死なない奴等の愚行
第93話 アヒルの船vs海賊船
「ここにも居ないか……。次の島へ行ってみるかサーペント」
(そうですね、次に行きましょう)
俺と蒼海の死霊騎士改めサーペントは島を渡り歩いて海賊たちを探していた。これで五つ目だったが、今回も空振りだ。
「……それにしても、名前がサーペントで本当に良かったのか?」
(? ええ、私は格好良い名前をいただけて良かったと思いますが……ああ、シーサーペントの方が良かったのでは、という事ですか?)
「いや、そういう事じゃないんだが……まあ、お前がいいならいいや」
サーペント。この名前にした経緯だが、そう複雑な事はない。
名前を考えようとしたのだが咄嗟に良い名前が思い浮かばなかった。そこで大変遺憾だが、俺の名前ケルベロスのように、伝説の類のモンスターから名前を付ける事にした。
案外名前を付けるというのは大変だった。ケルベロスという名前は、当初は完全に名前負けだと思いあまり良く思っていなかった。だが、実際名前を付けるのは難しいもので、何処からか引っ張って来るのが手っ取り早いと付ける側になって気付いた。
そこで最初、海のモンスターで伝説上の存在とされているシーサーペントを挙げ、その後名乗りやすく、呼びやすくする為に「シー」を除いて「サーペント」という名前となった。
本人は満足しているようだが、自分としてはモンスター以外から引っ張って来るべきではなかったかと、名付けた後に思った。だが、本人が気にしていないようだから、これ以上気にしても仕方ないかもしれない。
俺はこれ以上名前については考えないようにして、仕事に集中する事にする。
「それにしても、ここら辺の海賊はだいぶ片付けちゃったんじゃないか?」
(そうですね……先程から海賊の姿は見当たりませんが、船の残骸が浮かんでいたりしますし……。他の団員の方が、海賊を既に退治してしまったようですね)
戦闘の跡が所々で見られ、もはや海賊は近辺には居ない可能性がある。
俺達は少し遅めに出てしまったからな…………柱を投げて移動したり、アヒルの船で移動している奴は意外と移動速度が他と比べて速いように見えた。そこら辺が既に片付けてしまったのかもしれない。
ちょいちょい空を飛んでいたり、激しい水飛沫を上げている姿が見られる。あの移動方法は機動性に優れているらしい。
「ん?」
(あれは……海賊みたいですね……)
遠くに一隻の大きな船が見えた。いかにも海賊らしい髑髏の旗をはためかせている。
(ただ、既に交戦中のようですね)
「ああ、しかもアヒルの船の奴だな……ちょっと寄ってみるか」
海賊船相手にイモータルの団員は一人でどう戦うのか、少し観戦しようと思い俺達は近付いてみる事に。
姿がよく見え、声が聞こえるようになり、現場の様子がより詳細に分かるようになった。
「おい! あれ何なんだよ!」
「分かんねえよ! どうしてあんなに速く動けんだ?」
「とにかく魔法使える奴は、あのアヒルを狙え! それ以外は小舟で近付けぇ!」
「船長! 小舟でとても追いつけないっす!」
「あれ、船の速さじゃねえよ! 馬よりも速いし、魔道具か何かか?」
「いや、違う! 滅茶苦茶足を動かしてたぞ!」
「足が滅茶苦茶動いてんのに、上半身が微動だにしねえ! 気持ち悪いよぉ!」
海賊達はパニック状態だった。アヒルの船の動きがあまりに素早く、攻撃は当たらず、近付こうとしてもまるで追いつけない。手も足も出ない状態だった。
やがて、アヒルの船に乗船している団員は海賊船に急接近しては蹴り、殴り、穴を開けていく。そしてそこから海水が船内に侵入していき、海賊船は沈み始める。近くには陸地はないので、おそらく沈没してしまえば海賊たちは助からないだろう。
海賊船が沈み、また小舟に乗っている海賊を忘れずに始末してアヒルの船は次なる海賊を求めて去って行った。
鮮やかな手際だった。ただ、アヒルの船に乗っていたのが、熟練の殺し屋を思わせる雰囲気を纏い、髭や髪を綺麗に整えたスーツ姿の渋いオジサンであり、その絵面が衝撃的だった。
あんな団員が居たのか……いや、どうしてアヒルの船を移動手段として選んだ……。
後で問いただそうと思いながら、俺も海賊を探す為に移動をする。
(そうですね、次に行きましょう)
俺と蒼海の死霊騎士改めサーペントは島を渡り歩いて海賊たちを探していた。これで五つ目だったが、今回も空振りだ。
「……それにしても、名前がサーペントで本当に良かったのか?」
(? ええ、私は格好良い名前をいただけて良かったと思いますが……ああ、シーサーペントの方が良かったのでは、という事ですか?)
「いや、そういう事じゃないんだが……まあ、お前がいいならいいや」
サーペント。この名前にした経緯だが、そう複雑な事はない。
名前を考えようとしたのだが咄嗟に良い名前が思い浮かばなかった。そこで大変遺憾だが、俺の名前ケルベロスのように、伝説の類のモンスターから名前を付ける事にした。
案外名前を付けるというのは大変だった。ケルベロスという名前は、当初は完全に名前負けだと思いあまり良く思っていなかった。だが、実際名前を付けるのは難しいもので、何処からか引っ張って来るのが手っ取り早いと付ける側になって気付いた。
そこで最初、海のモンスターで伝説上の存在とされているシーサーペントを挙げ、その後名乗りやすく、呼びやすくする為に「シー」を除いて「サーペント」という名前となった。
本人は満足しているようだが、自分としてはモンスター以外から引っ張って来るべきではなかったかと、名付けた後に思った。だが、本人が気にしていないようだから、これ以上気にしても仕方ないかもしれない。
俺はこれ以上名前については考えないようにして、仕事に集中する事にする。
「それにしても、ここら辺の海賊はだいぶ片付けちゃったんじゃないか?」
(そうですね……先程から海賊の姿は見当たりませんが、船の残骸が浮かんでいたりしますし……。他の団員の方が、海賊を既に退治してしまったようですね)
戦闘の跡が所々で見られ、もはや海賊は近辺には居ない可能性がある。
俺達は少し遅めに出てしまったからな…………柱を投げて移動したり、アヒルの船で移動している奴は意外と移動速度が他と比べて速いように見えた。そこら辺が既に片付けてしまったのかもしれない。
ちょいちょい空を飛んでいたり、激しい水飛沫を上げている姿が見られる。あの移動方法は機動性に優れているらしい。
「ん?」
(あれは……海賊みたいですね……)
遠くに一隻の大きな船が見えた。いかにも海賊らしい髑髏の旗をはためかせている。
(ただ、既に交戦中のようですね)
「ああ、しかもアヒルの船の奴だな……ちょっと寄ってみるか」
海賊船相手にイモータルの団員は一人でどう戦うのか、少し観戦しようと思い俺達は近付いてみる事に。
姿がよく見え、声が聞こえるようになり、現場の様子がより詳細に分かるようになった。
「おい! あれ何なんだよ!」
「分かんねえよ! どうしてあんなに速く動けんだ?」
「とにかく魔法使える奴は、あのアヒルを狙え! それ以外は小舟で近付けぇ!」
「船長! 小舟でとても追いつけないっす!」
「あれ、船の速さじゃねえよ! 馬よりも速いし、魔道具か何かか?」
「いや、違う! 滅茶苦茶足を動かしてたぞ!」
「足が滅茶苦茶動いてんのに、上半身が微動だにしねえ! 気持ち悪いよぉ!」
海賊達はパニック状態だった。アヒルの船の動きがあまりに素早く、攻撃は当たらず、近付こうとしてもまるで追いつけない。手も足も出ない状態だった。
やがて、アヒルの船に乗船している団員は海賊船に急接近しては蹴り、殴り、穴を開けていく。そしてそこから海水が船内に侵入していき、海賊船は沈み始める。近くには陸地はないので、おそらく沈没してしまえば海賊たちは助からないだろう。
海賊船が沈み、また小舟に乗っている海賊を忘れずに始末してアヒルの船は次なる海賊を求めて去って行った。
鮮やかな手際だった。ただ、アヒルの船に乗っていたのが、熟練の殺し屋を思わせる雰囲気を纏い、髭や髪を綺麗に整えたスーツ姿の渋いオジサンであり、その絵面が衝撃的だった。
あんな団員が居たのか……いや、どうしてアヒルの船を移動手段として選んだ……。
後で問いただそうと思いながら、俺も海賊を探す為に移動をする。
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