ウイニー王国のワガママ姫
ワガママに癖あり 3
「もう行け。夜が明けるぞ。流石に俺も少し休みたい」
そういえば、私はレイが来るまで寝ていたけど、
レイはまったく寝てない事に気がついた。
「ん、ゴメン。じゃぁ…行くね」
クロエに手伝ってもらって馬に跨がった。
当のクロエはひらりと難なく1人で馬に跨がる。
なぁ、とレイが声をかける。
「ほとぼりが冷めるまでと言ったが、ホントは何しにダールに行くんだ?…まぁ、兄貴絡みだとは思うが」
私は顎に手を当て、少し考えてから真面目な顔でレイに向ってこう言った。
「侯爵様にワガママを言いに」
=====
クロエと共に南へひた走る。
丘を下り、街道へ出た時には日が昇り始めていた。
思っていたよりかなり時間をロスしている。
予定ではもう最初の村に着いている筈だった。
王都から1番近い村までは、大きな街道が通っていて、
その街道沿いは麦や野菜,トップルの原料となる蕪によく似た、
ヴェットという野菜の畑が続いていた。
青々とした麦が朝露に濡れてキラキラと光っている。
街から出たことのない私にとっては、それだけでも珍しい光景だった。
街のような賑わいはないが、
農作業をする農夫がちらほら見えているのがまた面白かった。
物珍しそうに観察していた私に気がついたのか、
前方を走っていたクロエが馬の歩みを休め、私に並走する形で話しかけてきた。
「収穫の時期になるともっと綺麗ですよ。この辺一帯が黄金の草原に見えますから」
「黄金の草原?!」
何かの本に、麦は黄金色に輝くと書いてあったのを思い出す。
金の装飾はもちろん家にもお城にもあるから、なんとなく想像出来る。
その中を馬で走ったら気持ち良さそうだなぁとうっとりしてしまう。
その様子を見ていたクロエがくすりと笑った。
「レイやお兄様は見たことがあるのかしら?」
ふと、2人を思い出す。
お兄様は家にいない事が大半だし、
レイもここ数年色々な場所に視察に出たりしているので、
城に居ない事が多くなっていた。
「そうですね。収穫時期に兵の強化訓練を行ったりする事もあるらしいので、目にしていると思いますよ」
むうぅと眉間にシワを寄せ、「ズルい」と一言言うと、またまた笑われてしまった。
「そう言えばクロエは最近お城に来たのよね?いつからお城に?」
秋に強化訓練がある"らしい"って言ってるって事は、
ここに来てから一年は経ってない筈だ。
「今年の春先ですね。リヴェル騎士団の視察にいらした殿下の目にたまたま留まって、城の兵力強化に協力して欲しいと」
「へぇー…。じゃあ、騎士団の中でもそれなりの位だったんだ?」
兵力強化に強化ってことは、兵の訓練指導をして欲しいって事だと思うから、
結構上の立場だったんじゃ無いかしら。
「いえいえ、リヴェル騎士団もそこまで長く居たわけでは無いので…指揮と言っても、小隊の隊長をやっていた位です。」
申し訳なさそうにクロエがいった。
「じゃあ本当にクロエは凄いのね!レイが数ある隊の中でもクロエに目を付けたって事は凄くできる人って事だわ!」
目をらんらんと輝かせてクロエに言うと、
「そうだといいのですが」と苦笑する。
「私はこの見た目故、何処へ言っても目立ってしまって…実力より見目で選ばれる事の方が多いので何とも…」
困ったようにクロエは肩を竦めた。
確かに銀髪だけでも珍しいのに、
アメジスト色の瞳って聞いたことがないくらい珍しい。
隣に置いておきたくなる人の気持ちは少し判るかも。
「んー。それでもレイは実力で選んだんじゃないかしら?確かにパッと見て目に入りやすい容姿かもしれないけど、それだけだったら四六時中レイはクロエを側に起きたがるだろうし、何より私の護衛をクロエ1人に任せたりしないと思うわ」
そもそも恋愛に興味がないレイが、
見目で人を選ぶというのがナントモしっくり来なくって、
思わずくすりと笑ってしまった。
クロエは暫く考えた後、
「そうか…そうですね」
と笑顔で答えた。
それにね、と私は続ける。
「最初のきっかけがたとえ見た目だったとしても、それはそれでラッキーなんじゃないかしら?私がクロエ位の実力を持ってたとしても気がついて貰える自信はないわ。持って生まれた良いものがあるなら、どんどん利用して上を目指せば良いのよ」
私がそう言うと、クロエは驚いた顔をして「ッハ!」と笑った。
「そんな風に言われたのは初めてです。姫は変わっておられるのですね」
クロエの言葉にちょっとムッとなる。
「普通だと思うけど…」
前を向いて憮然として呟くと、隣からくすくすとクロエの笑い声が聞こえる。
「いえ、変わってらっしゃいますよ。いい意味で、です。私は男女問わず妬まれる事も少なくないので、姫の反応は新鮮です。しかし…そうですね。そういう考え方もあったのですね」
ありがとう御座います。と微笑みながらクロエは言った。
そういえば、私はレイが来るまで寝ていたけど、
レイはまったく寝てない事に気がついた。
「ん、ゴメン。じゃぁ…行くね」
クロエに手伝ってもらって馬に跨がった。
当のクロエはひらりと難なく1人で馬に跨がる。
なぁ、とレイが声をかける。
「ほとぼりが冷めるまでと言ったが、ホントは何しにダールに行くんだ?…まぁ、兄貴絡みだとは思うが」
私は顎に手を当て、少し考えてから真面目な顔でレイに向ってこう言った。
「侯爵様にワガママを言いに」
=====
クロエと共に南へひた走る。
丘を下り、街道へ出た時には日が昇り始めていた。
思っていたよりかなり時間をロスしている。
予定ではもう最初の村に着いている筈だった。
王都から1番近い村までは、大きな街道が通っていて、
その街道沿いは麦や野菜,トップルの原料となる蕪によく似た、
ヴェットという野菜の畑が続いていた。
青々とした麦が朝露に濡れてキラキラと光っている。
街から出たことのない私にとっては、それだけでも珍しい光景だった。
街のような賑わいはないが、
農作業をする農夫がちらほら見えているのがまた面白かった。
物珍しそうに観察していた私に気がついたのか、
前方を走っていたクロエが馬の歩みを休め、私に並走する形で話しかけてきた。
「収穫の時期になるともっと綺麗ですよ。この辺一帯が黄金の草原に見えますから」
「黄金の草原?!」
何かの本に、麦は黄金色に輝くと書いてあったのを思い出す。
金の装飾はもちろん家にもお城にもあるから、なんとなく想像出来る。
その中を馬で走ったら気持ち良さそうだなぁとうっとりしてしまう。
その様子を見ていたクロエがくすりと笑った。
「レイやお兄様は見たことがあるのかしら?」
ふと、2人を思い出す。
お兄様は家にいない事が大半だし、
レイもここ数年色々な場所に視察に出たりしているので、
城に居ない事が多くなっていた。
「そうですね。収穫時期に兵の強化訓練を行ったりする事もあるらしいので、目にしていると思いますよ」
むうぅと眉間にシワを寄せ、「ズルい」と一言言うと、またまた笑われてしまった。
「そう言えばクロエは最近お城に来たのよね?いつからお城に?」
秋に強化訓練がある"らしい"って言ってるって事は、
ここに来てから一年は経ってない筈だ。
「今年の春先ですね。リヴェル騎士団の視察にいらした殿下の目にたまたま留まって、城の兵力強化に協力して欲しいと」
「へぇー…。じゃあ、騎士団の中でもそれなりの位だったんだ?」
兵力強化に強化ってことは、兵の訓練指導をして欲しいって事だと思うから、
結構上の立場だったんじゃ無いかしら。
「いえいえ、リヴェル騎士団もそこまで長く居たわけでは無いので…指揮と言っても、小隊の隊長をやっていた位です。」
申し訳なさそうにクロエがいった。
「じゃあ本当にクロエは凄いのね!レイが数ある隊の中でもクロエに目を付けたって事は凄くできる人って事だわ!」
目をらんらんと輝かせてクロエに言うと、
「そうだといいのですが」と苦笑する。
「私はこの見た目故、何処へ言っても目立ってしまって…実力より見目で選ばれる事の方が多いので何とも…」
困ったようにクロエは肩を竦めた。
確かに銀髪だけでも珍しいのに、
アメジスト色の瞳って聞いたことがないくらい珍しい。
隣に置いておきたくなる人の気持ちは少し判るかも。
「んー。それでもレイは実力で選んだんじゃないかしら?確かにパッと見て目に入りやすい容姿かもしれないけど、それだけだったら四六時中レイはクロエを側に起きたがるだろうし、何より私の護衛をクロエ1人に任せたりしないと思うわ」
そもそも恋愛に興味がないレイが、
見目で人を選ぶというのがナントモしっくり来なくって、
思わずくすりと笑ってしまった。
クロエは暫く考えた後、
「そうか…そうですね」
と笑顔で答えた。
それにね、と私は続ける。
「最初のきっかけがたとえ見た目だったとしても、それはそれでラッキーなんじゃないかしら?私がクロエ位の実力を持ってたとしても気がついて貰える自信はないわ。持って生まれた良いものがあるなら、どんどん利用して上を目指せば良いのよ」
私がそう言うと、クロエは驚いた顔をして「ッハ!」と笑った。
「そんな風に言われたのは初めてです。姫は変わっておられるのですね」
クロエの言葉にちょっとムッとなる。
「普通だと思うけど…」
前を向いて憮然として呟くと、隣からくすくすとクロエの笑い声が聞こえる。
「いえ、変わってらっしゃいますよ。いい意味で、です。私は男女問わず妬まれる事も少なくないので、姫の反応は新鮮です。しかし…そうですね。そういう考え方もあったのですね」
ありがとう御座います。と微笑みながらクロエは言った。
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