死なない奴等の愚行
第95話 イモータルの個々の力が強すぎる件について
「よっしゃ! それじゃあ俺は幽霊船相手にするぞ! ケルベロスお前は普通の海賊船を片付けろ!」
愉快とばかりに笑いながら幽霊船へと駆け出すダン。
いかにも強敵そうだが、さて……結果はいったいどうなるだろうか。
まあ、イモータルが倒せない相手はいないだろうという不思議な安心感があるので、俺はダンにいわれたとおり普通の海賊船を相手にする。今の俺もサーペントが居るから充分に戦える自信がある。
「さてと……サーペント行くぞ」
(はい。それにしても皆さん凄まじい戦い振りですね)
「あー確かに。そういえば俺もちゃんと戦っているところ見たことなかったな」
よく考えてみれば自分の初陣の時には、俺が単独で敵に突っ込んだし、それ以外はほぼ一人一人の戦いしか見た事がない。
こうしてイモータル全体が戦っている光景は初めて見る。うん……初めて…………なるほど以前聞いたが、イモータルの団員の個人の力が強過ぎる。仕事に全員で向かう事がない訳だ。
例のアヒルの船は素早い動きで撹乱しながら、次々と船体に穴を開けていく。そこをチャンスとばかりに乗り込んだり、空から魔法を放って海賊を倒す。一方的な戦いで、海賊たちが逃げる姿が目立った。
ユーマも集団で戦う事で安心したのか、魔道具を使って海賊を蹴散らしていく。
実際に逃げようと船を動かす海賊も居る。
だが、そう簡単に逃がすイモータルではない。
逃げようとしていたある船の正面に、一人の女性が躍り出た。大きな胸を揺らし、迫って来る海賊船を待ち構えるエプロンを身に着けた女性、料理担当のクレアだ。
彼女は一振りの包丁を手にしていた。
しかし、ただの包丁ではない。血管を連想させる模様が刃に広がっている。魔道具のようだが、それがただの魔道具ではない事を素人目でも分かった。凄まじい力を感じる。
そして、その包丁の本性を目の当たりにする事になる。
突如、船と同程度の大きさ包丁が変化したのだ。それに伴い持ち手も大きくなるのだが、クレアはそれを抱きかかえる。抱え辛そうにしているものの、重いとは思っていないようで、余裕な表情をしていた。
巨大な包丁を海賊船へと振り下ろす。船体と刃が接触すると、何も抵抗がないまま滑らかな動きで刃は船体に入っていき、途中引っ掛かったりと刃の動きが止まる事なく、船底まで振り下ろすのだった。
「本当はドラゴンの調理用なんだけどね……まあ、たまに振るっとかないと鈍るから、いい機会だけど」
潮風に乗ってクレアの言葉が聞こえて来た直後、船は左右に綺麗に分かれて転覆した。その際切り口が見えたのだが、鮮やかの一言に尽きる。船内のものも見事に切断されていた。
そういえばドラゴンを解体する時に使う包丁とか前に聞いた事があったな……あの巨大化した包丁はそれだろうか。
あれで料理担当。料理という言葉が違う意味に聞こえる。
「本当に滅茶苦茶だな……」
その強さに呆れながらも、サーペントと俺は一隻の船に狙いをつける。一応イモータルの一員として仕事をしなくてはならない。
「さあて、俺達もやるか……」
(そうですね。私達もそれなりの力を示さないといけませんし…………ここは派手にやりましょう)
「そう派手に…………何をするつもりだ?」
(ふふ……海賊から海を取り上げてしまいます)
「え?」
それは、どういう意味なのか。聞こうとしたが、それよりも前にサーペントは行動に移す。
サーペントが海を取り上げるという発言の意図が分からなかったが、狙っていた海賊船の周囲の海で起きた異変を見て納得した……というか呆気に取られた。
傍から見れば海賊船が沈んでいるように見えた。ここまで海を操る力を見せて来たサーペントなら船を沈ませる事ができるというのは充分規格外ではあるが、想定内だ。だが、沈んだ訳ではない。海がなくなったのだ……海賊船の周囲だけ、綺麗に。
確かに、海賊から海を取り上げたのだった。
愉快とばかりに笑いながら幽霊船へと駆け出すダン。
いかにも強敵そうだが、さて……結果はいったいどうなるだろうか。
まあ、イモータルが倒せない相手はいないだろうという不思議な安心感があるので、俺はダンにいわれたとおり普通の海賊船を相手にする。今の俺もサーペントが居るから充分に戦える自信がある。
「さてと……サーペント行くぞ」
(はい。それにしても皆さん凄まじい戦い振りですね)
「あー確かに。そういえば俺もちゃんと戦っているところ見たことなかったな」
よく考えてみれば自分の初陣の時には、俺が単独で敵に突っ込んだし、それ以外はほぼ一人一人の戦いしか見た事がない。
こうしてイモータル全体が戦っている光景は初めて見る。うん……初めて…………なるほど以前聞いたが、イモータルの団員の個人の力が強過ぎる。仕事に全員で向かう事がない訳だ。
例のアヒルの船は素早い動きで撹乱しながら、次々と船体に穴を開けていく。そこをチャンスとばかりに乗り込んだり、空から魔法を放って海賊を倒す。一方的な戦いで、海賊たちが逃げる姿が目立った。
ユーマも集団で戦う事で安心したのか、魔道具を使って海賊を蹴散らしていく。
実際に逃げようと船を動かす海賊も居る。
だが、そう簡単に逃がすイモータルではない。
逃げようとしていたある船の正面に、一人の女性が躍り出た。大きな胸を揺らし、迫って来る海賊船を待ち構えるエプロンを身に着けた女性、料理担当のクレアだ。
彼女は一振りの包丁を手にしていた。
しかし、ただの包丁ではない。血管を連想させる模様が刃に広がっている。魔道具のようだが、それがただの魔道具ではない事を素人目でも分かった。凄まじい力を感じる。
そして、その包丁の本性を目の当たりにする事になる。
突如、船と同程度の大きさ包丁が変化したのだ。それに伴い持ち手も大きくなるのだが、クレアはそれを抱きかかえる。抱え辛そうにしているものの、重いとは思っていないようで、余裕な表情をしていた。
巨大な包丁を海賊船へと振り下ろす。船体と刃が接触すると、何も抵抗がないまま滑らかな動きで刃は船体に入っていき、途中引っ掛かったりと刃の動きが止まる事なく、船底まで振り下ろすのだった。
「本当はドラゴンの調理用なんだけどね……まあ、たまに振るっとかないと鈍るから、いい機会だけど」
潮風に乗ってクレアの言葉が聞こえて来た直後、船は左右に綺麗に分かれて転覆した。その際切り口が見えたのだが、鮮やかの一言に尽きる。船内のものも見事に切断されていた。
そういえばドラゴンを解体する時に使う包丁とか前に聞いた事があったな……あの巨大化した包丁はそれだろうか。
あれで料理担当。料理という言葉が違う意味に聞こえる。
「本当に滅茶苦茶だな……」
その強さに呆れながらも、サーペントと俺は一隻の船に狙いをつける。一応イモータルの一員として仕事をしなくてはならない。
「さあて、俺達もやるか……」
(そうですね。私達もそれなりの力を示さないといけませんし…………ここは派手にやりましょう)
「そう派手に…………何をするつもりだ?」
(ふふ……海賊から海を取り上げてしまいます)
「え?」
それは、どういう意味なのか。聞こうとしたが、それよりも前にサーペントは行動に移す。
サーペントが海を取り上げるという発言の意図が分からなかったが、狙っていた海賊船の周囲の海で起きた異変を見て納得した……というか呆気に取られた。
傍から見れば海賊船が沈んでいるように見えた。ここまで海を操る力を見せて来たサーペントなら船を沈ませる事ができるというのは充分規格外ではあるが、想定内だ。だが、沈んだ訳ではない。海がなくなったのだ……海賊船の周囲だけ、綺麗に。
確かに、海賊から海を取り上げたのだった。
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