死なない奴等の愚行

山口五日

第151話 ようやく告白に決着を

 サラの用意した誘惑を跳ね除け、奴隷のままでも構わないというシャラ。彼女の顔からは迷いは一切なく、俺への純粋な好意しか感じられなかった。


「おい、ケルベロス……どうする?」
「勝手に話を進めておいて困ってんじゃねえよ!」
「仕方ないだろ! まさかあれだけ破格の条件を提示していたのに、蹴るなんて思わないだろ!」


 小声で言い合いをする俺とサラ。ここで困られても、俺にはどうしたらいいのか分からない。ただ、あれだけ言っておいて「やっぱなし!」なんて事は言えないだろう……。


 どうしたものかと思考を働かせる俺だったが、ここまで黙っていた人物が口を開く。


「ケルベロスさん……」
「……どうした?」


 ガルダだ。神妙な顔つきでこちらを見ている。やはり、これまで保護者的な立場だった事から何か言いたい事があるのだろうかと身構えた。


「俺も本音を言うと……ケルベロスさんの奴隷のままでいたいと、思っています」
「ケルベロス……お前、こいつにも好かれているのか?」
「誤解だ!」


 男に奴隷のままでも傍に居たいと思わせるなんて、いったい何をしたのだと冷たい視線を投げかけられる。


 俺は何もしていない。勝手に慕ってくれているだけだ。


「ただ……こいつらを置いて何処かへ行く訳にはいきません……」


 こいつら……子供達の事だろう。見れば不安そうな顔をしている。これまで一緒に居た人がいなくなるというのは、この歳では酷な事だろう。
 ガルダは一度子供達を安心させるように笑顔を向けてから、再度俺へと向き合う。


「だから、俺はここに残ります。その代わり……シャラをお願いします」


 そして俺に深々と頭を下げる。それを見てシャラは目を潤ませていた。


「ガルダ……」
「シャラ……ケルベロスさんの迷惑を掛けないようにするんだぞ。幸せに暮らせ」
「私はケルベロスさんについて行く事は選べなかった……。私達の分も……と言うのはおこがましいけど……しっかりね」
「シャラ……どうか、お元気で……」
「「「シャラ……元気でね!」」」
「みんな……うん……」


 シャラへ決別、そしてはなむけの言葉を送る一同。そして、その様子を眺める俺とサラ。


「「…………」」


 おい、どうするよ……。言葉にしなくても、サラと俺の思っている事は一致していた。
 もう完全にシャラを奴隷のまま連れて行く流れになってしまっている。この流れで彼女を拒絶する事はもはやできない。


 シャラ達を見ながらサラを横目で伺うと、俺の視線を察して彼女は顔を背けた。どうやらサラもこれ以上どうしたらいいのか分からないようだ。


 少しは責任を感じて欲しい……。
 シャラを連れて行くとして、イモータルに入団する事になるのか……不老不死にするのか……色々と考えなくてはならない事がある。そこら辺の相談にはしっかり乗って貰うぞ。


「ケルベロスさん」
「え、あっ、はい……」


 みんなの中から俺の方へと一歩前に出る。そして、ゆっくりと俺に頭を下げた。


「どうか……これからも、よろしくお願いします……」
「…………はい」


 俺はそう言う事しかできなかった。
 さて、これから先いったいどうなる事やら……。


 こうして、シャラが俺に……イモータルについて来る事となった。

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