ウイニー王国のワガママ姫
ワガママに癖あり 2
「ダっ……」
と言ってレイは絶句する。
私は首筋に汗が流れるのを感じながら、
誤魔化すように「えへっ」とぎこちなく笑ってみる。
レイは私の肩をガシッと掴むと、食いかかるように問い詰めてきた。
「何考えてんだ!?ここからどれだけ距離があるか解ってんのか?本当に死ぬ気か?!」
「大丈夫だって。馬で4日か5日あれば着くよ。うん」
私がそう言うとレイは頭を抱える。
「その馬は?」
「屋敷のお兄様の馬を使うわ」
「デカすぎてお前1人じゃ乗れないだろう!」
因みに、この国の騎士が使う馬の平均体高は約2m前後。
勿論うちの屋敷にいる馬の殆どがそれ位の大きさだ。
「失礼ね。乗れるわよ!台座持って行けば良いんだから」
「…その使った台座はどうやって馬に乗せるんだ?」
「…」
考えてなかった。
「な…んとかなるわっ」
そう答えると、レイが呆れた顔で更に聞いてくる。
「……馬の管理は?」
「村とか町とかで餌を分けて貰うわ」
1頭くらいならお金払えばなんとかなるはず。
と思ってるとレイの顔がますます呆れ顏になっていく。
な、なんで!?
「寝泊まりとか飯は?」
「旅宿使う。なかったら野宿する。食料は少し買ってある」
「野党とかモンスターが出たらどうするんだ」
「弓とか…ショートソードぐらいなら扱えるもの」
それだけ聞くと、だあぁぁ〜言ってレイはその場に座りこんでしまった。
「レイ?」
なんか私間違った事言っただろうか?
しゃがみ込んでレイの顔を覗き込むと、
まるで可哀想なものでも見ているかの様な顔をしている。
「お前…良かったな?死ぬ前に俺の所に来て」
「な、何で死ぬの前提なのよ!私だって戦えるわ!」
「無理無理。お前には無理だ。と言うか、野党に襲われるとか以前問題だ」
いいか?と真剣な目で私を見つめて続ける。
「馬はこっちで用意してやる。後、旅に慣れた兵士も1人付けてやる。行きたいならそいつのいう事をしっかり聞くのが条件だ。」
その言葉に私は目を瞠る。
是が非でも引き止められると思っていたのに、馬や兵まで用意するですって…?
聞き間違いじゃないかしら?
まじまじとレイを見つめる。
「なんだ?」
「だって、レイは絶対反対する思ってたから」
「無論反対だ。出来る事なら地下牢にでも閉じ込めておきたいね。だが、お前はどうにか抜け出してそのまま飛び出してでも行くだろうからな」
それだったらこっちで色々用意した方がマシだ。とレイは言った。
よくご存知で。
「言っとくが、兵士1人でも無謀なくらいなんだからな!もしなにかあったら、そいつ見捨ててでもお前は全力で逃げろ」
「そんな…」
見捨てて逃げるなんて酷い事、私にはきっと出来ない。
「ダメだ!これは命令だ。お前はそれだけの地位にいる事を忘れるな」
渋々頷くと、レイも真面目な顔で頷いた。
「どうせ荷物は屋敷なんだろ?準備が出来たら街外れの丘の上で落ち合おう」
「わかった」と返事をし、急いで屋敷へ戻った。
=====
屋敷に戻りクローゼットから荷物を取り出すと、
伊達眼鏡を砂塵避けのゴーグルに換え、鞄にしまう。
更に、昼間机に投げた本と、買って来た食料などを鞄に詰め、
再びロープをつたい屋敷を出る。
丘に着くと、時刻は既に午前4時を回っていた。
暫くすると、城壁の方から明かりが2つこちらの方へ近づいてくるのが見えた。
「おう!居た居た。すまんがこいつのお守りを頼むぞ」
合流したと同時に、ぽんぽんっと私の頭をレイが叩く。
普段なら、レイの「お守り」という言葉に反論する所だけど、
目の前の人に目を奪われて、それどころではなかった。
厳つい男性が来ると思っていたのに、レイの横に居たのは、
この国では見たことも無い様なとても綺麗な女性だった。
「承知。命に代えてもお守り致します」
キリッと敬礼をして応えた彼女は、レイとさほど変わらない位身長が高く、
長いウェーブのかかったシルバーブロンドを、ひとまとめしてにリボンで結んでいる。
歳はお兄様より上かしら?とても大人っぽいし、まつ毛も長い。
明かりに照らされた顔を見ると、アメジストの様な瞳がこちらを見つめた。
「近衛兵指令補佐をしている、クロエ・オットマンと申します。どうぞよろしくお願いします」
クロエがそう言って手を差し出す。
が、私はポーッと見惚れて反応出来ずにいた。
「あの…?」
とクロエは困惑した表情を見せた。
私は慌てて彼女の手をギュッと握った。
「ごめんなさい!貴方みたいな綺麗な人初めてで…こちらこそよろしくお願い致しますわ。レティアーナ・ビセットと申します」
クロエは一瞬にして目を丸くし、
その後、戸惑いながらも「ありがとうございます」と笑顔で返してくれた。
「クロエはまだ城に来て間もないが、ここに来るまではいろんな騎士団で武者修行してたらしくてな、リヴェル騎士団にも居たことがあったから実力も道中も適任だろう」
凄い!と私は目を輝かせる。
だって女性の身で武者修行の旅をしてて、
更に城にきて間もないのに、隊長補佐って…お兄様の上司ってことよ?!
「かっこいい…」とうっとりして呟くと、
レイもクロエも苦笑した。
「でも、そんな偉い人借りちゃっていいの?」
隊長補佐なんて偉い人が突然居なくなったら困るんじゃない?
気にすんな気にすんな。とレイは言う。
「お前が野垂れ死ぬ方が数十倍困るから。城の兵で修羅場くぐってて、旅に慣れてるってヤツはそいつしか居ないんだよ」
修羅場…なんかやっぱりこの人凄いんだなぁ〜。
まじまじクロエを見ていると、
何処か落ち着かないといった感じで、
「買い被り過ぎですから」とクロエはスッと目を伏せた。
「ところでお前、屋敷の方はどうするんだ?」
「ん。メルに協力して貰うように手紙渡してある。今日一日はメルに私が部屋に居るかのように振舞って貰う様に、明日はお爺様のお屋敷に逃げ込んだって事になる様に準備して来た。お爺様にも口裏を合わせて貰えるようにお肉屋さんにお手紙頼んだわ」
と、正直に説明した。
「そうか」とレイが言うと、
胸ポケットから何か取り出し私に渡してきた。
受け取ったのは、伸縮する紐の付いた掌にすっぽり収まる大きさの小さな石と、
封のしてある手紙だった。
「なにこれ?」
石を指先でつまむと、紐を引っ張ったり縮めたりしてみせる。
「石は腰に付けとけ。日に当てとけば暗い所で光るようになる。カンテラ石だ」
へぇ〜と言って言われたとおり腰の刀帯に紐を通し、
その紐の先にあるフックを紐に引っ掛ける。
手を離すと、しゅるるっと音を立てて紐が縮み、石が腰の所で止まった。
「使う時はそのまま引っ張れば手元まで伸びるから」
レイはしゅるしゅるっと自分の腰についた石を引っ張って見せた。
凄く便利!
「本来、城の兵士にしか支給しない貴重なものなんだからな。無くすなよ」
コツンと私の額を叩きながらレイは言った。
「この手紙は?」
封を見ると、宛名とかは特に書いてない。
「それはお前の身分証だ。俺が保証人。着いたら城の門兵にでも見せれば通して貰えるだろう」
身分証…この短時間にここまで!
手元の手紙をじっと見つめていると、目頭がまた熱くなってきた。
「レイ…」
掠れた声で呼びかける。
「ん?」とレイは首を傾げる。
「〜〜〜〜レイぃぃーー!!」
「うわっ」
私はたまらず思い切りレイの首に飛びつき、レイの両頬にキスをした。
「おいおい。よせよせ気持ち悪い」
いつもの悪態が聞こえて来るけど、そんなの気にならない。
私は嫌われても仕方ない事をしたのに、
許してくれた上にここまで協力してくれたのだ。
「ありがとうっ!」
と目尻に涙を貯めながら、レイの目をまっすぐ見つめお礼を言った。
と言ってレイは絶句する。
私は首筋に汗が流れるのを感じながら、
誤魔化すように「えへっ」とぎこちなく笑ってみる。
レイは私の肩をガシッと掴むと、食いかかるように問い詰めてきた。
「何考えてんだ!?ここからどれだけ距離があるか解ってんのか?本当に死ぬ気か?!」
「大丈夫だって。馬で4日か5日あれば着くよ。うん」
私がそう言うとレイは頭を抱える。
「その馬は?」
「屋敷のお兄様の馬を使うわ」
「デカすぎてお前1人じゃ乗れないだろう!」
因みに、この国の騎士が使う馬の平均体高は約2m前後。
勿論うちの屋敷にいる馬の殆どがそれ位の大きさだ。
「失礼ね。乗れるわよ!台座持って行けば良いんだから」
「…その使った台座はどうやって馬に乗せるんだ?」
「…」
考えてなかった。
「な…んとかなるわっ」
そう答えると、レイが呆れた顔で更に聞いてくる。
「……馬の管理は?」
「村とか町とかで餌を分けて貰うわ」
1頭くらいならお金払えばなんとかなるはず。
と思ってるとレイの顔がますます呆れ顏になっていく。
な、なんで!?
「寝泊まりとか飯は?」
「旅宿使う。なかったら野宿する。食料は少し買ってある」
「野党とかモンスターが出たらどうするんだ」
「弓とか…ショートソードぐらいなら扱えるもの」
それだけ聞くと、だあぁぁ〜言ってレイはその場に座りこんでしまった。
「レイ?」
なんか私間違った事言っただろうか?
しゃがみ込んでレイの顔を覗き込むと、
まるで可哀想なものでも見ているかの様な顔をしている。
「お前…良かったな?死ぬ前に俺の所に来て」
「な、何で死ぬの前提なのよ!私だって戦えるわ!」
「無理無理。お前には無理だ。と言うか、野党に襲われるとか以前問題だ」
いいか?と真剣な目で私を見つめて続ける。
「馬はこっちで用意してやる。後、旅に慣れた兵士も1人付けてやる。行きたいならそいつのいう事をしっかり聞くのが条件だ。」
その言葉に私は目を瞠る。
是が非でも引き止められると思っていたのに、馬や兵まで用意するですって…?
聞き間違いじゃないかしら?
まじまじとレイを見つめる。
「なんだ?」
「だって、レイは絶対反対する思ってたから」
「無論反対だ。出来る事なら地下牢にでも閉じ込めておきたいね。だが、お前はどうにか抜け出してそのまま飛び出してでも行くだろうからな」
それだったらこっちで色々用意した方がマシだ。とレイは言った。
よくご存知で。
「言っとくが、兵士1人でも無謀なくらいなんだからな!もしなにかあったら、そいつ見捨ててでもお前は全力で逃げろ」
「そんな…」
見捨てて逃げるなんて酷い事、私にはきっと出来ない。
「ダメだ!これは命令だ。お前はそれだけの地位にいる事を忘れるな」
渋々頷くと、レイも真面目な顔で頷いた。
「どうせ荷物は屋敷なんだろ?準備が出来たら街外れの丘の上で落ち合おう」
「わかった」と返事をし、急いで屋敷へ戻った。
=====
屋敷に戻りクローゼットから荷物を取り出すと、
伊達眼鏡を砂塵避けのゴーグルに換え、鞄にしまう。
更に、昼間机に投げた本と、買って来た食料などを鞄に詰め、
再びロープをつたい屋敷を出る。
丘に着くと、時刻は既に午前4時を回っていた。
暫くすると、城壁の方から明かりが2つこちらの方へ近づいてくるのが見えた。
「おう!居た居た。すまんがこいつのお守りを頼むぞ」
合流したと同時に、ぽんぽんっと私の頭をレイが叩く。
普段なら、レイの「お守り」という言葉に反論する所だけど、
目の前の人に目を奪われて、それどころではなかった。
厳つい男性が来ると思っていたのに、レイの横に居たのは、
この国では見たことも無い様なとても綺麗な女性だった。
「承知。命に代えてもお守り致します」
キリッと敬礼をして応えた彼女は、レイとさほど変わらない位身長が高く、
長いウェーブのかかったシルバーブロンドを、ひとまとめしてにリボンで結んでいる。
歳はお兄様より上かしら?とても大人っぽいし、まつ毛も長い。
明かりに照らされた顔を見ると、アメジストの様な瞳がこちらを見つめた。
「近衛兵指令補佐をしている、クロエ・オットマンと申します。どうぞよろしくお願いします」
クロエがそう言って手を差し出す。
が、私はポーッと見惚れて反応出来ずにいた。
「あの…?」
とクロエは困惑した表情を見せた。
私は慌てて彼女の手をギュッと握った。
「ごめんなさい!貴方みたいな綺麗な人初めてで…こちらこそよろしくお願い致しますわ。レティアーナ・ビセットと申します」
クロエは一瞬にして目を丸くし、
その後、戸惑いながらも「ありがとうございます」と笑顔で返してくれた。
「クロエはまだ城に来て間もないが、ここに来るまではいろんな騎士団で武者修行してたらしくてな、リヴェル騎士団にも居たことがあったから実力も道中も適任だろう」
凄い!と私は目を輝かせる。
だって女性の身で武者修行の旅をしてて、
更に城にきて間もないのに、隊長補佐って…お兄様の上司ってことよ?!
「かっこいい…」とうっとりして呟くと、
レイもクロエも苦笑した。
「でも、そんな偉い人借りちゃっていいの?」
隊長補佐なんて偉い人が突然居なくなったら困るんじゃない?
気にすんな気にすんな。とレイは言う。
「お前が野垂れ死ぬ方が数十倍困るから。城の兵で修羅場くぐってて、旅に慣れてるってヤツはそいつしか居ないんだよ」
修羅場…なんかやっぱりこの人凄いんだなぁ〜。
まじまじクロエを見ていると、
何処か落ち着かないといった感じで、
「買い被り過ぎですから」とクロエはスッと目を伏せた。
「ところでお前、屋敷の方はどうするんだ?」
「ん。メルに協力して貰うように手紙渡してある。今日一日はメルに私が部屋に居るかのように振舞って貰う様に、明日はお爺様のお屋敷に逃げ込んだって事になる様に準備して来た。お爺様にも口裏を合わせて貰えるようにお肉屋さんにお手紙頼んだわ」
と、正直に説明した。
「そうか」とレイが言うと、
胸ポケットから何か取り出し私に渡してきた。
受け取ったのは、伸縮する紐の付いた掌にすっぽり収まる大きさの小さな石と、
封のしてある手紙だった。
「なにこれ?」
石を指先でつまむと、紐を引っ張ったり縮めたりしてみせる。
「石は腰に付けとけ。日に当てとけば暗い所で光るようになる。カンテラ石だ」
へぇ〜と言って言われたとおり腰の刀帯に紐を通し、
その紐の先にあるフックを紐に引っ掛ける。
手を離すと、しゅるるっと音を立てて紐が縮み、石が腰の所で止まった。
「使う時はそのまま引っ張れば手元まで伸びるから」
レイはしゅるしゅるっと自分の腰についた石を引っ張って見せた。
凄く便利!
「本来、城の兵士にしか支給しない貴重なものなんだからな。無くすなよ」
コツンと私の額を叩きながらレイは言った。
「この手紙は?」
封を見ると、宛名とかは特に書いてない。
「それはお前の身分証だ。俺が保証人。着いたら城の門兵にでも見せれば通して貰えるだろう」
身分証…この短時間にここまで!
手元の手紙をじっと見つめていると、目頭がまた熱くなってきた。
「レイ…」
掠れた声で呼びかける。
「ん?」とレイは首を傾げる。
「〜〜〜〜レイぃぃーー!!」
「うわっ」
私はたまらず思い切りレイの首に飛びつき、レイの両頬にキスをした。
「おいおい。よせよせ気持ち悪い」
いつもの悪態が聞こえて来るけど、そんなの気にならない。
私は嫌われても仕方ない事をしたのに、
許してくれた上にここまで協力してくれたのだ。
「ありがとうっ!」
と目尻に涙を貯めながら、レイの目をまっすぐ見つめお礼を言った。
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