ウイニー王国のワガママ姫

みすみ蓮華

恋とか愛とか 1

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 翌日、リヴェル侯爵夫妻に別れを告げ、馬車で来た道を戻る。
 城下に到着すると、兵から報告を受けていたのか、既にメルとダニエルが待ち構えていた。


「遅くなってごめんなさい。ちょっとお城で色々あって。思っていたより長引いちゃったわ。何も変わりなかった?」
 私がそう言うと少しだけメルがむくれたような顔をしてみせた。
「本当に遅かったです!でも、行きより顔色が良くなってますね。安心しました。そうそう、お嬢様がお城へ行かれた翌日に王子様がこちらへいらっしゃいましたよ」
 と、こっそりメルが耳打ちする。


 私は目を見開いてメルを見返し、同じように耳打ちする。
「レイが?全然知らなかったわ。一体なにしに…?」
 私の反応を見て楽しそうにくすくすとメルは笑う。
「ボクの報告を聞きにいらしたのと、あの男に釘を刺しに来ていました。おそらくそっちがメインだったんでしょうね。なかなか面白いものが見れました」


 チラッとダニエルを見ると、何ともバツが悪そうな顔をしている。
 レイったらダニエルの事は私に任せてって言ったのに。一体何を言ったのかしら?


「ダニエル」
 私が呼ぶと、ダニエルは肩をビクッと反応させこちらを見ずに「お、おう」と小さく返事をした。
 それも構わず私は彼に深々と頭を下げた。
「お、お嬢様?!」
「?!」
「私、お城に行って気づいたの、私もダニエルに偉そうな事を言える立場では無かったと。私家出同然でうちを飛び出して来ちゃってて、お父様もお兄様も凄く心配してて手紙を書いたの。そしたら心配してたけどちゃんと分かってくれて、初めから話し合うべきだったと後悔したわ。…私も結局向き合うことから逃げてただけだったのよ。だから、あなたに謝るわ。ごめんなさいダニエル」


 ダニエルもメルも唖然とした顔で私を見て硬直していた。
 普段喰って掛かる様な態度しか取らない私に、幻でも見ているのでは無いかといった顔だ。


 暫くすると、ダニエルは慌てて首を振り「よせよせ!」と私に頭を上げるように促した。
「俺もあれからちゃんと考えたんだ。ハニーは別に間違った事言ってないだろ?…その、正直的確過ぎて堪えた。今まであんな風に言ってくる奴は居なかったからな。俺も少し身の振りを考えようと思う。時間は掛かるかもしんねぇが…だから謝る必要はないぞ。寧ろ俺が感謝するべきだな!ハニーありがとな!」


 ダニエルは照れ臭そうにそう言ってニッと笑った。
 私はその顔を見て少しだけホッとする。
 あれだけ大きい口を叩いて長い事連絡もせずに戻ってきたと思ったら、実は同じような立場だったと知ったらものすごく怒るんじゃないかと心配していたからだ。


(やっぱり、非常識な部分と女性に節操がない部分を除けば、割と素直でいい人なのかもしれない)


 態度を改めてくれるならもう少し一緒にいても良いのかも…と思っている矢先、ダニエルは急に真面目な顔で私をジッと見据えると、突然私の前に膝間づいてスッと私の手を取りキスを落とした。
「だっ、ダニエル?!」
「うわあぁぁぁ?!」
 ダニエルの突然の行動に私は訳もわからず顔を真っ赤にして彼を凝視した。
 メルは頭を抱えて顔を赤くしたり青くしたりしながら悲鳴を上げてた。


 パニックを起こす私達を気にする風でもなく、ダニエルは依然真剣に私を見上げ言葉を続けた。
「ハニー、俺には今までこんなに真剣に俺と接してくれる女性はいなかった。家族ですら俺自身をちゃんと見てくれていたと感じる事は無かった。君と出会って今までも本気ではあったが、ここに来てますます惚れ込んだと言っていい。この先ハニー以上の女性が現れるとは俺は思えない。俺も本気で心を入れ替えると誓う。だからハニー、どうか俺の事、真剣に考えてくれないだろうか?」


 ぅ………ええぇぇぇぇぇえ?!



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