せっかく吸血鬼《ヴァンパイア》になれたのに異世界転移させられて伝説に。(推敲中)

村畑

第6話 お調子者

さあさあさあ!おれの時間だ!!




「おい!ハボ!家、あんま壊さねえ方がいいならこのお客さん方を出迎えに行ってもいいが、どうする!
ここで暴れていいならそうするけどな!!ははは!!」




「勘弁してくれ!!ここには貴重な取引の資料なんかもあるんだ!暴れるなら外で頼むぞ!!!」




「ちぇー!こんな立派な建物ぶっ壊せたら気持ちいいだろうにな。」


「物騒なこと言ってんじゃねえよ!お願いだから外で戦ってくれ!!!」


「わかったわかった!
ははっ!んじゃ、ちょっくら言ってくるぜ!」




意気揚々と外へ出ようとしたおれは一つ気がついた。
(今、真昼間だ。。。)


そう。日の光があるうちは外へ出るとまたあの地獄になる。
どうするか考えた結果、ひとつ実験をしてみることにした。


あの黒い靄、魔力を体に纏ってみることで日光から身を守れないか。もしこれがうまくいけばこれからの生活が格段に楽になる。




とりあえず腕全体に纏わせ、日光に当ててみる。




その瞬間、全身を痛みが…




走ることはなかった。




(うまくいった…問題は眼だな。
王都の結界…真似してみるか。)


そう思いつき、王都の結界を模して魔力を自分を中心に広げて覆う。


そのまま日の当たっているところへ出てみるが全く痛みも刺激もない。


(大成功だ。)




確信したおれはそのまま鼻歌を歌いながら窓から飛び降りた。
















あれは私が部下のメイド達に指示を出していた時の事。
突如客間の窓の割れる音が響いた事で敵襲に気づき、慌てて外へと向かいました。
そこには真っ黒な外套に身を包み、顔を隠したまま杖や剣を携えた集団がおり、そのうちの一人の攻撃魔法により客間への襲撃を受けたようです。


私は主人の逃げる時間を稼ぐためにも抵抗しようと集団の中に入って行きました。


いや、入ろうとしたその時でした。
客間の割れた窓から突如、一つの黒い塊が落ちてきました。
あれはまさにでした。闇そのものです。


陽光降り注ぐ晴天のもとに現れた、太陽の光さえも吸収してしまう闇。
この世の現象とは思えないモノが目の前に現れ、まさに襲撃者の集団へと向かっていったのです。


ソレがあるところはそこだけが空間にぽっかりと穴が開いているかのように見え、謎の集団がまるで吸い込まれては廃棄物として捨てられているようでした。




襲撃者を圧倒して殲滅すると闇の中に浮かぶ2つの赤い光に気づきました。その光を見た瞬間全身に悪寒が走り身体が固まり、を覚悟しました。
放心状態となり立ち尽くしているとその光は闇が最初に現れた客間の方へと動き、そのまま客間に入っていました。


例え自分の命と引き換えになろうとも主人を救いに向かわねばと屋敷へ戻ろうとするが、全身の震えが止まらず、体が言うことを聞いてくれず、結局主人御自らこちらへと足を運んで頂くまで一歩も動けずに立ち竦んでおりました。












魔力《闇》を纏ったおれは、窓の割れたところから庭を見渡した。


なんか黒い集団がいる。50人ほどだろうか。
いろんな武器を構えているが、負ける気はしない。


「ひゃっほーーい!!!!」
ついテンションが上がり、声を上げながら飛び降りた。


おれが移動すると魔力がおれについてこれずに少し剥がれかかる。
それには少し焦ったが、おれの体から数ミリ程度で収めていた魔力を半径2メートル程に広げることでそれを防ぐ。


地面に降り立ち、まず目の前のやつに殴りかかる。
相手は持っていた剣を残し飛び散った。
少し力を入れすぎたらしい。


すると、飛び散った血がおれの纏う闇に蒸発するように吸収されていった。




血を…感じ取っててしまった…




喉が渇く…


(やばい…これは以前ブラックウルフとの戦闘で陥ってしまったやつだ…この渇きに呑まれると記憶が飛ぶ…抑えろ…)


ブラックウルフの血の匂いを嗅いでしまったあの時、自分の記憶か残らなかったことを思い出した。
これではせっかくの自分の能力を楽しめない。
絶対に嫌だ。


おれはどうすれば抑えられるのかを考える。


(逆に自らの意思で吸ってしまえば…?)


物は試しだ。


後ろからおれの闇の範囲に何者かが入ってきたのを感じた。
この闇は視認出来ていなくとも何かが入ってくるとおれには手に取るようにわかるらしい。


新しい発見に喜びを感じながらも後ろから振り下ろされる剣を避け、敵の首筋に噛み付いて相手の血を吸う。


失血により死んでは元も子もないので、ある程度でやめてやる。
すると敵はそのまま地面に倒れ伏した。


(うん、喉の渇きが少し落ち着いた。これは成功かな。)




血を吸うことであの渇きの衝動が少し安らいだことに安心し、また次の敵へと向かい殴りかかる。


全てを殺しては奴らの目的がわからないままだし、生かしていた方が新しい追っ手がきておもしろいことになるかもしれない。
楽しみすぎる。
残った奴らは死なない程度に血を吸うことに決めた。




「おーいお前ら!殺さないでやるから!全力でかかってこーい!!!」


大声で叫び、話しかけるが返答はなく、奇声をあげて襲ってくるだけだ。


(あれ…聞こえてない…?)


どうやらこの闇は内部の音すら吸収するらしい。
困った。外の音は聞こえてるのに。。。


(まあいいか!どっちにしろ来てるんだ。楽しもうっと!)


そう決めたおれは次から次へと向かってくる黒い集団を闇で飲み込みながら吸血していった。


ひとり、またひとりと倒れて行くたびに高揚する。楽しい。
止まらない笑みを堪えることすらやめ、ただひたすらに狩った。


だが、楽しい時間には終わりがくる。
全員を倒し切ってしまい、物足りなさを感じてふと横を見ると、同じくこちらを見て突っ立っている執事を見つけた。


(流石にハボの従者には手を出しちゃダメだよな…向こうから襲って来ないかな?そしたら正当防衛だよな?)などと考えていたが、かれは目を見開いたままこちらに動く気配はない。


諦めて客間に戻ると、ハボが床にへたれこんでいた。


「ムラマサ…お前さん、一体何者なんだ!?」


「はっ、単なる旅人さ!何者もクソもねえよ。はははっ!」


「まさか奴らを…こんな短時間で殲滅するなんて…」


「いや、殺してねえよ?」


「なに!?あれだけの数と戦いながら生かしたままなのか!?」


(まぁ…最初の1人は木っ端微塵にしたけどな。でも血は残ってないし、黙っとくか。)




ハボは顔の穴という穴を全開にして驚いている。
なんとも滑稽な顔だ。


それはそうと自分の力をこんなにも驚かれるのはなんとも心地よい。
こりゃ調子にも乗るよな。


(最近…おれめっちゃくちゃ調子に乗ってねえか?
足元すくわれなきゃいいけど…
ま、こんだけの力があればなんとでもなるか。)


自分の中で解決した。
力がある以上調子に乗れるだけ乗っておこう。


ここんとこ本当に気分がいいな。




なんて楽観的に考えていたが、この時のおれはまさかあんな大物に出会えるとは思ってもいなかった。

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