ウイニー王国のワガママ姫
ワガママに癖あり 4
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結局村に到着したのは、午前8時を過ぎた頃だった。
3時間ぐらいで着くだろうと計算していたので、ここでも大幅な時間ロスが発生していた。
まだ名も無い小さな村で、広さで言えばうちの屋敷よりも狭いかもしれない。
王都側の街道から村の出口が見えるほどだった。
とはいうものの、この辺一帯の農民が利用しているらしく、
村には小さいながらも商店や宿、厩舎があり、
定期便の馬車も往来しているようだった。
厩舎に馬を預けると、クロエが声をかけてきた。
「宿に行きましょうか。宿の中に食堂が併設されているので、そこで朝食を取りながら今後の旅程について話し合いましょう」
宿にはいるとすぐ目の前に、大きな長い朽ちかけた木のテーブルが目に入った。
まわりには雑然と至る所に椅子が置かれている。
ロビーの待合の席かと思ったら、どうやらそれだけではないらしく、
よくみるとちらほら食事をして居る人が何人かいた。
なるほど、ここが食堂になっているのね。
と感心していると、
カウンターの方から白髪混じりのふくよかな女性が声をかけてきた。
「食事かい?それとも泊まりかい?食事だったら今は芋とスープしかないよ。適当に席に座れば持ってくよ」
愛想は無いけど嫌な感じはしない。
世のお母様ってこんな感じなのかしら?と少し興味を惹かれた。
クロエは食事代をカウンターで支払うと、
「奥の方へ行きましょうか」
と言って壁際へ進むので、慌ててついて行く。
席につき、暫くすると、
先ほどの女性が蒸かした芋と野菜がたっぷり入ったスープを持ってきた。
「熱いから気をつけな。こんなもんしかないけど味は保証するよ」
と言って、またカウンターの方へ戻っていった。
芋にはバターが乗っかっていてホクホクとしていてとても美味しい。
スープも根野菜がこれでもかという位ぐづぐづに溶けていて、
濃厚な甘みが口の中に広がった。
「あ、そうだ!」
とゴソゴソと鞄の中を漁る。
昨日買っておいた食料の中にパンがあった事を思い出し、
一つ取り出すと、半分に割りクロエに渡した。
「はい!クロエの分。ここのスープ美味しいからパン付けて食べるともっと美味しいかも」
そう言ってスープにパンを浸し口に頬張る。
「おいしいぃー!」
思った以上の味に私が満足していると、
呆気に取られた様子で、私を見ていたクロエが、
「あ…りがとうございます」と戸惑い気味にお礼をいい、
クロエもスープにパンを浸して食べた。
「おいしい…」
と、クロエが溜息混じりに言ったので、
私は嬉しくなって、まだあるよ!とゴソゴソ鞄からパンを出そうとした。
「いいです!いいですから!これからの為にとっておいて下さい」
と慌てていうので、それが可笑しくて笑ってしまった。
食事を終えてひと段落した所で、クロエが口を開いた。
「今後の予定ですが、二つ案があります。ひとつは安全策でこの村で一泊し、明日夜が開ける前に出発し、次の町へ向かう案です」
…今日ここに泊まる?!
ただでさえ遅れているのにここに泊まるのは勘弁願いたいなと内心焦る。
「もう一つは次の町までこのまま進みそこで馬を売って宿に泊まる案です」
う、馬を売るですって!?
そんな発想はまるで無かったので驚いてクロエに聞き返した。
「馬を売ってどうするの?明日からは徒歩!?」
「いいえ」とクロエは、私とは対照的に落ち着いた様子で答える。
「馬を売ったお金で新しい馬を買います。無理をさせた馬で旅を続けてもリスクが大きくなるばかりなので、できる限りストレスを抱えてない馬に乗り換えます」
なるほど〜と納得する。
エサさえ上げてさえいれば、ずっと同じ様に走り続けると思っていたので、
目から鱗が落ちる。
レイが馬の管理はどうするのか聞いて来たのは、
こういう理由からなのかと先刻の事を思い出した。
「次の町で馬を換えて、そのまま行けるところまで行って野宿は駄目なの?」
そう聞くと、クロエは難しい表情をした。
「駄目…ではないですが、次の町へ着くと当分野宿が続くと思いますから、宿に泊まれるうちは無理をせずに泊まっておいた方が、体力的にもいいかと思います」
うーん。そっかぁ…と腕組みをする。
そうなると4,5日で着くのは難しいのかしら。
「あの、そんなにお急ぎなんですか?」
と私がうーんうーんと唸っていると、クロエは不思議そうに聞いてきた。
「うん。出来るだけ早く着きたいの。出来れば4,5日の間に」
そう答えるとクロエは少し考え、自分の荷物から地図を取り出した。
「ここが王都がで、私たちが今いるのはこの村です。次の町フェンスはここから南東の辺りになります。ここで今日1泊したとして、次の日は一度西の方へ移動し、更に南へ。通常ですと2日目は恐らくこの辺りで野宿になるでしょう。更に南へ下ると大きな森にぶち当たるので、この森を抜けるのに最低でも丸1日は掛ります」
クロエの話にこくりと頷く。
この森が難所なのは、私も事前に調べていた。
故に出来るだけ移動して、早く着ける様にしたい。
「2日目は少し寄り道をして海沿いにある街へ行きましょうか?おそらくそこで馬を換えた方が遠回りにはなりますが、森の手前位までは移動できるかと思います」
そう言ってクロエが指差した街の場所には、
イオドランと書かれていた。
旅程ルートに入れてなかったので、
殆どこの場所についての記憶が思い出せない。
確か海軍が常駐している街だった様な気がする。
2日目の野宿予定だった場所は、森とまだかなり離れた場所だったので、
クロエが言ったとおり、森手前まで移動出来るとなるとかなりの時間短縮になる。
「森を抜けた後は、ダール手前の村で馬を換えることが出来れば…もしかしたらその日数で着くことは可能かもしれません」
ただ…とクロエは続ける。
「森に入る前のこの街道は野盗がよく出没するので出来ることなら森の中へ少しでも進んでおいた方がいいとは思います…」
そうは言っているものの、うーん…とクロエは唸っている。
「私としては安全の為に通常のキャンプ地を選びたい所ですね。森は森で色々と危険ですし、街道で野宿しないにしても、到着予想の時間帯ではやはり野盗に出くわしてしまう可能性が高いと思うので」
結局村に到着したのは、午前8時を過ぎた頃だった。
3時間ぐらいで着くだろうと計算していたので、ここでも大幅な時間ロスが発生していた。
まだ名も無い小さな村で、広さで言えばうちの屋敷よりも狭いかもしれない。
王都側の街道から村の出口が見えるほどだった。
とはいうものの、この辺一帯の農民が利用しているらしく、
村には小さいながらも商店や宿、厩舎があり、
定期便の馬車も往来しているようだった。
厩舎に馬を預けると、クロエが声をかけてきた。
「宿に行きましょうか。宿の中に食堂が併設されているので、そこで朝食を取りながら今後の旅程について話し合いましょう」
宿にはいるとすぐ目の前に、大きな長い朽ちかけた木のテーブルが目に入った。
まわりには雑然と至る所に椅子が置かれている。
ロビーの待合の席かと思ったら、どうやらそれだけではないらしく、
よくみるとちらほら食事をして居る人が何人かいた。
なるほど、ここが食堂になっているのね。
と感心していると、
カウンターの方から白髪混じりのふくよかな女性が声をかけてきた。
「食事かい?それとも泊まりかい?食事だったら今は芋とスープしかないよ。適当に席に座れば持ってくよ」
愛想は無いけど嫌な感じはしない。
世のお母様ってこんな感じなのかしら?と少し興味を惹かれた。
クロエは食事代をカウンターで支払うと、
「奥の方へ行きましょうか」
と言って壁際へ進むので、慌ててついて行く。
席につき、暫くすると、
先ほどの女性が蒸かした芋と野菜がたっぷり入ったスープを持ってきた。
「熱いから気をつけな。こんなもんしかないけど味は保証するよ」
と言って、またカウンターの方へ戻っていった。
芋にはバターが乗っかっていてホクホクとしていてとても美味しい。
スープも根野菜がこれでもかという位ぐづぐづに溶けていて、
濃厚な甘みが口の中に広がった。
「あ、そうだ!」
とゴソゴソと鞄の中を漁る。
昨日買っておいた食料の中にパンがあった事を思い出し、
一つ取り出すと、半分に割りクロエに渡した。
「はい!クロエの分。ここのスープ美味しいからパン付けて食べるともっと美味しいかも」
そう言ってスープにパンを浸し口に頬張る。
「おいしいぃー!」
思った以上の味に私が満足していると、
呆気に取られた様子で、私を見ていたクロエが、
「あ…りがとうございます」と戸惑い気味にお礼をいい、
クロエもスープにパンを浸して食べた。
「おいしい…」
と、クロエが溜息混じりに言ったので、
私は嬉しくなって、まだあるよ!とゴソゴソ鞄からパンを出そうとした。
「いいです!いいですから!これからの為にとっておいて下さい」
と慌てていうので、それが可笑しくて笑ってしまった。
食事を終えてひと段落した所で、クロエが口を開いた。
「今後の予定ですが、二つ案があります。ひとつは安全策でこの村で一泊し、明日夜が開ける前に出発し、次の町へ向かう案です」
…今日ここに泊まる?!
ただでさえ遅れているのにここに泊まるのは勘弁願いたいなと内心焦る。
「もう一つは次の町までこのまま進みそこで馬を売って宿に泊まる案です」
う、馬を売るですって!?
そんな発想はまるで無かったので驚いてクロエに聞き返した。
「馬を売ってどうするの?明日からは徒歩!?」
「いいえ」とクロエは、私とは対照的に落ち着いた様子で答える。
「馬を売ったお金で新しい馬を買います。無理をさせた馬で旅を続けてもリスクが大きくなるばかりなので、できる限りストレスを抱えてない馬に乗り換えます」
なるほど〜と納得する。
エサさえ上げてさえいれば、ずっと同じ様に走り続けると思っていたので、
目から鱗が落ちる。
レイが馬の管理はどうするのか聞いて来たのは、
こういう理由からなのかと先刻の事を思い出した。
「次の町で馬を換えて、そのまま行けるところまで行って野宿は駄目なの?」
そう聞くと、クロエは難しい表情をした。
「駄目…ではないですが、次の町へ着くと当分野宿が続くと思いますから、宿に泊まれるうちは無理をせずに泊まっておいた方が、体力的にもいいかと思います」
うーん。そっかぁ…と腕組みをする。
そうなると4,5日で着くのは難しいのかしら。
「あの、そんなにお急ぎなんですか?」
と私がうーんうーんと唸っていると、クロエは不思議そうに聞いてきた。
「うん。出来るだけ早く着きたいの。出来れば4,5日の間に」
そう答えるとクロエは少し考え、自分の荷物から地図を取り出した。
「ここが王都がで、私たちが今いるのはこの村です。次の町フェンスはここから南東の辺りになります。ここで今日1泊したとして、次の日は一度西の方へ移動し、更に南へ。通常ですと2日目は恐らくこの辺りで野宿になるでしょう。更に南へ下ると大きな森にぶち当たるので、この森を抜けるのに最低でも丸1日は掛ります」
クロエの話にこくりと頷く。
この森が難所なのは、私も事前に調べていた。
故に出来るだけ移動して、早く着ける様にしたい。
「2日目は少し寄り道をして海沿いにある街へ行きましょうか?おそらくそこで馬を換えた方が遠回りにはなりますが、森の手前位までは移動できるかと思います」
そう言ってクロエが指差した街の場所には、
イオドランと書かれていた。
旅程ルートに入れてなかったので、
殆どこの場所についての記憶が思い出せない。
確か海軍が常駐している街だった様な気がする。
2日目の野宿予定だった場所は、森とまだかなり離れた場所だったので、
クロエが言ったとおり、森手前まで移動出来るとなるとかなりの時間短縮になる。
「森を抜けた後は、ダール手前の村で馬を換えることが出来れば…もしかしたらその日数で着くことは可能かもしれません」
ただ…とクロエは続ける。
「森に入る前のこの街道は野盗がよく出没するので出来ることなら森の中へ少しでも進んでおいた方がいいとは思います…」
そうは言っているものの、うーん…とクロエは唸っている。
「私としては安全の為に通常のキャンプ地を選びたい所ですね。森は森で色々と危険ですし、街道で野宿しないにしても、到着予想の時間帯ではやはり野盗に出くわしてしまう可能性が高いと思うので」
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