死なない奴等の愚行
第56話 道中のアクシデント
移動を始めてから十日が経とうとしていた。未だに街には辿り着く気配はない。
途中、村に立ち寄ってある程度の食料を補給したが、そのほとんどは俺とタロスの分だ。たまに動いて食べたりするが、五日に一食も取らない今のイモータルの一同には食料は不必要だった。
俺も無心の状態になろうと思って何度も挑戦しているのだが、数分で飽きてしまうか、寝てしまう。ユーマでさえできているのだから俺でもできると思うのだが、一向にできない。
はあ……今日も一日、幌馬車に揺られながら暇と戦うのか……。
特に昨日からは暇との戦いは苛烈を極めた。これまで外の景色を観て多少は気を紛らわせる事ができていたのだが、昨日からは変わり映えのしない渓谷が続いている。左右にそびえる岩肌を眺めても何も面白味はない。
「はあ……寝て過ごすか」
寝るのにも限界があるのだが、時間を潰せる唯一の手段だ。
一応最初は無心の状態を維持する事を心掛けるが、目を瞑っていたら眠ってしまうだろう。
俺は目を瞑って無心になろうとした。だが、それを阻むように幌馬車が急停止して、その反動で床に倒れてしまう。
「な、何だ!?」
咄嗟に幌馬車から降りて確認する。
まるで壁を連想させる大きな岩が道を塞いでした。左右にほとんど隙間はなく左右の岩肌にぴったりとはまっているようだ。
これのせいで停めたのか……というか、御者やってる奴等無心状態でもちゃんと停まれるんだな。安心した。大岩をどうにかしようと行動はしないみたいだけど……。
まあ、戦場で使ったような魔道具があれば砕けそうだ。迂回する必要はない。
「……でも、おかしいな?」
御者を揺さぶって無心状態を解こうとしたが、目の前に立ち塞がる大岩を見て思わず首を捻った。
この大岩は一つの塊のようだ。左右の岩肌が崩れてしまった訳ではないようだ。実際、岩肌にはこれほど大きな塊が崩れ落ちたような形跡はない。
ぴったりと道を塞ぐサイズからしても、まるでその為に置かれたような……っ!
思考が一度止める。考え込んでいたところ不意に右腕に痛みを覚えたのだ。
急停止して床に倒れた時に変に捻ってしまったのだろうかと思いながら痛みを感じた部分に視線を向けてみる。
「…………は?」
自分の右腕を見てみると、そこには一本の矢が刺さっていた。
そして矢の数が更にもう一本増えたところで状況を理解する。
「うおおおっ!?」
慌てて幌馬車の下に潜り込んだ。
すると自分が居た地面に次々と矢が刺さっていった。
「な、何だ!?」
一瞬しか見えなかったが、俺達が来た方向に何十人もの人が居た。その内の弓を構えた奴が俺の腕に矢を命中させたようだ。
「イモータル! お前らの年貢の納め時だ! 今日こそはお前らを封印してやる!」
背後から現れた集団の中で纏め役と思われる男が声高々と宣言する。
いや、お前ら何なんだ? と疑問しか湧かず、咄嗟に俺は封印すると言われても危機感を全く覚えなかった。
そして他の団員も反応をしない。未だに無心状態を解いていないらしい。
タロスが攻撃に出るかと思ったが、幌馬車の下に潜り込んだ為に彼の姿は見えないがどうやら何もしていないようだ。
「おい、団長さんよ! 出て来いよ! それとも何もせず封印されるつもりか?」
相手はオッサンに向けてそのように言うものの、何も返事がない。
……うん、たぶんオッサンは気付いていない。
団員達が無心状態になっていくのを見て、あのいい加減なオッサンも無心でいるのかと興味本位で、オッサンの幌馬車を覗いたところ棺桶に入ろうとしていた。
いや、正確には棺桶のような人が一人横になれるくらいの、蓋がついた縦長の箱……うん見た目は完全に棺桶なんだけど。オッサンは周囲の僅かな音でも反応してしまって無心状態が解けてしまうらしく、防音仕様の箱の中で無心状態になるらしい。
だから、たぶん男の声は聞こえていない。
それにしても俺達を封印にするという自信は何だろうか。
そもそも実際に封印というのはどのようにするのか俺は知らなかった。
途中、村に立ち寄ってある程度の食料を補給したが、そのほとんどは俺とタロスの分だ。たまに動いて食べたりするが、五日に一食も取らない今のイモータルの一同には食料は不必要だった。
俺も無心の状態になろうと思って何度も挑戦しているのだが、数分で飽きてしまうか、寝てしまう。ユーマでさえできているのだから俺でもできると思うのだが、一向にできない。
はあ……今日も一日、幌馬車に揺られながら暇と戦うのか……。
特に昨日からは暇との戦いは苛烈を極めた。これまで外の景色を観て多少は気を紛らわせる事ができていたのだが、昨日からは変わり映えのしない渓谷が続いている。左右にそびえる岩肌を眺めても何も面白味はない。
「はあ……寝て過ごすか」
寝るのにも限界があるのだが、時間を潰せる唯一の手段だ。
一応最初は無心の状態を維持する事を心掛けるが、目を瞑っていたら眠ってしまうだろう。
俺は目を瞑って無心になろうとした。だが、それを阻むように幌馬車が急停止して、その反動で床に倒れてしまう。
「な、何だ!?」
咄嗟に幌馬車から降りて確認する。
まるで壁を連想させる大きな岩が道を塞いでした。左右にほとんど隙間はなく左右の岩肌にぴったりとはまっているようだ。
これのせいで停めたのか……というか、御者やってる奴等無心状態でもちゃんと停まれるんだな。安心した。大岩をどうにかしようと行動はしないみたいだけど……。
まあ、戦場で使ったような魔道具があれば砕けそうだ。迂回する必要はない。
「……でも、おかしいな?」
御者を揺さぶって無心状態を解こうとしたが、目の前に立ち塞がる大岩を見て思わず首を捻った。
この大岩は一つの塊のようだ。左右の岩肌が崩れてしまった訳ではないようだ。実際、岩肌にはこれほど大きな塊が崩れ落ちたような形跡はない。
ぴったりと道を塞ぐサイズからしても、まるでその為に置かれたような……っ!
思考が一度止める。考え込んでいたところ不意に右腕に痛みを覚えたのだ。
急停止して床に倒れた時に変に捻ってしまったのだろうかと思いながら痛みを感じた部分に視線を向けてみる。
「…………は?」
自分の右腕を見てみると、そこには一本の矢が刺さっていた。
そして矢の数が更にもう一本増えたところで状況を理解する。
「うおおおっ!?」
慌てて幌馬車の下に潜り込んだ。
すると自分が居た地面に次々と矢が刺さっていった。
「な、何だ!?」
一瞬しか見えなかったが、俺達が来た方向に何十人もの人が居た。その内の弓を構えた奴が俺の腕に矢を命中させたようだ。
「イモータル! お前らの年貢の納め時だ! 今日こそはお前らを封印してやる!」
背後から現れた集団の中で纏め役と思われる男が声高々と宣言する。
いや、お前ら何なんだ? と疑問しか湧かず、咄嗟に俺は封印すると言われても危機感を全く覚えなかった。
そして他の団員も反応をしない。未だに無心状態を解いていないらしい。
タロスが攻撃に出るかと思ったが、幌馬車の下に潜り込んだ為に彼の姿は見えないがどうやら何もしていないようだ。
「おい、団長さんよ! 出て来いよ! それとも何もせず封印されるつもりか?」
相手はオッサンに向けてそのように言うものの、何も返事がない。
……うん、たぶんオッサンは気付いていない。
団員達が無心状態になっていくのを見て、あのいい加減なオッサンも無心でいるのかと興味本位で、オッサンの幌馬車を覗いたところ棺桶に入ろうとしていた。
いや、正確には棺桶のような人が一人横になれるくらいの、蓋がついた縦長の箱……うん見た目は完全に棺桶なんだけど。オッサンは周囲の僅かな音でも反応してしまって無心状態が解けてしまうらしく、防音仕様の箱の中で無心状態になるらしい。
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