死なない奴等の愚行

山口五日

第149話 サラはやっぱり優秀。ただし博士テメーは駄目だ。

 俺が最低なクソ野郎というデマが広まっていた事に対して、大声で事実を述べたがしっかり分かって貰えただろうか。そんなふうに心配になりながらも俺は外に出て、みんなが待っているバスへと向かう。


 すると、みんなバスから降りていて誰かと話をしているようだ。


「君達っ! ちょっと変わった魔道具があるんだが、使ってみてはくれないかっ!」
「ファイヤー!」
「ぬうっ!?」


 博士という不審者に話し掛けられていたので、ガンで仕留めようと思ったが、当たる寸前で霧散してしまい、防がれてしまう。


「ケルベロスくん、危ないではないか。私の魔道具、守るくんがなかったら、頭が吹き飛んでいたぞ」


 やっぱり魔道具か……そうなると、その守るくんとやらを破壊しないと駄目だな。
俺は目で何処に魔道具があるのか探りながら博士に話し掛ける。


「吹き飛ばそうとしたんだから問題ない。それよりも怪しいものを勧めないでくれるか?」
「危ないもの? いやいや、大丈夫だ。危なくない」
「あんたの危なくないは信用できるか! ……ちなみに、今勧めようとしたものは何なんだ?」
「おおっ、聞きたいか? 教えてしんぜようっ! ハーフモンスターの体に秘められたモンスターの力を完全に呼び起こす魔道具でな! ただそれだけの安全な魔道具だ。もしかすると姿も完全にモンスターになってしまう可能性もあるが」
「アウトッ!」


 再びガンを使うがやはり防がれてしまう。畜生、何処だ守るくんは……。


「ケルベロスくん……だから危ないと言っておるだろう」
「うるさいっ! 何が危なくないだっ! ほら、帰れ!」
「ぬう……分かった。また機会はあると思うしな。今日のところは退散するとしよう」


 博士は名残惜しそうにしていたが、この場から立ち去る。
 今回は仕留められなかったが、次こそは仕留めたい。その為には守るくんが何処にあるのかを探らなくては……。


 それにしても、目を話したらこれだ。ああいった変な輩が近付いて来ないように、サーペントを残して置いたのに。


 そう思うとガルダ達の背後に居たサーペントが前に出て来る。


(ケルベロスさんみたいにいきなり攻撃する訳にもいきませんよ。どんな魔道具を勧めて来たのか分かったら全力で阻止しますが)


 近付いて来たら斬り掛かって良い。不老不死でもないガルダ達に使わせるのは危険だ。


(ケルベロスさんの言ってる事も分からなくもないですけど…………まあ、次からは近寄らせないようにします)


 ああ、そうしてくれ…………さて。


「とりあえずハーフモンスターの国……セーレか。着いたけど、どうする?」
「えっと……どうするとは?」
「いや、ここで生きていく為の衣食住をどうすればいいかと思ってな。オッサンに相談するか……もしくは、このバスを売って金にするか……」


 博士は魔道具を色々作ってるし、一つくらい売っても問題ないだろう。問題は何処に売るかだが…………まあ、ここに来るまでに買いたいという商人が沢山居た事だし、誰かしら買ってくれるだろう。


 そんな事を考えていると、不意に背後から声が掛かる。


「そのバスという魔道具は一つしかないからな。勝手に売らないでくれ」
「ん? サラか」
「ああ、久し振りだなケルベロス」


 眼鏡を掛けたやや神経質そうな女性、サラ。
 書類を手にしているところを見ると、やはり仕事をしていたようだ。お疲れ様だ。


「バスは売っちゃ駄目か……」
「ああ。やめてくれ。本当ならもう数台作って貰いたいところなんだが、博士が作ってくれないんだ。あれは基本的に自分の興味ある魔道具しか作らないからな……」


 サラはやれやれと首を振りながら溜息を吐いた。そして彼女は持っていた書類の中から一枚の紙を俺に差し出す。


「これは?」
「そっちのハーフモンスター達の奴隷の所有権放棄の書類だ。このまま奴隷として、この安全な国で過ごさせる事はしたくないだろう?」
「サラ……お前は俺の現状を理解してくれているのか?」


 そう尋ねると、他の団員から俺がどのような状況にあるのか聞いたと察知して、苦笑しながら言う。


「ああ、団長の話の内容とお前の性格から概ねな」
「おお……」


 思わず感嘆の声が口から漏れた。
 さすがサラだ。仕事のできる女は、他のイモータルの団員とは一味違った。

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