捨てる人あれば、拾うワン公あり
強欲の放浪者になった理由(カーラの場合)
「はぁはぁ……」
私は暗い森の中を走っていた。後ろを振り返ると闇に閉ざされて、ほとんど見えない。だけど、「こっちだ!」「追え!」と怒号が聞こえ、多くの人が追って来るのが分かる。
「どうしてこんな事にっ……」
私はコルンの小さな村に住んでいた。両親が幼い頃に病に倒れて亡くなったが、【魔弓】というスキルを持っていて弓が得意だった。そのおかげで村の狩人に混ざって、狩りで生計を立てる事ができた。
そして私には【邪神への貢ぎ物】というスキルがあった。
最初はどんなスキルかよく分からなかったけど、自分の願いを叶えてくれるスキルだと分かった。獲物が見つかりますようにと願えば、肉付きの良い鹿を狩る事ができたし、失くしたものが見つかるようにと願えば出て来てくれた。
だけど、魔物に襲われて助けてと願った時。
願った直後、大木が倒れて魔物を押し潰して私は助かった。でも、安堵した時に自分の髪が数十本がごっそりと地面に落ちる。それが願いの代償だと、私には分かった。
これまでも知らない内に、こうして私は何かしらの代償を支払っていたかもしれない。そう思うとこのスキルが恐ろしくなって、これ以降使わないようにした。
そして【邪神への貢ぎ物】を使わず、狩りをする日々を送って十六歳になった。
今では村一番の狩人として、一人森の中で狩をしていたある日の事。一人の黒いローブを着た男が私の前に現れた。その人物は邪神の使徒と名乗り、私を迎えに来たと言う。
私が【邪神への貢ぎ物】のスキルを持っている事を知っているらしく、邪神の復活に私が必要なのだと言う。嫌な予感がした私は、男を無視して村へと戻った。
そして翌日。男が同じような格好をした多くの仲間を率いて村に押し寄せ、私を力づくで連れて行こうとした。
村のみんなが私を庇ってくれ、足止めをしてくれている間に必要最低限の荷物を纏めて逃げ出した。村に戻れば迷惑を掛けてしまう。そう思い、街や村を転々として奴等を撒こうとした。だけど奴等は私を諦める事なく追って来た。
そして今、奴等はすぐそこまで迫っていた。
このままでは捕まってしまう。こうなれば【邪神への貢ぎ物】で逃げられる事を願おうかと思った矢先、闇に閉ざされた森の奥で光が見えた。
誰かいる。奴等の仲間かもしれない。でも、このままではどちらにしろ捕まってしまう。私は光に向かって走る事にした。
そして光の場所に辿り着くと、そこには一般人とは思えない、ただならぬ雰囲気を感じさせる人達が火を囲っていた。一部が私を警戒して武器に手を掛けている。
ふと私は思い出した。最後に寄った村で、最近強欲の放浪者という盗賊団が出没したという話を。もしや、この人達が……と背筋に冷たいものが走る。
「騒がしいと思ったが……何者だ? ん? 追われてるのか?」
顔中傷だらけの男の人が、私の後方から聞こえて来る声を聞き取って状況を理解したようだ。
助かるなら……というか、この今の状況を脱するには目の前の人達に頼るしかない。
「すみません! た、助けてくださいっ!」
「……よく分かんねえが、仕方ねえ。お前らやるぞ。あんたも戦えよ」
「は、はいっ! ありがとうございます!」
この集団の代表らしい人がそう言うと、全員が奴等を迎え撃つ為に立ち上がり武器を手にする。そして闇の向こうから姿を現した瞬間、戦闘が始まった。
この人達は素人目でも戦いから手練れである事が分かった。無傷で次々と奴等を倒していく。それから奴等は敵わないと思ったらしく、すぐに撤退を始める。私はこうして助かったのだった。
その後、嫌な予感は当たり、強欲の放浪者である事が分かった。だけど話を聞いて、悪い貴族しか狙わない事を知る。その時は全てを信じた訳ではないけど、奴等が再び私を襲って来ないとも限らない。強欲の放浪者のボスであるジェノスさんからの提案もあって暫く行動をともにした。いざとなれば【邪神への貢ぎ物】を使って逃げればいいと思ったが、それを使う機会はなかった。
私は狩りの経験を活かして、食料の調達をして役に立つ事に。
そして最初は一ヵ月ほどで離れようとしたけど、ここには不思議な温かさがあって居心地がよく、そのまま居着いてしまった。特にジェノスさんは自分の中で頼れる大きな存在だった。
僅かに私の中にある家族の記憶が蘇る。
強欲の放浪者から感じる温かさは、家族で過ごした日々を思わせる。そしてジェノスさんはまるで父親のように思えてしまい、強欲の放浪者から離れ難くなっていた。
こうして私は強欲の放浪者の一員となったのだ。
私は暗い森の中を走っていた。後ろを振り返ると闇に閉ざされて、ほとんど見えない。だけど、「こっちだ!」「追え!」と怒号が聞こえ、多くの人が追って来るのが分かる。
「どうしてこんな事にっ……」
私はコルンの小さな村に住んでいた。両親が幼い頃に病に倒れて亡くなったが、【魔弓】というスキルを持っていて弓が得意だった。そのおかげで村の狩人に混ざって、狩りで生計を立てる事ができた。
そして私には【邪神への貢ぎ物】というスキルがあった。
最初はどんなスキルかよく分からなかったけど、自分の願いを叶えてくれるスキルだと分かった。獲物が見つかりますようにと願えば、肉付きの良い鹿を狩る事ができたし、失くしたものが見つかるようにと願えば出て来てくれた。
だけど、魔物に襲われて助けてと願った時。
願った直後、大木が倒れて魔物を押し潰して私は助かった。でも、安堵した時に自分の髪が数十本がごっそりと地面に落ちる。それが願いの代償だと、私には分かった。
これまでも知らない内に、こうして私は何かしらの代償を支払っていたかもしれない。そう思うとこのスキルが恐ろしくなって、これ以降使わないようにした。
そして【邪神への貢ぎ物】を使わず、狩りをする日々を送って十六歳になった。
今では村一番の狩人として、一人森の中で狩をしていたある日の事。一人の黒いローブを着た男が私の前に現れた。その人物は邪神の使徒と名乗り、私を迎えに来たと言う。
私が【邪神への貢ぎ物】のスキルを持っている事を知っているらしく、邪神の復活に私が必要なのだと言う。嫌な予感がした私は、男を無視して村へと戻った。
そして翌日。男が同じような格好をした多くの仲間を率いて村に押し寄せ、私を力づくで連れて行こうとした。
村のみんなが私を庇ってくれ、足止めをしてくれている間に必要最低限の荷物を纏めて逃げ出した。村に戻れば迷惑を掛けてしまう。そう思い、街や村を転々として奴等を撒こうとした。だけど奴等は私を諦める事なく追って来た。
そして今、奴等はすぐそこまで迫っていた。
このままでは捕まってしまう。こうなれば【邪神への貢ぎ物】で逃げられる事を願おうかと思った矢先、闇に閉ざされた森の奥で光が見えた。
誰かいる。奴等の仲間かもしれない。でも、このままではどちらにしろ捕まってしまう。私は光に向かって走る事にした。
そして光の場所に辿り着くと、そこには一般人とは思えない、ただならぬ雰囲気を感じさせる人達が火を囲っていた。一部が私を警戒して武器に手を掛けている。
ふと私は思い出した。最後に寄った村で、最近強欲の放浪者という盗賊団が出没したという話を。もしや、この人達が……と背筋に冷たいものが走る。
「騒がしいと思ったが……何者だ? ん? 追われてるのか?」
顔中傷だらけの男の人が、私の後方から聞こえて来る声を聞き取って状況を理解したようだ。
助かるなら……というか、この今の状況を脱するには目の前の人達に頼るしかない。
「すみません! た、助けてくださいっ!」
「……よく分かんねえが、仕方ねえ。お前らやるぞ。あんたも戦えよ」
「は、はいっ! ありがとうございます!」
この集団の代表らしい人がそう言うと、全員が奴等を迎え撃つ為に立ち上がり武器を手にする。そして闇の向こうから姿を現した瞬間、戦闘が始まった。
この人達は素人目でも戦いから手練れである事が分かった。無傷で次々と奴等を倒していく。それから奴等は敵わないと思ったらしく、すぐに撤退を始める。私はこうして助かったのだった。
その後、嫌な予感は当たり、強欲の放浪者である事が分かった。だけど話を聞いて、悪い貴族しか狙わない事を知る。その時は全てを信じた訳ではないけど、奴等が再び私を襲って来ないとも限らない。強欲の放浪者のボスであるジェノスさんからの提案もあって暫く行動をともにした。いざとなれば【邪神への貢ぎ物】を使って逃げればいいと思ったが、それを使う機会はなかった。
私は狩りの経験を活かして、食料の調達をして役に立つ事に。
そして最初は一ヵ月ほどで離れようとしたけど、ここには不思議な温かさがあって居心地がよく、そのまま居着いてしまった。特にジェノスさんは自分の中で頼れる大きな存在だった。
僅かに私の中にある家族の記憶が蘇る。
強欲の放浪者から感じる温かさは、家族で過ごした日々を思わせる。そしてジェノスさんはまるで父親のように思えてしまい、強欲の放浪者から離れ難くなっていた。
こうして私は強欲の放浪者の一員となったのだ。
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