死なない奴等の愚行

山口五日

第46話 嫉妬のあまりやった。後悔はしてない。

「な、何だ!? 一人で突っ込んで来たぞ!?」
「イモータルの奴か? いや、あんなの奴等しか居ないだろ! 一人で乗り込んで来る奴なんて!」


 すぐにイモータルの団員であると瞬時に断定されてしまう。イモータルなら一人で乗り込んで来ても不思議ではないのか。いったい普段はどんなふうに戦っているのやら。


 後ろで控える団員達をチラリと振り返りながら俺は溜息を吐く。


 俺をイモータルの団員と同様な存在と認識しないで欲しい。俺は新入りだし、そこまで不死身の考え方に染まり切っていない。だからさ、平和的に解決すべきだと思うんだ。血生臭い争いなんて嫌だろ? 痛い思いはしたくないだろ? 死にたくないだろ? 俺も同じ思いだ。だからさ、お互い武器なんて捨てて……。


 次の瞬間、俺の両手に持つ筒の魔道具ガンが火を噴いた。結果、敵兵の二人の胸に穴を開け絶命させる。


「アレックスゥゥゥゥゥゥ!」
「エレェェェェェェェェン!」


 近くに居た兵が絶命した二人の名前か、悲痛な面持ちで叫んだ。


 ……いや、その…………俺は悪くない。パペットくんのせいだから。勝手に指を動かしてトリガーを引いたんだよ。あと、このガンという魔道具、引き金を引くと魔力を自動的に吸い上げる仕組みになっているようだ。だから俺は悪くないけど……何というか……ごめんね。


 二人を殺した事で一段と敵兵の向けて来る殺意が強くなる。


「畜生! あの野郎、よくもやりやがったな!」
「アレックスとエレンは、この戦いが終わった後に結婚するつもりだったんだぞ! お互いの両親にようやく理解を得たというのに!」


 今、殺してしまったアレックスとエレンは恋仲だったそうだ。


 なるほど、愛し合っている二人が、こんな戦場で肩を並べていたと……。


 殺してしまった罪悪感がまるでないな。ちょっとはあったけど、カップルと知った途端に失せてしまった。断じて恋人の居ない事による嫉妬ではない。それよりも戦争だ。戦争をしよう。え? 急にやる気になった。いやいや、そんな事はない。俺は新入りでも傭兵だ。戦う事こそが俺の生きる理由だ。よし、じゃあやるか。


「カップルを優先的に殺すっ!!」


 俺がやる気になったからか、パペットくんによる操作は解除されて自由に体を動かせるようになった。今なら逃げられるかもしれないが、もはや逃げるなどという選択肢はない。


 ようしっ! 一組でも多くのカップルを殺してやるぞ!


「オラァ! カップルは何処じゃ!戦場で乳繰り合う不埒者共、出て来いや!」


 ガンを連射しながら敵へと突っ込み、周囲に無差別で魔力の弾丸を放つ。魔力の弾丸は鎧くらいは貫通できる威力を持っていて、こちらに近付こうとする敵を次々と倒す。


 接近されて掴まれると厄介だ。パペットくんによる身体能力の向上で、素手でもやり合えるかもしれないが、できるだけ避けたい。


「くっ、ジェシー退がれ! 奴は危険だ、ガフッ」
「ジョゼフゥゥゥゥゥゥ!」
「リア充狩りじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 そしてリア充臭がすると、そちらへの攻撃も忘れない。見逃してなるものか。


「盾だ! 盾を持っている奴が前に出ろ! それと防御系の魔法を使う奴もだ! その後ろから奴に魔法を撃ち込め!」


 敵兵の中で身分の高そうな男が指示を出した。
 その指示は的確で、魔力の弾丸は盾や魔法によって防がれてしまい、逃げ出す穴がまるでない包囲網が完成した。


「よし! 魔法を放て! 奴を徹底的にズタボロにするんだ! 動けなくなったところを細切れにしろ! そうすれば、いくら不死身でもすぐには復活しないはずだ!」


 それは嫌だ。そっちは簡単に死ねるかもしれないが、不死身だと完全に傷が治るまで激痛にずっと耐えないといけないんだぞ。


 リンチ、というかミンチにされない為に、使いたくなかった手段を取る事にする。

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