死なない奴等の愚行

山口五日

第113話 これからどうしましょう!

(……それで、引き取ってどうするんですか?)
「……どうしような」


 思わずサーペントに声に出して返事をしてしまう。


 現在、何処かを目指しているわけでもなく街の中をふらふらと歩いていた。ちなみに俺とサーペントだけではない。背後には、先程引き取ったハーフモンスター七人がついて来ている。


(七人も幽霊船に連れ帰るつもりですか? 船長の許可を取ってから買った方が良かったと思いますよ?)


 サーペントはハーフモンスター達を引き取ったあたりから機嫌が悪い。「どうして相談もなしに」「勢いで行動しないでください」「考えもなしに引き取るからですよ」などと文句を言われてしまっている。


 共に行動しているサーペントとは相談するべきだった。だが、あの場で引き取る以外の選択肢はなかったと思う。


 サーペント、それは仕方ないだろ。船長に相談してたら、あまり良くない奴に買われるところだったんだぞ。


(それも、そうですが……)


 今は行動を悔やむべきじゃない。これからどうするかを考えるべきだ。
 だから、そんな過ぎた事をいちいち考えても仕方ない。


 俺が心の中でそう訴えると、サーペントはお小言をやめてこれからどうするかを考え出した。


(……まあ、無難なのは幽霊船に全員連れて行く)


 そうだな。それが無難だな。
 あとは……何処か安全に暮らせるような場所を探す……いや、でもそんなの見つけるのが難しいか。


(はい。つい最近、その場所が見つかってしまって、奴隷になってしまいましたからね。そう簡単に見つからない場所を見つけられるとは思えません)


「他に何か案は……」
「あの、少々よろしいでしょうか?」
「ん? 何だ?」


 ハーフモンスターの中でおそらく年長者と思われる十七、八くらいの男だ。ちなみに他のハーフモンスターは十歳に満たない女2、男1、十五前後の女3…………男の子を男としてカウントしなければ何気に若干ハーレムじゃないか、この男。羨ましい。


 あの初陣での記憶が蘇り、咄嗟に剣に手を伸ばしかけた。だが、彼の境遇を考えろと理性が囁いてくれたおかげで凶行に走らずに済んだ。どんだけ他人の幸せが憎いんだ俺は……。


冷静になった俺は剣に伸ばそうとしていた手を下ろし、男の話を聞こうと向き合った。


「その…………これからどうするおつもりですか?」
「これからか…………逆にお前達はどうしたい?」
「えっ」


 俺が逆に問い返すと驚く男。自分達に意見を求められるとは思っていなかったらしい。
 正直こっちはノープランで引き取ってしまったから、そちらで何か決めてくれた方が行動しやすい。


(丸投げですね)


 ……いや、こっちはこっちで考えるぞ。ちゃんと、しっかり、うん。


(本当ですか?)


 本当だとも。それに、一応あの女主人は俺を信用して、ハーフモンスター達を託したからな。この七人がある程度生活できるようにさせないと……やっぱりファントムに、もしくはイモータルと一度合流してサラあたりに相談を。


「あの、すみません……」
「ん? どうしたいか決まったか?」
「あ、い、いえ! 少々みんなで相談する時間を貰えないかと……」
「ああ、別にいいぞ。まあ、ここだと立ち止まって相談するのも邪魔になる。港の開けたところに行くぞ」
「あ、はいっ!」


 この姿で港に行くのはどうかと最初は思ったが、ここまでの街の様子から他人の空似くらいにしか思われないだろう。


 蒼海の死霊騎士本人とは思われないと判断して港へと移動する。港は閑散としていた。先程の一件で漁師も今日は仕事を休みにしたのだろう。海の方を警戒している鎧姿の男達が見られたが、少人数だ。


「俺が近くに居たら話し合いし辛いだろ。少し離れたところで待ってるから、声を掛けてくれ」
「あ、はいっ!」


 男の返事を聞いて、ハーフモンスター達から離れた。


 さて、いったいどんな事を言って来るのだろう。奴隷から解放してくれ、なんて言われたらどうしようか……。俺としては解放してあげてもいいんだが、再び奴隷として売られるなんて事もあり得る。


 まあ、そんなお願いをされたら、もう一度あの店へ行って相談しよう。


 ……そういえば、あの店の主人の名前聞いてないな。


 などと、何を言って来るのか想像しつつ海を眺めて十分ほどが経過した。どうやら話がまとまったようで、全員で俺の方へと近付いて来る。全員が緊張した面持ちだった。

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