捨てる人あれば、拾うワン公あり
天界 見守る天使たち
ワンワン達がユグドラシルゴーレムとの戦いを始めた頃。
天界ではいつもの三人の天使達がその様子を見守っていた。
「なかなか強そうな魔物だね」
「オワリビトと比べりゃマシだが……あの世界では強い方だな。だが、ワンワン達なら倒す事ができるんじゃねえか?」
「そうだね。ワンワンとナエの魔法、レイラのスキル、クロの勇者としてのステータス。それにジェノスの仲間も頼もしいね。レイラの【蛮勇】の影響もあるけど、誰一人として微塵も心が揺らいでない。それほどジェノスを信頼しているようだ」
この戦いはそれほど大きな被害を出さずに終わるだろう。ライヌとカインはそのように状況を捉えていた。
だが、一方でドゥーラは何も言わずに、ユグドラシルゴーレムを真剣な表情で見ていた。
「おい、どうした? なんか気になる事でもあんのか?」
「そういえば、前に戦った相手のようだね。エンシェントドラゴンの君が、あれを倒すのに苦労したというのは驚きだけど……」
二人はドゥーラに視線を向ける。
ユグドラシルゴーレムと実際に戦った者として、ドゥーラの話を聞きたいようだった。
視線の意図を察したドゥーラは昔を思い出すようにゆっくりと語り出す。
「まだ、若輩の頃……全盛期の比べれば非力な存在だった頃の話だ。だが、聖域で生きてきた中で、最も強い魔物であった。今は更に力をつけたようだな……当時の儂では勝てないかもしれぬ」
「へえ……でも、若輩とは言っても、人々にエンシェントドラゴンの存在を知られていたんだから、全盛期に及ばないにしろある程度力はあったんだよね?」
「そこまで強そうには見えねえけどな、あのデカブツ。今のステータスだって、一般人には恐怖でしかないが、それほどじゃねえだろ」
二人の言葉にドゥーラは同意するように頷く。
「純粋な力なら当時でも儂の方が圧倒的に強かった。だが、あの魔物の厄介なのは再生速度だ。コアを破壊しない限りすぐに再生する。当時の儂はゴーレムのコアをなかなか破壊できず、時間を掛けてようやく再生が止まった。コアを破壊したと思ったのだが……」
「こうして生きていた、と……。知力はそこまで高くないくせに、勝てないと踏んでわざと再生を止めて死んだふりをしたようだね。そういう習性があるのかな?」
カインは死んだふりという行為をユグドラシルゴーレムがとったと聞いて、ワンワン達が少し不安になった。勝てないと踏んだ普通の魔物は、なんとしてでも相手を殺そうと必死になって向かって来るか、逃げようとするものだ。
死んだふりという行為で、やり過ごそうとする魔物なんて見た事がない。
それもゴーレムとなれば呼吸もせず、心臓などを動かす事もない。ただ体が動かなくなれば死亡したと誰もが思うだろう。その自分の性質を熟知して、死んだふりという行動をとったとしたら……。
「これは、少し厄介かもね……」
頭が回る魔物ほど厄介なものはない。それにドゥーラの話を聞いていて、カインは一つ疑問が生まれた。
ユグドラシルゴーレムが、そこまで頭が回る魔物だとしたら、どうして今になって姿を現したのか。今まで活動を停止して眠っていたのか、エンシェントドラゴンがいなくなった事に気付いて出て来たのか。それとも……。
「エンシェントドラゴンに勝てると判断して出て来たのか?」
「……その可能性は、おそらくない。当時の儂のステータスは今のユグドラシルゴーレムよりも高い」
思わず口に出てしまったカインの思った可能性を、ドゥーラは否定する。
すると今度はライヌが首を横に振って、カインの口にした可能性を否定するのは早計だと言う。
「いくらステータスやスキルが見れても、魔物なんかは特に思いもよらない力を持ってるもんだ。ゴーレムの再生能力なんかそうだろう? もしかすると当時のエンシェントドラゴンを殺せるような攻撃手段があんのかもしれねえな」
「そんな力が? だとしたら……」
ワンワンが危ない。
オワリビトが現れた時、ライヌがワンワン達を助けたように、助けに行く事はできないだろうか。ドゥーラはカインに尋ねようとする。
だが、その問いを予期していたのか、尋ねる前にカインは首を横に振っていた。
「……これは、あくまで世界で自然に起きた事。オワリビトのように世界が意図的に起こしたものではない。だからこれに干渉する事は、さすがにできないよ。今は、ワンワン達の無事を祈るしかない」
それから三人は緊張した面持ちで、ワンワン達の戦いを見守り続けるのだった。
天界ではいつもの三人の天使達がその様子を見守っていた。
「なかなか強そうな魔物だね」
「オワリビトと比べりゃマシだが……あの世界では強い方だな。だが、ワンワン達なら倒す事ができるんじゃねえか?」
「そうだね。ワンワンとナエの魔法、レイラのスキル、クロの勇者としてのステータス。それにジェノスの仲間も頼もしいね。レイラの【蛮勇】の影響もあるけど、誰一人として微塵も心が揺らいでない。それほどジェノスを信頼しているようだ」
この戦いはそれほど大きな被害を出さずに終わるだろう。ライヌとカインはそのように状況を捉えていた。
だが、一方でドゥーラは何も言わずに、ユグドラシルゴーレムを真剣な表情で見ていた。
「おい、どうした? なんか気になる事でもあんのか?」
「そういえば、前に戦った相手のようだね。エンシェントドラゴンの君が、あれを倒すのに苦労したというのは驚きだけど……」
二人はドゥーラに視線を向ける。
ユグドラシルゴーレムと実際に戦った者として、ドゥーラの話を聞きたいようだった。
視線の意図を察したドゥーラは昔を思い出すようにゆっくりと語り出す。
「まだ、若輩の頃……全盛期の比べれば非力な存在だった頃の話だ。だが、聖域で生きてきた中で、最も強い魔物であった。今は更に力をつけたようだな……当時の儂では勝てないかもしれぬ」
「へえ……でも、若輩とは言っても、人々にエンシェントドラゴンの存在を知られていたんだから、全盛期に及ばないにしろある程度力はあったんだよね?」
「そこまで強そうには見えねえけどな、あのデカブツ。今のステータスだって、一般人には恐怖でしかないが、それほどじゃねえだろ」
二人の言葉にドゥーラは同意するように頷く。
「純粋な力なら当時でも儂の方が圧倒的に強かった。だが、あの魔物の厄介なのは再生速度だ。コアを破壊しない限りすぐに再生する。当時の儂はゴーレムのコアをなかなか破壊できず、時間を掛けてようやく再生が止まった。コアを破壊したと思ったのだが……」
「こうして生きていた、と……。知力はそこまで高くないくせに、勝てないと踏んでわざと再生を止めて死んだふりをしたようだね。そういう習性があるのかな?」
カインは死んだふりという行為をユグドラシルゴーレムがとったと聞いて、ワンワン達が少し不安になった。勝てないと踏んだ普通の魔物は、なんとしてでも相手を殺そうと必死になって向かって来るか、逃げようとするものだ。
死んだふりという行為で、やり過ごそうとする魔物なんて見た事がない。
それもゴーレムとなれば呼吸もせず、心臓などを動かす事もない。ただ体が動かなくなれば死亡したと誰もが思うだろう。その自分の性質を熟知して、死んだふりという行動をとったとしたら……。
「これは、少し厄介かもね……」
頭が回る魔物ほど厄介なものはない。それにドゥーラの話を聞いていて、カインは一つ疑問が生まれた。
ユグドラシルゴーレムが、そこまで頭が回る魔物だとしたら、どうして今になって姿を現したのか。今まで活動を停止して眠っていたのか、エンシェントドラゴンがいなくなった事に気付いて出て来たのか。それとも……。
「エンシェントドラゴンに勝てると判断して出て来たのか?」
「……その可能性は、おそらくない。当時の儂のステータスは今のユグドラシルゴーレムよりも高い」
思わず口に出てしまったカインの思った可能性を、ドゥーラは否定する。
すると今度はライヌが首を横に振って、カインの口にした可能性を否定するのは早計だと言う。
「いくらステータスやスキルが見れても、魔物なんかは特に思いもよらない力を持ってるもんだ。ゴーレムの再生能力なんかそうだろう? もしかすると当時のエンシェントドラゴンを殺せるような攻撃手段があんのかもしれねえな」
「そんな力が? だとしたら……」
ワンワンが危ない。
オワリビトが現れた時、ライヌがワンワン達を助けたように、助けに行く事はできないだろうか。ドゥーラはカインに尋ねようとする。
だが、その問いを予期していたのか、尋ねる前にカインは首を横に振っていた。
「……これは、あくまで世界で自然に起きた事。オワリビトのように世界が意図的に起こしたものではない。だからこれに干渉する事は、さすがにできないよ。今は、ワンワン達の無事を祈るしかない」
それから三人は緊張した面持ちで、ワンワン達の戦いを見守り続けるのだった。
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