余所余所しくされるのは流石に寂しいわ」
「っぐ……今、さり気なく俺を傷つける台詞が含まれていたぞ…」
ダニエルは胸を押さえながらフラフラと後ろにたじろぐ。
えっ?後悔してると言っておきながら、もしかしてまだ諦めて無かったのかしら?
取り敢えず見なかった事にしておいて再度ダニエルに尋ねる。
「そんな事より、何でダニエルはココに居るの?まさかまた家出して来たわけじゃ無いわよね?」
ジトリとダニエルを睨み付けると、ダニエルは「そんな事って…」と頭を落とし、溜息交じりに答えた。
「ハニーのおかげで父上とは歩み寄る事が出来たんだ。感謝してるし、また同じような事には絶対なら無いと誓うぞ。あの後、皇太子殿下から手紙を頂いて、今は殿下の手足になって働いてんだ。諜報員って奴だな。あ、これ内緒だぞ?」
ニッと少し照れたように笑うダニエルを私はマジマジと凝視した。
ダニエルが諜報員?!レイは一体何を考えているのかしら?
「なんでそんな危険な事!あなた嫡子でしょう?何かあったらどうする気なのよ」
「あー。うん。その辺は父上と話し合って弟が家督を継ぐことになったから問題無いんだ。それに皇太子殿下に見込まれたなら嫌とは言えないだろ?俺の旅行記を読んでくれたらしくって向いてるだろうってさ。実際俺も一所でジッとしてるより動き回る方が性に合ってるからな」
何でもないように答えるダニエルに軽く目眩を覚える。
レイがレイならダニエルもダニエルだわ…家督を継がないって言っても諜報員以外にも道はいくらでもあると思うの。大体今この町は町ぐるみで人身売買を行ってる可能性があって、ただでさえ危険なーー
と、思った所ではたと気がつく。
「もしかして、ダニエル、ココには半獣族の問題で潜伏してたりするのかしら…?」
それを聞いてダニエルは「おっ?」と声を上げる。
「そうそう。かれこれ半月程になるか?いや〜来た事があるとはいえ、この町複雑に入り組んでるから流石に細部まで調べるのに手間がかかったぞ。そろそろ俺の仕事は終わりだから引き上げるように言われてたんだが、数日前に殿下からもう少し留まる様に言われてな。ハニーがそっちに向かってるから回収して来いってな」
しししと笑ってダニエルはとんでもない事をサラッという。
「回収ですって?!人をなんだと思ってるのかしら!私はまだ帰らないわよ。せめてはぐれた友達を見つけてからじゃないとここを動かないわ」
ダニエルから離れるように警戒すると、ヤレヤレとダニエルは首を振って肩を竦める。
「俺だってハニーに手荒な真似はしたくないし、危険な目にも合わせたくないんだ。そこんとこわかってくれねぇかなぁ?はぐれた友達ってのはメルの事か?だったらまだ潜伏してる仲間に話して探しておいてやるからハニーは俺と一緒に帰ろう。な?」
そう言って私の腕を掴もうとするダニエルの手をパッと払いのけた。
「違う。メルはここから逃げてきたっていう半獣族の女の子を連れて王都に助けを求めて向かったわ。私が探しているのは…」
「なんだって?!」
私の言葉を遮るようにダニエルは驚愕の叫び声を上げて私の肩に掴みかかる。
「メルは、メルがどうしたって?!誰と一緒だって言った?!」
力任せに掴むダニエルの指が肩に食い込んでギシリと骨が悲鳴を上げる。
あまりの強さに私は顔を顰めてダニエルの腕を掴んだ。
「ダニエル痛いっ!だから、メルはここから逃げてきた半獣族の女の子を連れてレイに助けを求めるように頼んだのよ。小さな女の子だし連れ回してここを調べるわけにはいかないでしょう?」
ダニエルは一言「悪い…」と呟いて某然とした表情で私の肩から手を下ろした。
その顔色は実に青い。
「ダニエル?どうかしたの…?顔色が悪いけど大丈夫?」
険しい顔で私を見つめるダニエルに私は一抹の不安を覚える。
さっきのダニエルのセリフはメルとピアが一緒にいる事がまるで悪い事の様な言い方だった。
やっぱり町ぐるみで監視してるから、メル1人だとピアを守るにはあまりに無謀だって事なのかしら…
不安げにダニエルを見つめていると、ダニエルはハッとして周囲を確認し、突然私の腕を掴むと強引に引っ張って裏路地の奥へと足早に歩き出す。
「ちょっ、ダニエル!?何処に行くつもりなの?私はまだ帰らないってっ!」
「ちょっと黙って。流石にここじゃ話せない。話は安全な場所に行ってからだ」
いつになく真剣なダニエルの横顔を見つめながら、私は息を飲んで無言で後をついて行く。
周囲を警戒しつつ向かった先は、町の西側にあるそこそこ大きな商家だった。
裏門から屋敷の中へ入り連れられるがまま居間の方へ進むと、そこには何処か初対面とは思えない赤味がかった栗茶色の髪を持つ凛々しい顔つきの男性と、城で顔を見たことがある幾人かの兵達がテーブルを囲んでいて、驚いた顔で私達に注目した。
「レティアーナ様…?」
と、兵の中の誰かがポツリと呟いた。
ええっと…状況がよく掴めないんだけど…ここはとりあえず挨拶をしておくべきかしら?
私はポカーンとしている兵達に余裕のある笑みを浮かべて粛々と挨拶をしてみせた。
「ごきげんよう皆さん、お久しぶりですわ。ええと、そちらの御仁は初めまして。ですわよね?」
栗茶色の髪の男性に向かってそう言うと、少し迷惑そうに眉を顰めてからすくっと立ち上がり、私の前に立ちはだかった。
が、あろうことか私を無視してダニエルに声を掛ける。
「おい、レイ王子の勅命があって帰ったんじゃ無かったのか?ここは女子供の避難場所じゃないんだぞ!後をつけられでもしたらどうする気だ」
苛立たしげに声を荒げる彼を少しムッとして睨み付けていると、ダニエルは困ったように頭を掻きながら言い訳をした。
「ただの女子供で何も問題が無ければココに連れてこようなんて思いませんよ。ちょっとややこしい事になってそうだったから連れて来たんです」
ダニエルの言葉にますます眉を釣り上げると、彼は私をじっと睨んできた。
「ただの女子供で無いならこいつは何だというのだ」
こ、こいつですって?!
初対面で無視しておいて、しかもこいつ呼ばわりってあんまりじゃないかしら?!
腸が煮えくり返る思いを必死で押さえながら、私はニッコリと微笑んで彼を見上げる。
「初めまして。ワタクシ、ビセット公の娘でレティアーナ・ビセットと申します。ついこの間までベルンに留学していたものですから最近のウイニーの時勢には疎くって…貴方様のお名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」
何と無くここで"アサル"を名乗るのは癪に障ると思って女王から頂いた真名を隠す。
せっかく頂いたのに初めて名乗るのがこの無礼な男だというのは名が穢れそうだと思ったのだ。
そして男はビセットの名前を聞いてもピンと来ないのか、首を捻る彼に後ろからこそっと兵の1人が、「皇太子様の従兄妹姫です」と説明をすると驚いた顔で私をマジマジと観察した。
(そこまで言われないと気が付かないって珍しいわね。ここ2年の間に来た移民の人なのかしら?)
私が怪訝に首を傾げると、彼は気を取り直すように微笑を浮かべて恭しく私に挨拶をした。
「これは失礼致しました。私はリオと申します。レイ王子に頼まれてここで陣頭指揮の手伝いをしているものです」
以後お見知り置きを。と言って私の手の甲に軽く唇を落とす。
形ばかりの挨拶にイライラしつつも微笑を浮かべた彼の顔が何処かで引っ掛かっていた。
「あの、本当に初めまして。ですわよね?」
思わずリオと名乗った男性に尋ねると、彼も怪訝な顔をして少々皮肉げに私に答えた。
「残念ながら貴女の様に美しい姫君にお会いする機会は今までの人生の中で1度たりともありませんでしたが?」
言葉では確かに褒めているのに、なんなんだろうこの棘のある言い方は。
少なからず男性からここまで敵意(?)を向けられた態度を取られた記憶は、私の人生においてもレイ以外には無いので会った事があるというのは勘違いなのだろうと結論づける。
しかし、私は彼に何か気の触るような事をした覚えがないのだけど?
釈然としない思いを抱えながら、
「あら、ごめんなさい。ワタクシ勘違いをしていたみたいですわ。きっと極あり触れた似たような顔を何処かで見かけて錯覚を起こしたのね。だってワタクシを無視する様な男性は今まで1度もいらっしゃらなかったもの」
と、少々…かなり、高飛車に嫌味を言って返した。
ツンと顔を横に背けて不機嫌を表すと、部屋の温度が一気に下がったのを感じる。
(う…またやってしまった……どうしてこう私は売られた喧嘩は買わずにいられないのかしら)
チラリと彼を横目で見ると、引きつった顔でこちらを睨み返していた。
これは凄く怒ってるわ…とかなり後悔をして肝を冷やしていると、ダニエルが助け舟を出すかのように「あ〜…」と小さく声を上げ、
「挨拶はそれ位にしてそろそろ説明をさせて貰いたいんだけど、宜しいでしょうか?」
と、何とも気まずそうに頭を掻いた。
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