死なない奴等の愚行
第37話 ケルベロスは逃げ出した。しかし回り込まれた!
魔力というものは魔法を使用するのに必要なもの。また、血と同じようなものでもある。魔力を消費し過ぎると、少なくなると生命活動が著しく低下、下手をすれば死に至るのだ。
ただ、人間は魔法を使う時以外は体外に魔力をほとんど放出しない。余程魔力を感知するのに長けていなければ、感じ取る事は難しい。だが、モンスターの場合は違う。モンスターは魔石という、人間でいうところの心臓を中心に魔力によって体の大部分を構成している。だから魔力を感知する事に長けている人間以外でも感じ取る事ができる。
以上の事から、今感じている魔力の持ち主というのは……モンスターである。
しかも、こちらに物凄い速さで近付いているのが分かる。
「マズッ!?」
こちらに接近して来るモンスターから逃げようと、俺は走り出した。
サラが言っていた人の血の匂いに集まる凶暴なモンスターに違いない。確かブラッドウルフとかいう名前だった。人に襲い掛かり、肉は食べずに生き血を啜るというモンスターだ。しかも基本は群れで行動するらしい。見つけたら、その三倍は居ると思えとサラから教えて貰った。
あと何か教えて貰ったような…………あ、そうだ。隠密性が高くて気配を消すのに長けていて、もし気配がしたらそれは囮で、待ち伏せているって…………あ、これ詰んだ。
「ガウッ!」
「のおおおおおおおおおっ!?」
進行方向からブラッドウルフとい思われるモンスターが飛び掛かって来た。
辛うじて横に跳んで避けたが、待ち伏せしていたのは一匹だけではない。襲い掛かって来たのを含めて、五匹のブラッドウルフが居た。最初に魔力を感じたブラッドウルフを含めれば、合計で六匹だ。
サラから事前に聞いていたのにすっかり忘れてた。思い出せなかったら今のは避けられなかっただろう。でも、まさか魔力も隠せるなんて思わなかった。
ブラッドウルフの知識が与えられていれば分かっていたかもしれないが、サラに聞いた事以外の知識はない。どうやら必要最低限の知識しか与えられていないようだ。神、つかえない奴め。
「くそっ! こっちは火葬くんしか武器がないっていうのに!」
しかも、おそらく火葬くんの出す炎では、生きているものに対してはダメージを与えられない。あくまで死肉や死霊系のモンスターに対して有効なだけで、槍としてしか使えないだろう。
槍を武器に戦った事はない。扱った事があれば記憶を失っていても体が覚えているかもしれないが、どのようにして扱えばいいのかまるで分からない。戦えば、確実に戦ったら負ける。
不死身である為、死ぬ事はないだろう。だけど血を啜るブラッドウルフからすれば、時間が経過すれば血の量が戻るという飲み放題が可能な魅力溢れる獲物だ。もしかすると永久に囚われの身になってしまうかもしれない。
一か八か火葬くんを捨てて身軽になって逃げるか。そう思った時だった。ふと最初気配を隠していなかったブラッドウルフの魔力を感じなくなった事に気付く。確実に俺を仕留める為に気配を隠して襲い掛かって来るんじゃないかと警戒したが、そうではなかった。
「……ケルベロス、無事?」
「へ?」
空から声を掛けられた。
今にも襲い掛かって来そうなブラッドウルフから目を離すなんて危険だが、反射的に俺は見上げてしまった。
自分の頭上、地面から十メートルは離れた宙に浮いていたのはカーシャだった。ただ、先程別れた時とは違っていると事が二つある。まず一つは火葬くんを持っているのは変わっていないものの、空いていたはずのもう片方の手に、絶命したのか全く動かないブラッドウルフを片手で持っている事。そして、もう一つは背中から夜の闇に溶け込む真っ黒な羽が生えている事だ。
「……助けに来た」
カーシャは静かにそう言った。
ただ、人間は魔法を使う時以外は体外に魔力をほとんど放出しない。余程魔力を感知するのに長けていなければ、感じ取る事は難しい。だが、モンスターの場合は違う。モンスターは魔石という、人間でいうところの心臓を中心に魔力によって体の大部分を構成している。だから魔力を感知する事に長けている人間以外でも感じ取る事ができる。
以上の事から、今感じている魔力の持ち主というのは……モンスターである。
しかも、こちらに物凄い速さで近付いているのが分かる。
「マズッ!?」
こちらに接近して来るモンスターから逃げようと、俺は走り出した。
サラが言っていた人の血の匂いに集まる凶暴なモンスターに違いない。確かブラッドウルフとかいう名前だった。人に襲い掛かり、肉は食べずに生き血を啜るというモンスターだ。しかも基本は群れで行動するらしい。見つけたら、その三倍は居ると思えとサラから教えて貰った。
あと何か教えて貰ったような…………あ、そうだ。隠密性が高くて気配を消すのに長けていて、もし気配がしたらそれは囮で、待ち伏せているって…………あ、これ詰んだ。
「ガウッ!」
「のおおおおおおおおおっ!?」
進行方向からブラッドウルフとい思われるモンスターが飛び掛かって来た。
辛うじて横に跳んで避けたが、待ち伏せしていたのは一匹だけではない。襲い掛かって来たのを含めて、五匹のブラッドウルフが居た。最初に魔力を感じたブラッドウルフを含めれば、合計で六匹だ。
サラから事前に聞いていたのにすっかり忘れてた。思い出せなかったら今のは避けられなかっただろう。でも、まさか魔力も隠せるなんて思わなかった。
ブラッドウルフの知識が与えられていれば分かっていたかもしれないが、サラに聞いた事以外の知識はない。どうやら必要最低限の知識しか与えられていないようだ。神、つかえない奴め。
「くそっ! こっちは火葬くんしか武器がないっていうのに!」
しかも、おそらく火葬くんの出す炎では、生きているものに対してはダメージを与えられない。あくまで死肉や死霊系のモンスターに対して有効なだけで、槍としてしか使えないだろう。
槍を武器に戦った事はない。扱った事があれば記憶を失っていても体が覚えているかもしれないが、どのようにして扱えばいいのかまるで分からない。戦えば、確実に戦ったら負ける。
不死身である為、死ぬ事はないだろう。だけど血を啜るブラッドウルフからすれば、時間が経過すれば血の量が戻るという飲み放題が可能な魅力溢れる獲物だ。もしかすると永久に囚われの身になってしまうかもしれない。
一か八か火葬くんを捨てて身軽になって逃げるか。そう思った時だった。ふと最初気配を隠していなかったブラッドウルフの魔力を感じなくなった事に気付く。確実に俺を仕留める為に気配を隠して襲い掛かって来るんじゃないかと警戒したが、そうではなかった。
「……ケルベロス、無事?」
「へ?」
空から声を掛けられた。
今にも襲い掛かって来そうなブラッドウルフから目を離すなんて危険だが、反射的に俺は見上げてしまった。
自分の頭上、地面から十メートルは離れた宙に浮いていたのはカーシャだった。ただ、先程別れた時とは違っていると事が二つある。まず一つは火葬くんを持っているのは変わっていないものの、空いていたはずのもう片方の手に、絶命したのか全く動かないブラッドウルフを片手で持っている事。そして、もう一つは背中から夜の闇に溶け込む真っ黒な羽が生えている事だ。
「……助けに来た」
カーシャは静かにそう言った。
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