ウイニー王国のワガママ姫
ナンパと旅行記 4
私は食堂に入ると、ザワッと声が上がるのにげんなりした。
給仕が席へ慌てて案内してくれたものの、何処か落ち着きがない様子で周りの視線も気になった。
「お嬢様!ほら、注目を浴びてますよ!やっぱりボクが言った通りじゃないです!」
と、メルは私にこっそり嬉しそうに耳打ちする。
私はますますげんなりした。
そりゃあ誰だってみるわよ。
豪華客船でもないのにやけに完璧なドレスコードで、美青年引き連れた、背丈は小さいのにやけに顔だけ整った女がいれば奇妙でしょうよ!
と、思ったけどメルが嬉しそうなので流石に言えない。
ううう〜もう二度とメルにコーディネートなんてさせないわ……
周りにいるのは大根カボチャと言い聞かせながら席に座ると、早速給仕が前菜を運んでくる。
船で食べるディナーは今日が最後だ。
明日の朝食を食べれば、昼前には港に到着する。
今日の魚介のメインディッシュはブリューグのムニエル。
淡白な白身魚に香草の効いたムニエルはとても柔らかく、口に含めばほわっと溶け出すくらいだった。
メルはメインディッシュに、豚より小さいポポクのブルーベリージャム添えを選んで美味しそうに食べていた。
ふと、辺りを見回す。
そういえばあれからあの男を見かけない。
いや、居ないなら居ないで清々するのだけど…
(流石に股間を蹴るのはマズかったかしら…船医室に後で寄った方がいいかも)
と、若干の罪悪感を感じていた頃、目の前に居たメルが顔を顰めながら食後のお茶を口にしていた。
「どうかしたの?メル」
私がメルに声を掛けると、物凄く不満そうにメルは答えた。
「何故ですか!何故こんなにお嬢様は完璧なのに、誰もお嬢様に声をかけないんですか!」
いや、それを私に言われても…
と、私は苦笑する。
メルは何故こんなに必死なのか。
そもそもメルが居るんだから、誰も声をかける訳がない。
自分を頭に入れない辺りがやはりメルだ。
「メルが本気で私を美人だって言ってくれてるのは解ったから。もういいじゃない?私も流石にここまで着飾った事は無いし嬉しかったわ。ありがとう」
とニコリとしてメルに答えた。
私が澄ましてお茶を飲むと、ますますメルは不満そうにする。
「良くないですよ。もしかしたらお嬢様のいい人が現れてくれるかもしれないじゃないですか。そうなればすぐにでも王都帰れて…あわわ」
ああ、そっちが目的なのね。
ふぅ…と息を吐き出すと、カップをソーサーの上に置く。
「私は別に恋人を探すために飛び出した訳じゃないわ。そりゃあ婚約が嫌で飛び出したのも事実だけど、色んな所を旅したいっていうのが動機だと今では思うわ」
無論、半獣族やテディの問題解決の糸口を見つけるのが1番の動機ではある。
私の言葉にメルはサッと顔色を変える。
どうやら婚約の話が1番の動機だと思っていたらしい。
「じゃあ、お嬢様はいつお帰りになられるつもりなんですか?ほとぼりが冷めたら帰るつもりでは無いんですか?」
おそらく長くて1,2ヶ月ぐらいのつもりでついて来たんだろうなぁ。
と、メルの反応を見て頷く。
「無いわね。強いて言えば飽きたら帰るわ。流石にお兄様の結婚式には1度帰らないといけないとは思うけど、それを過ぎたらきっとまた私は旅に出るわね」
つまり約1年近く帰るつもりは毛頭ない。
帰ったところでまた、花嫁修業だの婚約だの言われるだけだろう。
メルは泣きそうな顔で私に訴える。
「勘弁して下さいぃ。ボク流石に1年分も旅費を用意してませんよ。てっきりすぐに帰ると思っていたのに、どうするんですかー」
「お金なんて、働けばいいじゃない。ああ、このドレスだって売ればいいわ。どうせ持ち歩く余裕なんてないし」
と、私が言うと、メルはますます頭を抱えた。
「どこの世界に働きに出る公爵令嬢がいるんですかー!ボク、王子様にもアベル様にも旦那様にも殺されてしまいますよ」
私が叱られることはあってもメルが殺されることは無いわね。
…あぁ、執事は激怒するかもしれないけど。
「うちが恋しくなったらメルはいつでも帰って良いから。ね?」
と、私がニッコリ言うと。
「そうはいきません!」とメルは口を尖らせた。
給仕が席へ慌てて案内してくれたものの、何処か落ち着きがない様子で周りの視線も気になった。
「お嬢様!ほら、注目を浴びてますよ!やっぱりボクが言った通りじゃないです!」
と、メルは私にこっそり嬉しそうに耳打ちする。
私はますますげんなりした。
そりゃあ誰だってみるわよ。
豪華客船でもないのにやけに完璧なドレスコードで、美青年引き連れた、背丈は小さいのにやけに顔だけ整った女がいれば奇妙でしょうよ!
と、思ったけどメルが嬉しそうなので流石に言えない。
ううう〜もう二度とメルにコーディネートなんてさせないわ……
周りにいるのは大根カボチャと言い聞かせながら席に座ると、早速給仕が前菜を運んでくる。
船で食べるディナーは今日が最後だ。
明日の朝食を食べれば、昼前には港に到着する。
今日の魚介のメインディッシュはブリューグのムニエル。
淡白な白身魚に香草の効いたムニエルはとても柔らかく、口に含めばほわっと溶け出すくらいだった。
メルはメインディッシュに、豚より小さいポポクのブルーベリージャム添えを選んで美味しそうに食べていた。
ふと、辺りを見回す。
そういえばあれからあの男を見かけない。
いや、居ないなら居ないで清々するのだけど…
(流石に股間を蹴るのはマズかったかしら…船医室に後で寄った方がいいかも)
と、若干の罪悪感を感じていた頃、目の前に居たメルが顔を顰めながら食後のお茶を口にしていた。
「どうかしたの?メル」
私がメルに声を掛けると、物凄く不満そうにメルは答えた。
「何故ですか!何故こんなにお嬢様は完璧なのに、誰もお嬢様に声をかけないんですか!」
いや、それを私に言われても…
と、私は苦笑する。
メルは何故こんなに必死なのか。
そもそもメルが居るんだから、誰も声をかける訳がない。
自分を頭に入れない辺りがやはりメルだ。
「メルが本気で私を美人だって言ってくれてるのは解ったから。もういいじゃない?私も流石にここまで着飾った事は無いし嬉しかったわ。ありがとう」
とニコリとしてメルに答えた。
私が澄ましてお茶を飲むと、ますますメルは不満そうにする。
「良くないですよ。もしかしたらお嬢様のいい人が現れてくれるかもしれないじゃないですか。そうなればすぐにでも王都帰れて…あわわ」
ああ、そっちが目的なのね。
ふぅ…と息を吐き出すと、カップをソーサーの上に置く。
「私は別に恋人を探すために飛び出した訳じゃないわ。そりゃあ婚約が嫌で飛び出したのも事実だけど、色んな所を旅したいっていうのが動機だと今では思うわ」
無論、半獣族やテディの問題解決の糸口を見つけるのが1番の動機ではある。
私の言葉にメルはサッと顔色を変える。
どうやら婚約の話が1番の動機だと思っていたらしい。
「じゃあ、お嬢様はいつお帰りになられるつもりなんですか?ほとぼりが冷めたら帰るつもりでは無いんですか?」
おそらく長くて1,2ヶ月ぐらいのつもりでついて来たんだろうなぁ。
と、メルの反応を見て頷く。
「無いわね。強いて言えば飽きたら帰るわ。流石にお兄様の結婚式には1度帰らないといけないとは思うけど、それを過ぎたらきっとまた私は旅に出るわね」
つまり約1年近く帰るつもりは毛頭ない。
帰ったところでまた、花嫁修業だの婚約だの言われるだけだろう。
メルは泣きそうな顔で私に訴える。
「勘弁して下さいぃ。ボク流石に1年分も旅費を用意してませんよ。てっきりすぐに帰ると思っていたのに、どうするんですかー」
「お金なんて、働けばいいじゃない。ああ、このドレスだって売ればいいわ。どうせ持ち歩く余裕なんてないし」
と、私が言うと、メルはますます頭を抱えた。
「どこの世界に働きに出る公爵令嬢がいるんですかー!ボク、王子様にもアベル様にも旦那様にも殺されてしまいますよ」
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