ウイニー王国のワガママ姫

みすみ蓮華

ワガママに癖あり 1

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 メルと別れた後、街で少し買い物をして屋敷に戻る。
 夕食を食べ、自室に戻り絨毯の上に寝転がりながら今日の事を振り返る。


 やっぱり流石にやりすぎたかなぁ〜?
 いくら日頃の恨みとは言え、レイが再起不能になったらやっぱりマズいよねぇ?
 とは思うものの、レイと結婚する気はサラサラないし…
 うーーーん。


 時刻は午後8時。
 明日の事を考えると、寝ておきたい所だけど…


 ガバッと起き上がりクローゼットへ向かう。
 鞄の中に突っ込んでいた、例の服と帽子を取り出すとそれに着替え、
 着ていた服を丸め、布団の中へつっこむ。
 更にカバンがらかぎ爪の付いたロープを手に取りベランダへ出る。


「偽装よし、消灯よし」
 と確認をして、スルスルとロープを降りると、
 人がいない事を確認をしつつ城へ向かった。




 手紙を届けた時と同じように浴室から忍び込むと、
 幸か不幸か誰も部屋に居なかった。


 レイが来るまで何処で待とうか悩んだ挙句、
 ベッドサイドに寄りかかって待つことにした。
 ここならレイ以外の誰かが来てもすぐに下に隠れられるし、見つからないだろう。


 それから、1時間が経ち、2時間が経とうとしていた。
 10時はとうに過ぎている。
「マズイなぁ…」


 これ以上は明日に響くから、流石に帰って寝ておきたいんだけど、
 レイがなかなか帰って来ない。
 参ったなぁ〜と床に転がる。


「レイ…早く帰って来て…」
 と呟くと、ウトウトと睡魔に襲われてしまった。






 =====






 ゴンッと急に頭に激痛が走る。


「むぇ!?…痛い?」
 頭を撫でながら起き上がる。


 確か、レイを待っててなかなか帰って来ないから…
 あぁ、待ってたら寝ちゃったのか。
 と、叩かれたであろう頭をさすりながら記憶を辿る。


「お前の精神構造はどうなってるんだ?」


 目の前の脚が喋る。
 ………脚?
 おそるおそる見上げると、
 ランプを片手に怒ったような呆れたようなレイの顔が、私を見下ろしていた。


「あぁ、良かった。レイ。おはよう」
「だからっ!おはようじゃないだろ!帰れっ!」
 ビシッと浴室を指差す。


「ううう…用が済んだら帰るから、チョットだけ待って、ね?」
 これはやっぱり相当怒ってるよねぇ…


「俺は用はない。なにを頼まれてももう聞く気はないから帰りなさい」
 レイがにこっと口角を上げる。
 目も声も凄い笑ってない……スゴクコワイ。


 けど、自分が蒔いた種だからここは我慢しなきゃ。
「違うの!頼みごとじゃなくって」
 そう言って思わず顔を俯けてしまう。


 顔を上げるのが凄く恐い、他愛のない喧嘩は良くするけど
 相手を陥れたりとかそうゆう策略めいた事は一度もなかった。


 すぅーっと息を吸い込み深呼吸する。
 深々と頭を下げる


「流石にやり過ぎたと思うし、許して貰えるとは思ってないけど……ごめんなさいっ」


 部屋の中がしんと静まり返る。
 お互い微動だにしない
 沈黙が続く。


 ううう…罵倒でも何でもいいからなんか言って欲しい。
 膝の上の手をギュッと握りしめ我慢をしていたが、
 とうとうじわっと涙が溢れる。


 暫くすると深い深い溜息が聞こえてきた。
 すると、私の頭をぐしゃぐしゃっと大きな手が撫でる。


「もういい、怒ってない。ったく…泣くくらいならあんな事すんな」
 ポンポンっと頭を叩くと、「ほらっ」と言って腕を引き私を立たせる。


「頬っぺた痛かった?」
「かなりな」
 そう言ってレイは苦笑するので、もう一度ごめんなさいと言う。


「もういいって。まぁ、俺も悪い所があったしな。喧嘩両成敗だろ」
 お互いいい経験だった。と笑いながら言う。


 レイこういう所は素直に凄いなって思う。
 やっぱり器が大きいのだ。


 安心してはたと時間が気になる。


「ねぇ、ところで今何時?」
「ん?2時半だな。誰かさんの所為で寝れなくて軽く飲んでたからな」


 それを聞いてサーーっと青くなる。
 後半部分も罪悪感的な意味で気にはなるけど…


「2時半ですって?!」
「声がデカイ!まったく、夜に出歩くからだ。外が怖いなら明け方までここにいるか?」


 呆れた様に聞いてきたが、私はそんなことで驚いた訳ではない。
 ブンブンと大きく首を横に降る。


「そうじゃなくって!急いで帰って支度しないと夜明け迄に間に合わない!」


 んん?とレイは眉をひそめ、首を傾げる。


「お前まぁだなんかたくらんでんのか?」
「ん。ほとぼりが冷めるまで、旅に出ようと思って」


 うん。嘘は言ってない。


「はぁ?!」
「しぃー!声が大きい!」


「旅ってまさか1人でじゃないだろうな」
 えーっと…と言いつつ目を逸らす。


「お前がそこまで馬鹿だとは思わなかった!」
「馬鹿とはなによう!」
「無謀だと言ってるんだ!死ぬ気か?!大体何処まで行くつもりなんだ」
 これはどうしようかな…本当の事を言うべきか…


 迷っているとレイがガシッと両手で頭を押さえ込んできた。


「言え。正直に言え!嘘ついたら一生許さん」
 目が真剣だ。これは絶対引きとめられる…




「…………ダール」

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