死なない奴等の愚行

山口五日

第140話 痴女ですか? いいえシャラです。

「……悪い、よく聞こえなかった。もう一度言ってくれないか?」


 まいったな……耳が遠くなったようだ。オッサンと離れているせいか老化が進んでしまったのだろうか。やれやれ、早くハーフモンスターの国へ行って、合流しないとな。それでは……シャラさん改めてどうぞ!


「私を孕ませてください」


 おかしい……さっきよりもダイレクトな言葉に聞こえた。
 俺の耳はいったいどうしてしまったのだろうか。一回鼓膜ごと引き千切って、再生させた方がいいかもしれない。よし……やっか。


「ケルベロスさん? 耳を引っ張ってどうしたんですか? まあ、構いません……私の方は準備万端ですから……」
「準備万端? ぶほっ!?」


 少し目を離した間にシャラが裸になっていた。すっかり暗闇に目が慣れてしまっていて、彼女の女性らしい体つきをしているものの、まだ発展途上を感じさせる瑞々しい裸体がまともに見えてしまう。


 ちなみに、ハーフモンスターの特徴的な姿として、彼女の場合は右半身のほとんど、普段服で隠れている部分は紫色の肌をしている。


「……すみません、こんな気持ち悪い肌、見たくないですよね」
「いや……別に見たくない訳じゃない。別に気持ち悪くもないだろ。ただ、紫色なだけじゃないか」


 顔を背ける俺に対して、シャラがそんな事を問い掛けて来るので、そのように応えた。
 ちなみに、俺が顔を背けているのは紳士だからだ。女性の裸をじっくり見てしまうのは悪いだろう。それに、マリアとかの裸を見た事はあるが、シャラの場合だと妙に生々しいというか……本当に見ちゃいけないような気がする。


 マリアとかは実年齢何百歳という保険があるが、彼女はしっかり見た目=年齢。何も良い訳ができない。


「ふふっ……そうです。やはり、あなたは優しい……」
「っ!」


 もはや両耳を引き千切るどころじゃない。シャラは俺の服に手を掛け脱がせようとする。


「まままま待て! いやいや、どうした急に!? 今までそんな素振りなかっただろ!」
「機会がなかっただけです。だけど、今日はちょうどいい機会です。まあ、一度しましょう。一度すれば、もう二度、三度やるのも変わりませんよ」
「いやいやいやいや! 待て! いいから待て!」
「ふふっ、この前ゴブリンと戦った時に少し見ましたけど……結構筋肉がついていますね……」
「頼むから待てと言ったら少しは止まってくれよ!」


 服を捲り上げられ、胸と腹を往復するように撫でられる。
 こちらの呼び掛けに応じず、そのまま続行する。昼間のフェルを思い出す。最近の女子の流行なのか? 思うままに行動する女子? そんな流行いらない。


 さすがに下に手を掛けて来たところで、俺は彼女の両手を掴んでやめさせる。やめさせ…………られない。


「シャラ意外と強い?」
「ふふっ、ハーフモンスターなので」


 ……もしかしてゴブリンを素手でもいけちゃう感じですか? 結構本気で彼女を止めようとしているんですけど、ビクともしないんですが。


 彼女達を奴隷にしようと村を襲撃した奴って、どんだけ強かったんだ? それとも俺が非力過ぎるだけなのか? 分からない。分かりたくもない。分かった時にたぶんかなりへこむ。たぶん非力。


 そんな非力な俺にできることは一つだ。


 サーペント! 緊急事態! お願い助けて!


 助けを求めるしかない。
 届いてくれ! 俺の思い! …………………………ああ、完全に寝とりますわ。


 それならっ! ここで騒いでみんなに起きて貰うしか、んぐっ!?


「ケルベロスさん……静かに。子供達には、まだ早いですよ……」


 行動を察して、シャラは片手で俺の口を塞いでしまう。そして、もう片方の手で力づくで下を脱がせようとする。


 声は出せそうにないので、もう服を死守するしかない。


 こうして脱がせられるか、着衣を維持し続けられるかの攻防が始まった。
 ただ、繊維が千切れていく音がするので、第三の結果。服が破けるという可能性もある得るのだった。



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