ウイニー王国のワガママ姫
進む道歩むべき道 1
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宮殿に入ると、まず大きなアトリウムが目に飛び込んできた。
貯水池を兼ねた大きな水盤の上には屋根がなく、その周りには街中では見られないような植物が生い茂っていた。
アトリウムを迂回するように奥へ進むと、今度は大きな白い柱が幾つも立ち並ぶホールへ出てきた。
絵画や美術品もない一見シンプルとも思えるホールだが、よく見ると壁や柱に蔦や花の彫刻が施されていて、床には赤と金糸の刺繍をあしらった絨毯がどこまでも続くように敷かれていた。
そのホールを左に曲がり、階段を上った少しだけ奥まった部屋に案内された。
客室は天蓋付きのウイニーに比べると半分くらいの高さしかない低いベッドが置いてあり、鮮やかなシルクでできた枕やクッションが置いてあった。
調度品も主張しない程度に豪華な色合いのものが用意されていた。
『失礼致します。お召し替えのお手伝いに参りました』
突然背後からそう言われ、ギョッとして振り返ると、薄い水色の民族衣装を身に纏った侍女と思しき若い女性が、女性が着ている衣装と同じような薄手のピンク色の衣装を手にして立っていた。
顔は薄いベールを鼻から下にかけていてよく見えないけど、結構綺麗な女性だと思う。
しかしその格好が…ビキニに透けた布を巻いたような格好で、女性の私でも目のやり場に困る大胆な衣装だった。
まさか私もこんな格好をさせられるんだろうか…?
しかし侍女はこちらの都合も御構い無しに、私が口を開く前にあれよあれよと服を脱がされ着替えさせられてしまった。
幸いにも侍女程露出の高い服ではなかったが、腰が出ているのが何とも落ち着かなかった。
ピンク色の衣装には糸で編んだ小さな花を型取った飾りが幾つも縫い付けられていて、なんとも可愛らしいデザインだった。
侍女が去った後、私は着ていた服から懐中時計を取り出して腰巻の下に隠すように身につけた。
着替えを済ませ部屋を出ると、外では先程の兵士が待機していた。
『早速ですが、陛下がお待ちですのでのでご案内させて頂きます。どうぞこちらへ』
案内されるままについて行くと先ほどの広間から中央の廊下を通って、さらに中庭へ出る。
外は既に暗く、空には月が顔を出していた。
中庭は篝火で照らされていて、何とも幻想的な雰囲気を演出している。
中庭を突っ切る形で宮殿の奥へ進むと、そこは王の謁見室になっていた。
広間とは違い、少しだけ暗い室内には何かの香が焚き染められていて妖艶とも言える薄紫の煙が充満していた。
室内は少し暗い朱色で統一され、玉座に続く廊下の両脇には影に隠れるように兵士が何人も控えている気配が感じ取れる。
緊張しつつゆっくり遠くへ進むと、煙で霞んで見えなかった上段にある玉座が徐々に見えてきた。
玉座の手前まで進むと、
『着たか』
と、部屋の雰囲気と似つかわしくない澄んだ声が奥から聞こえてきた。
謁見室の最奥の玉座は天蓋に囲まれているものの布が閉まっておらず、その人物の姿ははっきりと捉えることができた。
私はその姿に目を瞠った。
『待っておったぞ。ユニコーンに愛されし乙女よ。我は第12第皇王、ライリ・ミナー・ヌールじゃ』
金糸の衣装に身を包むその姿は、色素の薄いラベンダー色の髪を携え、衣装と同じ金色の瞳を宿して何とも神秘的なオーラを解き放っているものの、白い肌に愛らしい大きな瞳、ふくよかなピンク色の頬、華奢で小さな手をしていて、どこからどう見ても齢6歳前後の少女だった。
私はハッとして慌てて膝を着き、頭を下げ挨拶をする。
『お初にお目にかかります。ワタクシはーー』
『あー、よいよい。全てわかっておる。ここで名乗る必要も膝を折る必要もないぞ。楽にされよ』
私が全て言い終わる前に幼い女王は気さくに話しかけてきた。
一見あどけない笑顔には部屋の雰囲気の所為なのか、やはり何処か妖艶な雰囲気がある。
(楽に、と言われても…)
戸惑っていると、裏に控えていたと思われる侍女がクッションを持って現れた。
おずおずと座ると侍女は私にクッションをあてがい、音も立てずにその場から立ち去る。
再び女王に視線を戻すと、後ろで何かがピクピク動いているのが目に入った。
女王が寄りかかり、丁寧に撫でているそれはよく見るとオレンジ色のとても大きな猫だった。
猫には大きな牙が生えていて、獰猛な動物にも見えるその姿と異なり、愛らしい表情でとても気持ち良さそうに眠っている。
目を瞬いて、まじまじと観察していると、女王がその視線に気が付いてくすくすと笑い出した。
『こやつが気になるか?こやつはこの国の守護獣の眠虎じゃ。滅多に起きないし滅多に動かんから安心されよ』
守護獣…ってことは神獣って事よね?
実体としてここにずっといるって事?!
神獣は土地のつながりと契約者の精神力や、契約者とのつながりの強さで自在に使役することが出来るってリヴェル侯は言ってたけど…
常にこの場にいるとすると、女王の精神力は相当強いって事よね?!
『さて、早速じゃが本題に入ろうかの。妾がお主を呼んだのは他でもない、お主の見た夢に対して少し手助けをしてやろうと思うての』
『あ、あの待って下さい!』
宮殿に入ると、まず大きなアトリウムが目に飛び込んできた。
貯水池を兼ねた大きな水盤の上には屋根がなく、その周りには街中では見られないような植物が生い茂っていた。
アトリウムを迂回するように奥へ進むと、今度は大きな白い柱が幾つも立ち並ぶホールへ出てきた。
絵画や美術品もない一見シンプルとも思えるホールだが、よく見ると壁や柱に蔦や花の彫刻が施されていて、床には赤と金糸の刺繍をあしらった絨毯がどこまでも続くように敷かれていた。
そのホールを左に曲がり、階段を上った少しだけ奥まった部屋に案内された。
客室は天蓋付きのウイニーに比べると半分くらいの高さしかない低いベッドが置いてあり、鮮やかなシルクでできた枕やクッションが置いてあった。
調度品も主張しない程度に豪華な色合いのものが用意されていた。
『失礼致します。お召し替えのお手伝いに参りました』
突然背後からそう言われ、ギョッとして振り返ると、薄い水色の民族衣装を身に纏った侍女と思しき若い女性が、女性が着ている衣装と同じような薄手のピンク色の衣装を手にして立っていた。
顔は薄いベールを鼻から下にかけていてよく見えないけど、結構綺麗な女性だと思う。
しかしその格好が…ビキニに透けた布を巻いたような格好で、女性の私でも目のやり場に困る大胆な衣装だった。
まさか私もこんな格好をさせられるんだろうか…?
しかし侍女はこちらの都合も御構い無しに、私が口を開く前にあれよあれよと服を脱がされ着替えさせられてしまった。
幸いにも侍女程露出の高い服ではなかったが、腰が出ているのが何とも落ち着かなかった。
ピンク色の衣装には糸で編んだ小さな花を型取った飾りが幾つも縫い付けられていて、なんとも可愛らしいデザインだった。
侍女が去った後、私は着ていた服から懐中時計を取り出して腰巻の下に隠すように身につけた。
着替えを済ませ部屋を出ると、外では先程の兵士が待機していた。
『早速ですが、陛下がお待ちですのでのでご案内させて頂きます。どうぞこちらへ』
案内されるままについて行くと先ほどの広間から中央の廊下を通って、さらに中庭へ出る。
外は既に暗く、空には月が顔を出していた。
中庭は篝火で照らされていて、何とも幻想的な雰囲気を演出している。
中庭を突っ切る形で宮殿の奥へ進むと、そこは王の謁見室になっていた。
広間とは違い、少しだけ暗い室内には何かの香が焚き染められていて妖艶とも言える薄紫の煙が充満していた。
室内は少し暗い朱色で統一され、玉座に続く廊下の両脇には影に隠れるように兵士が何人も控えている気配が感じ取れる。
緊張しつつゆっくり遠くへ進むと、煙で霞んで見えなかった上段にある玉座が徐々に見えてきた。
玉座の手前まで進むと、
『着たか』
と、部屋の雰囲気と似つかわしくない澄んだ声が奥から聞こえてきた。
謁見室の最奥の玉座は天蓋に囲まれているものの布が閉まっておらず、その人物の姿ははっきりと捉えることができた。
私はその姿に目を瞠った。
『待っておったぞ。ユニコーンに愛されし乙女よ。我は第12第皇王、ライリ・ミナー・ヌールじゃ』
金糸の衣装に身を包むその姿は、色素の薄いラベンダー色の髪を携え、衣装と同じ金色の瞳を宿して何とも神秘的なオーラを解き放っているものの、白い肌に愛らしい大きな瞳、ふくよかなピンク色の頬、華奢で小さな手をしていて、どこからどう見ても齢6歳前後の少女だった。
私はハッとして慌てて膝を着き、頭を下げ挨拶をする。
『お初にお目にかかります。ワタクシはーー』
『あー、よいよい。全てわかっておる。ここで名乗る必要も膝を折る必要もないぞ。楽にされよ』
私が全て言い終わる前に幼い女王は気さくに話しかけてきた。
一見あどけない笑顔には部屋の雰囲気の所為なのか、やはり何処か妖艶な雰囲気がある。
(楽に、と言われても…)
戸惑っていると、裏に控えていたと思われる侍女がクッションを持って現れた。
おずおずと座ると侍女は私にクッションをあてがい、音も立てずにその場から立ち去る。
再び女王に視線を戻すと、後ろで何かがピクピク動いているのが目に入った。
女王が寄りかかり、丁寧に撫でているそれはよく見るとオレンジ色のとても大きな猫だった。
猫には大きな牙が生えていて、獰猛な動物にも見えるその姿と異なり、愛らしい表情でとても気持ち良さそうに眠っている。
目を瞬いて、まじまじと観察していると、女王がその視線に気が付いてくすくすと笑い出した。
『こやつが気になるか?こやつはこの国の守護獣の眠虎じゃ。滅多に起きないし滅多に動かんから安心されよ』
守護獣…ってことは神獣って事よね?
実体としてここにずっといるって事?!
神獣は土地のつながりと契約者の精神力や、契約者とのつながりの強さで自在に使役することが出来るってリヴェル侯は言ってたけど…
常にこの場にいるとすると、女王の精神力は相当強いって事よね?!
『さて、早速じゃが本題に入ろうかの。妾がお主を呼んだのは他でもない、お主の見た夢に対して少し手助けをしてやろうと思うての』
『あ、あの待って下さい!』
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