死なない奴等の愚行
第62話 久し振りにバカ騒ぎ
マヤの作った空間に連れ込まれてから数日が経った。
俺はマヤのおかげで無心状態になるきっかけを得る事ができたのだが、さすがに数日維持する事はできない。できて丸一日程度で、一日無心になったら一日体を動かして筋肉をほぐすといった事を繰り返している。
そんな事を繰り返してようやく次の街に辿り着いた。
辿り着いた街は海に面した街アウール。ここでの仕事は戦争ではなく、海賊退治。この辺りには小さな無人島が複数あって、そこを根城にしているらしい。漁に出る船や商船を狙うらしく、沖に出た船の二割ほどが海賊の餌食になっているとの事。
仕事の期間は予定では一ヵ月。無人島を一つ一つ見て回りながら海賊を退治する。
街に着くとそのようなサラから説明があったのだが…………到着したその日は仕事どころではなかった。
「乾杯っ!!」
「「「「「イエェェェェェェェェェェェェェェイ!!」」」」」
オッサンの号令で始まる宴。
夜。街の港の一角を貸し切って、数々の料理と酒を並べてのどんちゃん騒ぎだ。
無心状態でろくに食事をしていなかった為に酷い飢餓状態の団員が多くいた。宴が始まると同時に次々と料理と酒がなくなっていく。現地の店の人が料理と酒を運んでくれるおかげでなくなる事はない。
もし尽きる事があればたちまち宴は乱闘パーティーに移行するだろう。それほどまでに飢えていた。
ある程度移動中に食事をしていた俺はそこまで飢えてはいないので、端の方で食事をしながら酒を飲んでいた。飢えた獣の中にいると俺まで食べられてしまいそうだ。ちなみにタロスは俺の隣で座っている。彼も食事はしていたので飢えてはいない。
「~♪」
タロスは食事をする団員達を見て嬉しそうだ。
「……タロス」
そして騒がしい団員達の中から一人小柄な少女がこちらにやって来た。カーシャだ。彼女は料理を持った皿を抱えてタロスに駆け寄ると、膝の上に乗って食事を始める。前の街でもこのような光景を目にしていた。どうやら彼女はタロスの膝がお気に入りらしい。
皿に盛られた料理をよく見てみると、モモンモンの肉もあった。あれって結局どんな生物の肉なんだろうか……。モモンモン……謎だ。
「ケルベロスー!」
「!?」
再び騒がしい団員達の中から小柄な少女がこちらに向って来る。
フェルだ。俺の匂いが好きらしいのだが…………ちょっと怖い。
彼女は俺に向かって走って来て目の前で両足を突っ張って急停止する。
「ケルベロス! 久し振りだね!」
「あ、ああ……久し振りだな」
止まってくれて良かった。以前は勢いそのままに突っ込んで来て窓をぶち破って落ちたからな……。
などとイモータルに入団したばかりの事をしみじみと思い出していると、俺の胸の中にフェルは自身の顔を押し付けるように飛び込んで来た。
「うへへへ……やっぱり良い匂いだねー」
「そんなに良い匂いなのか?」
「…………」
「フェル?」
返事がないフェル。久し振りに動いて、疲れて寝てしまったのかと思ったがそうではない。耳を澄ますと聞こえて来る。
「クンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクン」
一心不乱に俺の匂いを嗅いでいた。
ひとしきり嗅ぐと顔を上げるのだが、恍惚の表情を浮かべ、だらしなく口を半開きにしている。口の端からは涎を垂らしているが、それを拭う事なく放心状態だ。
「ふはぁ……やっぱりケルベロスの匂いたまんないなぁ……」
「…………」
少女がしてはいけない顔をしている。幼い顔立ちだが、俺の匂いで顔は上気し、目が潤んでいる。匂いを嗅がれただけなのに……なんだかしてはいけない事をしているような気がして…………あ、違います。俺が何かした訳じゃないんですよ。
料理を運んでいる飲食店の人が俺を犯罪者を見るような目で見ていたのが辛かった。
俺はマヤのおかげで無心状態になるきっかけを得る事ができたのだが、さすがに数日維持する事はできない。できて丸一日程度で、一日無心になったら一日体を動かして筋肉をほぐすといった事を繰り返している。
そんな事を繰り返してようやく次の街に辿り着いた。
辿り着いた街は海に面した街アウール。ここでの仕事は戦争ではなく、海賊退治。この辺りには小さな無人島が複数あって、そこを根城にしているらしい。漁に出る船や商船を狙うらしく、沖に出た船の二割ほどが海賊の餌食になっているとの事。
仕事の期間は予定では一ヵ月。無人島を一つ一つ見て回りながら海賊を退治する。
街に着くとそのようなサラから説明があったのだが…………到着したその日は仕事どころではなかった。
「乾杯っ!!」
「「「「「イエェェェェェェェェェェェェェェイ!!」」」」」
オッサンの号令で始まる宴。
夜。街の港の一角を貸し切って、数々の料理と酒を並べてのどんちゃん騒ぎだ。
無心状態でろくに食事をしていなかった為に酷い飢餓状態の団員が多くいた。宴が始まると同時に次々と料理と酒がなくなっていく。現地の店の人が料理と酒を運んでくれるおかげでなくなる事はない。
もし尽きる事があればたちまち宴は乱闘パーティーに移行するだろう。それほどまでに飢えていた。
ある程度移動中に食事をしていた俺はそこまで飢えてはいないので、端の方で食事をしながら酒を飲んでいた。飢えた獣の中にいると俺まで食べられてしまいそうだ。ちなみにタロスは俺の隣で座っている。彼も食事はしていたので飢えてはいない。
「~♪」
タロスは食事をする団員達を見て嬉しそうだ。
「……タロス」
そして騒がしい団員達の中から一人小柄な少女がこちらにやって来た。カーシャだ。彼女は料理を持った皿を抱えてタロスに駆け寄ると、膝の上に乗って食事を始める。前の街でもこのような光景を目にしていた。どうやら彼女はタロスの膝がお気に入りらしい。
皿に盛られた料理をよく見てみると、モモンモンの肉もあった。あれって結局どんな生物の肉なんだろうか……。モモンモン……謎だ。
「ケルベロスー!」
「!?」
再び騒がしい団員達の中から小柄な少女がこちらに向って来る。
フェルだ。俺の匂いが好きらしいのだが…………ちょっと怖い。
彼女は俺に向かって走って来て目の前で両足を突っ張って急停止する。
「ケルベロス! 久し振りだね!」
「あ、ああ……久し振りだな」
止まってくれて良かった。以前は勢いそのままに突っ込んで来て窓をぶち破って落ちたからな……。
などとイモータルに入団したばかりの事をしみじみと思い出していると、俺の胸の中にフェルは自身の顔を押し付けるように飛び込んで来た。
「うへへへ……やっぱり良い匂いだねー」
「そんなに良い匂いなのか?」
「…………」
「フェル?」
返事がないフェル。久し振りに動いて、疲れて寝てしまったのかと思ったがそうではない。耳を澄ますと聞こえて来る。
「クンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクンクン」
一心不乱に俺の匂いを嗅いでいた。
ひとしきり嗅ぐと顔を上げるのだが、恍惚の表情を浮かべ、だらしなく口を半開きにしている。口の端からは涎を垂らしているが、それを拭う事なく放心状態だ。
「ふはぁ……やっぱりケルベロスの匂いたまんないなぁ……」
「…………」
少女がしてはいけない顔をしている。幼い顔立ちだが、俺の匂いで顔は上気し、目が潤んでいる。匂いを嗅がれただけなのに……なんだかしてはいけない事をしているような気がして…………あ、違います。俺が何かした訳じゃないんですよ。
料理を運んでいる飲食店の人が俺を犯罪者を見るような目で見ていたのが辛かった。
「死なない奴等の愚行」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
3万
-
4.9万
-
-
5,217
-
2.6万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
164
-
253
-
-
8,191
-
5.5万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
2,534
-
6,825
-
-
6,681
-
2.9万
-
-
614
-
221
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
614
-
1,144
-
-
1,301
-
8,782
-
-
86
-
288
-
-
14
-
8
-
-
42
-
14
-
-
62
-
89
-
-
218
-
165
-
-
220
-
516
-
-
51
-
163
-
-
23
-
3
-
-
89
-
139
-
-
1,658
-
2,771
-
-
183
-
157
-
-
1,391
-
1,159
-
-
3,548
-
5,228
-
-
408
-
439
-
-
62
-
89
-
-
42
-
52
-
-
6,199
-
2.6万
-
-
7,474
-
1.5万
「コメディー」の人気作品
-
-
9,896
-
1.4万
-
-
1,701
-
1,520
-
-
1,245
-
1,205
-
-
795
-
1,518
-
-
695
-
806
-
-
662
-
670
-
-
600
-
1,440
-
-
264
-
82
-
-
252
-
74
コメント