せっかく吸血鬼《ヴァンパイア》になれたのに異世界転移させられて伝説に。(推敲中)
第5話 王都と襲撃
幌馬車の中で横になってハボと話していると、日光による地獄からすぐに解放された。
火傷のような怪我もみるみるうちに治り、ハボのウチに世話になることが決まった頃にはすっかり元気になった。
改めて自分の先程の戦闘を思い返す。
といっても記憶にあるのは最初の1匹とのものだけだが。
あれほどの筋肉に覆われた上に3メートルを超える巨体がたった一発の拳で弾けたのだ。
自分の力が怖いが、それに勝る充足感。
そして腕が食いちぎられても痛みを感じたのは少しだけ。虫に噛まれた程度だった。何よりその腕を瞬時に治してしまった治癒力。
身体の人間離れした変化のことはもう考えないことにした。自分の力に改めて酔いしれる。
(おれ、強い…へへっ…)
などと考えていると、王都が見えてきたらしい。
「おーい!ムラマサ!起きてっかー?見えてきたぞ!ここがこの国、カウンテ王国の王都 《ブナンテ》だ!」
視界に入りきらない程の薄っすらと黄金に輝く半球体の奥にこれまでの草原からは想像もできない立派な城が堂々と建っていた。
「この薄い膜みたいなのはなんだ?」
「ああ、これは周辺の魔物や外国からの襲撃に対抗するための結界さ!
なんでも、カウンテ王国中から集めた優秀な魔術師様達が維持してんだとさ。これが出来てからは一度も外からの襲撃に遭っていない。ほんとすげえよ!」
ハボは両手を広げて空を仰ぐように誇らしげに言う。
おれはそれを苦笑いしつつも、この世界に魔術師なるものの存在に胸を踊らす。
「おれも…魔法が使えるかもしれない…!?」
ハボに聞こえないくらいの小声でつい呟いた。
魔法の存在が、この結界に証明されている。疑う余地もない。
で、あればヴァンパイアになってこんなに喜んでいるおれが魔法を習得したいと思わないわけがない。
もうウキウキだ。
だが、王都に近づくとすぐに現実に戻される。
結界に外からくっつけたような1つの石造りのでっかい立派な大門の前に長蛇の列があった。
「あの列は何なんだ?」
「ああ、あれは検問さ。
外国のスパイや魔人なんかの侵入を防ぐもんさ。」
(はっ…!?魔人…って、ラノベなんかでは魔力が人間より強大なんだよな…ヴァンパイアってどうなんだ?これ、普通に受けたら魔人認定されて捕縛…?
やばくねえか…。)
頭をフル回転させる。
以前ブラックウルフと戦った時のことを思い出した。
殴りつける寸前、腕に力を込めたら発生した黒い靄を。
(まさかあれが魔力に由来する力なんじゃ…)
目をつぶり、試しに意識を手に集中して力を込めてみる。
すると、やんわりと温かくなるのを感じた。
そのまま目を開けるとうっすらと黒い靄がかかっていた。力を抜いて掌を広げるとそれはスッと消えていった。
それを列に並ぶまでの間に繰り返していると黒い靄を足や腹、肩に全身などの意図したところに自由にうまくコントロールできるようになった。
もちろん、消すことも。
2時間ほど並んでいると遂に順番が来た。
衛兵がハボと少し言葉を交わし、おれのいる幌を開けた。
「お、君が彼の言う連れか。悪いが、こっちに来てくれるか。怪我人と聞いたが、すまんな。規則なんだ。」
そう言うとおれを大門についた小窓のようなところに案内し、一つの水晶を差し出した。
「これに手を当ててくれ。」
言われるがままに水晶に手を当てるとほんのりと温かくなり、白く光りを発した。
「よし、問題なしだ、悪かったな。戻っていいぞ。」
黒の靄を完全に体から消すイメージをしたまま手を当てたので魔力なるものは喪失させていたはずだが、光ったということはあの水晶から発されたのだろうか。
何はともあれバレなくてよかった。
無事検問を通過し、王都へと入っていった。
そこは中世の西洋を思い起こさせるような街並みだった。
人も通りを多く往来し、どこか喧騒が心地良い。
そして何よりも立派にそびえ立つ王城だ。
入ってみたい…
なんてことを考えているうちについたのは、王城には流石に劣るがこれまた立派な一軒家の前だった。
まるで物語に出てくる貴族の家のようだ。
2メートルを超える鉄柵に囲われ、噴水のある公園のような庭がついた屋敷だ。
「ああ、ここがおれんちだ。まぁ、見ての通り部屋はいくらでも余ってるから好きなだけ泊まっていきゃいい!
宿代は少なくとも10年分は先にもらってるからな!はっはっは!」
とハボは大げさに笑い、馬車のまま門をくぐる。
荷を下ろすのは玄関から慌てて出てきた従者に任せ、玄関を通ると左右に綺麗に整列した執事とメイドが出迎える。
あまりにも現実離れした光景に開いた口がふさがらない。
「そんなとこ突っ立ってないで、ほら、入れ入れ!」
ハボに案内されるがままに客間へと入っていった。
そこで聞いた話によると実はハボはこの国随一の大商人だそうだ。
本当は検問での長蛇の列などスルーできたそうだが、単身お忍びでの取引だったために通行証などは持たずにこっそりと街を出たらしい。
意外と肝が座っているというか、大胆な人物らしい。
気に入った。
なんて上から目線で思っていると突然窓ガラスが割れ、突風が吹いてきた。
「うお!?奴らか!!おい!ムラマサ!!ここは危険だ!逃げろ!!」
ハボは叫ぶがおれは全くもって無視だ。
力を試したいおれにこんな絶好の機会はない。
「ははは!なーに言ってんだハボ!追い返してやんよ!」
「や、やめとけ!あいつらは正直強い!聖騎士を待て!!」
あ、また面白そうな単語が出てきた。
聖騎士…いよいよ異世界だ!
敵からの襲撃にも、聖騎士という響きにも、そしてこんな立派な都市での乱闘にも胸が踊る。
おれは腕に黒い靄を集中させ、敵が姿を現わすのを心待ちにしていた。
火傷のような怪我もみるみるうちに治り、ハボのウチに世話になることが決まった頃にはすっかり元気になった。
改めて自分の先程の戦闘を思い返す。
といっても記憶にあるのは最初の1匹とのものだけだが。
あれほどの筋肉に覆われた上に3メートルを超える巨体がたった一発の拳で弾けたのだ。
自分の力が怖いが、それに勝る充足感。
そして腕が食いちぎられても痛みを感じたのは少しだけ。虫に噛まれた程度だった。何よりその腕を瞬時に治してしまった治癒力。
身体の人間離れした変化のことはもう考えないことにした。自分の力に改めて酔いしれる。
(おれ、強い…へへっ…)
などと考えていると、王都が見えてきたらしい。
「おーい!ムラマサ!起きてっかー?見えてきたぞ!ここがこの国、カウンテ王国の王都 《ブナンテ》だ!」
視界に入りきらない程の薄っすらと黄金に輝く半球体の奥にこれまでの草原からは想像もできない立派な城が堂々と建っていた。
「この薄い膜みたいなのはなんだ?」
「ああ、これは周辺の魔物や外国からの襲撃に対抗するための結界さ!
なんでも、カウンテ王国中から集めた優秀な魔術師様達が維持してんだとさ。これが出来てからは一度も外からの襲撃に遭っていない。ほんとすげえよ!」
ハボは両手を広げて空を仰ぐように誇らしげに言う。
おれはそれを苦笑いしつつも、この世界に魔術師なるものの存在に胸を踊らす。
「おれも…魔法が使えるかもしれない…!?」
ハボに聞こえないくらいの小声でつい呟いた。
魔法の存在が、この結界に証明されている。疑う余地もない。
で、あればヴァンパイアになってこんなに喜んでいるおれが魔法を習得したいと思わないわけがない。
もうウキウキだ。
だが、王都に近づくとすぐに現実に戻される。
結界に外からくっつけたような1つの石造りのでっかい立派な大門の前に長蛇の列があった。
「あの列は何なんだ?」
「ああ、あれは検問さ。
外国のスパイや魔人なんかの侵入を防ぐもんさ。」
(はっ…!?魔人…って、ラノベなんかでは魔力が人間より強大なんだよな…ヴァンパイアってどうなんだ?これ、普通に受けたら魔人認定されて捕縛…?
やばくねえか…。)
頭をフル回転させる。
以前ブラックウルフと戦った時のことを思い出した。
殴りつける寸前、腕に力を込めたら発生した黒い靄を。
(まさかあれが魔力に由来する力なんじゃ…)
目をつぶり、試しに意識を手に集中して力を込めてみる。
すると、やんわりと温かくなるのを感じた。
そのまま目を開けるとうっすらと黒い靄がかかっていた。力を抜いて掌を広げるとそれはスッと消えていった。
それを列に並ぶまでの間に繰り返していると黒い靄を足や腹、肩に全身などの意図したところに自由にうまくコントロールできるようになった。
もちろん、消すことも。
2時間ほど並んでいると遂に順番が来た。
衛兵がハボと少し言葉を交わし、おれのいる幌を開けた。
「お、君が彼の言う連れか。悪いが、こっちに来てくれるか。怪我人と聞いたが、すまんな。規則なんだ。」
そう言うとおれを大門についた小窓のようなところに案内し、一つの水晶を差し出した。
「これに手を当ててくれ。」
言われるがままに水晶に手を当てるとほんのりと温かくなり、白く光りを発した。
「よし、問題なしだ、悪かったな。戻っていいぞ。」
黒の靄を完全に体から消すイメージをしたまま手を当てたので魔力なるものは喪失させていたはずだが、光ったということはあの水晶から発されたのだろうか。
何はともあれバレなくてよかった。
無事検問を通過し、王都へと入っていった。
そこは中世の西洋を思い起こさせるような街並みだった。
人も通りを多く往来し、どこか喧騒が心地良い。
そして何よりも立派にそびえ立つ王城だ。
入ってみたい…
なんてことを考えているうちについたのは、王城には流石に劣るがこれまた立派な一軒家の前だった。
まるで物語に出てくる貴族の家のようだ。
2メートルを超える鉄柵に囲われ、噴水のある公園のような庭がついた屋敷だ。
「ああ、ここがおれんちだ。まぁ、見ての通り部屋はいくらでも余ってるから好きなだけ泊まっていきゃいい!
宿代は少なくとも10年分は先にもらってるからな!はっはっは!」
とハボは大げさに笑い、馬車のまま門をくぐる。
荷を下ろすのは玄関から慌てて出てきた従者に任せ、玄関を通ると左右に綺麗に整列した執事とメイドが出迎える。
あまりにも現実離れした光景に開いた口がふさがらない。
「そんなとこ突っ立ってないで、ほら、入れ入れ!」
ハボに案内されるがままに客間へと入っていった。
そこで聞いた話によると実はハボはこの国随一の大商人だそうだ。
本当は検問での長蛇の列などスルーできたそうだが、単身お忍びでの取引だったために通行証などは持たずにこっそりと街を出たらしい。
意外と肝が座っているというか、大胆な人物らしい。
気に入った。
なんて上から目線で思っていると突然窓ガラスが割れ、突風が吹いてきた。
「うお!?奴らか!!おい!ムラマサ!!ここは危険だ!逃げろ!!」
ハボは叫ぶがおれは全くもって無視だ。
力を試したいおれにこんな絶好の機会はない。
「ははは!なーに言ってんだハボ!追い返してやんよ!」
「や、やめとけ!あいつらは正直強い!聖騎士を待て!!」
あ、また面白そうな単語が出てきた。
聖騎士…いよいよ異世界だ!
敵からの襲撃にも、聖騎士という響きにも、そしてこんな立派な都市での乱闘にも胸が踊る。
おれは腕に黒い靄を集中させ、敵が姿を現わすのを心待ちにしていた。
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