捨てる人あれば、拾うワン公あり
第23話 チェルノに戻ってきました
昼食を食べ終え、クロとジェノスと別れてチェルノへと戻る。
折角外に出て来たのでチェルノに戻る途中で薬草や茸を採取した。また、カーラの弓で小さなピンク色の兎のような魔物を仕留める。
「ふむ……ワンワン、ナエ。少し勉強をしようかのう。覚えておけば役に立つのじゃ」
レイラは二人に、この薬草はどのような効果があるのか、この茸は食用だが似たもので毒を持つものがある、この魔物はラビットンで毛皮がそこそこ高く売れる魔物といったように教える。二人は真面目にレイラの話を聞いて、しっかりと覚えようとしていた。
聖域でジェノスから色々学んだが、あの環境ではやはり学べるものは限られている。どういう形をしているのか特徴を口頭伝えながら教える事もできるが、やはり実物を見てみないと分からない事も多い。折角の機会なので、見た事ない植物、魔物を見掛ける度に足を止めて二人に教えていった。
そんなレイラに思わず感嘆の声をカーラは漏らす。
「レイラさん、お詳しいんですね。私も狩りで森の中を駆け回って色んな植物を知っていますけど、そんなに詳しくは知りませんでした。どこかで学ばれたんですか? 元々採取ギルドに入っていたとか……」
「いやいや、色々な場所を旅をしていたのでな。それで覚えたんじゃ」
「旅ですか……いいですねえ。もしかして魔族の国も行った事が?」
「うむ、あるぞ。しかし魔族の国を全て見て回った訳ではないのでな……向こうに行っても以前訪れて知った事が役に立つか分からん。じゃからお主らは何があっていいように、しっかり準備をしておくのじゃぞ」
「はいっ! みんなにもそう伝えておきます! でも、具体的にどんなものを用意した方がいいか教えていただいてもよろしいでしょうか? 魔族の国はみんなきっと初めてなので」
確かに普通人間が魔族の国に行く事はない。行くとすれば戦争だ。何を準備すればいいかなんて分からなくて当たり前だ。
「よし、では向こうで必要不可欠なものを教えよう。しっかり覚えて他の者にも伝えて準備するのじゃ」
「はいっ! ありがとうございます!」
それからレイラは歩きながら、カーラに魔族の国へ行くのに準備するべきものを伝えていく。
教えながら自分でも過去の記憶が刺激されて、あの時あれがあったら良かった、事前に用意した方が良かったと思ったものを挙げていった。また、懐かしさのあまり魔族の国での体験談を話し出してしまう。これにはワンワンとナエも夢中になる。
昔話に花を咲かせてしまい、それからチェルノまでは薬草等には目もくれなかった。
「それでの……っと、もう街についてしまったのう。話に夢中になってしまったわい」
チェルノの外壁が見えて、レイラはようやく体験談を切り上げた。
「わうー、もっと聞きたいよー。ねえねえ、大きなお花が地面からニョキニョキ生えて、レイラ達を取り囲んでどうなったの?」
「私も続きが気になるぜ! 教えてくれよ!」
「夜にでも続きを話すのじゃ。このままだと、いつまでも話し続けてしまいそうだからのう」
「「えー」」
二人は続きを今すぐにでも聞きたいと口を尖らせて訴える。
そんな子供らしい二人の反応にレイラとカーラは思わず笑ってしまう。
「ふふふっ、仲が良いんですね」
「家族じゃからな……仕方ない。この話で魔族の国の話は終わりにするからのう。儂らを取り囲むようにニョキニョキと生えた花は、なんと大きな口を開けて」
ワンワンとナエに、この話を最後までしたところで門に到着する。
門番は街を出た時と別の者だったが、初めて街に入った時と違ってギルドカードがあった為、すんなり中に入る事ができた。
チェルノの街に戻って来ると、そのままゲルニド達の隠れ家へと向かう。到着すると店の奥へと案内され、ジュースをワンワンとナエに。レイラには高そうなワインをグラスに注ごうとしたようだが、飲めないのでレイラは注がれる前にやんわりと断った。
ちなみにジュースを出したのは昨夜料理を振る舞ってくれた【料理人】のスキルを持つ大男だ。
ワンワンは昨日の料理の味を思い出して、きっとこれも美味しいと思ったのだろう。出されたジュースをを早速飲む。そしてグラスから口を離す事なく、一息で飲み干してしまった。
「ぷはっ……すっごく甘くて美味しい!」
「本当だ……こいつは美味いぜ!」
「……(にこにこ)」
二人が喜んでいるのが嬉しいらしく、大男は笑顔で二人にお替わり注ぐのだった。
それとは対照的に緊張した面持ちでゴリンコはレイラに尋ねる。
「それで……どうでやしたか? ボスはなんと……?」
一緒に魔族の国へ連れて行ってくれるのか。固唾を飲んでレイラの返事を待つゴリンコ。
自分達が戻って来るまで、きっとこの調子だったのだろうと苦笑しながらレイラは答える。
「お主らも連れてって良いと言っておったぞ」
「ほ、本当ですかい!?」
「本当です。ボスは私達も一緒に連れてってくれるとおっしゃってました」
「あぁぁ……良かった。本当に良かった。よしっ、他の奴等にも伝えねえと!」
そう言ってゴリンコは余程嬉しかったのかレイラ達を置いて部屋から飛び出して行ってしまう。
「ゴリンコさん! す、すみませんレイラさん」
「気にしなくてよい。儂らが戻って来るまで、やきもきしていたようじゃしな」
「そう言って貰えると助かります……あ、そうだ。今日も夕食はうちで食べられますか? カトリーヌさんもやる気満々のようですし」
「カトリーヌ? すまん、聞き覚えの無い名前がって、お主か!?」
大男がそっと右手を挙げていて、カトリーヌは自分の事だと訴えいていた。
あまりにも可愛らしい名前にレイラは衝撃を受ける。ナエも驚きのあまりジュースを吹き出しそうになっていた。ワンワンは大して驚いた様子はなく「可愛い名前だね」と告げる。
ワンワンにそのように可愛い名前と言われて、カトリーヌはニコニコと嬉しそうに笑っていた。
「んんっ、昨夜の料理も美味しかったからのう。食べさせて貰えるのなら、食べたいのう。ワンワンとナエはどうじゃ?」
「僕も食べたいよ!」
「あ、ああ……私も勉強になるんだぜ」
ナエはまだカトリーヌの衝撃から抜け出せていないようだが、二人とも夕食をここで食べたいと言うので、レイラはカーラのお言葉に甘える事にする。
「それじゃあ頼むのじゃ。さて……まだ夕食まで時間があるようじゃし…………ワンワン、ナエ。ギルドにでも行かぬか? ナエは魔物の調理方法を知りたいじゃろう? 昨日ゲルニドに聞いてみたら、レシピ本があるそうじゃ」
「そうなのか? それなら行きたいぜ!」
「わうっ? 二人が行くなら僕も行くよ!」
二人がジュースを飲み切って立ち上がる。気の早い二人に苦笑しながらレイラも立ち上がった。
「それじゃあ儂らは行ってくる。三時間後くらいに戻って来るのじゃ」
「分かりました。私はどうしましょうか? 今日一日はレイラさんの奴隷として貸し出されていますが……」
「そういえば奴隷じゃったのう……うっかりしておった。ギルドに行くだけじゃから、夕食まで休むがよい。昨日治療したばかりで疲れておるのではないか?」
「あはは……分かりますか? 実は足がまるで棒のようで……狩りをしていたので足腰には自信があったんですが……」
椅子に座らずカーラは立っていたのだが、よく見れば足が震えていた。疲労困憊というのがよく分かる。
「無理もない。一度失った足を再び生やしたのじゃからな。新しい手足がまだ慣れてないのじゃろう。まあ、ゆっくりしとくのじゃ。ほれ椅子に座って休むのじゃ」
「はい……それじゃあ、お言葉に甘えて……」
椅子に座って自分の足を労わるカーラ。ワンワンに頼んで《ミソロジィ・キュア》で癒す事も考えたが、疲労というのはステータスを向上させると言われている。肉体的、精神的な疲労が大きいほどステータスの向上が望めるらしい。だが、スキルや魔法、薬で無理矢理癒してしまうと、ステータスの成長はできない。
カーラの為にも、ここは自然に疲れを癒して貰う事にする。
こうして疲労困憊のカーラとはここで別れて、三人でギルドへと向かうのだった。
折角外に出て来たのでチェルノに戻る途中で薬草や茸を採取した。また、カーラの弓で小さなピンク色の兎のような魔物を仕留める。
「ふむ……ワンワン、ナエ。少し勉強をしようかのう。覚えておけば役に立つのじゃ」
レイラは二人に、この薬草はどのような効果があるのか、この茸は食用だが似たもので毒を持つものがある、この魔物はラビットンで毛皮がそこそこ高く売れる魔物といったように教える。二人は真面目にレイラの話を聞いて、しっかりと覚えようとしていた。
聖域でジェノスから色々学んだが、あの環境ではやはり学べるものは限られている。どういう形をしているのか特徴を口頭伝えながら教える事もできるが、やはり実物を見てみないと分からない事も多い。折角の機会なので、見た事ない植物、魔物を見掛ける度に足を止めて二人に教えていった。
そんなレイラに思わず感嘆の声をカーラは漏らす。
「レイラさん、お詳しいんですね。私も狩りで森の中を駆け回って色んな植物を知っていますけど、そんなに詳しくは知りませんでした。どこかで学ばれたんですか? 元々採取ギルドに入っていたとか……」
「いやいや、色々な場所を旅をしていたのでな。それで覚えたんじゃ」
「旅ですか……いいですねえ。もしかして魔族の国も行った事が?」
「うむ、あるぞ。しかし魔族の国を全て見て回った訳ではないのでな……向こうに行っても以前訪れて知った事が役に立つか分からん。じゃからお主らは何があっていいように、しっかり準備をしておくのじゃぞ」
「はいっ! みんなにもそう伝えておきます! でも、具体的にどんなものを用意した方がいいか教えていただいてもよろしいでしょうか? 魔族の国はみんなきっと初めてなので」
確かに普通人間が魔族の国に行く事はない。行くとすれば戦争だ。何を準備すればいいかなんて分からなくて当たり前だ。
「よし、では向こうで必要不可欠なものを教えよう。しっかり覚えて他の者にも伝えて準備するのじゃ」
「はいっ! ありがとうございます!」
それからレイラは歩きながら、カーラに魔族の国へ行くのに準備するべきものを伝えていく。
教えながら自分でも過去の記憶が刺激されて、あの時あれがあったら良かった、事前に用意した方が良かったと思ったものを挙げていった。また、懐かしさのあまり魔族の国での体験談を話し出してしまう。これにはワンワンとナエも夢中になる。
昔話に花を咲かせてしまい、それからチェルノまでは薬草等には目もくれなかった。
「それでの……っと、もう街についてしまったのう。話に夢中になってしまったわい」
チェルノの外壁が見えて、レイラはようやく体験談を切り上げた。
「わうー、もっと聞きたいよー。ねえねえ、大きなお花が地面からニョキニョキ生えて、レイラ達を取り囲んでどうなったの?」
「私も続きが気になるぜ! 教えてくれよ!」
「夜にでも続きを話すのじゃ。このままだと、いつまでも話し続けてしまいそうだからのう」
「「えー」」
二人は続きを今すぐにでも聞きたいと口を尖らせて訴える。
そんな子供らしい二人の反応にレイラとカーラは思わず笑ってしまう。
「ふふふっ、仲が良いんですね」
「家族じゃからな……仕方ない。この話で魔族の国の話は終わりにするからのう。儂らを取り囲むようにニョキニョキと生えた花は、なんと大きな口を開けて」
ワンワンとナエに、この話を最後までしたところで門に到着する。
門番は街を出た時と別の者だったが、初めて街に入った時と違ってギルドカードがあった為、すんなり中に入る事ができた。
チェルノの街に戻って来ると、そのままゲルニド達の隠れ家へと向かう。到着すると店の奥へと案内され、ジュースをワンワンとナエに。レイラには高そうなワインをグラスに注ごうとしたようだが、飲めないのでレイラは注がれる前にやんわりと断った。
ちなみにジュースを出したのは昨夜料理を振る舞ってくれた【料理人】のスキルを持つ大男だ。
ワンワンは昨日の料理の味を思い出して、きっとこれも美味しいと思ったのだろう。出されたジュースをを早速飲む。そしてグラスから口を離す事なく、一息で飲み干してしまった。
「ぷはっ……すっごく甘くて美味しい!」
「本当だ……こいつは美味いぜ!」
「……(にこにこ)」
二人が喜んでいるのが嬉しいらしく、大男は笑顔で二人にお替わり注ぐのだった。
それとは対照的に緊張した面持ちでゴリンコはレイラに尋ねる。
「それで……どうでやしたか? ボスはなんと……?」
一緒に魔族の国へ連れて行ってくれるのか。固唾を飲んでレイラの返事を待つゴリンコ。
自分達が戻って来るまで、きっとこの調子だったのだろうと苦笑しながらレイラは答える。
「お主らも連れてって良いと言っておったぞ」
「ほ、本当ですかい!?」
「本当です。ボスは私達も一緒に連れてってくれるとおっしゃってました」
「あぁぁ……良かった。本当に良かった。よしっ、他の奴等にも伝えねえと!」
そう言ってゴリンコは余程嬉しかったのかレイラ達を置いて部屋から飛び出して行ってしまう。
「ゴリンコさん! す、すみませんレイラさん」
「気にしなくてよい。儂らが戻って来るまで、やきもきしていたようじゃしな」
「そう言って貰えると助かります……あ、そうだ。今日も夕食はうちで食べられますか? カトリーヌさんもやる気満々のようですし」
「カトリーヌ? すまん、聞き覚えの無い名前がって、お主か!?」
大男がそっと右手を挙げていて、カトリーヌは自分の事だと訴えいていた。
あまりにも可愛らしい名前にレイラは衝撃を受ける。ナエも驚きのあまりジュースを吹き出しそうになっていた。ワンワンは大して驚いた様子はなく「可愛い名前だね」と告げる。
ワンワンにそのように可愛い名前と言われて、カトリーヌはニコニコと嬉しそうに笑っていた。
「んんっ、昨夜の料理も美味しかったからのう。食べさせて貰えるのなら、食べたいのう。ワンワンとナエはどうじゃ?」
「僕も食べたいよ!」
「あ、ああ……私も勉強になるんだぜ」
ナエはまだカトリーヌの衝撃から抜け出せていないようだが、二人とも夕食をここで食べたいと言うので、レイラはカーラのお言葉に甘える事にする。
「それじゃあ頼むのじゃ。さて……まだ夕食まで時間があるようじゃし…………ワンワン、ナエ。ギルドにでも行かぬか? ナエは魔物の調理方法を知りたいじゃろう? 昨日ゲルニドに聞いてみたら、レシピ本があるそうじゃ」
「そうなのか? それなら行きたいぜ!」
「わうっ? 二人が行くなら僕も行くよ!」
二人がジュースを飲み切って立ち上がる。気の早い二人に苦笑しながらレイラも立ち上がった。
「それじゃあ儂らは行ってくる。三時間後くらいに戻って来るのじゃ」
「分かりました。私はどうしましょうか? 今日一日はレイラさんの奴隷として貸し出されていますが……」
「そういえば奴隷じゃったのう……うっかりしておった。ギルドに行くだけじゃから、夕食まで休むがよい。昨日治療したばかりで疲れておるのではないか?」
「あはは……分かりますか? 実は足がまるで棒のようで……狩りをしていたので足腰には自信があったんですが……」
椅子に座らずカーラは立っていたのだが、よく見れば足が震えていた。疲労困憊というのがよく分かる。
「無理もない。一度失った足を再び生やしたのじゃからな。新しい手足がまだ慣れてないのじゃろう。まあ、ゆっくりしとくのじゃ。ほれ椅子に座って休むのじゃ」
「はい……それじゃあ、お言葉に甘えて……」
椅子に座って自分の足を労わるカーラ。ワンワンに頼んで《ミソロジィ・キュア》で癒す事も考えたが、疲労というのはステータスを向上させると言われている。肉体的、精神的な疲労が大きいほどステータスの向上が望めるらしい。だが、スキルや魔法、薬で無理矢理癒してしまうと、ステータスの成長はできない。
カーラの為にも、ここは自然に疲れを癒して貰う事にする。
こうして疲労困憊のカーラとはここで別れて、三人でギルドへと向かうのだった。
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