死なない奴等の愚行

山口五日

第169話 二手に分かれるそうです

 選ばれた十人で行く事になったが、その内の三人が新入りって大丈夫だろうか。
 それも俺はサーペントを纏う為、実質九人だ。不安でしかない。そんな不安で満たされた心を一層揺るがす光景が目の前にあった。


「ほれ、開けたぞ」
「おう、そんじゃ行って来るわ。ほら、行くぞ」
「ええ……ここに?」


 門が開かれると、そこには荒野でも、自然の息吹溢れる光景でもない。ただ闇だった。開かれた扉の代わりに一面の黒が現れたのだ。一見、黒い板でも張り付けたのかと思ったが、そうではない。目を凝らすと蠢いているのが分かる。


「そうだ。世界の果てはこの先だ。ほら、行け」
「いやいやいやいや! 待ってくれ! 怖過ぎるだろ!」
「怖くない怖くない。ほら行けって」
「押すな押すな押すな押すなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 オッサンに押されたが、足で踏ん張って堪えた。だが、そんな抵抗も虚しく最後には闇の中に踏み込んでしまう。


 うわ……気持ち悪い。生温かい泥の中に居るようだ。慌てて戻ろうとしたが、闇はそれを許さなかった。闇は俺の背中を押して強制的に前へと進ませるのだ。帰りは大丈夫なのだろかと思いながら仕方なく前へと進む。


 それから一人で黙々と進んだ。
 俺だけこの闇の中を進んでいる訳じゃないよな……などと不安になりながらも進む。そして数分後。突然闇が晴れた。


「…………」


 目の前に広がる光景を見て唖然とした。


 まるで異なる景色が広がっていたのだ。空は赤く染まり、植物が一切見当たらないが荒野とは違う。黒い岩肌が大地を覆って、よく見ると脈打っているように見えた。まるで大地そのものが生きているようだ。


「久し振りの世界の果てだな」


 そんなオッサンの声が聞こえて振り返る。良かった……みんなちゃんと来てるな。
 これで俺一人だったら泣いているところだ。


「よし……そんじゃ二手に分かれて適当に蹴散らしていくか。まあ、ケルベロスとサーペントは一緒じゃないと駄目だろ……あとは……」
「私もケルベロスさんと一緒でお願いします」
「…………じゃあ三人は決まりだな。あとはどうすっかなぁ……」
「いやいやいや、待て待て待て! 新人を三人も固めていいのか!?」
「大丈夫……じゃね? うん、問題ない。というかシャラをお前から引き離したら……怖い」
「それが一番の理由だろ!」


 他の奴等も同意するように頷く。あの酒の席の一件が誰もが忘れられないようだ。そんなみんなの胸中を知らず、シャラはケルベロスと一緒だと喜んでいた。


「よし、残りの二人はユイカとデュラで」
「おうっ!」
「承知した」


 ユイカとデュラ。イモータルの副団長と最年長者、確かにこの二人なら新人と共に行動するには申し分ないだろう個人的にはもう一人くらいつけて貰った方が、気持ちにだいぶ余裕が生まれるんだが……。


 だってサーペントと俺はセットだから。実質二人で一人だもの。
 だが、共に行動するユイカとデュラは気負う様子はなく、談笑している。戦力的には問題ないようなので、オッサンにもう一人要望する事はしなかった。


「そんじゃ適当に一日倒して回って、またここに集合な」


 こうして俺達は二手に分かれた。


「よし、それじゃあ、儂らはこっちに行くとしようかの」
「おおっ! ケルベロス達は私達の後にしっかりついて来いよ!」


 そう言って俺達は歩き出す。
 だが、視界で捉えられる範囲では何もいない。いったい、この世界の果てにはどのようなモンスターが居るのだろうか……。

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