せっかく吸血鬼《ヴァンパイア》になれたのに異世界転移させられて伝説に。(推敲中)

村畑

第3話 転移と力

視界が真っ白に染まり、数回瞬きすると周りの景色が見えてきた。
時間はのようだ。


あたりに建物は見えず草原が広がっており、おれはそこに伸びた車道ほどの幅の土の道のど真ん中に立っていた。




人影も見えないのでとりあえず歩く。
そういえば、以前全力疾走をしてもすぐに家にについてしまった為に今の自分がどの程度で疲れを感じるのかを確認していない。


ただの思いつきだったが、訳のわからないところにある以上、目的地もない。
時間もあることだし疲れるまで歩いてみよう、という安易な考えだった。


































おれは忘れていた。
太陽が出てきたらまたあの地獄へと放り込まれるということを。










少し歩いていると獣の遠吠えが聞こえた。
するとあたりからそれに反応するように複数の遠吠えが返ってきた。




日本に住んでいたころはテレビやネットでしか聞いたことのなかったものだったが、実際に聞いてみても特に焦りや身の危険を感じることはなかった。







無視して歩く。
すると遠くに1匹の獣を見つけた。風のせいか、はたまた獲物を見つけた興奮か。黒と灰色が混じった様な毛並み逆立っていた。


正直、遠吠えの正体など興味ない。
そんなことより、完全に日が暮れたこの時間にあんなに遥か遠方のものを視認できるほど自分の視力が強化されていた事実に感動を覚えていた。






独り感傷に浸っていると、その獣が猛スピードでせまってきた。
涎をまき散らしながら狂ったように吠えながら向かってきているのをぼんやりと眺めていると周辺の空気を震わせるように遠吠えのような呻り声のような獣の鳴き声が増えてきた。




辺りをを見渡すと最初の遠吠えで他の奴らが集まってきていたらしい。




「おれひとりにこんなに集まっても全部の腹は満たされんだろうに…。
こいつら知能は低いんかな。」


軽く笑いながら最初の個体がこちらに到着するのをのんびり待っていた。


が、あんなに必死に走っているくせに全然着かない。
初めて向けられた敵意にワクワクが止められず、ついにこちらから向かっていくことにした。
もちろん全力だ。
脚に力を込めた。次の瞬間には先の獣の目の前にいた。


驚きと警戒の混じった声で呻っている。


近くで見ると意外と…というよりかなりデカかった。
3メートル近い巨躯に見事な漆黒と青みがかった灰色と純白、三色のマッチした毛皮。そしてなによりその分厚い毛皮越しにもわかるほどに隆起した筋肉。



とても立派な黒狼だった。




今までのおれなら目が合っただけで気を失っていたかもしれないが、もう人間の枠に収まるおれではない。
危機感どころか身の危険さえかんじない。






ヴァンパイアになってから確認出来ていなかったことを一つ思い出した。
身体の頑丈さだ。ジャンプしたときに確認しただろうって?自分で跳んだんだ。無傷で当たり前だ。


近づいてみると噛み付いてきた来たのでとりあえず噛まれてみた。


「痛って…」
腕がとれた。


巨狼が食いちぎったおれの腕を放り捨てた。


すると、その腕に変化がおきた。
零れる血が宙に浮かび、黒い霧となる。
互いに啞然と眺めているとおれの腕にまとわりついてきた。


見事に完治した腕をニヤニヤと確認しながら、視線を黒狼に移す。


「さて、始めようか。」


右腕を引き力を込めると黒い靄か腕を覆った。
そのまま殴りつけると黒狼が霧散し、血があたりに飛び散った。








「この力…やっべ…
ふ…ふふふっ。ふははははは  」




あまりの力に笑いが止まらない。一人笑っていたら、ふと飛び散った血が鼻腔を刺激してきた。


「なっ… 」
突然とてつもない飢餓感に襲われた。


我慢などできそうもない。


「グウォォォォォ   」
自分のものとは思えない声が、叫びが響く。




腹が減った。




喉が渇いた。






腹が減った。腹が減った。喉が渇いた。喉が渇いた。喉が渇いた。喉が渇いた。喉が渇いた。喉が渇いた。喉が渇いた。喉が渇いた。喉が渇いた。喉が渇いた。喉が渇いた。喉が渇いた。喉が渇いた。喉が渇いた。喉が渇いた。喉が渇いた。喉が渇いた。




喉をかきむしる。
血が流れるほどに。




叫びながら悶えていると先ほどの黒狼が群れを成して迫ってきた。


獲物が来た  
無意識に群れに向かっていた。
先頭に立つく黒狼と相対した瞬間にはその喉元に食らいついていた。


鋼のような筋肉をものともせず、おれの歯はすんなりと通った。
そのまま黒狼の血を吸いつくしたおれは次々と獲物へとかぶりつく。


1匹に噛みついていると横から数匹がおれに襲いかかってきた。
両腕両足を爪や牙で引っ掻くと血が流れる。


「グオオオオオオオオ」
おれが吠えると黒い霧が黒狼の群れを覆い尽くすまでに拡がった。


すると、黒狼達は苦しそうに唸りながら原因と思わしきおれに殺到した。


おれは手のひらをその場で掲げ、
強く拳を握った。




黒狼達は血を吐きその場に倒れ伏した。




全ての。100を超える黒狼達、全ての。
心臓を握りつぶしていた。
























我を取り戻したおれはその光景に絶句した。
百を超える黒狼の血を吸いつくしており、その亡骸が草原を覆いつくしていた。


そしてなにより自分から溢れる万能感に酔いしれた。
だがそれもつかの間。迫ってきていたのだ。


が。










そう…
夜明けだ。



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