死なない奴等の愚行
過去・フェル編
「わわんっ!」
「……ありがとうな、フェル。少し元気が出たよ」
そう言ってゼンは私を優しく撫でてくれる。
ゼンの手は温かくて、優しくて昔からのお気に入りだ。勿論、手だけではなく、ゼン自身もとても優しい。
もう、何十年も生きているので思い出しにくい事もあるけど、ゼンと初めて会った時も優しかった。それは忘れる事なく覚えている。
どうしてそんな事になったのかは覚えていないけど、ある街の路地裏で私は死にかけていた。そこにゼンが現れて私に触れようとしたんだけど、その時の私は酷く怯えていた。だからその手を思いっ切り噛んでしまう。
だけど、ゼンは噛まれながらも、もう片方の手で私を撫でてくれた。
その時の手も温かくて、優しかった。
それから、いつでもゼンと一緒だ。お仕事にもついて行くようになる。
鉄臭さを感じると、罠の危険性があるのでゼンに教えたりと、しっかりとゼンの役に立っていた。
そんなある日の事、ゼンはある遺跡で不老不死となった。そして私も意図せず不老不死となった。私はゼンとずっと一緒に居られるんだと嬉しかったけど、ゼンは時間が経つにつれて悲しい顔をする事が多くなった。
次々とゼンの親しい人、愛していた人が死んでしまったからだ。
私もゼンが死んでしまったら悲しいので、気持ちはよく分かった。だけど、そんなゼンの顔を見ているのは辛かった。
ゼンに私がずっと傍に居るよと言葉にして伝えたかった。
私とゼンが旅に出て数年経ち、相変わらず二人で旅を続けていた。今は世界の果てというところに向かっていた。そこは人類未踏の地とゼンは言っていたけど、よく分からなかった。
「やあ、久し振り」
そんな旅の途中、寝ていると夢の中でゼンを不老不死にした人の声がした。
「そ、そんなに唸らないでよ。何かしたっけ? ああ、大丈夫。言葉は分かるからさ」
そう言われて、お前のせいでゼンが悲しい顔をするようになったと伝える。
「不老不死の力をあげたのは失敗だったかな……。でも、人に力を与える事なんて初めてだったんだよ。だから少しくらいの失敗には目を瞑っても……ああ、ごめん! 怒らないで! うう……君がそんなに怒っているなら、彼は相当だろうね……」
ぶん殴るとよく言ってる事を伝えると、大きな溜息を吐いた。
「ああ……とりあえず君に話し掛けて正解だったよ。彼に話し掛けたら会話に成り立たなかったかもね……」
そして私に「何か欲しいものある?」と尋ねてきた。
「あげた力を取り上げる事はできないんだ。だから、お詫びに何か一つ力をあげるよ。ずっと彼の傍にいる君に渡せば、彼にあげるようなもんだよね。いや、別に怒られるのが嫌で君にあげる訳じゃないよ」
私にゼンに不老不死の力を渡したように何かくれるらしい。
ゼンを悲しい顔をさせる力なんていらない。そう思ったけど、一つだけ……一つだけ願いがあった。それを伝えると、驚かれる。
「そんなのでいいの? いや、まあいいけど……うん分かった。それじゃあ、目を覚ましたら君は望んだようになってるよ。ああ、私が来た事は内緒ね。その力も私があげた事は内緒で。また誤った対応だったりして、怒られるのは嫌だからね……」
そして夢から覚めると、私は望んだ力を意識すると希望通りのものになる。
嬉しさのあまり、私は隣で寝ていたゼンを揺さぶった。
「ゼン! ゼン! 起きて!」
「んん……誰だ…………ん? 本当に誰?」
「私! フェル!」
「……………………フェルは確かにうちの犬の名前ですが」
「違う! 私がフェル!」
「は!?」
困惑するゼン。色々と言いたい事はあるけど、私は一番伝えたい事をまずは口にする。
「あのね、ゼン。これから先もずっと、ずうっっっと、私は傍に居るからね!」
「……ありがとうな、フェル。少し元気が出たよ」
そう言ってゼンは私を優しく撫でてくれる。
ゼンの手は温かくて、優しくて昔からのお気に入りだ。勿論、手だけではなく、ゼン自身もとても優しい。
もう、何十年も生きているので思い出しにくい事もあるけど、ゼンと初めて会った時も優しかった。それは忘れる事なく覚えている。
どうしてそんな事になったのかは覚えていないけど、ある街の路地裏で私は死にかけていた。そこにゼンが現れて私に触れようとしたんだけど、その時の私は酷く怯えていた。だからその手を思いっ切り噛んでしまう。
だけど、ゼンは噛まれながらも、もう片方の手で私を撫でてくれた。
その時の手も温かくて、優しかった。
それから、いつでもゼンと一緒だ。お仕事にもついて行くようになる。
鉄臭さを感じると、罠の危険性があるのでゼンに教えたりと、しっかりとゼンの役に立っていた。
そんなある日の事、ゼンはある遺跡で不老不死となった。そして私も意図せず不老不死となった。私はゼンとずっと一緒に居られるんだと嬉しかったけど、ゼンは時間が経つにつれて悲しい顔をする事が多くなった。
次々とゼンの親しい人、愛していた人が死んでしまったからだ。
私もゼンが死んでしまったら悲しいので、気持ちはよく分かった。だけど、そんなゼンの顔を見ているのは辛かった。
ゼンに私がずっと傍に居るよと言葉にして伝えたかった。
私とゼンが旅に出て数年経ち、相変わらず二人で旅を続けていた。今は世界の果てというところに向かっていた。そこは人類未踏の地とゼンは言っていたけど、よく分からなかった。
「やあ、久し振り」
そんな旅の途中、寝ていると夢の中でゼンを不老不死にした人の声がした。
「そ、そんなに唸らないでよ。何かしたっけ? ああ、大丈夫。言葉は分かるからさ」
そう言われて、お前のせいでゼンが悲しい顔をするようになったと伝える。
「不老不死の力をあげたのは失敗だったかな……。でも、人に力を与える事なんて初めてだったんだよ。だから少しくらいの失敗には目を瞑っても……ああ、ごめん! 怒らないで! うう……君がそんなに怒っているなら、彼は相当だろうね……」
ぶん殴るとよく言ってる事を伝えると、大きな溜息を吐いた。
「ああ……とりあえず君に話し掛けて正解だったよ。彼に話し掛けたら会話に成り立たなかったかもね……」
そして私に「何か欲しいものある?」と尋ねてきた。
「あげた力を取り上げる事はできないんだ。だから、お詫びに何か一つ力をあげるよ。ずっと彼の傍にいる君に渡せば、彼にあげるようなもんだよね。いや、別に怒られるのが嫌で君にあげる訳じゃないよ」
私にゼンに不老不死の力を渡したように何かくれるらしい。
ゼンを悲しい顔をさせる力なんていらない。そう思ったけど、一つだけ……一つだけ願いがあった。それを伝えると、驚かれる。
「そんなのでいいの? いや、まあいいけど……うん分かった。それじゃあ、目を覚ましたら君は望んだようになってるよ。ああ、私が来た事は内緒ね。その力も私があげた事は内緒で。また誤った対応だったりして、怒られるのは嫌だからね……」
そして夢から覚めると、私は望んだ力を意識すると希望通りのものになる。
嬉しさのあまり、私は隣で寝ていたゼンを揺さぶった。
「ゼン! ゼン! 起きて!」
「んん……誰だ…………ん? 本当に誰?」
「私! フェル!」
「……………………フェルは確かにうちの犬の名前ですが」
「違う! 私がフェル!」
「は!?」
困惑するゼン。色々と言いたい事はあるけど、私は一番伝えたい事をまずは口にする。
「あのね、ゼン。これから先もずっと、ずうっっっと、私は傍に居るからね!」
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