死なない奴等の愚行
第175話 サーペントが壊れました
(海なら……海なら……私だって……)
「…………」
先程の戦闘からサーペントがずっとブツブツ呟いている。他の皆には聞こえないが、俺にはがっつり聞こえている。正直鬱陶しい。自分より実力が遥かに劣るはずのシャラに助けられて、さすがに蒼海の死霊騎士と呼ばれていた己のプライドが許さないようだ。
いい加減にしろよ、サーペント。お前が海だとどれだけ強いのかは分かってるからさ。
(そうです……海なら負けません。という事で海に行きましょう)
活躍できないあまりおかしくなったようだ。
イモータルで正常な頭の持ち主だと思っていたんだが…………残念だ。だが、まだ海に行って活躍させれば、まだ正常な思考を取り戻せるかもしれない。そこでデュラ爺さんに俺は訊いてみる。
「なあ、世界の果てに海はないのか?」
「海? いきなりじゃの……まあ、一応あるぞ」
(海!)
サーペントは海の事で頭がいっぱいのようだ。これ、ちゃんと元に戻るよな……。
海、海、海と病的なまでに繰り返すサーペントに不安を感じながらも、俺は正常な思考に戻す為に海に行く事を提案してみる。
「悪いんだが、サーペントが活躍できなくてショックを受けてるみたいなんだ。もし、海が近いなら少し寄ってもいいか? 海ならサーペントも負けないだろうし」
「ショック? 儂は直接話した事ないんじゃが…………いったい、どんな状態なんじゃ?」
「語彙がほぼ海のみとなってる」
「重傷じゃな……」
「ああ、このままだと充分に戦えるかも怪しい。あと、俺が精神的に辛い」
(海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海)
うん、最悪の場合マヤと博士に頼んで、サーペントと分離して貰おう。俺の精神が病む。
「まあ、そう遠くないしのう。ユイカ、シャラはどうじゃ?」
「私もいいよ。海のモンスターがこっちから出て来る事はないが、辿り着くまでに充分モンスターを倒せるだろうしな!」
「ケルベロスさんが望むなら反対はありません!」
という訳で、俺達は海へ向かう事にした。途中、海に行かせないとばかりに、モンスターが現れたがサーペントの状態を鑑みて、デュラ爺さんとユイカが倒してくれた。ここで、またシャラが活躍してしまえば、サーペントは元に戻らないかもしれない。
何度かモンスターと遭遇しながら、一時間ほどで海へと辿り着く。
海だ。しかし、ただの海ではない。真っ黒な海。本当に海なのかと疑ってしまうが、風が運ぶ潮の香りから海である事が分かる。
(海ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!)
サーペントも歓喜していた。頭に響くので声を抑えて欲しい。
あとはモンスターが居ればいいんだが……ん?
沖の方で何かが海面から姿を現した。それは白く、複数の触手を持つ、海の悪魔。イカの化物と呼ばれる、クラーケンだった。目の前の個体は大型の船を越える大きさ。
これ……勝てるのか? 思わず心配になる大きさだった。もう少しお手軽な相手を探した方がいいのではと思ったが、サーペントは既にクラーケンを標的としていた。
(海ぃぃぃぃぃぃ! 海ぃぃぃぃぃぃぃぃ! 海ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!)
「ちょっ、待っ!?」
サーペントによって強制的に体が動かされ、海面を滑走する。クラーケンまっしぐらだ。
クラーケンもこちらに気付いたようで触手をこちらへと伸ばして来る。サーペントは海を操り、こちらも触手のように形成した海水で、迫る触手に絡みつき押さえ込む。
そして剣を抜き放ち、クラーケンに斬り掛かる。
(クラァァァァァァァァァァァァァケェェェェェェェェェェンッ!)
あ、海以外の言葉を喋った。
クラーケンと戦いながら、俺はサーペントが少し戻ったように感じられて、少しだけ安心するのだった。
「…………」
先程の戦闘からサーペントがずっとブツブツ呟いている。他の皆には聞こえないが、俺にはがっつり聞こえている。正直鬱陶しい。自分より実力が遥かに劣るはずのシャラに助けられて、さすがに蒼海の死霊騎士と呼ばれていた己のプライドが許さないようだ。
いい加減にしろよ、サーペント。お前が海だとどれだけ強いのかは分かってるからさ。
(そうです……海なら負けません。という事で海に行きましょう)
活躍できないあまりおかしくなったようだ。
イモータルで正常な頭の持ち主だと思っていたんだが…………残念だ。だが、まだ海に行って活躍させれば、まだ正常な思考を取り戻せるかもしれない。そこでデュラ爺さんに俺は訊いてみる。
「なあ、世界の果てに海はないのか?」
「海? いきなりじゃの……まあ、一応あるぞ」
(海!)
サーペントは海の事で頭がいっぱいのようだ。これ、ちゃんと元に戻るよな……。
海、海、海と病的なまでに繰り返すサーペントに不安を感じながらも、俺は正常な思考に戻す為に海に行く事を提案してみる。
「悪いんだが、サーペントが活躍できなくてショックを受けてるみたいなんだ。もし、海が近いなら少し寄ってもいいか? 海ならサーペントも負けないだろうし」
「ショック? 儂は直接話した事ないんじゃが…………いったい、どんな状態なんじゃ?」
「語彙がほぼ海のみとなってる」
「重傷じゃな……」
「ああ、このままだと充分に戦えるかも怪しい。あと、俺が精神的に辛い」
(海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海、海)
うん、最悪の場合マヤと博士に頼んで、サーペントと分離して貰おう。俺の精神が病む。
「まあ、そう遠くないしのう。ユイカ、シャラはどうじゃ?」
「私もいいよ。海のモンスターがこっちから出て来る事はないが、辿り着くまでに充分モンスターを倒せるだろうしな!」
「ケルベロスさんが望むなら反対はありません!」
という訳で、俺達は海へ向かう事にした。途中、海に行かせないとばかりに、モンスターが現れたがサーペントの状態を鑑みて、デュラ爺さんとユイカが倒してくれた。ここで、またシャラが活躍してしまえば、サーペントは元に戻らないかもしれない。
何度かモンスターと遭遇しながら、一時間ほどで海へと辿り着く。
海だ。しかし、ただの海ではない。真っ黒な海。本当に海なのかと疑ってしまうが、風が運ぶ潮の香りから海である事が分かる。
(海ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!)
サーペントも歓喜していた。頭に響くので声を抑えて欲しい。
あとはモンスターが居ればいいんだが……ん?
沖の方で何かが海面から姿を現した。それは白く、複数の触手を持つ、海の悪魔。イカの化物と呼ばれる、クラーケンだった。目の前の個体は大型の船を越える大きさ。
これ……勝てるのか? 思わず心配になる大きさだった。もう少しお手軽な相手を探した方がいいのではと思ったが、サーペントは既にクラーケンを標的としていた。
(海ぃぃぃぃぃぃ! 海ぃぃぃぃぃぃぃぃ! 海ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!)
「ちょっ、待っ!?」
サーペントによって強制的に体が動かされ、海面を滑走する。クラーケンまっしぐらだ。
クラーケンもこちらに気付いたようで触手をこちらへと伸ばして来る。サーペントは海を操り、こちらも触手のように形成した海水で、迫る触手に絡みつき押さえ込む。
そして剣を抜き放ち、クラーケンに斬り掛かる。
(クラァァァァァァァァァァァァァケェェェェェェェェェェンッ!)
あ、海以外の言葉を喋った。
クラーケンと戦いながら、俺はサーペントが少し戻ったように感じられて、少しだけ安心するのだった。
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