死なない奴等の愚行
第55話 まったりとした道中
俺の戦場デビューから数日が経過した。
今、俺達イモータルは次の仕事が待っている街へと向かっている。
移動中は特にやる事がないので幌馬車の中でぼおっとしている事が多い。
先の街で何か暇潰しになるようなものを買っておけばよかったと移動初日で後悔し、それからずっと暇で死にそうだ。いや、不死身だから死なないが。
いつも騒がしい団員達はこれに耐えられるのか。何か良い暇潰しの手段があるのだろうか。そう疑問に思いながら、同じ幌馬車に乗っている団員達を見てみるが意外な光景があった。
「「「「「……………………」」」」」
誰一人身動せず、一言も喋らない。
不死身の力を失って死んでいるのではないかと思うほどだ。
 目を閉じているので寝ているようにも見えるが一応起きている。
俺の横にはユーマが居るのだが、こいつもジッと大人しい。普段チャラチャラしているくせに、まるで瞑想中の修行僧を連想させる。
初日にユーマを揺さぶってどういう事なのか聞いてみると、長い時を生きていくうえで何もしない、できない時間を過ごす為の方法らしい。無心となる事で時間の流れを感じられないようにするんだとか。だから時間を早く感じ、「もうこんな時間!?」「いつの間に!?」という状態を作り出すのだという。
それを聞いて俺も挑戦してみた…………十分経ったら飽きた。
急には無理だ。とてもじゃないが今の俺には無心の状態を長時間維持するなんて事はできない。だから幌馬車の中で俺は寝て過ごすか、ぼおっとしているしかなかった。
御者をしている団員に話し相手にでもなって貰おうかと思ったが、なんと御者も無心となって目を瞑っていた。この幌馬車は無事に目的地に辿り着くのかと不安になって揺さぶろうと思ったが、きっと大丈夫なのだろうと団員のこれまでの経験を信じて引っ込んだ。
……常識で考えてはならない。
イモータルという傭兵団は常識とはかけ離れた世界の生物の集団だ。俺はそう思うようにしている。
そして今日も今日とてぼおっとしている。
馬を休ませる為に日に三、四回は休憩時間があるのだが、降りるのは御者や俺ぐらいのものだ。ほとんどが無心の状態を続けており、ユーマから聞いた話だと到着するまでこのままらしい。空腹なども無心でいると紛れるらしいが、飲まず食わずで何日も過ごしていれば絶対何人か餓死状態だと思う。
次の街に辿り着くまで、あと数日。
死にはしないがちゃんと動けるのだろうか……。
そんな事を思いながら休憩時間になったので、幌馬車から降りて固まった筋肉を動かして体をほぐした。
「さてと……ん?」
急に影が覆いかぶさった。太陽が雲に覆われたのかと思うが、そうではない。
俺は影の主を見上げる。
「ようタロス。疲れてないか?」
「!」
大丈夫! と親指を立てて答えるタロス。
イモータルのほとんどの団員が微動だにしないなか。タロスだけは通常運転だ。彼は幌馬車に乗らないので、一人だけ徒歩である。大変だと思うが、この巨体なので一歩が大きいし、それほど苦ではないらしい。
この移動中、タロスとはだいぶ仲良くなったと思う。
御者をしている団員は馬の世話で忙しく、他に無心状態でいないのは俺だけ。そうなると必然的に休憩時間には二人で居るようになる。俺が一方的に話すのだが、タロスは頷いたりリアクションをしっかり返してくれるし、それに幌馬車で一言も喋らないので話し疲れる事はない。
それにタロスには魔力樹の実を貰った恩がある。あれを食べて魔力の保有量が増えていなければ戦場で、あれほど魔道具を使えなかっただろう。俺を投げた詫びという事で貰ったが、何かお礼がしたかった。
「…………!」
「あ、タロスもそう思うか?」
「! !!」
「そうか、そうかー。なるほどなー」
こうして休憩の度にタロスと会話をしていると、言葉を発さないが、なんとなく彼の言いたい事が分るようになった気がする。
今、俺達イモータルは次の仕事が待っている街へと向かっている。
移動中は特にやる事がないので幌馬車の中でぼおっとしている事が多い。
先の街で何か暇潰しになるようなものを買っておけばよかったと移動初日で後悔し、それからずっと暇で死にそうだ。いや、不死身だから死なないが。
いつも騒がしい団員達はこれに耐えられるのか。何か良い暇潰しの手段があるのだろうか。そう疑問に思いながら、同じ幌馬車に乗っている団員達を見てみるが意外な光景があった。
「「「「「……………………」」」」」
誰一人身動せず、一言も喋らない。
不死身の力を失って死んでいるのではないかと思うほどだ。
 目を閉じているので寝ているようにも見えるが一応起きている。
俺の横にはユーマが居るのだが、こいつもジッと大人しい。普段チャラチャラしているくせに、まるで瞑想中の修行僧を連想させる。
初日にユーマを揺さぶってどういう事なのか聞いてみると、長い時を生きていくうえで何もしない、できない時間を過ごす為の方法らしい。無心となる事で時間の流れを感じられないようにするんだとか。だから時間を早く感じ、「もうこんな時間!?」「いつの間に!?」という状態を作り出すのだという。
それを聞いて俺も挑戦してみた…………十分経ったら飽きた。
急には無理だ。とてもじゃないが今の俺には無心の状態を長時間維持するなんて事はできない。だから幌馬車の中で俺は寝て過ごすか、ぼおっとしているしかなかった。
御者をしている団員に話し相手にでもなって貰おうかと思ったが、なんと御者も無心となって目を瞑っていた。この幌馬車は無事に目的地に辿り着くのかと不安になって揺さぶろうと思ったが、きっと大丈夫なのだろうと団員のこれまでの経験を信じて引っ込んだ。
……常識で考えてはならない。
イモータルという傭兵団は常識とはかけ離れた世界の生物の集団だ。俺はそう思うようにしている。
そして今日も今日とてぼおっとしている。
馬を休ませる為に日に三、四回は休憩時間があるのだが、降りるのは御者や俺ぐらいのものだ。ほとんどが無心の状態を続けており、ユーマから聞いた話だと到着するまでこのままらしい。空腹なども無心でいると紛れるらしいが、飲まず食わずで何日も過ごしていれば絶対何人か餓死状態だと思う。
次の街に辿り着くまで、あと数日。
死にはしないがちゃんと動けるのだろうか……。
そんな事を思いながら休憩時間になったので、幌馬車から降りて固まった筋肉を動かして体をほぐした。
「さてと……ん?」
急に影が覆いかぶさった。太陽が雲に覆われたのかと思うが、そうではない。
俺は影の主を見上げる。
「ようタロス。疲れてないか?」
「!」
大丈夫! と親指を立てて答えるタロス。
イモータルのほとんどの団員が微動だにしないなか。タロスだけは通常運転だ。彼は幌馬車に乗らないので、一人だけ徒歩である。大変だと思うが、この巨体なので一歩が大きいし、それほど苦ではないらしい。
この移動中、タロスとはだいぶ仲良くなったと思う。
御者をしている団員は馬の世話で忙しく、他に無心状態でいないのは俺だけ。そうなると必然的に休憩時間には二人で居るようになる。俺が一方的に話すのだが、タロスは頷いたりリアクションをしっかり返してくれるし、それに幌馬車で一言も喋らないので話し疲れる事はない。
それにタロスには魔力樹の実を貰った恩がある。あれを食べて魔力の保有量が増えていなければ戦場で、あれほど魔道具を使えなかっただろう。俺を投げた詫びという事で貰ったが、何かお礼がしたかった。
「…………!」
「あ、タロスもそう思うか?」
「! !!」
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