ウイニー王国のワガママ姫
帰国の末 5
=====
クレクソン領は小さな地域ではあるけど、観光客が多い所為かあまり閉鎖的な地域という印象は受けなかった。
それはどうもクレクソン伯爵の人柄を表すのに十分な判断材料だったらしく、トレンス子爵立会の元、初回交渉にしてはかなりスムーズに話し合う事が出来た。
更に幸運な事に、クレクソン伯爵は近隣地域で半獣族が住んでいる地域の領主達に向けて紹介状を書いて下さった。
「一応ではございますが、この近隣の全ての領主へ向けて紹介状を書かせて頂きますが、差別が特に酷い地域は今回は形ばかりお声をかけて除外なさった方が良いかと思いますよ」
と、クレクソン伯はアドバイスしてくれた。
クレクソン伯の話によると、ベルンやリン・プ・リエンの国境付近に住む領主達は比較的協力的だろうとの事だったが、海側の街の領主達はどちらかというと否定的な人が多いらしい。
ベルンやリン・プ・リエンは半獣族が普通に住んでいる事もあってその辺の抵抗があまり無いらしいのだが、海側は海向こうの未開領域に対して警戒心が強い傾向にある所為か、半獣族に対する差別意識が強くなってしまっているとの事だった。
以前、国王である叔父様を説得するために連れ出した王都に程近い場所にあるリンドブル伯爵領にあるセグ地方も思えば海に程近かった。
そう考えると、国の南側の地域より北西の地域の方が差別が厳しいのかもしれない。
「このような催し物をなさるのであれば毎年の恒例行事になさった方がいい。そうなると初回の成功は必要不可欠。ですから足を引っ張る地域は今は除外して、協力的で且つわだかまりの少ない地域を重点的に誘うのが効果的かと」
クレクソン伯の提案に神妙に頷いてみせる。
「外から埋めて、徐々に参加者を増やして行けばいいということですね。ありがとうございます。初めに立ち寄ったのがこちらで良かった」
ホッと胸を撫で下ろして、笑顔でクレクソン伯にお礼を言う。
すると伯も笑顔で頷いてくれた。
「協力は惜しみませんので、何か困ったことや相談に乗って欲しい事が御座いましたらいつでもご連絡下さい」
初回にして頼もしい協力者を得て、私はホクホク顏で宿に戻ったのだった。
=====
それから直ぐに私は行動に移した。
クレクソン伯の紹介状を頼りに周辺地域を駆け回り、気がつけばそれだけで半月近く経過していた。
それでもなんとか交渉できた地域は多いと言えるのではないだろうか。
もっとも脱落者が出ないとも限らないので気は抜けない。
南側の地域の交渉が一段落したところで、私達はようやくフェンスに入ったのだった。
肌の色はだいぶ白みを帯びて来てはいたが、まだまだ黒いと言わざるを得ない。
「やっとフェンスに入りましたね。ウイニーに帰ってきてるのにサッパリ帰って来た気がしませんよ」
ガックリとメルは肩を落として嘆いた。
「でもほら、正念場だから。それに薬が手に入れば念願の美白が待ってるわよ?」
ふふふっと笑って見せると、メルも少し元気を取り戻した。
「早くかかとの折れたハイヒール亭に行きましょう!ボクだいぶ前にアルダに手紙を出しておいたので材料は届いている筈ですよ」
流石私の小間使い。こういう所は抜かりがない。
とはいえ、あまりに遅いからアルダ怒ってたりしないかしら?
むしろ家を飛び出した事で今更ながら怒られる気がするわ…
「メル、少しだけゆっくり歩いて行かない?」
引き攣る笑顔でメルを見上げると、何か勘違いしたらしく、にっこり笑ってメルが楽しそうに返事をした。
「久し振りだからって照れる必要は無いですよ!あ、でも確かにもう店に入るのは辞めた方がいいですからね…判りました。ボク取ってくるので、宿で待っていて下さい!」
「え、あ、いや、そうじゃなくって!」
待って!と引き止める間も無く、メルは颯爽と走り出してしまい、あっという間に人混みの中に消えて行ってしまった。
会えないのは会えないのでなんだか寂しいのだけど、更にアルダの不況を買うのもそれはそれで恐ろしいので宿で大人しく待つことにしたのだった。
クレクソン領は小さな地域ではあるけど、観光客が多い所為かあまり閉鎖的な地域という印象は受けなかった。
それはどうもクレクソン伯爵の人柄を表すのに十分な判断材料だったらしく、トレンス子爵立会の元、初回交渉にしてはかなりスムーズに話し合う事が出来た。
更に幸運な事に、クレクソン伯爵は近隣地域で半獣族が住んでいる地域の領主達に向けて紹介状を書いて下さった。
「一応ではございますが、この近隣の全ての領主へ向けて紹介状を書かせて頂きますが、差別が特に酷い地域は今回は形ばかりお声をかけて除外なさった方が良いかと思いますよ」
と、クレクソン伯はアドバイスしてくれた。
クレクソン伯の話によると、ベルンやリン・プ・リエンの国境付近に住む領主達は比較的協力的だろうとの事だったが、海側の街の領主達はどちらかというと否定的な人が多いらしい。
ベルンやリン・プ・リエンは半獣族が普通に住んでいる事もあってその辺の抵抗があまり無いらしいのだが、海側は海向こうの未開領域に対して警戒心が強い傾向にある所為か、半獣族に対する差別意識が強くなってしまっているとの事だった。
以前、国王である叔父様を説得するために連れ出した王都に程近い場所にあるリンドブル伯爵領にあるセグ地方も思えば海に程近かった。
そう考えると、国の南側の地域より北西の地域の方が差別が厳しいのかもしれない。
「このような催し物をなさるのであれば毎年の恒例行事になさった方がいい。そうなると初回の成功は必要不可欠。ですから足を引っ張る地域は今は除外して、協力的で且つわだかまりの少ない地域を重点的に誘うのが効果的かと」
クレクソン伯の提案に神妙に頷いてみせる。
「外から埋めて、徐々に参加者を増やして行けばいいということですね。ありがとうございます。初めに立ち寄ったのがこちらで良かった」
ホッと胸を撫で下ろして、笑顔でクレクソン伯にお礼を言う。
すると伯も笑顔で頷いてくれた。
「協力は惜しみませんので、何か困ったことや相談に乗って欲しい事が御座いましたらいつでもご連絡下さい」
初回にして頼もしい協力者を得て、私はホクホク顏で宿に戻ったのだった。
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それから直ぐに私は行動に移した。
クレクソン伯の紹介状を頼りに周辺地域を駆け回り、気がつけばそれだけで半月近く経過していた。
それでもなんとか交渉できた地域は多いと言えるのではないだろうか。
もっとも脱落者が出ないとも限らないので気は抜けない。
南側の地域の交渉が一段落したところで、私達はようやくフェンスに入ったのだった。
肌の色はだいぶ白みを帯びて来てはいたが、まだまだ黒いと言わざるを得ない。
「やっとフェンスに入りましたね。ウイニーに帰ってきてるのにサッパリ帰って来た気がしませんよ」
ガックリとメルは肩を落として嘆いた。
「でもほら、正念場だから。それに薬が手に入れば念願の美白が待ってるわよ?」
ふふふっと笑って見せると、メルも少し元気を取り戻した。
「早くかかとの折れたハイヒール亭に行きましょう!ボクだいぶ前にアルダに手紙を出しておいたので材料は届いている筈ですよ」
流石私の小間使い。こういう所は抜かりがない。
とはいえ、あまりに遅いからアルダ怒ってたりしないかしら?
むしろ家を飛び出した事で今更ながら怒られる気がするわ…
「メル、少しだけゆっくり歩いて行かない?」
引き攣る笑顔でメルを見上げると、何か勘違いしたらしく、にっこり笑ってメルが楽しそうに返事をした。
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