死なない奴等の愚行
第101話 幽霊船での宴
「うるさい奴等が一掃できた事を祝して乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
船長の乾杯の言葉と共に酒を呑み始めるイモータル、そしてファントム一同。イモータルと比べ、血の気のない真っ白な肌をしたファントムの船員だが、うちの団員と同様に酒を呑んで馬鹿騒ぎを始める。同じ不老不死なら酒の飲みすぎで死ぬ事はないのだろう。そう考えると普段よりも酷い飲み会になりそうだ。
ちなみに会場は幽霊船…………いや、正直こんなところで酒飲んで騒いでいいのかと思ったが、ファントムの船員は船から降りられないそうなので、いつもイモータルと飲む時は幽霊船と決まっているらしい。
ただ、「あ、そういえば、前にもここで飲んだな」とファントムと酒盛りをした過去を今まで忘れていた団員が見られた。幽霊船で酒を呑むなんて経験を忘れるなんて、どんな酷い飲み方をしたのだろうか…………なあ、ユーマ。前の飲み会は覚えてるか? 覚えてる……そうか。どうだったんだ? ……三日三晩意識を何度も失いつつ、飲んでた? …………これは今までの飲み会と格が違うぜ。
俺は端の方に移動し、できるだけ目立たないようにした。俺はこれまでの飲み会で気付いた事がある。酔っ払いは視界に入った奴に絡んで来る。視界に入らなければ、気にされる事はない。酒によって誰かを思い出せるほど頭は回らないからだ。
だから俺は見つからないようにこっそり……。
「あら、ケルベロスどうしたの?」
「…………」
「本当にどうしたの? まるで敵と遭遇したみたいな顔つきよ?」
落ち着け俺……酔っ払いとエンカウントした訳じゃない。
大丈夫だ、先手必勝で相手の意識を奪う必要なんてないんだ……。
「悪い、マリア。酔っ払いを警戒しててな」
「酔っ払いですか? ああ、この前は酷い目に遭いましたからね。特に今日は船の上ですから、気を付けないと……」
「ああ、もう漂流なんかしたくない……。ところでマリアは飲まないのか?」
マリアは体が弱いものの酒を飲む。海へ飛び込むのを見て、つられて飛び込むほどには飲まないが。常人並みには飲むので、酒を口にしない事は少なくとも今まではなかった。
「ええ……私、ここでは飲まないようにしてるの」
「ここって……幽霊船って事か?」
「船長とか船員には悪いけど、ここって私にとって最悪の環境なのよ」
「最悪の環境?」
「ええ……まずは海の上に浮かんでいるから船酔いが酷くて…………正直さっきから吐きそう、うっぷ」
「喋るな! 横になってろ!」
船員で見慣れてしまっていたせいか気付かなかったが、彼女の顔からも血の気が引いていた。がっつり体調不良である。
「だ、大丈夫……正直喋っていた方が気が紛れるの」
「マリアがそれでいいなら……」
「う、うん……本当に大丈夫よ。それで、次に問題なのが……この船って言ってみれば魔力の塊なの。知ってた?」
「魔力の塊?」
「そう……膨大な量の魔力が船としての形を形成してるの。だから結構自由に形を変えられたりできるし、一切傷もつかないの」
なるほど、クレアの包丁で斬れなかったのはそのせいか。一つ謎が解けた。
「それでね、私はちょっと魔力に敏感みたいで、こんな魔力が目に見えるぐらい濃いと…………すっごく気持ち…………おえっ」
「おい!?」
「あ、うん、大丈夫……もうさっき全部吐いたから、空餌付きよ」
「もう船から降りろ!」
どうして、そこまで無理して乗船したんだ!?
俺はマリアに肩を貸して船を降りた。まあ、ちょうどいい。これで飲み会に参加しないで済む理由ができた。マリアを宿に連れて行ったら、船には戻らないようにしよう。三日間もぶっ通しで飲んでいられるか。
こうしてマリアを理由に、俺は幽霊船から脱出したのだった。
「「「「「乾杯!」」」」」
船長の乾杯の言葉と共に酒を呑み始めるイモータル、そしてファントム一同。イモータルと比べ、血の気のない真っ白な肌をしたファントムの船員だが、うちの団員と同様に酒を呑んで馬鹿騒ぎを始める。同じ不老不死なら酒の飲みすぎで死ぬ事はないのだろう。そう考えると普段よりも酷い飲み会になりそうだ。
ちなみに会場は幽霊船…………いや、正直こんなところで酒飲んで騒いでいいのかと思ったが、ファントムの船員は船から降りられないそうなので、いつもイモータルと飲む時は幽霊船と決まっているらしい。
ただ、「あ、そういえば、前にもここで飲んだな」とファントムと酒盛りをした過去を今まで忘れていた団員が見られた。幽霊船で酒を呑むなんて経験を忘れるなんて、どんな酷い飲み方をしたのだろうか…………なあ、ユーマ。前の飲み会は覚えてるか? 覚えてる……そうか。どうだったんだ? ……三日三晩意識を何度も失いつつ、飲んでた? …………これは今までの飲み会と格が違うぜ。
俺は端の方に移動し、できるだけ目立たないようにした。俺はこれまでの飲み会で気付いた事がある。酔っ払いは視界に入った奴に絡んで来る。視界に入らなければ、気にされる事はない。酒によって誰かを思い出せるほど頭は回らないからだ。
だから俺は見つからないようにこっそり……。
「あら、ケルベロスどうしたの?」
「…………」
「本当にどうしたの? まるで敵と遭遇したみたいな顔つきよ?」
落ち着け俺……酔っ払いとエンカウントした訳じゃない。
大丈夫だ、先手必勝で相手の意識を奪う必要なんてないんだ……。
「悪い、マリア。酔っ払いを警戒しててな」
「酔っ払いですか? ああ、この前は酷い目に遭いましたからね。特に今日は船の上ですから、気を付けないと……」
「ああ、もう漂流なんかしたくない……。ところでマリアは飲まないのか?」
マリアは体が弱いものの酒を飲む。海へ飛び込むのを見て、つられて飛び込むほどには飲まないが。常人並みには飲むので、酒を口にしない事は少なくとも今まではなかった。
「ええ……私、ここでは飲まないようにしてるの」
「ここって……幽霊船って事か?」
「船長とか船員には悪いけど、ここって私にとって最悪の環境なのよ」
「最悪の環境?」
「ええ……まずは海の上に浮かんでいるから船酔いが酷くて…………正直さっきから吐きそう、うっぷ」
「喋るな! 横になってろ!」
船員で見慣れてしまっていたせいか気付かなかったが、彼女の顔からも血の気が引いていた。がっつり体調不良である。
「だ、大丈夫……正直喋っていた方が気が紛れるの」
「マリアがそれでいいなら……」
「う、うん……本当に大丈夫よ。それで、次に問題なのが……この船って言ってみれば魔力の塊なの。知ってた?」
「魔力の塊?」
「そう……膨大な量の魔力が船としての形を形成してるの。だから結構自由に形を変えられたりできるし、一切傷もつかないの」
なるほど、クレアの包丁で斬れなかったのはそのせいか。一つ謎が解けた。
「それでね、私はちょっと魔力に敏感みたいで、こんな魔力が目に見えるぐらい濃いと…………すっごく気持ち…………おえっ」
「おい!?」
「あ、うん、大丈夫……もうさっき全部吐いたから、空餌付きよ」
「もう船から降りろ!」
どうして、そこまで無理して乗船したんだ!?
俺はマリアに肩を貸して船を降りた。まあ、ちょうどいい。これで飲み会に参加しないで済む理由ができた。マリアを宿に連れて行ったら、船には戻らないようにしよう。三日間もぶっ通しで飲んでいられるか。
こうしてマリアを理由に、俺は幽霊船から脱出したのだった。
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