死なない奴等の愚行
第27話 それが真の答え
顔から血の気が引いて青褪めた表情のユーマに俺は恐るおそる声を掛ける。
「お、おい、どうしたユーマ?」
「て、手足がききき切られて、槍で地面にぬぬぬぬ縫い付けられ、魔法使いが何人も俺を囲んで、火魔法や雷魔法でででででで」
「経験済みなんだな!?」
「あー、そういえばユーマは訓練を受けずに戦場に放り込まれたんだよなー」
「ど、どうしてそんな無茶を?」
「いや、入りたての時に女性団員にナンパばかりしていてな。それでユイカが激怒して、『女を口説く前に、敵の一人でも殺してこい!』と問答無用で戦場に。しかも、戦場でもこんなアクセサリーをジャラジャラ付けているから目立ってなー。あれは良い的だった」
何だ、自業自得か。少しでも可哀そうと思ってしまったのが馬鹿らしい。
「まあ、そんな事にならないように早くから訓練はしておいた方がいいと思った訳だ。どうだ? まあ、体格を見たところ、そんなに鍛えていないようだし、初歩から優しく鍛えてやるからよ」
いつかは傭兵として戦場で戦わないといけないんだし、ユーマのような悲惨な目に遭わない為にも早くから訓練をした方がいいのかもしれない。
決心して俺はダンに頭を下げた。
「それじゃあ訓練の方、よろしくお願いします!」
「おう! 任せとけ! それじゃあついて来い!」
部屋を出て行くダンの後を追い掛ける。
ユーマは未だにトラウマから立ち直れないのか、青い顔をして震えていたので放置する事にした。戻って来て立ち直っていたら再びおっぱいに関して議論しよう。
「ユーマはあんな感じだけど戦場で戦えるのか?」
ダンの後を歩きながら俺は部屋に残ったユーマの様子を思い返しながら訊いてみた。戦場であんなふうになってしまえば、敵からしたら今も良い的だ。
「ああ。まあ今回は当時の事を思い出させるような事を言っちまったから、あんなに酷いんだ。戦場では普通に戦ってるぜ。それに後方から魔法を放つのが、あいつの戦法だからな」
「へー、そうなのか。てっきり、動けなくなって敵の良い的となる事で攻撃を一手に引き受ける役割なのかと思った」
「いや……さすがに不死身でも団員にそんな酷い事はさせないぞ」
「でも、人間投擲も酷くないか? あれ着地どうするんだよ」
タロスに投げられた時、とてもじゃないが足から着地なんてできない勢いだった。仮に空中を移動しながら、足で着地できるように体勢を変える事ができたとしても、着地した瞬間に足が潰れる。折れるじゃない。潰れる。
「あれは慣れだな。俺くらいになれば衝撃を逃しながら着地して、すぐに敵に向かって行けるぜ。まあ、そんな事ができるのは極一部で、大抵は魔法や魔道具で上手い具合に着地するんだよ」
良かった。魔法や魔道具といった着地を補助してくれるものがあるのか。ダンのようなやり方だけだったら、どうしようかと思った。着地する際の衝撃を逃がす技術を会得するだけで何年も掛かりそうだ。
不死身だからといってそんな無茶はさせないのだと、良心的なところが少し見えてイモータルという組織に対して安堵する。
「そういえばよ、ちょっと部屋に入る前に気になったんだが……」
「ん?」
「いや、部屋の中から殺気を感じ取ってな。いったい何をしていたのかと思ってな」
「殺気?」
ダンが入ってくる前というと…………ああ、童貞を率いてヤリチン共を抹殺しようかと思った時か。確かに俺は殺気立っていた。というか部屋の中の殺気を感じ取れたな。常に殺気に晒される戦場での経験があるからこそだろうか。
「いや、ちょっと意見の食い違いで熱くなってしまって」
「食い違い? どんな事を話していたんだ?」
「おっぱいで最も重要な事は何か、です」
もしかするとダンは俺やユーマよりは長い時を生きてきた男だ。この重大なテーマの答えを持っているかもしれない。そんな期待を抱きながら素直に答えた。
「おっぱいで最も重要な事は何か、か……」
歩きながらダンは口を閉ざして少し考える素振りをするが、僅か数秒の沈黙の後に口を開いた。
「吸い心地だな」
「…………」
吸い心地と答えたダンの背中が少し大きく見えた。
「お、おい、どうしたユーマ?」
「て、手足がききき切られて、槍で地面にぬぬぬぬ縫い付けられ、魔法使いが何人も俺を囲んで、火魔法や雷魔法でででででで」
「経験済みなんだな!?」
「あー、そういえばユーマは訓練を受けずに戦場に放り込まれたんだよなー」
「ど、どうしてそんな無茶を?」
「いや、入りたての時に女性団員にナンパばかりしていてな。それでユイカが激怒して、『女を口説く前に、敵の一人でも殺してこい!』と問答無用で戦場に。しかも、戦場でもこんなアクセサリーをジャラジャラ付けているから目立ってなー。あれは良い的だった」
何だ、自業自得か。少しでも可哀そうと思ってしまったのが馬鹿らしい。
「まあ、そんな事にならないように早くから訓練はしておいた方がいいと思った訳だ。どうだ? まあ、体格を見たところ、そんなに鍛えていないようだし、初歩から優しく鍛えてやるからよ」
いつかは傭兵として戦場で戦わないといけないんだし、ユーマのような悲惨な目に遭わない為にも早くから訓練をした方がいいのかもしれない。
決心して俺はダンに頭を下げた。
「それじゃあ訓練の方、よろしくお願いします!」
「おう! 任せとけ! それじゃあついて来い!」
部屋を出て行くダンの後を追い掛ける。
ユーマは未だにトラウマから立ち直れないのか、青い顔をして震えていたので放置する事にした。戻って来て立ち直っていたら再びおっぱいに関して議論しよう。
「ユーマはあんな感じだけど戦場で戦えるのか?」
ダンの後を歩きながら俺は部屋に残ったユーマの様子を思い返しながら訊いてみた。戦場であんなふうになってしまえば、敵からしたら今も良い的だ。
「ああ。まあ今回は当時の事を思い出させるような事を言っちまったから、あんなに酷いんだ。戦場では普通に戦ってるぜ。それに後方から魔法を放つのが、あいつの戦法だからな」
「へー、そうなのか。てっきり、動けなくなって敵の良い的となる事で攻撃を一手に引き受ける役割なのかと思った」
「いや……さすがに不死身でも団員にそんな酷い事はさせないぞ」
「でも、人間投擲も酷くないか? あれ着地どうするんだよ」
タロスに投げられた時、とてもじゃないが足から着地なんてできない勢いだった。仮に空中を移動しながら、足で着地できるように体勢を変える事ができたとしても、着地した瞬間に足が潰れる。折れるじゃない。潰れる。
「あれは慣れだな。俺くらいになれば衝撃を逃しながら着地して、すぐに敵に向かって行けるぜ。まあ、そんな事ができるのは極一部で、大抵は魔法や魔道具で上手い具合に着地するんだよ」
良かった。魔法や魔道具といった着地を補助してくれるものがあるのか。ダンのようなやり方だけだったら、どうしようかと思った。着地する際の衝撃を逃がす技術を会得するだけで何年も掛かりそうだ。
不死身だからといってそんな無茶はさせないのだと、良心的なところが少し見えてイモータルという組織に対して安堵する。
「そういえばよ、ちょっと部屋に入る前に気になったんだが……」
「ん?」
「いや、部屋の中から殺気を感じ取ってな。いったい何をしていたのかと思ってな」
「殺気?」
ダンが入ってくる前というと…………ああ、童貞を率いてヤリチン共を抹殺しようかと思った時か。確かに俺は殺気立っていた。というか部屋の中の殺気を感じ取れたな。常に殺気に晒される戦場での経験があるからこそだろうか。
「いや、ちょっと意見の食い違いで熱くなってしまって」
「食い違い? どんな事を話していたんだ?」
「おっぱいで最も重要な事は何か、です」
もしかするとダンは俺やユーマよりは長い時を生きてきた男だ。この重大なテーマの答えを持っているかもしれない。そんな期待を抱きながら素直に答えた。
「おっぱいで最も重要な事は何か、か……」
歩きながらダンは口を閉ざして少し考える素振りをするが、僅か数秒の沈黙の後に口を開いた。
「吸い心地だな」
「…………」
吸い心地と答えたダンの背中が少し大きく見えた。
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