ウイニー王国のワガママ姫
ナンパと旅行記 1
家を出てから、既に5日。
私は未だ船の上で波に揺られていた。
王都の港から西の港街ブールへは2日掛かった。
ブールは、以前訪れたイオドランより更に西。
王国内では最西端の場所にあり、ウイニーの玄関口と言える港街だ。
他国へ行く人や他国から来る人でごった返し、肌の色や髪の色目の色も多種多様な人々が集まっている。
私はここでトップルを一本だけ買い、鞄に詰める。
この先はウイニーの名物トップルを購入する機会が無い。
お酒を嗜む訳ではない。
ーー持っているだけで、いつでもウイニーを近くに感じられる様な気がしたから。
買い物を済ませると、再び港で乗船チケットを購入する。
行き先は南。ベルン連邦国、最北端の国ケザス。
連邦国の中央国家だ。
初めて乗った船は少しだけ寒くて、上に外套を羽織らなければ風邪を引きそうだった。
それでも素晴らしい海原の日の出、日の入り、どこまでも続く星々の景色が、私を甲板に引き寄せてやまないのだ。
「ううう〜…お嬢様ぁ〜…気持ち悪いですぅ〜」
船室から私を追って出てきたのは、蒼白い顔をした小間使いのメルだった。
************
屋敷を飛び出し、
【かかとの折れたハイヒール亭】で渡航許可証を手に入れた私は、
店を出た所で、仁王立ちしたメルに捕まったのだった。
『メル…なんで?』
メルは怒った顔で私を見下ろし、睨んで来た。
少し前まで私と同じくらいの背丈だったメルは、
グングン成長して、今ではすっかり追い抜かれてしまった。
一体何を食べればそんなに急に成長できるのかしら?少々ズルいと思う。
『一体誰がお嬢様の部屋を管理していると思っているんですか!流石にこう何度も続けば気がつきます!どうしてもお屋敷を出て行くと言うのであれば、ボクも着いて行きますから!』
フン!と、いつになく強気でふんぞり返るメル。
屋敷に連れ戻されるよりは全然ましではあるけど…
『でもあなた、渡航許可証は持ってないでしょう?私、船に乗るわよ?』
と、首を傾げると、
メルは得意げに「ふふん!」とポケットから渡航許可証を取り出した。
私は驚いて目を見開く。
『ボクの情報網、舐めないで下さい。許可証はちゃんと本物ですよ!嫌だって言っても、着いて行きますからねっ』
************
ーーそして現在に至るのである。
私は嘆息してメルの背中を撫でる。
「無理に出て来ないで部屋で休んでいれば良いのに。私、船医さんにお薬貰って来てあげるわ。メルはゆっくり寝ていなさいな」
メルの背中を支えながら客室へ戻ろうとすると、メルは首を振って涙目になりながら答えた。
緑色の瞳が悲しそうに揺らぐ。
「ダメです〜。お嬢様を1人には出来ません〜。しかもボクの為に、お嬢様の手を煩わせるなんて、いけませんぅ…」
メルは口を押さえて「おえー」と言いながら、甲板の淵に寄りかかった。
「船の上なんだから私も逃げようがないし、メルを置いてどっかに行ったりしないわよ。こんな所でモンスターに出くわす訳でもないし。いいから休んでて。動けないならココで待ってて。いい?」
こっくりとメルは口を歪ませ頷くと、再び甲板に凭れかかった。
私は急いで船医室へ駆け込む。
酔い止めの薬を貰い、食堂で水を貰うと、また急いでメルの元へ戻る。
メルが居たはずの場所を見渡すと、そこにメルは居なかった。
あれ?客室に戻ったのかしら?
と、首を傾げ、一等客室へ向かう。
二等客室でも良かったのだけど、メルが頑なに拒否したため、一等客室をとったのだ。
二等客室は安易ベッドで四人部屋なのに対し、一等はそれなりに整ったベッドが2台置いてある。
洗面台や化粧室、浴室も完備されている。
その客室のドアを開こうとすると、
「何するんですかーー!!」
とメルの悲痛な叫び声が中から聞こえてきた。
私は未だ船の上で波に揺られていた。
王都の港から西の港街ブールへは2日掛かった。
ブールは、以前訪れたイオドランより更に西。
王国内では最西端の場所にあり、ウイニーの玄関口と言える港街だ。
他国へ行く人や他国から来る人でごった返し、肌の色や髪の色目の色も多種多様な人々が集まっている。
私はここでトップルを一本だけ買い、鞄に詰める。
この先はウイニーの名物トップルを購入する機会が無い。
お酒を嗜む訳ではない。
ーー持っているだけで、いつでもウイニーを近くに感じられる様な気がしたから。
買い物を済ませると、再び港で乗船チケットを購入する。
行き先は南。ベルン連邦国、最北端の国ケザス。
連邦国の中央国家だ。
初めて乗った船は少しだけ寒くて、上に外套を羽織らなければ風邪を引きそうだった。
それでも素晴らしい海原の日の出、日の入り、どこまでも続く星々の景色が、私を甲板に引き寄せてやまないのだ。
「ううう〜…お嬢様ぁ〜…気持ち悪いですぅ〜」
船室から私を追って出てきたのは、蒼白い顔をした小間使いのメルだった。
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屋敷を飛び出し、
【かかとの折れたハイヒール亭】で渡航許可証を手に入れた私は、
店を出た所で、仁王立ちしたメルに捕まったのだった。
『メル…なんで?』
メルは怒った顔で私を見下ろし、睨んで来た。
少し前まで私と同じくらいの背丈だったメルは、
グングン成長して、今ではすっかり追い抜かれてしまった。
一体何を食べればそんなに急に成長できるのかしら?少々ズルいと思う。
『一体誰がお嬢様の部屋を管理していると思っているんですか!流石にこう何度も続けば気がつきます!どうしてもお屋敷を出て行くと言うのであれば、ボクも着いて行きますから!』
フン!と、いつになく強気でふんぞり返るメル。
屋敷に連れ戻されるよりは全然ましではあるけど…
『でもあなた、渡航許可証は持ってないでしょう?私、船に乗るわよ?』
と、首を傾げると、
メルは得意げに「ふふん!」とポケットから渡航許可証を取り出した。
私は驚いて目を見開く。
『ボクの情報網、舐めないで下さい。許可証はちゃんと本物ですよ!嫌だって言っても、着いて行きますからねっ』
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ーーそして現在に至るのである。
私は嘆息してメルの背中を撫でる。
「無理に出て来ないで部屋で休んでいれば良いのに。私、船医さんにお薬貰って来てあげるわ。メルはゆっくり寝ていなさいな」
メルの背中を支えながら客室へ戻ろうとすると、メルは首を振って涙目になりながら答えた。
緑色の瞳が悲しそうに揺らぐ。
「ダメです〜。お嬢様を1人には出来ません〜。しかもボクの為に、お嬢様の手を煩わせるなんて、いけませんぅ…」
メルは口を押さえて「おえー」と言いながら、甲板の淵に寄りかかった。
「船の上なんだから私も逃げようがないし、メルを置いてどっかに行ったりしないわよ。こんな所でモンスターに出くわす訳でもないし。いいから休んでて。動けないならココで待ってて。いい?」
こっくりとメルは口を歪ませ頷くと、再び甲板に凭れかかった。
私は急いで船医室へ駆け込む。
酔い止めの薬を貰い、食堂で水を貰うと、また急いでメルの元へ戻る。
メルが居たはずの場所を見渡すと、そこにメルは居なかった。
あれ?客室に戻ったのかしら?
と、首を傾げ、一等客室へ向かう。
二等客室でも良かったのだけど、メルが頑なに拒否したため、一等客室をとったのだ。
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