ウイニー王国のワガママ姫
Coffee Break? : 野心?
リン・プ・リエン王国の第一王子が、
17歳の若さで王位を継承してから3年の年月が経ったある日、
王は年の離れた弟達を、謁見室へ呼び出した。
--第一王子…リン・プ・リエン国王、エルネスト・バルフ・ラスキンは、
浅略で野心の強い国王と噂される程、粗暴な王だった。
本来、王が崩御または引退した場合、リン・プ・リエンの法典では、
兄弟の中から、国民による選挙で次期国王が選ばれるのが通例だった。
しかし、弟王子達は当時、第二王子は15歳,一番下の第三王子は10歳と、
成人もしておらず幼かった為、選挙は行われず、
特例として第一王子が王位を継承したのだった。
その所為か、弟王子達が成人した時、
何時か王位を取られるのではないか?という不安が、
兄王の心の内に常に付きまとっていた。
特に、第二王子は王の命に反抗的な所があり、何かと衝突が絶えなかった。
このままではあと数年もすれば、危惧していたことが現実となってしまう。
と、王は策を講じる事にしたのだった。
「第二王子リオネス様並びに、第三王子フィオディール様がお見えになりました」
兵が、入室し王へ弟王子たちの到着を告げる。
「通せ」
王が声を掛けると、
入ってきたのは王とよく似た赤味がかった栗茶色の髪を持つ青年と、
鳶色の髪を持つ少年の2人だった。
目の色こそ3人とも同じ鳶色だったが、
上2人は、髪の色が一番下の弟よりも赤みがかっていた。
「お呼びですか兄上」
面倒くさそうに栗茶色の目つきの鋭い青年が口を開く。
「リオネス。何度言えばわかる。公務の時は陛下と呼べ」
リオネスと呼ばれた少年は、ッチと舌打ちでもしそうな勢いで、
「申し訳ございません、陛下」
と面倒くさそうに答えた。
「それで?何の御用ですか陛下」
リオネスが王に聞くと、王はリオネスの態度に眉を顰めながらも命を下す。
「父から王位を受け継いで3年。私は、王として後世に名の残るような大巧を、今だになに一つ成し得ていない。そこで、だ。お前たちには南の手付かずになっている、森林地帯の開拓を命じる」
ッチと、とうとう舌打ちを打ったのは、やはりリオネスだった。
「俺はごめんです。彼処がどんな場所か、兄上はご存知無いのですか?魔物の中でも、トップクラスの魔物がウジャウジャいる所です。軍を率いても生きて帰ってこれる保証がない。お断りします」
サッとマントを翻し、部屋を出て行こうとするリオネスに、
王は苛立ちを露わにし怒鳴りつける。
「お前たちに拒否権はない!私が行けと言うからには行くんだ!!」
やはりチッと、リオネスは舌打ちをした。
対象的に、鳶色の少年は目をキラキラと輝かせ、
兄王を羨望の眼差しで見つめていた。
「あにうえっ!ぼくが!僕が行ってきます!兄上のお役に立てるのであれば、僕なんでもやります!」
一番下の弟がそう言うと、王は満足そうに弟の前に立ち、ヨシヨシと頭を撫でた。
「フィオディールは聡い子だな。兄はお前のような弟を持って幸せだぞ」
と薄く笑う。
その兄王を見て、フィオディールは「えへへ」と嬉しそうに頬を染めた。
「リオネス!お前もだぞ!一番幼いフィオディールが行くと言っているのに、お前が行かないというのは許さんからな」
リオネスはフンっと鼻を鳴らし、無言で退出した。
フィオディールは慌ててぺこりと兄王に頭を下げ、リオネスを追いかけた。
「あにうえっ!」
とフィオディールは、苛立たしげに、前を歩くリオネスに駆け寄った。
するとリオネスは、フィオディールを呆れたようにジロリと睨みつける。
「お前は何を考えている?兄上に死ねと言われたようなものだぞ?」
リオネスは、フィオディールが王にだけあの様な態度を取る事を知っていた。
齢13にして狡猾な弟に辟易する。
自分は王位には興味がないが、この弟は違う。と昔から感じていたのだった。
又、フィオディールもリオネスが王位に興味がない事を心得ていたので、
この兄にだけは割と懐いていた。
「だって、兄上。死ななければいいだけの話です」
とニコニコとフィオディールが答えると、
はあぁ…とリオネスは大きく嘆息した。
「兄上、僕に協力してもらえませんか?これはチャンスです」
と顔色一つ変えずにフィオディールは言う。
リオネスがどちらに着くのが得策なのか迷っている節がある事も、
フィオディールは知っていた。
「チャンス?何のだ?俺に得があるとは全く思えん。生きて帰ったとしても何も得られんのだぞ?」
んー…と、フィオディールは人差し指を顎に当て考えこむ。
「兄上が欲しいものが何かは解りませんが、少なくとも、もう理不尽な命令を聞かなくて済むことにはなるかと思います」
ニコッとフィオディールはリオネスに向かって無邪気に微笑む。
「それに僕は兄上が好きですから、敵対はしたくないです」
いけしゃあしゃあと…とリオネスは眉間にシワを寄せる。
「お前みたいな可愛くない弟と、横暴な兄を持って、俺は不幸だと思うよ」
リオネスがそう言うと、フィオディールは首を傾げ、
「そうですか?僕、割と皆から可愛いって言われますが」
とキョトンとして答える。
「そういう所が可愛くないんだよ!お前は!……で、どうするつもりなんだ?俺は死ぬのだけはゴメンだ」
リオネスがそう言うと、フィオディールは今までの笑みとは全く違う、
兄王に似た薄い笑みを一瞬だけ浮かべる。
「兄上はそう言って下さると信じてました。とりあえず、人をできる限り集めましょう。兵からは勿論、市民からも募集をかけましょう。あ、兄上の直轄隊は全員連れてって下さいね?優秀ですから。簡単には死なないと思います。それと演習ですが……」
リオネスはテキパキと適切な指示を出す弟に、感心するどころかげんなりする。
自分が13の時は、もう少し可愛げがあったと思うし、
あの兄王ですら、
13の時は無邪気に庭で剣を振り回して遊んでいるだけだったと思い出す。
「……という風にした方がいいと思います。あ!これ、全部兄上の案という事にしておいて下さいね?僕、陛下にあらぬ誤解を受けたくないので」
と、満面の笑みを浮かべて言う弟を見て、ますますリオネスは呆れるのだった。
17歳の若さで王位を継承してから3年の年月が経ったある日、
王は年の離れた弟達を、謁見室へ呼び出した。
--第一王子…リン・プ・リエン国王、エルネスト・バルフ・ラスキンは、
浅略で野心の強い国王と噂される程、粗暴な王だった。
本来、王が崩御または引退した場合、リン・プ・リエンの法典では、
兄弟の中から、国民による選挙で次期国王が選ばれるのが通例だった。
しかし、弟王子達は当時、第二王子は15歳,一番下の第三王子は10歳と、
成人もしておらず幼かった為、選挙は行われず、
特例として第一王子が王位を継承したのだった。
その所為か、弟王子達が成人した時、
何時か王位を取られるのではないか?という不安が、
兄王の心の内に常に付きまとっていた。
特に、第二王子は王の命に反抗的な所があり、何かと衝突が絶えなかった。
このままではあと数年もすれば、危惧していたことが現実となってしまう。
と、王は策を講じる事にしたのだった。
「第二王子リオネス様並びに、第三王子フィオディール様がお見えになりました」
兵が、入室し王へ弟王子たちの到着を告げる。
「通せ」
王が声を掛けると、
入ってきたのは王とよく似た赤味がかった栗茶色の髪を持つ青年と、
鳶色の髪を持つ少年の2人だった。
目の色こそ3人とも同じ鳶色だったが、
上2人は、髪の色が一番下の弟よりも赤みがかっていた。
「お呼びですか兄上」
面倒くさそうに栗茶色の目つきの鋭い青年が口を開く。
「リオネス。何度言えばわかる。公務の時は陛下と呼べ」
リオネスと呼ばれた少年は、ッチと舌打ちでもしそうな勢いで、
「申し訳ございません、陛下」
と面倒くさそうに答えた。
「それで?何の御用ですか陛下」
リオネスが王に聞くと、王はリオネスの態度に眉を顰めながらも命を下す。
「父から王位を受け継いで3年。私は、王として後世に名の残るような大巧を、今だになに一つ成し得ていない。そこで、だ。お前たちには南の手付かずになっている、森林地帯の開拓を命じる」
ッチと、とうとう舌打ちを打ったのは、やはりリオネスだった。
「俺はごめんです。彼処がどんな場所か、兄上はご存知無いのですか?魔物の中でも、トップクラスの魔物がウジャウジャいる所です。軍を率いても生きて帰ってこれる保証がない。お断りします」
サッとマントを翻し、部屋を出て行こうとするリオネスに、
王は苛立ちを露わにし怒鳴りつける。
「お前たちに拒否権はない!私が行けと言うからには行くんだ!!」
やはりチッと、リオネスは舌打ちをした。
対象的に、鳶色の少年は目をキラキラと輝かせ、
兄王を羨望の眼差しで見つめていた。
「あにうえっ!ぼくが!僕が行ってきます!兄上のお役に立てるのであれば、僕なんでもやります!」
一番下の弟がそう言うと、王は満足そうに弟の前に立ち、ヨシヨシと頭を撫でた。
「フィオディールは聡い子だな。兄はお前のような弟を持って幸せだぞ」
と薄く笑う。
その兄王を見て、フィオディールは「えへへ」と嬉しそうに頬を染めた。
「リオネス!お前もだぞ!一番幼いフィオディールが行くと言っているのに、お前が行かないというのは許さんからな」
リオネスはフンっと鼻を鳴らし、無言で退出した。
フィオディールは慌ててぺこりと兄王に頭を下げ、リオネスを追いかけた。
「あにうえっ!」
とフィオディールは、苛立たしげに、前を歩くリオネスに駆け寄った。
するとリオネスは、フィオディールを呆れたようにジロリと睨みつける。
「お前は何を考えている?兄上に死ねと言われたようなものだぞ?」
リオネスは、フィオディールが王にだけあの様な態度を取る事を知っていた。
齢13にして狡猾な弟に辟易する。
自分は王位には興味がないが、この弟は違う。と昔から感じていたのだった。
又、フィオディールもリオネスが王位に興味がない事を心得ていたので、
この兄にだけは割と懐いていた。
「だって、兄上。死ななければいいだけの話です」
とニコニコとフィオディールが答えると、
はあぁ…とリオネスは大きく嘆息した。
「兄上、僕に協力してもらえませんか?これはチャンスです」
と顔色一つ変えずにフィオディールは言う。
リオネスがどちらに着くのが得策なのか迷っている節がある事も、
フィオディールは知っていた。
「チャンス?何のだ?俺に得があるとは全く思えん。生きて帰ったとしても何も得られんのだぞ?」
んー…と、フィオディールは人差し指を顎に当て考えこむ。
「兄上が欲しいものが何かは解りませんが、少なくとも、もう理不尽な命令を聞かなくて済むことにはなるかと思います」
ニコッとフィオディールはリオネスに向かって無邪気に微笑む。
「それに僕は兄上が好きですから、敵対はしたくないです」
いけしゃあしゃあと…とリオネスは眉間にシワを寄せる。
「お前みたいな可愛くない弟と、横暴な兄を持って、俺は不幸だと思うよ」
リオネスがそう言うと、フィオディールは首を傾げ、
「そうですか?僕、割と皆から可愛いって言われますが」
とキョトンとして答える。
「そういう所が可愛くないんだよ!お前は!……で、どうするつもりなんだ?俺は死ぬのだけはゴメンだ」
リオネスがそう言うと、フィオディールは今までの笑みとは全く違う、
兄王に似た薄い笑みを一瞬だけ浮かべる。
「兄上はそう言って下さると信じてました。とりあえず、人をできる限り集めましょう。兵からは勿論、市民からも募集をかけましょう。あ、兄上の直轄隊は全員連れてって下さいね?優秀ですから。簡単には死なないと思います。それと演習ですが……」
リオネスはテキパキと適切な指示を出す弟に、感心するどころかげんなりする。
自分が13の時は、もう少し可愛げがあったと思うし、
あの兄王ですら、
13の時は無邪気に庭で剣を振り回して遊んでいるだけだったと思い出す。
「……という風にした方がいいと思います。あ!これ、全部兄上の案という事にしておいて下さいね?僕、陛下にあらぬ誤解を受けたくないので」
と、満面の笑みを浮かべて言う弟を見て、ますますリオネスは呆れるのだった。
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