捨てる人あれば、拾うワン公あり
第36話 ジェノス・クロvsドラゴンゴーレム
穴を覗く二体のドラゴンゴーレム。だが、すぐに頭を引っ込めて外が騒がしくなる。
どうやら外にいる者達でドラゴンゴーレムに攻撃を仕掛けているようだ。だが、ドラゴンゴーレム相手に外の戦力だけではとても太刀打ちできない。
「……クロ! お前はあいつらを倒せ! 俺はここでコアを探し続ける!」
「う、うん! 分かったよ!」
「他の奴も行ってこい! ここは俺一人でなんとかする!」
「「「うっす!」」」
他の仲間達にも呼び掛けて穴の外へと送り出そうとするが、さすがにクロが立ち止まる。
「ジェノスさん、一人じゃ押し戻されちゃうよ!」
ここまでクロとジェノスの主に二人の力で掘り進める事ができた。クロが抜けても他の仲間がいれば多少効率は落ちるが、掘り進める事ができる。だが、これまでのペースだとジェノス一人では再生速度を上回るのは難しいだろう。
「問題ねえ。俺だけなら周りに気を使う必要はねえからな。そう何度も使えねえが、魔法も使って一気に掘り進める」
「ちょ、そんな事をしたら周りが崩れて埋もれちゃうよ!」
「周りはしっかり自分の魔力で固めてる! 直接魔法をぶつけねえ限り崩れる事はねえよ。ほら、さっさと行ってこい!」
「……分かった。だけど気を付けてね!」
そう言ってクロも梯子で穴の外へと出て行った。
一人きりとなったジェノスは自分の足下を見る。少しずつユグドラシルゴーレムは体を元に戻そうとして、掘っていた痕跡が消えていく。
「さて……ナエやクロみたいな派手な威力の魔法は使えねえが、岩を削っていくにはぴったりな魔法があるんだ。いくぜ……《イサルデルゥー》!」
本来この《イサルデルゥー》という魔法は飛び道具に対して有効な防御の魔法だ。竜巻のような風が発生し、矢などをあらぬ方向に受け流す事ができる。そしてこれを圧縮して発動すると、威力が増し受け流すどころか、矢や魔法は掻き消すほどの威力となる。
圧縮には魔力の扱いに長けていなければできない事だが、ワンワン、ナエ、クロに教える為に魔法に関する本を読み、実践して来たジェノスには可能だった。
ジェノスは自分の足下で圧縮させて発動した。周囲に砕いた岩の礫が飛び散る。周りに人がいれば確かに使う事はできない手段だ。こうしてジェノスは少しずつだが着実に《イサルデルゥー》によって掘り進めていく。
一方、穴の外では既にクロも加わりドラゴンゴーレムと戦っていた。
「おい、固まるなっ! 狙われるぞ!」
魔物ギルドのギルドマスターであるゲルニドが指示を飛ばす。ゲルニドの指示が的確だったおかげで幸い動けなくなるほどの重傷を負った者はいない。
ドラゴンゴーレムはユグドラシルゴーレムの体の一部だ。
ゲルニド達は出現するまでの一部始終を目撃していた。突然岩の体の一部が盛り上がったと思えば、ドラゴンゴーレムとなって動きだしたのだ。そしてワンワン達が待機する方にも何かが放たれたのも目撃し、慌てて何人かゲルニドは向かわせていた。
「こっちには勇者がいるんだ! 勝ったも同然だ! 恐れるな、やっちまえ!」
共に戦うクロの名前を使って喝を入れる。
穴からクロが飛び出して来て穴の中にいた全員が無事だと聞くと、安堵のあまり足から力が抜けそうになった。
ドラゴンゴーレムが穴にいるクロ達に気付いてしまい、二体がドラゴンブレスを放った時。穴の中にいた者の生存は絶望的だろうとゲルニドは思っていた。
普通は防ぐのは不可能。避けるしかない。だが、逃げ場などない狭い穴の中だ。だから全員の死を覚悟していた。
「はあああっ!」
「グルルルルル!」
そのドラゴンブレスを防いだクロはというと、ドラゴンゴーレム一体を一人で相手にしていた。
ゲルニドは詳しい話は聞いていないが、クロが防いだに違いないと思っていた。だからクロから「一体は私がやるから!」と申し出た際も躊躇う事なく任せることにしたのだ。
「強そうだけどこの大きさなら……《エスパテンペス》!」
魔物の体くらいなら容易に切り裂く風の魔法をドラゴンゴーレムに放つ。
ドラゴンゴーレムは咄嗟に飛び立ち、避けようとするが間に合わず。岩の体であるにも関係なしに、後ろの両足が魔法に接触すると跡形もなく粉砕する。
ユグドラシルゴーレムの巨体では表面を削ぐぐらいしかできないが、ドラゴンゴーレムほどの大きさであれば問題なく破壊する事ができた。
だが、ドラゴンゴーレムもそれぐらいで戦意を失わない。そのまま飛び立ちクロ達の頭上を旋回し、失われた足を再生していく。
「《エスパテンペス》! 《エスパテンペス》!」
次々と魔法を繰り出すが空を飛ぶドラゴンゴーレムは、地面に足を付けているよりも動きが俊敏だ。魔法をいくら放っても避けられてしまう。
「それなら、これで……《カテナファータ》!」
そう唱えた直後、クロの手のひらから緑色の光を纏った一本の鎖がドラゴンゴーレムに向かって伸びていく。ドラゴンゴーレムは避けようとするが、鎖は動きに合わせて進路を変えて逃がさず、やがてドラゴンゴーレムの体に巻き付いた。
「捕まえたっ! 《エスパテンペス》!」
鎖から逃れようとドラゴンゴーレムはもがくが、逃がさないようにクロは自身の腕に鎖を巻き付け、岩の地面を踏み締める。そして動きを制限されたところに再び魔法を放つ。
「グオォォォォォォォ……」
魔法を避ける事ができず、胴体に大きな穴が開く。悲鳴のような鳴き声を上げるが、直後全身から力が抜けたように落下していく。そしてクロの目の前に落ち、その後はピクリとも動かなかった。
穴の開いた胴体には砕けたコアが見えた。どうやら今の一撃でコアも砕いたようだ。
「さあっ、残りもやっちゃうよ!」
クロはもう一体のドラゴンゴーレムへと向かって行く。
残りの一体もそう時間を掛ける事なく、クロの活躍で容易に倒す事ができたのであった。
どうやら外にいる者達でドラゴンゴーレムに攻撃を仕掛けているようだ。だが、ドラゴンゴーレム相手に外の戦力だけではとても太刀打ちできない。
「……クロ! お前はあいつらを倒せ! 俺はここでコアを探し続ける!」
「う、うん! 分かったよ!」
「他の奴も行ってこい! ここは俺一人でなんとかする!」
「「「うっす!」」」
他の仲間達にも呼び掛けて穴の外へと送り出そうとするが、さすがにクロが立ち止まる。
「ジェノスさん、一人じゃ押し戻されちゃうよ!」
ここまでクロとジェノスの主に二人の力で掘り進める事ができた。クロが抜けても他の仲間がいれば多少効率は落ちるが、掘り進める事ができる。だが、これまでのペースだとジェノス一人では再生速度を上回るのは難しいだろう。
「問題ねえ。俺だけなら周りに気を使う必要はねえからな。そう何度も使えねえが、魔法も使って一気に掘り進める」
「ちょ、そんな事をしたら周りが崩れて埋もれちゃうよ!」
「周りはしっかり自分の魔力で固めてる! 直接魔法をぶつけねえ限り崩れる事はねえよ。ほら、さっさと行ってこい!」
「……分かった。だけど気を付けてね!」
そう言ってクロも梯子で穴の外へと出て行った。
一人きりとなったジェノスは自分の足下を見る。少しずつユグドラシルゴーレムは体を元に戻そうとして、掘っていた痕跡が消えていく。
「さて……ナエやクロみたいな派手な威力の魔法は使えねえが、岩を削っていくにはぴったりな魔法があるんだ。いくぜ……《イサルデルゥー》!」
本来この《イサルデルゥー》という魔法は飛び道具に対して有効な防御の魔法だ。竜巻のような風が発生し、矢などをあらぬ方向に受け流す事ができる。そしてこれを圧縮して発動すると、威力が増し受け流すどころか、矢や魔法は掻き消すほどの威力となる。
圧縮には魔力の扱いに長けていなければできない事だが、ワンワン、ナエ、クロに教える為に魔法に関する本を読み、実践して来たジェノスには可能だった。
ジェノスは自分の足下で圧縮させて発動した。周囲に砕いた岩の礫が飛び散る。周りに人がいれば確かに使う事はできない手段だ。こうしてジェノスは少しずつだが着実に《イサルデルゥー》によって掘り進めていく。
一方、穴の外では既にクロも加わりドラゴンゴーレムと戦っていた。
「おい、固まるなっ! 狙われるぞ!」
魔物ギルドのギルドマスターであるゲルニドが指示を飛ばす。ゲルニドの指示が的確だったおかげで幸い動けなくなるほどの重傷を負った者はいない。
ドラゴンゴーレムはユグドラシルゴーレムの体の一部だ。
ゲルニド達は出現するまでの一部始終を目撃していた。突然岩の体の一部が盛り上がったと思えば、ドラゴンゴーレムとなって動きだしたのだ。そしてワンワン達が待機する方にも何かが放たれたのも目撃し、慌てて何人かゲルニドは向かわせていた。
「こっちには勇者がいるんだ! 勝ったも同然だ! 恐れるな、やっちまえ!」
共に戦うクロの名前を使って喝を入れる。
穴からクロが飛び出して来て穴の中にいた全員が無事だと聞くと、安堵のあまり足から力が抜けそうになった。
ドラゴンゴーレムが穴にいるクロ達に気付いてしまい、二体がドラゴンブレスを放った時。穴の中にいた者の生存は絶望的だろうとゲルニドは思っていた。
普通は防ぐのは不可能。避けるしかない。だが、逃げ場などない狭い穴の中だ。だから全員の死を覚悟していた。
「はあああっ!」
「グルルルルル!」
そのドラゴンブレスを防いだクロはというと、ドラゴンゴーレム一体を一人で相手にしていた。
ゲルニドは詳しい話は聞いていないが、クロが防いだに違いないと思っていた。だからクロから「一体は私がやるから!」と申し出た際も躊躇う事なく任せることにしたのだ。
「強そうだけどこの大きさなら……《エスパテンペス》!」
魔物の体くらいなら容易に切り裂く風の魔法をドラゴンゴーレムに放つ。
ドラゴンゴーレムは咄嗟に飛び立ち、避けようとするが間に合わず。岩の体であるにも関係なしに、後ろの両足が魔法に接触すると跡形もなく粉砕する。
ユグドラシルゴーレムの巨体では表面を削ぐぐらいしかできないが、ドラゴンゴーレムほどの大きさであれば問題なく破壊する事ができた。
だが、ドラゴンゴーレムもそれぐらいで戦意を失わない。そのまま飛び立ちクロ達の頭上を旋回し、失われた足を再生していく。
「《エスパテンペス》! 《エスパテンペス》!」
次々と魔法を繰り出すが空を飛ぶドラゴンゴーレムは、地面に足を付けているよりも動きが俊敏だ。魔法をいくら放っても避けられてしまう。
「それなら、これで……《カテナファータ》!」
そう唱えた直後、クロの手のひらから緑色の光を纏った一本の鎖がドラゴンゴーレムに向かって伸びていく。ドラゴンゴーレムは避けようとするが、鎖は動きに合わせて進路を変えて逃がさず、やがてドラゴンゴーレムの体に巻き付いた。
「捕まえたっ! 《エスパテンペス》!」
鎖から逃れようとドラゴンゴーレムはもがくが、逃がさないようにクロは自身の腕に鎖を巻き付け、岩の地面を踏み締める。そして動きを制限されたところに再び魔法を放つ。
「グオォォォォォォォ……」
魔法を避ける事ができず、胴体に大きな穴が開く。悲鳴のような鳴き声を上げるが、直後全身から力が抜けたように落下していく。そしてクロの目の前に落ち、その後はピクリとも動かなかった。
穴の開いた胴体には砕けたコアが見えた。どうやら今の一撃でコアも砕いたようだ。
「さあっ、残りもやっちゃうよ!」
クロはもう一体のドラゴンゴーレムへと向かって行く。
残りの一体もそう時間を掛ける事なく、クロの活躍で容易に倒す事ができたのであった。
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