死なない奴等の愚行
第172話 天使との戦いを終えて
天使の相手を終えると、デュラ爺さんは体を震わせながら数回荒々しく呼吸を繰り返す。そして暫くして落ち着いたのか、甲冑姿を解いて元の農家のオジサンのような麦わら帽子をかぶった姿に戻る。
「ふうっ……どうにか終わったわい」
こうして、ようやく天使との戦闘で緊張した空気がほぐれた。俺も抱き締めていたシャラを放した。放した時、彼女は切なそうに声を漏らす。
「……このままでは駄目ですか?」
「いや、もう終わったからな」
懇願するシャラをあしらい、今の天使との戦闘を振り返るデュラ爺さんとユイカの会話に耳を傾ける。
「なかなか強かったな。天使の中でも強い方じゃないか?」
「そうじゃの……ケルベロス達が相手をしたら瞬殺じゃったろうな」
「…………」
(…………)
俺とサーペントはともに押し黙る。
うん、確かに。あんなの相手にしたら、サーペントの全身がへこんで、中の俺も凹凸ができるに違いない。
「それにしても、天使ってあんな姿をしてるんだな……」
強さにも驚かされたが、その姿にも驚かされた。正直あの見た目で、あれほど強いとは思わなかった。
「天使というものは色んな姿をしているものじゃよ。なにせ、天使は本来肉体を持たない」
「この世界にあるものに取り付いて、あいつらは活動するんだよ」
「白い翼が天使かどうかの判別方法じゃな。必ずさっきのような翼を生やすんじゃ」
天使という存在の特徴を二人から教わった。確かに俺の知る天使の知識も、白い翼が生えている。ただ人の姿だと思い込んでいたので、あのような野菜の姿は予想外だった。
「そうなのか……ちなみに、今の天使はいったい何に取り付いたんだ?」
「基本はモンスターに取り付く事が多いの。稀に人間に取り付く事があれば、命の宿らない道具なんかに取り付く事がある。だが今回は…………まあ、野菜じゃの」
「野菜なんかに取り付くのか……」
取り付くものを天使は選べないのだろうか。自ら進んで野菜に取り付いたとは思えない。いや、もしかすると物凄い野菜が好きという事もあり得る。野菜になりたいと思うほどに……。
「だけど馬鹿にはできねえよ。油断したらやられる」
あんな姿でも油断するなとユイカが俺を注意する。それは目の前で繰り広げられたデュラ爺さんと天使との戦いで充分理解していた。
野菜だろうが、果物だろうが、あるいはそれ以外の珍妙な姿であっても、白い翼が生えていれば俺は絶対に油断する事はないだろう。
「ああ、見ていてそれは分かる。俺とサーペントだったら、どうやっても勝てなかった」
(無理ですね。せめて海で戦いたいです……いえ、海でも瞬殺を防げるぐらいですが……)
サーペントも俺と同じ気持ちのようだ。自分の本領が発揮できる海であっても、勝てる見込みがないと話す。サーペントが言うのだから、勝てない事は間違いない。
「うむ、まあ今ほどの強さを持った奴はそうポンポン出て来る事はあるまい。ケルベロス達には、もう少し弱いモンスターを相手にして貰おうかの」
もう全部デュラとユイカにお任せしたいのが正直なところだ。
さすがに仕事をしないのは問題なので、そうはいかないだろうが……正直戦いたくない。
今の天使よりも弱いといっても、あんなのが居るなかで生きているのだ。それ相応の強さだろう。いくらサーペントを纏っていても、そう簡単に勝てるとは思えない。
俺の不安を読み取りユイカは笑いながら、鼓舞するように俺の胸に拳を叩きつける。
「心配するな。ヤバい時は私や爺さんが相手にするからさ」
「……本当に頼むぞ」
とてもじゃないが、先程の天使を見て、世界の果てでユイカ達が居ないと生き残る事はできないと確信した。
無事に世界の果てで仕事を終えられる事を祈るばかりだ。
「ふうっ……どうにか終わったわい」
こうして、ようやく天使との戦闘で緊張した空気がほぐれた。俺も抱き締めていたシャラを放した。放した時、彼女は切なそうに声を漏らす。
「……このままでは駄目ですか?」
「いや、もう終わったからな」
懇願するシャラをあしらい、今の天使との戦闘を振り返るデュラ爺さんとユイカの会話に耳を傾ける。
「なかなか強かったな。天使の中でも強い方じゃないか?」
「そうじゃの……ケルベロス達が相手をしたら瞬殺じゃったろうな」
「…………」
(…………)
俺とサーペントはともに押し黙る。
うん、確かに。あんなの相手にしたら、サーペントの全身がへこんで、中の俺も凹凸ができるに違いない。
「それにしても、天使ってあんな姿をしてるんだな……」
強さにも驚かされたが、その姿にも驚かされた。正直あの見た目で、あれほど強いとは思わなかった。
「天使というものは色んな姿をしているものじゃよ。なにせ、天使は本来肉体を持たない」
「この世界にあるものに取り付いて、あいつらは活動するんだよ」
「白い翼が天使かどうかの判別方法じゃな。必ずさっきのような翼を生やすんじゃ」
天使という存在の特徴を二人から教わった。確かに俺の知る天使の知識も、白い翼が生えている。ただ人の姿だと思い込んでいたので、あのような野菜の姿は予想外だった。
「そうなのか……ちなみに、今の天使はいったい何に取り付いたんだ?」
「基本はモンスターに取り付く事が多いの。稀に人間に取り付く事があれば、命の宿らない道具なんかに取り付く事がある。だが今回は…………まあ、野菜じゃの」
「野菜なんかに取り付くのか……」
取り付くものを天使は選べないのだろうか。自ら進んで野菜に取り付いたとは思えない。いや、もしかすると物凄い野菜が好きという事もあり得る。野菜になりたいと思うほどに……。
「だけど馬鹿にはできねえよ。油断したらやられる」
あんな姿でも油断するなとユイカが俺を注意する。それは目の前で繰り広げられたデュラ爺さんと天使との戦いで充分理解していた。
野菜だろうが、果物だろうが、あるいはそれ以外の珍妙な姿であっても、白い翼が生えていれば俺は絶対に油断する事はないだろう。
「ああ、見ていてそれは分かる。俺とサーペントだったら、どうやっても勝てなかった」
(無理ですね。せめて海で戦いたいです……いえ、海でも瞬殺を防げるぐらいですが……)
サーペントも俺と同じ気持ちのようだ。自分の本領が発揮できる海であっても、勝てる見込みがないと話す。サーペントが言うのだから、勝てない事は間違いない。
「うむ、まあ今ほどの強さを持った奴はそうポンポン出て来る事はあるまい。ケルベロス達には、もう少し弱いモンスターを相手にして貰おうかの」
もう全部デュラとユイカにお任せしたいのが正直なところだ。
さすがに仕事をしないのは問題なので、そうはいかないだろうが……正直戦いたくない。
今の天使よりも弱いといっても、あんなのが居るなかで生きているのだ。それ相応の強さだろう。いくらサーペントを纏っていても、そう簡単に勝てるとは思えない。
俺の不安を読み取りユイカは笑いながら、鼓舞するように俺の胸に拳を叩きつける。
「心配するな。ヤバい時は私や爺さんが相手にするからさ」
「……本当に頼むぞ」
とてもじゃないが、先程の天使を見て、世界の果てでユイカ達が居ないと生き残る事はできないと確信した。
無事に世界の果てで仕事を終えられる事を祈るばかりだ。
「コメディー」の人気作品
書籍化作品
-
-
238
-
-
159
-
-
35
-
-
516
-
-
4
-
-
381
-
-
37
-
-
32
-
-
3
コメント